しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

私的日本小説番付

2013-10-09 | 本リスト
前回”goodread”のランキングのことを書きましたが、私的に日本小説の番付など考えてみました。

大して読んでいない、かつ読む本も偏っているのでおこがましいですが...。

そうはいいながらも、こういうのは本能的に楽しかったりしますよねー。(笑)
(野球でオールタイムベストチームを選んだりするような感じ)

          東               西
横綱  「吾輩は猫である」夏目漱石   「ノルウェイの森」村上春樹
大関  「竜馬がゆく」司馬遼太郎    「あかひげ診療譚」山本周五郎
関脇  「ドグラ・マグラ」夢野久作   「マイナス・ゼロ」広瀬正    
前頭1 「坊ちゃん」夏目漱石      「幽霊」北杜夫
前頭2 「こころ」夏目漱石       「円紫師匠と私シリーズ」北村薫

上記10作は、現在のところ私が「すごい」と思った作品です。
「いいなぁ」はいっぱいありますが、「すごい」という作品は意外と少ない,,,。

○横綱
この二作かどうかはともかく、この二人が横綱なのはまぁ意外感のない選択かと思います。
日本文学史上別格な二人なのではないかと思っています。

「吾輩は猫である」
社会人なりたてくらいに読み返し「これはすごい」とうなりました。
登場人物全員が(猫含む)適当なことを話しているんですが、全員なんだか「やるせない」文豪夏目漱石の処女作(1905-1906連載)にして最高傑作だと思います。
100年以上経ってもまったく古びない....。
夏目漱石作品、番付に他2作も入れてしまいましたが、他の作家と比べてかなりレベルが高いと思います。
(あまり読書範囲が広くないだけかもしれませんが....。)
私的には「それから」「門」「明暗」辺りは得意じゃないんですけどね。

「ノルウェイの森」
出てくる人、セリフも印象深く、面白い。
村上春樹氏いわく「リアリズム」の作品だそうで他の実験的な展開の作品に比べて評論家受けは良くないそうですが、私はストレートに好きです。
何回となく読み返していて場面もセリフもかなりの部分頭に入っています。
他の村上春樹作品は読んでいるときは「すごい」と思うのですが、読み終わってからなんだか印象があまり残らない...。
(読み方が悪いのかもしれませんが)

○大関
この二人も否定しきれる人は少ない作家かと思います。
海外ではポピュラーじゃないようですが...。(横綱との違い?)
司馬遼太郎はいまだに大河ドラマの原作などでよく使われますし、山本周五郎も黒沢明の影響もあるんでしょうがいまだに映像化されている。
まさに「国民的作家」ですね、この二人は30年後も問題なく現役で残っていそう、その辺が吉川英治、山手樹一郎との違いでしょうか。
(司馬遼太郎は好みが分かれそうですが...)

「竜馬がゆく」
司馬遼太郎は「坂の上の雲」でもいいのですが...「竜馬がゆく」の方がより「小説」していて面白い。
本作以降は「歴史」していて硬くなりますし、それ以前は不器用なエンターテインメントという感じでゴツゴツした感じがする。
本作が一番バランスが取れていると思います。

「あかひげ診療譚」
「ながい坂」でも「樅の木は残った」でもいいんですが...この作品が一番好きなので。
短編もいいですし非常に安定したレベルの作品を書く人だと思います。
あかひげ先生の妙に近代人的ぼやきが、「出家とその弟子」風の違和感を感じますがそれがまた好き。

○関脇
SF、ファンタジイ系で。
「横綱、大関にはちょっと...」ですがまぁ外せない2だということで。
夢野久作も広瀬正もどちらかというと「異色」「アウトサイダー」な作家に分類されるかと思いますが、なにかで「名著」的特集をやるとこの二作は必ず出てくる気がします。
「ドグラマグラ」はSFでもミステリでもベストランキングに挙げられています...。
日本で同様の評価をされている作品に「虚無への供物」(あと「黒死館殺人事件」を合わせ三大奇書と呼ぶらしい)があるかと思いますが、こちらは中学の時読んだきりで覚えていないので除外しました。

