山野の林の縁や谷間など、少し暗い場所に生えるタデ科の多年草です。
和名は、細い花穂を上から見ると赤く、下から見ると白いことから紅白の水引きに
喩えたものです。
花弁はなく、萼片は4個あり、卵形で赤く下部は白い色をしています。
花柱は突出して先端は鉤型に曲がっています。
ミズヒキ <タデ科 タデ属>
公園や路傍でよく見かける多肉質の1年草です。
耐乾燥性に優れているうえ繁殖力が強いので、畑の雑草としては少し駆除が厄介な植物ですが、
その一方では湯がいて芥子醤油で食べたり、油炒めしてサラダに添えるなど、身近に採れる
山菜として利用されることがあります。
和名は湯がいて食べると独特のヌメリがあることに由来するらしく、かなり昔から食用に
供されていたようです。
地方によっては独特の呼び名があり、代表的なものではヨッパライグサ(千葉県)、ひょう(山形県)
などがあります。
園芸にくわしい方はお気づきだと思いますが、葉は園芸植物のポーチュラカの葉に極めて近い
形をしています。
これは、ポーチュラカがスベリヒユを原種として改良された園芸品種だからです。
スベリヒユ <スベリヒユ科 スベリヒユ属>
8~9月に白い花を咲かせますが、約3.5㍉位の大きさで、私の視力では肉眼で
形を確認することもできないほどです。
その花とは対照的に目立っているのが、行儀よく並んだ丸くて可愛い果実です。
和名は漢字で「水玉草」で、並んだ丸い果実を水玉に見立てたものですが、
この植物の涼しげで可愛い雰囲気を上手く表現したネーミングと言えます。
同科同属にウシタキソウという形の良く似た植物がありますが、本種のように
茎の節部分が赤味を帯びていないことと、葉が広くハート形をしている点が異なります。
ミズタマソウ <アカバナ科 ミズタマソウ属>

茎の節部分が赤味を帯びるのがミズタマソウの特徴、近似種のウシタキソウは赤味を帯びません

花は珍しい2数性で、萼が2枚、2裂した花弁が2枚、雄蕊が2個、雌蕊が1個となります

主役は花よりむしろ果実、表面の密生する白い毛は鉤型をしています。

今日はお盆の頃に咲くキンポウゲ科の良く似た花を2種類をとりあげました。
センニンソウとボタンズルですが、何れも蔓性植物で、花弁はなく
花弁に見える十字型に配した4枚の白い萼片と長い花糸が特徴のよく似た花です。
これらはあまり似ていませんが、クレマチスやカザグルマなどの近縁種でもあります。
では、この2種類の何処がどう違うのか?以下6枚の写真で夫々の特徴を拾ってみました。
センニンソウ <キンポウゲ科 センニンソウ属>
蔓性ですが、さほど長い蔓をのばさず、樹木に絡まって昇るようなことはありません
萼片はボタンヅルと比べると長く花糸の2倍位の長さで色はほぼ純白です
葉の形は重要な決め手です。センニンソウの小葉は「全縁」といって切れ込みがありません。
ボタンヅル <キンポウゲ科 センニンソウ属>
こちらは蔓を中低木に絡んでかなり上の方まで昇ります。
花はセンニンソウに比べて萼片は短く花糸の長さとほぼ同じです。
そのため花糸の長さがより強調されて見えます。萼片の色は少しクリーム色をしています。
蕾の先端が丸くなっているのも決め手の一つです。
ボタンヅルの小葉には牡丹の葉のような深い切れ込みがあり、決め手はこの葉の形
であると言ってもよいでしょう
木津川の土手でワレモコウの花を見つけました。
これを最初に見るのは毎年、盂蘭盆会の頃なので、私の中では「お盆の花」というイメージがあります。
実際には8月の初旬~10月中旬と、かなり花期は長いそうですが・・・
この花は一つの実のような形をしていますが、花弁のない萼が4枚の小さな花が多数集まって穂状花序を
形成しています。
和名の漢字表記「吾亦紅」の由来はよく分かりませんが、一説によると「われもこうありたい」という
はかない願いをこめて名付けられたとか?
