しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

月は無慈悲な夜の女王 ロバート・A・ハインライン著 矢野徹訳 ハヤカワ文庫

2013-10-17 | 海外SF
猫のゆりかご」の後は、またヴォネガットの作品を読もうかとも考えたのですが、今年の読書重点課題「海外SF長編」を優先しガチガチに「SF小説」であろう本書を読み始めました。

‘12年ローカス誌オールタイムベスト12位、’06年SFマガジン26位と巨匠ハインラインの代表作として評価の高い作品です。
1966年発刊、ヒューゴー賞受賞作品。

先月東京駅八重洲地下街の古本屋R.S.Booksで見かけて700円で購入。
(このお店品ぞろえ少ないですが、なかなかいい感じの品ぞろえでした。)

本作の存在は昔から知っていましたがこのように

分厚く、敬遠していました。
ハインラインの後期の作品はどれも量がすごいですよね....。

内容(裏表紙記載)
2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピューター技術者マニーと自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が強大な地球に立ち向かうためには・・・・・・ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨編。

感想、自意識を持ったコンピューターと主人公の連携やら、チームを組んでのミッション達成などはいろいろなSFで使われていて仕掛けとしては陳腐化しているなぁということ。
最近読んだ中では、コンピューターとの関連では「死者の代弁者」、チームを組んでのミッション遂行型ストーリーとしては「プロテウスオペレーション」が浮かびました。
まぁそれだけこの作品が偉大で模倣されているということでしょうが...現代では魅力がスポイルされているのは否めません。

その他、かなり長い割に伏線を使いきれていない感じがしました。
例えば登場人物では、「ヘイゼル」など「夏への扉」のリッキーばりの少女キャラで活躍するかと思ったのですが...。
あと不良少年「スリム」も意味ありげに登場させてますがどうも使いきれていなかった気がします。
(二人はラストで月的に結ばれている感じですので、本当はロマンスを書きたかったのかもしれませんね...)
他にも同様に伏線を回収しきれていない部分があるように感じました。

あとは...「いかにもアメリカ!」という感じの「自己責任」思想と、ハリウッド映画ばりのスペクタルな情景。
わびさびとは無縁な展開でいかにも...アメリカで人気があるのがわかる気がします。

ということであまりいい印象を持てず「読み通すのつらいなぁ」と感じながら読んでいたのですが最後のクライマックスの緊迫感と爽やかで、なんとも情感あふれるラストとでなにやら全て許せる気になってしまいました。
「マイク」に会いたい...。(笑)
まぁさすが巨匠というところでしょうか?

宇宙の戦士」でも感じましたが、ハインラインの作品に出てくる主人公は「のらくろ」型というか「坊ちゃん」型というか、なんだかとても愛嬌があって前向きで憎めない...。
魅力的です。

この作品、ほぼこの主人公のキャラでもっていた気がします。
フレドリック・ブラウンの「宇宙の一匹狼」や「天の光はすべて星」の主人公もこの型だったなぁなどとも思ったりしました。
アメリカ人に愛されるキャラなのかもしれませんね。

まぁいろいろ書きましたが、ちょっと時代を感じますがまぁ面白いお話と思いますし「SF」の歴史を感じるにはいい作品だと思います。
何より勢いのある展開、文章はハインランならではでしょうね。

最後余談ですが、訳者の矢野徹のアイディアなんだとも思いますが、タイトルの「月は無慈悲な夜の女王」絶妙ですね。
原題"The Moon is a Harsh Mistress”、直訳すると「月はいやな女だ」になりそうな気がしますがこれじゃ味わいないですよね(笑)

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