「ドグラマグラ」
一読、頭がグラグラする小説ですね、何とも形容しにくい。
夢野久作は短編もいいものが多いです。
傾向は一緒なのかもしれませんが江戸川乱歩氏より上な気がする。

「マイナス・ゼロ」
最近の日本SFを読んでいないので、もっとすごい作品があるのかもしれませんが80年代前半まで見たところでは、この作品を超える長編SFは出ていない気がする。
「論理」と「情感」の絶妙な結合。
何回読み返したかわかりません。

○前頭
「坊ちゃん」
軽量級ですが...(笑)はまると横綱でも吹っ飛ばしそうな力がある気がする。
絶妙なキャラ設定の主人公となんだかやるせないストーリー...傑作です。

「幽霊」
北杜夫の処女作、なんだかとってもノスタルジックな作品。
「楡家の人々」辺りの方が代表作なんでしょうが....未読です。
「さみしい王様シリーズ」「怪盗ジバコ」などユーモア小説もかなり好きなのですが「すごい」感はないかなぁ。

「こころ」
夏目漱石の後期の作品の中では唯一好きな作品です。
「動機が不自然」などとやり玉に挙げられますが(坂口安吾など)そんなことを言ったら村上春樹などすべて不自然です。
ファンタジイとしても読めるなんだか切なく美しいストーリーだと思います。
この作品が1914年、漱石は1916に亡くなっていますので、小説家としての活動期間は11年しかなかったんですね...意外。

「円紫師匠と私シリーズ」
北村薫氏の処女作ですね。
「陳腐な設定」とも言われているようですが..。
なんだかとてもテンションの高い文章で世界が描かれている気がする...。
なお1冊挙げるなら「夜の蝉」です、初読(二読後も)「すごい....」と感じました。
北村薫だとこのシリーズと「スキップ」が好きですが、「スキップ」は文章のテンションが少し落ちる気がします。

上記の中にはその作家の「処女作」が結構ありますね。
私が熟練よりも「新鮮」さが好きというのがあるかと思いますが、初期の方がいい作家というのは結構いそうな気がします。

村上春樹も「ねじまき鳥クロニカル」以降の作品はあまり得意ではありません。

上記以外で入れようかなぁと思いついたのは下記の作品ですが、どうも「すごい」とまで思えませんでした。(どれも好きなんですけどね)
-順不同?-
村上春樹諸作、「明治・父・アメリカ」「祖父小金井良精の記」星新一、「北斎殺人事件」高橋克彦、「無事の人」山本有三、「出家とその弟子」倉田百三、「青年」森鴎外、「万延元年のフットボール」大江健三郎、「泥流地帯」三浦綾子、「第四間氷期」「人間そっくり」安部公房、「スター・レッド」萩尾望都、「風に桜の舞う道で」竹内真、「淋しい狩人」宮部みゆき、「御用侠」山田風太郎

今は海外SFを中心に読んでいますが、日本の小説も読んでいない本がかなりある感じ...。
家の本棚見ていたら、倉橋由美子など文庫が4冊ありましたが全て未読。
いずれは...。

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7 コメント

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『マイナス・ゼロ』と『円紫師匠と私』 (むしぱん)
2017-09-17 16:37:19
はじめまして。むしぱんと申します。Manukeさんの『航路』へのレビューからこちらにきました。
私が積ん読状態で放置していた本のうち、しろくまさんのレビューを読んで興味を持ち、読んだところ大変面白かったのでコメントさせていただきます。(長文、お許しください)

