しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ハイペリオン上・下 ダン・シモンズ著 酒井 昭伸訳 ハヤカワ文庫

2013-06-05 | 海外SF
久々の更新ですが....。
なんだか読書に疲れてしばらく本を手に取っていなかったのと、本作「ハイペリオン」が大作なためでした。
下記には色々書いていますが、本作は読書の楽しみを感じさせる良作ではありました。

さて本作ローカス誌オールタイムベスト第4位、06SFマガジンでも第8位(二部作・四部作としても評価されている)ととても評価の高い作品ということで手に取りました。
原書の刊行が1989年邦訳版刊行が95年(文庫版が2000年)ですからSFを全く読んでいない時期でしたので今まで存在を知りませんでした。
まったく知らない作家のものを読むというのはなんだか新鮮ですね。
上巻下巻とも大森のブックオフで購入(上巻450円、下巻105円)

裏表紙記載のあらすじと表紙の感じからなんとなくスペースオペラっぽいものを想像していましたが全然ちがいました。
内容(裏表紙記載)

28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した! 時を超越する殺戮者シュライクを封じ込めた謎の遺跡-古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める<時間の墓標>が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く<時間の墓標>の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送り出したが・・・・・・。

迫りくるアウスターの脅威と、殺戮者シュライクの跳梁により惑星ハイペリオンは混乱をきわめていた。連邦政府より密命をうけ、この地に降り立った、神父、軍人ら経歴もさまざまな七人の男女は一路<時間の墓標>をめざす。その旅の途上で明らかにされていく、数奇な宿命を背負う彼らの波瀾にみちた物語とは・・・・・・? あらゆるSFの魅力を結集し卓越したストーリーテリングで描く壮大なる未来叙事詩、ここに開幕!

ネットで「評判高いので読んだがSFあんまり読んだことがないのでつらかった」との評判をちらっと見ましたがたしかに読み出しがつらいかもしれません。
SF的な用語やら概念がなんの説明もなくばんばんでてきます。
慣れていれば目新しいことはないのですが...。

ストーリーは巡礼に向かう男女がそれぞれそこに至るまでの経緯を語る劇中劇と、巡礼模様をつづる文章とで構成されているなかなか凝ったつくりです。
それぞれホラーありファンタジーあり、親子の情愛で泣かせあり、恋愛ありとなっています。

読んでみての全体的な印象として、確かに「名作だなぁ」と思いました。
引き込まれますし、面白い!
(若干とっつきづらいかもしれませんが)
ただ、なんだか過去の作家やら作品のエッセンスをうまく集めて料理しただけというようなうさんくさいような釈然としないものも感じました。
(例えば司祭の物語は「闇の左手」風、舞台はニューギニア風ですが)
アシモフやらなにやらから見れば第三世代の作家という感じで新奇なアイディアやら構図を売りにしていた「SF」がその道具立てを使って「ストーリー」「中身」で勝負しようという時代になっているということかもしれません。
解説にも書かれていましたが、「圧倒的な筆力」「巧みなストーリーテーリング」が本質なんだと思いますが...オリジナリティのない作品という言い方もできるかもしれません。
まだ出てから新しいので評価が高いですが、50年・60年耐えられる作品であるかはわからないかもしれません。

出来としては前半の
司祭の物語、兵士の物語、詩人の物語、学者の物語まで「すごい!どうなってしまうんだろう」という感じで「これはものすごい作品かもしれない」と思いましたが、終盤の二つの物語は全体を収束に向かわせる位置づけということもあるためか今一つと感じました。
前4つの物語だけ他全部を「謎」にしてしまって終わっていれば不朽の名作になったような気がします。(私見ですが)

後の2つの物語で、ハイペリオンを巡る謎の正体的なもの背景的なものが徐々に見えてきます。
これが「俗」というか、なんだかわかりやすい構図でどうも興ざめな気がしました。
「ハイペリオン」全部読んでみての感想は....まぁ普通の名作かなぁ。
でもこの「ハイペリオン」では巡礼も謎も完結されていません。
続編「ハイペリオンの没落」を読んでみないと全体の評価はできないかもしれませんね。(入手済み)
「ハイペリオンの没落」を読んだら4部作全部読まなきゃになるかもしれませんが....。

よろしければクリック下さい↓
にほんブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