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『スローターハウス5』 納得名作!あと「1」〜「4」はない。

2023-10-30 18:03:19 | 日記
『スローターハウス5』
カート・ヴォネガット・ジュニア
訳:伊藤典夫

しばらく前に何かのレビューで見て
チェックしていた本。

というわけで「1」〜「4」もあるのかな?
と、存在しない本を探したこともあります。
はい。

『スローターハウス5』は「5」だけ。
1973年に早川書房から出版された単行本のタイトルは
『屠殺場5号』。
おお、これだと単独作品だとわかりやすい。
しかし邦題のクセが強いというか、インパクト、すごいな…。

と思った人が編集部にいたのでしょう。
1978年の文庫化の際に、
『スローターハウス5』に改題されました。
そうね、こっちの方がいいですね。
表紙の和田誠(好き)との親和性もばっちり!

作者は1932年生まれ。
第二次世界大戦にアメリカ兵として従軍していて、
連合軍によるドレスデン無差別爆撃を「受けた」人。
アメリカ兵がアメリカ軍の爆撃受けるの?
と、思ったけれど、戦争というのはそういうものだ。

終戦間際にドイツ軍捕虜になり、
ドレスデンの「スローターハウス5」に収容されたところ
アメリカ軍主導の爆撃を受けたという事情らしい。

ドレスデン爆撃は市の85%を破壊し尽くし、
一般市民が大半である13万人の死者を出したと言われる。
作中では「広島をうわまわる規模」と表現されていて、
まあ、それに対して言いたいことはあるけれど、
とにかく大規模な被害を出した酷い爆撃だったわけです。

ヴォネガットはその体験について「書く」とずっと言っていたものの、
なかなか書けなかったという。
冒頭でもそのような経緯に一章を割いていて、
そして突然、主人公の架空の人物ビリー・ピルグリムが出馬する。
え?

という理不尽なストーリーテリング、嫌いじゃないぜ!

ビリーは時空を飛ぶ能力(?)を持った変人。
最初の時間内浮遊が起きた1944年、
ドイツとの戦いに敗れた敗残兵状態を起点にして
時間と空間をあっちこっち行きます。
お話しもあっちこっち飛びます。

ついでにトラルファマドール星人に誘拐されて
トラルファマドール星にも行き、
なんか、いろいろ哲学します。
読者をぶんぶんぶん回します。
おいてかないで〜。
でも楽しい。

あらゆる理不尽と不条理とファンタジーが渾然一体となりつつ、
頻出する表現「そういうものだ」(So it goes.)で
もろもろ納得する。
いや、不思議だけどね。
なんか凄い。

アメリカのセクシー女優モンタナ・ワイルドハックは
架空の人物のようです。
今も子育てしてんのかな?

なるほど!と思える納得の名作。
あと好きなタイプの小説。

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