2014年2月発行
酒浸りで奇人の父親を持った事から悩みが絶えず、自らの婚期も逃しつつあり、焦りながらも玉の輿を夢見る十返舎一九の娘・舞と、葛飾北斎の娘・お栄らによる痛快人情コメディ。「きりきり舞い」の続編。
相も変わらず
祝言コワイ
身から出たサビ
蓼食う虫も
人は見かけに
喧嘩するほど
人には添うてみよ 計7編の短編連作
相も変わらず
勘弥の代稽古をつける舞の元に、「泥棒が入った」とお栄が息を切らせてやって来た。だが、盗まれたのはお栄の枕絵のみ。鳶堂の鵜右衛門が、一九の戯作には目もくれずに銭になる枕絵を持ち帰ったのだった。
お栄は、一九を慮って取り戻した枕絵を川に捨てる。
祝言コワイ
老舗の呉服屋・八幡屋へ嫁ぐことになった勘弥の祝言に、弟子の舞はもちろん、身内に箔をつけるために、一九とお栄にも列席を求められた。奇人である一九とお栄が場をぶち壊しにするのではないかと舞は気が気ではないのだが、当日、勘弥の昔の情夫・安二郎が殴り込みにやって来て…。
一九、尚武、お栄の奇人を生かした(?)機転が、婚礼の場を救ったばかりか、花を添える。
身から出たサビ
舞の家の井戸に幽霊が出るとの目撃が後を絶たず、気味の悪い舞は、絵の題材にしろと、お栄をけしかけて寝ずの番をさせる企みが、なぜか自分が番をする羽目になる。
どうやら子どもの仕業と分かるが、なんと、一九が記憶にも留めていなかった、品川宿の旅籠で働いていた女との間に出来た子の一九に復讐のための所行を分かる。
既に母親は鬼籍に入り、行く宛のない丈吉だが、後添えのえつの気持ちを思んばかり、尚武が己の子であると告げ、養育することになる。
蓼食う虫も
売り出し中の女形・外村呑十郎が、初めての立約に挑むとあり、お栄が役者絵を頼まれた。
その出会いにり、呑十郎はお栄に惚れてしまったようで、稽古にも身が入らずに、恋いこがれていると聞き、舞は、お栄を着飾らせて呑十郎の舞台を観に連れ出すのだが、そこで素っ気ない呑十郎とその横に居る女房を目の当たりにしてしまう。
呑十郎の悪い癖で、舞台の初日が開けるまで、不安な気持ちを紛らわす為に、女に現を抜かすのだそうだ。それも見目の悪い女が好みだと言う。
すっかり気持ちを弄ばれたお栄は、舞とえつと共に酔って鬱憤を晴らすのだった。
人は見かけに
弥次郎兵衛と名乗る男が、一九の弟子入り志願でやって来た。「東海道中膝栗毛」の弥次さんと同名なのが気に入り、一九は即座に弟子に取る。
そんな折り、このところ無心に描いているお栄の亀が何者かに盗まれ、同時に長屋に越して来たばかりの浪人に、おいとが人質に捕られる。
この浪人と弥次郎兵衛は一九の隠し財産を狙った泥棒であり、お栄の亀に入った木箱を金子と勘違いして盗み出したが、それと違うと分かるとおいとを盾に立て籠ったのだった。
喧嘩するほど
おいとの命を救ってから、尚武とおいとが急接近。少しばかり胸のざわめきを感じる舞に、与五郎兵衛から嫁にしたいと打ち明けられる。武士の妻になることが夢だった舞は、有頂天になるが…。
どうも話の辻褄が合わずにいると、与五郎兵衛は藩命で、北斎に屏風絵を書いて欲しいので、お栄から北斎を口説いて欲しいといった依頼だった。
とんだ勘違いだった舞は、踊りの師匠として生きようと誓う。
人には添うてみよ
今度は本当に与五郎兵衛からの嫁入り話が決まった舞い。
一方、悪名高き、阿久里屋尽右衛門の座敷の呼び出された一九と尚武。舞の懸念が当たり、荒れた座で一九を庇った尚武が大怪我を負った。
慌てて駆け付け、懸命に看病する舞は、自分の尚武への思いを今更ながら知るのだが、片腕が使えなくなった尚武は在郷に戻ると言い出すのだった。
それを、家計は踊りの師匠をして自分が支えると、言い切った舞。
どうやら「きりきり舞」は、未だ未だ続きそうだ。
第一作よりも更に面白みを増した続編。中でも葛飾北斎の娘・お栄が良い味を出している。浮世離れしながらも、鋭い洞察力とここ一番の判断力。そして、実は情もある。
主役を喰った名傍役といったところだろう。作者がお栄のキャラを愛している様子が伺える。
また、全てのキャラ設定が生き生きとしていて、読み易く、面白いシリーズである。
主要登場人物
舞...十返舎一九の娘
十返舎一九(駿河屋藤兵衛、与七、幾五郎、重田貞一)...戯作者
えつ...一九の4番目の女房
お栄(葛飾応為)...葛飾北斎の娘、浮世絵師
葛飾北斎...浮世絵師
今井尚武...一九の弟子・居候、駿府の浪人、旗本小田切家元家臣
森屋治兵衛...地本問屋錦森堂の主
勘弥...藤間流の踊りの師匠
間与五郎兵衛...延岡藩内藤家の江戸勤番侍
丈吉...一九の隠し子、尚武の子として認知