確かに立秋を過ぎた頃、草むらにひっそりと咲いているこの花の姿には、どこか哀愁のようなものが漂います。
10月以降でも咲いているように見えますが、所謂ドライフラワーで、花自体は終わっています。
ワレモコウ <バラ科 ワレモコウ属>
水田の片隅や山野の湿地に小さな集団を作って生える多年草です。
花は7~8月、葉の腋から3~5個が集まって穂状に咲きます。
茎が直立して行儀よく花が咲く所から、お盆に仏壇やお墓に供える花として珍重され、
地方によっては「盆花」とも呼ばれています。
和名の「ミソハギ」は水で身を清める時に使ったところから、禊萩(みそぎはぎ)を縮めた
とする説と、潅漑用の溝に咲く萩のような花なので溝萩(みぞはぎ)が転訛したとする
二つの説があります。
花期は相当長く、8月末位まで見られます。
ミソハギ <ミソハギ科 ミソハギ属> 多年草
主に水田や沼地の岸に生えるマメ科の一年草です。
和名は、葉の形がネムノキに似ていて、ネムノキと同じように夕方になると小葉を閉じて
垂れさがることによります。
7~8月に葉の腋から短い花序をだし、クリーム色の小さな蝶形花を開きます。
節果は線形で3~5㌢ほどです。
クサネム <マメ科 クサネム属> 1年草
クサネムの節果
午後6時頃、葉はネムノキのように、小葉を閉じて垂れ下ります。
日本産の平地で見られるナデシコの代表格とも言えるナデシコで、単に「撫子」と言うと
本種を指します。
また、日本女性を称賛する場合に使われる「大和撫子」も本種のことで、派手な赤色の目立つ
中国原産の「唐撫子」に比べ、本種が繊細で可憐なことに由来します。
関西では7月初旬から咲き始めますが、秋の七草にも数えられるように、花期は長く10月頃まで
見ることができます。
カワラナデシコ <ナデシコ科 ナデシコ属> 多年草
ハゼランは以前から農道近くでよく見かける植物でしたが、中々同定には至りませんでした。
おそらく帰化植物にちがいないだろうと思っていましたが、昨年スベリヒユについて調べていたところ
偶然に同じ科の項目に掲載されているのを見つけました。
スベリヒユ科と言うと、少し馴染みが薄いと思いますが、園芸植物のマツバボタンなどもこの仲間です。
話を戻しますが、このハゼラン、やはり帰化植物で、原産地は熱帯アメリカ、いつの頃か分かりませんが、
栽培用に導入されたものが野生化したそうです。
この葉は少し多肉質で、食用としてはサラダなどに使えますが、導入時の目的が食用なのか、観賞用
なのかは、はっきりしません。
花は強い日差しを避け、午後3時前後に開くことからサンジバナ(三時花)の別名があり、
生えている場所も木の陰などで、ある程度直射日光が制限されたような場所が多いようです。
ハゼラン <スベリヒユ科 ハゼラン属>
山地のやや乾いた林下に生える多年草です。一見マメ科植物を思わす花ですが、ヒメハギ科に属し
花の構造もマメ科の植物とはぜんぜん違います。
先ず、花弁は3個で長さが約2㌢、筒状に合着し、その内、船形をした下の1個は竜骨弁と呼び
先端にヒメハギ科特有の髭状付属体が付いています。
萼片は5個の内、側萼片と呼ばれる2個は花弁と同じ長さで上に跳ね上がり、残りの短い3個は
花弁を外から包んでいます。
このような構造はヒメハギ科に共通するものですが、ヒメハギがほぼ全国的に分布するのに対し
カキノハグサは近畿~東海地方の比較的限られた地域でしか見られず、やや希少な植物です。
近似種にナガバカキノハグサがありますが、これも分布は近畿~東海地方に限定されているようです。
カキノハグサ <ヒメハギ科 ヒメハギ属>
確かアニメ「アルプスの少女ハイジ」にこんな名前のお嬢さんが登場していたように記憶しています。
しかしこの植物の名前とそのお嬢さんとは全く関係ありません。(当然のことですが)