『マイナス・ゼロ』
『夏への扉』のようなほのぼの的なオチにするのかなと思っていたら、最後は怒涛の収束にまとめあげたところに感動しました。広瀬氏は自分なりの『輪廻の蛇・和風長編版』を目標にされたのかなあと思いました。
途中、村岡花子氏のラジオ放送が出てきて、「『アンのゆりかご』にあったエピソードだ」と、自分も知ってる過去の出来事に会えてなんだか嬉しかったです。
レイ子はなぜ、美子や及川氏のことまで読み切っていたのか?(探偵小説で培われた優秀な頭脳でも、そこまでの名推理は難しいと思うのですが)タイムマシンはいったいどのような時代から? 過去からきちゃった警官はどうするの? などの謎や未解決がありますが、広瀬氏は続編の構想があったのでしょうか…(続編があるとすれば、ケイ子が主人公になりそうです)

『円紫師匠と私シリーズ』
五冊を買い込んでいたのですが、いつか読もうとそのままにしてました。しろくまさんも「『夜の蝉』が一番」と書かれていますが、私も、ほのぼのさと心の闇の部分の書き具合のバランスが一番とれていると思いました。『秋の花』も普通の女子大生が扱うにはちょっと深刻な事件だった気もしますが、大変楽しめました。
最新刊『太宰治の辞書』は未読ですが、もうすぐ文庫化されるようですのでそれを待とうと思います。(時を越えて、「私」に中学生の子供がいる設定とのことで、ちょっと驚きです)

しろくまさんのレビューを読ませていただいたおかげで一部の積ん読を解消でき、楽しい読書を味わうことができました。また、コメントさせていただきたい本がありましたら寄らせて下さい。ありがとうございました。
RE:『マイナス・ゼロ』と『円紫師匠と私』 (しろくま)
2017-09-17 21:30:34
むしぱんさん こんにちは。
また初コメありがとうございます。

「私的小説番付」少しでもむしぱんさんの読書の参考になったのならうれしいです。
また長文コメントもありがとうございます。(うれしいです!)
またコメント是非お寄せください~。

「マイナス・ゼロ」
「輪廻の蛇」は未読なのですが...、「夏への扉」との比較ではストレートに現状を肯定するハインライン=アメリカンテイストと比べると「マイナス・ゼロ」はなにやら割り切れないところ、ウェットなところが日本的という感じもありそうです。
(このコメント書くのに過去の記事読み返しましたがいい加減なこと書いていて赤顔です)

解決されていない課題はありますが、及川老人と小田切美子はそれなりに幸せそうなので一応一件落着な気もしますが....広瀬正氏が処女長編(すごい完成度です!)である本作刊行のわずか2年後に早逝しなければ続編も読めたかも知れないと思うとなにやら残念ですね。

「円紫師匠と私シリーズ」
このシリーズ未読で五冊一気読みできるというのはかなり幸せな読書体験だったのではないでしょうか♪
「鷺と雪」で直木賞を受賞している北村薫氏ですが、処女作からの流れである本作が一番なような...というのは作家に対する褒め言葉としてはいまいちなんでしょうね(笑)
(アシモフへ「夜来たる」を褒めるようなもの?)
「太宰治の辞書」は私も未読で文庫が出たら買おうと思っていたので楽しみです。
北村薫氏ももう67歳ですが「いとま申して」で新境地を拓いていそうな気もするので楽しみです~。
RE:『マイナス・ゼロ』と『円紫師匠と私』 (むしぱん)
2017-09-18 00:27:21
しろくまさん、返信ありがとうございます。

>「輪廻の蛇」は未読なのですが...、

『時の門』より『輪廻の蛇』のアイデアの方が、『マイナス・ゼロ』に近いので、是非々々、お薦めです。

>このシリーズ未読で五冊一気読みできるというのはかなり幸せな読書体験だったのではないでしょうか♪

帰りの電車の中で読む時間が待ち遠しく、早く仕事が終わらないかと(笑)。後半、風邪で体調が悪くなったんですけど、楽しい小説があれば苦ではなく、いつの間にか治ってました。(円紫さんは風邪にも効きます。笑)

