クリス・ヴィーゼンダンガー氏は『acoustic solo piano works』と題したピアノソロ集を2枚出している。1枚目が2011年、2枚目が2017年の録音。
Chris Wiesendanger (p)
聴く者もまるで静かな空間に投げ入れられたかのようなピアノである。それは思索をつねに伴っており、音と音の間の時間と空間とが表現の中心として提示されているからに他ならない。静けさの中での響きを示されるたびに、ああもとの音は何だったろうという内省に誘い込まれる。
2枚目は特にそのような音楽のあり方が押し進められている。つまりクリスさんは確信犯である。ひとつの和音を鳴らしては、その響きのあり方を微細に変える3曲目、単音を執拗に、しかし平然とゆったり鳴らし続ける6曲目。絶えず音楽の起点を意識させられるようである。
●クリス・ヴィーゼンダンガー
クリス・ヴィーゼンダンガー+かみむら泰一+落合康介+則武諒@中野Sweet Rain(2019年)
クリス・ヴィーゼンダンガー+クリスチャン・ヴェーバー+ディーター・ウルリッヒ『We Concentrate.』(2004年)