思惟石

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『古書奇譚』エンタメ・ビブリオミステリ!

2020-07-03 10:40:41 | 日記
『古書奇譚』
チャーリー・ラヴェット
最所篤子 訳

「ビブリオミステリ」というジャンルがあるんですね。
知らなんだ。

『古書の来歴』もそうなのかな?
個人的には「ミステリ」ではないな、と思いましたが。
よく見たら「翻訳ミステリー大賞」作品じゃないか。
じゃあミステリーじゃないか。
(ミルクボーイみたいな問答になってきたな)

しかし「ビブリオミステリ」ってなんだろう?
定義が難しくないですか?
代表作は『薔薇の名前』だそうです。
なるほど!
いや、『薔薇の名前』は名作だし、
「ビブリオミステリ」って言われるとそうだなあと思うけど、
『天使と悪魔』と同ジャンルですって言われると
「んなわけないだろ!」とも言いたくなる。
絶対、同じ棚に並べないよね?!持ってないけど!

じゃあ、森見登美彦の『熱帯』は?
架空の本だから違う?
うーん…。

こういうジャンル分けって、難しいですね…。
まあ、読んで楽しければそれで良いんですけどね!

で、『古書奇譚』
「ビブリオミステリ」では飽き足らず、
「エンタメ・ビブリオミステリ」と紹介されています。
要素を増やさないで!と思いましたが、
読後の感想としては、ドンピシャその通りかと思いました。

稀覯本が持つ背景や歴史の知識的ワクワクに加えて、
小説としてのエンタメ的ワクワクがちゃんとある小説です。
うん、おもしろかった!!

『古書の来歴』と比較すると、
「小説」としてよくできてるな、という感想になります。
登場人物も、物語の展開も、すごく良いです。

特に、主人公のピーター。
気弱で最愛の妻に先立たれたばかりの本の虫。
ちょっとばかり逆境の生い立ちだけれど、
良い出会いと、良い学びのおかげで
少々の問題を抱えつつ良い大人になれたのは、言祝ぎたい。
いい感じである。

で、さらにお得なビブリオ要素!
物語に加えて、史実がおもしろいですよ!
シェイクスピアの「オックスフォード派」説とか、
グリーン「パンドスト」から「冬物語」ができたとか、
ジョン・ウォーバートンが貴重な戯曲のオリジナルを
台所の棚なんぞに隠した故に失われたとか。
散りばめられたファクトがとてもおもしろい!

「エンタメ・ビブリオミステリ」だな!
コメント
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