>「鷺と雪」で直木賞を受賞している北村薫氏ですが、処女作からの流れである本作が一番なような...というのは作家に対する褒め言葉としてはいまいちなんでしょうね(笑)

どんな作家でも「自分と一番波長が合う旬の時期」というものがあると思うので、そのような感想もOKだと思います。

他の「番付」にもコメントさせていただきます。

司馬遼太郎:『竜馬がゆく』『坂の上の雲』など私も大好きです。他に好きなのは『功名が辻』。奥さんとのやりとりが微笑ましくて、ちょっと珍しい「ほのぼの歴史小説」として肩の力を抜いて読めたところがよかったです。

山本周五郎:『あかひげ』は小説も黒澤映画もよいですよね。「『樅の木は残った』は日本で最高のハードボイルド小説だ」と宣言している作家さんもいました。
「少女倶楽部」に掲載された『美少女一番乗り』(角川文庫)など、周五郎にしては珍しいラノベ風タイトルの初期の時代小説も楽しかったです。(初期のハインラインがジュブナイルを書いていたのとイメージがダブリます)

他の作家では、『坊っちゃん』、『1Q84』、『マンボウ航海記』を読んだ程度ですのでちょっとコメントはできずです。いずれはしろくまさん推薦図書を試していきたいと思います。では…
RE:『マイナス・ゼロ』と『円紫師匠と私』 (しろくま)
2017-09-18 18:07:26
むしぱんさん こんにちは!

「輪廻の蛇」映画化されて新装版で出ているんですよね、ハインライン傑作集は旧版で揃えようと思っているので(「魔法株式会社」と「時の門」は入手済み)。
「輪廻の蛇」も入手するなら旧版ですかねぇ...(変なこだわり)
せっかくお薦めいただいたので近いうち読んでみます。

「円紫師匠と私シリーズ」私は結構オンタイムでシリーズ読み始めたとき「六の宮の姫君」「朝霧」は未完でした。
刊行待ちながらもいいのですが一気読みもいいですよねぇ。

司馬作品は、独特の文章と・史観が合わない人は合わないようですが...。
合う人にはいいですよね♪
山本周五郎は「日本人」がいる限り読み続けられる作家なんではないかと思っています。

まぁ他は気が向いたら読んでみてください~。
Unknown (むしぱん)
2020-06-22 22:42:15
しろくまさん、お元気でしょうか。むしぱんです。
お忙しくてブログ更新が難しいと書かれてましたが、その後は如何でしょうか。

私の方はようやく『太宰治の辞書』を読みました。ちょっと期待からそれてたところと、なるほどと楽しかったところと、いろいろ思った感想でした。しろくまさん、まだお読みでなかったらぜひお読みいただき、感想を教えていただきたいなと思い、久々にコメントさせていただきました。

(まだまだお忙しいようでしたら、無理なさらずで構いませんので・・)
Unknown (しろくま)
2020-06-27 10:23:17
むしぱんさん
こんにちはコメントありがとうございます。
余裕は少し出てますが…書かない間に読んだ本に押しつぶされそうで…(笑)
「太宰治の辞書」どこかで読まなきゃと思っていますが「その時」が来て読みたいなぁと思っています。
予想ではむしぱんさんコメント通り期待通りなところとそうでない部分があるんだろうと思ってます。
北村薫氏は同時代的に読んでいたので自分も氏も歳とともにいろいろ変わっていきますね〜。
先日「リセット」読み直しました。
出たとき読んだら「ピンと」来ませんでしたがおじさんになって読むと胸に沁みました。
ブログはそのうち〜ですかねぇ。
Unknown (むしぱん)
2020-06-30 21:35:11
しろくまさん。お元気そうで何よりです。久しぶりの感想ブログをまたお待ちしてます。

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