うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

山流し、さればこそ

2014年03月04日 | 諸田玲子
 2004年12月発行

 同僚の奸計により、左遷され、出世の道が鎖された矢木沢数馬が、無念と逆境の中で真実の人生を噛み締める。

第一章 山間(やまあい)の地へ
第二章 風変わりな隣人
第三章 新参いじめ
第四章 壁の耳
第五章 不意打ち
第六章 化物騒ぎ
第七章 八方ふさがり
第八章 鬼退治
第九章 甲府学問所
第十章 冬ざれの果て
終 章 天保(てんぽう)六年早春 長編

 寛永年間。小普請組世話役として出世の道を歩み始めた矢木沢数馬は、同僚の讒言により、役目を解かれ、「山流し」と忌避される、甲府勝手小普請を命じられる。
 初めての目にする甲府の地は、商いで繁栄する城下とは裏腹に、無気力な勝手小普請、事なかれ主義の上役や、乱暴狼籍を働く勤番衆。荒んだ武士たちの姿があった。
 着任早速数馬は、勤番衆による「新参いじめ」に遭うが、謎の女・都万に助け舟を出される。都万の存在が気になりながらも、城下を騒がす、妖の面を付けた盗賊や、辻斬りの事件解決へと、同輩の富田富五郎(無陵先生)、末高友之助らと立ち向かう。
 そして、次第に明らかになる無陵と都万、蕗との過去。
 やがて数馬は、出世や家名に振り回されてきた己の生き様を振り返り、甲府に残る決意をする。

 左遷の場面から物語はスタートし、同輩たちの讒言に憤り、未来に失望する主人公。
 どのような内容に仕上がっているのか、読み初めの題材は暗いのだが、内容は、「青雲上がれ」のような軽いタッチと面白さで、あっという間に読破。
 そして、結末もこれまた爽やか。
 脇役の設定も丁寧であり、どうして「山流し」の憂き目に遭ったのか、甲府でどのようにしているのかから、その人間性も伺える。
 「終章 天保六年早春」では、その後が描かれていることから、シリーズではない模様。

主要登場人物
 矢木沢数馬...甲府勝手小普請、元幕府・小普請組世話役
 矢木沢多紀...数馬の妻
 矢木沢文太郎...数馬の嫡男
 喜八...矢木沢家の下男
 富田富五郎(無陵先生)...甲府勝手小普請
 末高友之助...甲府勝手小普請
 都万...生糸買付問屋荒川屋の後添え
 蕗...柳町の旅籠の娘、無陵先生の手伝
 松田嘉次郎...甲府勤番





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