Sightsong

自縄自縛日記

メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』

2016-11-19 07:20:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(Firehouse 12 Records、2015年)を聴く。

Mary Halvorson (g)
Susan Alcorn (pedal steel g)
Jonathan Finlayson (tp)
Jon Irabagon (as)
Ingrid Laubrock (ts)
Jacob Garchik (tb)
John Hébert (b)
Ches Smith (ds)

これまでのメアリー・ハルヴァーソンの作品は、そのひとつひとつが、想像を超える変態的・無重力的なサウンドによってこちらを驚かせてくれた。この作品はどうかといえば、さほどでもない。こちらがメアリーに馴れたというよりも(それはしばらく無い)、多くのメンバーの個性を生かした和やかなアンサンブルが指向されているからではないかと思うがどうか。

アンサンブルも何癖もある。冒頭曲「Spirit Splitter」において、マイルドに積み上げられたはずのサウンドが抽象的な構成にシフトしていき、いきなり分断されつなぎ合わされたりして、ちょっと嬉しい。

ジョナサン・フィンレイソンのトランペットはやはりこのサウンドに大きく貢献している。丹念に構築していき、実のところ宇宙を自在に浮遊しているという感覚。マジメな秀才なのに実はシニカルに物事を見通しているという感覚。

期待したジョン・イラバゴンはM-BASEの化身になっているようで、この人の個性は何なのだろうと考えてしまう。一方、イングリッド・ラウブロックの深みのあるテナーはいつも通り素晴らしい。中音域で外側にはみ出る音のジョン・エイベアのベースもいい。そして、スーザン・アルコーンのペダル・スティール・ギターとメアリー・ハルヴァーソンのギターの重なりとずれがまた快感。そうか、エラソーに「さほどでもない」と言いつつ、十分に驚き愉しんでいる。

アルコーンとハルヴァーソンとは、ネイト・ウーリーのグループでも組んで面白いサウンドを創りだしているようで(「JazzTokyo」連載第17回 ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報)、形になったらこれと聴き比べてみるのが愉しみなのだ。

●メアリー・ハルヴァーソン
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
『Illegal Crowns』(2014年)
トマ・フジワラ+ベン・ゴールドバーグ+メアリー・ハルヴァーソン『The Out Louds』(20ウ14年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)


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