クララという名前には、外来種のような響きがありますが、これはれっきとした在来種、
和名は眩草(くららぐさ)を略したもので、根をかむと目が眩むほど苦いことによります。
根は民間薬として使われ、生薬名を苦参(くじん)と呼び、解熱、解毒、抗菌作用があるので、
消炎剤として用いられますが、かなり苦くて飲みづらいそうです。
このクララは、初夏になると川堤の草むらなどで突如、他の草より抜きんでて姿を現すマメ科の多年草で、
成長すると草丈は1.5㍍~2㍍にも達する大型です。
クララ <マメ科 クララ属>
初夏の頃、河原でよく見かけるイヌコモチナデシコの花です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、秋に芽生え越冬して5~6月に花を咲かせます。
よく似た植物にコモチナデシコがありますが、数の上ではイヌコモチナデシコが
圧倒的に多いので、これも多分そちらの方ではないかと思われます。
図鑑などの解説では、葉の基部が合着した部分がコモチナデシコと比べ長いと記されて
いますが、基準となる長さには言及されていませんでした。
木津川河川敷で、かなり水分条件の悪い砂礫の上にも生えているところを見ると
かなり乾燥には強い性質を持っているようです。
ピンク色の目立つ色をした可愛い花ですが、開花時間が短く、午前中を外すと
綺麗に開花した状態では見られません。
イヌコモチナデシコ <ナデシコ科 イヌコモチナデシコ属>
マンネングサという名前から多年草を連想してしまいそうですが、秋に芽を出して越年し
初夏に花を咲かせて終わる2年草です。
同属のツルマンネングサに比べると花の付き方は疎らで、全体が柔らかく弱弱しい印象です。
花は7~8㍉の黄色い星型で、小さいながらも目立ちますが、結実せず種も作りません。
この役に立たない花に代わって、繁殖を担っているのが、葉腋に付く珠芽(むかご)で、
和名の「子持ち万年草」は、この珠芽をつけることに由来しています。
花壇などに生えたものを取り除く場合、葉は多肉質のため、根は浅くて抜きやすい反面、
この珠芽が落下してすぐに根を出し、新しい個体を形成するので結構やっかいです。
コモチマンネングサ <ベンケイソウ科 キリンソウ属>
「アザミの同定は難しいが、春咲きのアザミはノアザミだけなので、間違えることはない」
花仲間の間でよく聞くセリフですが、これは川の土手などでよく見かける春咲きでアザミによく似た花です。
たしかに本種もアザミ属ではないので、この説は正しいと言えるかも知れません。
古い時代に稲作の伝来と共に大陸から渡来した史前帰化植物と考えられていますが
花の姿がアザミに似ていて、騙されることからキツネの名が冠されています。
ノアザミに見られるような葉の先端の鋭い棘などはなく、若葉は餅に入れて食べるなど、
山菜としてよく利用されます。
キツネアザミ <キク科 キツネアザミ属>
路傍や荒れ地に自生するナデシコ科の帰化植物です。原産地はヨーロッパで、日本への渡来は
19世紀中頃と古いのですが、日本語の名前は付けられていません。
マンテマは渡来持の名前”マンテマン”が訛ったものと言われていますが、よくは分かりません。
花弁の中央が紅紫色のマンテマに比べると目立ちませんが、自生しているのは圧倒的に本種の方が
多いようです。(学名上はシロバナマンテマが母種とされています)
茎の上部から花の萼部分にかけて多数、腺毛があり粘液が分泌されているので指で触れるとかなり
ネバネバしています。
これは比較的水分条件の悪い環境を好んで生えるため、乾燥に耐える特殊な機能を備えているのでは
ないかと思われます。
葉は下部では先端が丸くスプーン形ですが、上部の葉は先端が尖っています。
シロバナマンテマ <ナデシコ科 マンテマ属>