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酒浸りで奇人の父親を持った事から悩みが絶えず、自らの婚期も逃しつつあり、焦りながらも玉の輿を夢見る十返舎一九の娘・舞と、葛飾北斎の娘・お栄らによる痛快人情コメディ。「きりきり舞い」の続編。
相も変わらず
祝言コワイ
身から出たサビ
蓼食う虫も
人は見かけに
喧嘩するほど
人には添うてみよ 計7編の短編連作
相も変わらず
勘弥の代稽古をつける舞の元に、「泥棒が入った」とお栄が息を切らせてやって来た。だが、盗まれたのはお栄の枕絵のみ。鳶堂の鵜右衛門が、一九の戯作には目もくれずに銭になる枕絵を持ち帰ったのだった。
お栄は、一九を慮って取り戻した枕絵を川に捨てる。
祝言コワイ
老舗の呉服屋・八幡屋へ嫁ぐことになった勘弥の祝言に、弟子の舞はもちろん、身内に箔をつけるために、一九とお栄にも列席を求められた。奇人である一九とお栄が場をぶち壊しにするのではないかと舞は気が気ではないのだが、当日、勘弥の昔の情夫・安二郎が殴り込みにやって来て…。
一九、尚武、お栄の奇人を生かした(?)機転が、婚礼の場を救ったばかりか、花を添える。
身から出たサビ
舞の家の井戸に幽霊が出るとの目撃が後を絶たず、気味の悪い舞は、絵の題材にしろと、お栄をけしかけて寝ずの番をさせる企みが、なぜか自分が番をする羽目になる。
どうやら子どもの仕業と分かるが、なんと、一九が記憶にも留めていなかった、品川宿の旅籠で働いていた女との間に出来た子の一九に復讐のための所行を分かる。
既に母親は鬼籍に入り、行く宛のない丈吉だが、後添えのえつの気持ちを思んばかり、尚武が己の子であると告げ、養育することになる。
蓼食う虫も
売り出し中の女形・外村呑十郎が、初めての立約に挑むとあり、お栄が役者絵を頼まれた。
その出会いにり、呑十郎はお栄に惚れてしまったようで、稽古にも身が入らずに、恋いこがれていると聞き、舞は、お栄を着飾らせて呑十郎の舞台を観に連れ出すのだが、そこで素っ気ない呑十郎とその横に居る女房を目の当たりにしてしまう。
呑十郎の悪い癖で、舞台の初日が開けるまで、不安な気持ちを紛らわす為に、女に現を抜かすのだそうだ。それも見目の悪い女が好みだと言う。
すっかり気持ちを弄ばれたお栄は、舞とえつと共に酔って鬱憤を晴らすのだった。
人は見かけに
弥次郎兵衛と名乗る男が、一九の弟子入り志願でやって来た。「東海道中膝栗毛」の弥次さんと同名なのが気に入り、一九は即座に弟子に取る。
そんな折り、このところ無心に描いているお栄の亀が何者かに盗まれ、同時に長屋に越して来たばかりの浪人に、おいとが人質に捕られる。
この浪人と弥次郎兵衛は一九の隠し財産を狙った泥棒であり、お栄の亀に入った木箱を金子と勘違いして盗み出したが、それと違うと分かるとおいとを盾に立て籠ったのだった。
喧嘩するほど
おいとの命を救ってから、尚武とおいとが急接近。少しばかり胸のざわめきを感じる舞に、与五郎兵衛から嫁にしたいと打ち明けられる。武士の妻になることが夢だった舞は、有頂天になるが…。
どうも話の辻褄が合わずにいると、与五郎兵衛は藩命で、北斎に屏風絵を書いて欲しいので、お栄から北斎を口説いて欲しいといった依頼だった。
とんだ勘違いだった舞は、踊りの師匠として生きようと誓う。
人には添うてみよ
今度は本当に与五郎兵衛からの嫁入り話が決まった舞い。
一方、悪名高き、阿久里屋尽右衛門の座敷の呼び出された一九と尚武。舞の懸念が当たり、荒れた座で一九を庇った尚武が大怪我を負った。
慌てて駆け付け、懸命に看病する舞は、自分の尚武への思いを今更ながら知るのだが、片腕が使えなくなった尚武は在郷に戻ると言い出すのだった。
それを、家計は踊りの師匠をして自分が支えると、言い切った舞。
どうやら「きりきり舞」は、未だ未だ続きそうだ。
第一作よりも更に面白みを増した続編。中でも葛飾北斎の娘・お栄が良い味を出している。浮世離れしながらも、鋭い洞察力とここ一番の判断力。そして、実は情もある。
主役を喰った名傍役といったところだろう。作者がお栄のキャラを愛している様子が伺える。
また、全てのキャラ設定が生き生きとしていて、読み易く、面白いシリーズである。
主要登場人物
舞...十返舎一九の娘
十返舎一九(駿河屋藤兵衛、与七、幾五郎、重田貞一)...戯作者
えつ...一九の4番目の女房
お栄(葛飾応為)...葛飾北斎の娘、浮世絵師
葛飾北斎...浮世絵師
今井尚武...一九の弟子・居候、駿府の浪人、旗本小田切家元家臣
森屋治兵衛...地本問屋錦森堂の主
勘弥...藤間流の踊りの師匠
間与五郎兵衛...延岡藩内藤家の江戸勤番侍
丈吉...一九の隠し子、尚武の子として認知
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