Sightsong

自縄自縛日記

ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス

2017-10-22 10:04:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

疲れているし休んでいようかと思ったが新宿駅前で雨に濡れた挙句、スルーできず、渋谷の公園通りクラシックスに足を運んだ(2017/10/21)。

Roger Turner (ds)
Junji Hirose 広瀬淳二 (ts)
Kazuhisa Uchihashi 内橋和久 (g, dax)

最初はロジャー・ターナー、内橋和久ともに単体の火花を試行的に点火し、広瀬淳二も抑制的なテナーを吹き始めた。しかし驚いたことに、ロジャーさんはすぐに「フリージャズ」と呼んでもよさそうな感覚のパワー&スピードにギアを変えた。前日のエアジンにおいて細い糸の上を歩いていくようなセンシティヴなプレイを展開したこととはまったく違っていた。

広瀬・内橋両氏のシンクロする揺れ動きも含め、しばらくはハードなプレイをしていたのだが、いきなり見事な転換。広瀬さんがサックス横の発泡スチロールを擦り、内橋さんはダクソフォン、ロジャーさんも擦る。さてどれが誰の声なのか、彼岸に連れてゆかれるようである。内橋さんからエマージェンシー的な音が発せられ、ロジャーさんが応えたりもする。

時間の操作はまるで異なっており、内橋さんの大きな揺らぎに対し広瀬ロジャー両氏の速度が共存し、そのありえなさにしばし呆然とする。また内橋さんのギターはときにブルースやロックでもあり、確信犯的なおそろしいミクスチャーを平然とみせつける。ロジャーさんが開陳する、シンバルの音のなかのまた別の音も素晴らしい。

しばし駆け抜けたあとに奇妙な静寂が創出され、ロジャーさんは<先端>(シーンの、ではなく、音そのもの)のサウンドを構築し、広瀬さんが金属でサックスの金属を擦り呼応する。サインホの声を思わせるダクソフォン、それをテナーが擬態する。逆にテナーによる狂った馬のいななきがドラムスとダクソフォンに飛び移ってゆく。最後に、ロジャーさんが鐘の音で実に鮮やかに演奏を完結させた。

セカンドセットはダクソフォンの甲高いうめきにより創られた感染病が、テナーのうめき、フォークによるシンバルの擦りへと移ってゆく。ダクソフォンとテナーとによる、くぐもって話すような音色は見事である。内橋さんはまた、ダクソフォンをベース的にも使う。ギターの大きな揺らぎ、テナーによる息の増幅、宇宙語の会話か。

ようやくサウンドがまとまった形になってきたかと思いきや、また、別々の文脈が同居するフラグメンテーションの面白さが目立ってきた。内橋さんはギターを叩き増幅させ、ロジャーさんはスピードにのって音域をどんどん拡張してゆく。

幾度もの音風景の過激な転換。分厚いギター、超速のシンバル。ロジャーさんが金属板を弓で擦る音は、広瀬さんの連続音、内橋さんの同一のコード連続へと感染する。この感染や移行の、追従との大きな違い。

そして力強いギター、発泡スチロールの擦音、騒乱、シンバルやマレットを使った残響、不穏なダクソフォンなどが提示され、またしても見事に演奏が着地した。

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)

●内橋和久
U9(高橋悠治+内橋和久)@新宿ピットイン(2017年)

●広瀬淳二
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
広瀬淳二『SSI-5』(2014年)
広瀬淳二+大沼志朗@七針(2012年)
広瀬淳二『the elements』(2009-10年)


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