Sightsong

自縄自縛日記

ハインツ・ガイザー・アンサンブル5@渋谷公園通りクラシックス

2019-10-19 09:53:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷の公園通りクラシックス(2019/10/18)。アンサンブル5の日本ツアー最終日にやっと来ることができた。

Heinz Geisser (perc)
Fridolin Blumer (b)
Reto Staub (p)
Robert Morgenthaler (tb)
Guest:
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)

全員が静かに音楽に入る。ドラムスは擦りからブラシへ、ヴァイオリンは軋みから共鳴へ。いったんその静かな導入世界は閉じて、全員が音の重力に身をまかせはじめた。ピアノは和音を目立たせ、ベースもトロンボーンもドラムスもそのパルスが重い。ピアノの内部奏法とヴァイオリンの指による弾きが不穏に重なる。また潮目が変わった。ピアノは旋律を意識し、ドラムスのマレットと別の音風景を創出する。

2曲目。ヴァイオリンも、手によるドラミングも、みんな跳ねる。ベースの音が臓腑に響くようである。ピアノトリオでスピードに乗ったと思ったら、ふと世界がミクロの領域に入った。各々の音が水たまりのプランクトンを凝視しているような按配である。ヴァイオリンによる糸は最初から最後までつらなってゆく糸であり続けた。ハインツの椅子の軋みが演奏終了の音になった。

セカンドセット。ヴァイオリンを合図のように各人がマイペースでそろそろと動く。ふと間があって再スタートの瞬間もある。ヴァイオリンの音は弦と指とを駆使して実に複雑に縒れ、回転してさまざまな貌をみせながら進む。ドラムスティックとヴァイオリンの指による撥音の重ね合わせが愉しい。

サウンドが盛り上がったあとに葬送のように静かになり、ドラムスとピアノとが硬い石のような音を立て、互いに呼応する。マレットの音が中心になってもヴァイオリンの音色の糸は途切れない。トロンボーンが主役になると、ピアノとドラムスとが高い音でバッキングする。ヴァイオリンとトロンボーンとの対話もある。ベースがピチカートで歌うと、マラカス、煌くようなピアノ、ヴァイオリンが周囲を踊る。こうした音のコントラストに耳が悦んでしまう。次第にヴァイオリンの糸が太くなってきた。

2曲目。弓によるシンバルの擦り、ピアノの内部奏法、ノイズを入れるベース、それらの重なりが廃墟を吹き抜ける風を思わせる。そして全員がそれぞれのやり方で、延々と途切れない糸になった。

ピアノの音はときに宝石のようで、またベースの弓弾きとトロンボーンの音がシンクロしてわからなくなったりして、そしてここにきてヴァイオリンの音が人の声のようになった。ヴァイオリンは流れ星を創り出し、ここにピアノが入ってクラシックスの空に星々を散らした。夜の世界、ハインツの椅子の軋み。

このグループは静かなのにコントラストが豊かで、さまざまな組み合わせの貌をみせてくれて、気がつくとサウンドの潮目が変わっているという面白さがあった。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ハインツ・ガイザー
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス
(2017年)

●喜多直毅
喜多直毅+西嶋徹『L’Esprit de l’Enka』(JazzTokyo)(-2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
喜多直毅+元井美智子+フローリアン・ヴァルター@松本弦楽器(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
熊谷博子『作兵衛さんと日本を掘る』(2018年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ファドも計画@in F(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年) 


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