しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ゼノサイド上・下 オースン・スコット・カード 田中一江訳 ハヤカワ文庫

2013-08-01 | 海外SF
エンダーシリーズ第三作、'12年ローカス誌オールタイムベスト100位

「死者の代弁者」が面白かったので入手しました。
上巻はアマゾンの中古で91円+送料250円で下巻は川崎のブックオフで105円で入手。

内容(裏表紙記載)
上:
エンダー・ウィッギンが死者の代弁者として植民惑星のルジタニアにやってきてから、三十年が過ぎた。原住種族ピギーに殺された異類学者のために代弁をしたあと、エンダーは現地の女性と結婚し、そのままルジタニアにとどまっていたのだ。だが、人類に致命的な病気をもたらすデスコラーダ・ウィルスの蔓延を恐れるスターウェイズ議会が、ウィルスを惑星ごと殲滅しようと粛清艦隊を派遣。その到着が目前に迫っていた・・・・・・!

下:
ルジタニア粛清艦隊はどこに消えたのか? 中国系の植民星パスで神の声を聞く者として人々の尊敬を集めているハン・フェイツーはひとり娘ハン・チンジャオに専門家でさえ解明できない謎を解くように命じた。だが、それは親子の運命を変える恐るべき難問だった・・・・・・ヒューゴー賞とネピュラ賞を2年連続受賞した傑作「エンダーのゲーム」「死者の代弁者」のカードが、壮大なスケールと前代未聞のアイディアで描く長編SF!

「死者の代弁者」がかなり良かったので期待と、一方で「あそこまでは良くないろう」という不安もありながら読み始めました。
最初1/4くらいまで東洋風(中国風??)の宗教的描写にすごい違和感を感じて引き気味でしたが...。
慣れてきたらその辺も気にならなくなりかなり面白く読めました。
前作同様「神」やら「神々」の話が頻繁に出てくるのでその辺が気になる人は厳しい作品かもしれません。
ネット上の評価も割れているようですね。

所詮小説、それもSFですので登場人物の宗教観や倫理観もフィクションの道具立てと割り切って読めば気にならないと思うのですが、ここまで「神」「神」いわれると気になるでしょうね。

「死者の代弁者」と比較すると、ルジタニアとパスの2つの惑星にまたがる話となっており、エンダーも妻を持ち、義理の子供たちも大人になってそれぞれの意志で動き出しているためかなり関係性がか複雑になっています。

この複雑な関係性をうまくさばいていて、デスコラーダウィルスを巡る謎解きを軸にスリリングに展開していきます。
最後あたりはちょっとずるいかなぁとも思いますが「うまい」とうならされるました。

作者の力量充実ぶりが感じられ小説としてのうまさでは確実に前作より上ですね。
ただ私は「死者の代弁者」の方が未熟ではあっても「力」と「勢い」を感じる分好きかなぁ。

でもこれはこれでかなり楽しめる作品だと思います。

その他感じたこと。
スーパースターであるエンダーの妻や子供たちの家族関に縛られる姿。
なんだか妻子持ちサラリーマン的悲哀(?)を感じました。
「あなた仕事と家族どっちが大事なの?」という状況ですね。
妻子持ちサラリーマンにとって永遠のテーマかもしれません。

エンダーの場合、仕事=人類運命と多くの人命、と二つ(ともう1種の生命体)の種族の絶滅だったりするんですが、妻のノヴィーニャは容赦ありません。
「いいひと」エンダーはどちらも満足させ、ルジタニアの人々やら窩巣女王・ぺケニーノ・ジェインの期待も全部聞いてなんとかうまく納めようと努力します。
ピーターのように人に嫌われようが、多少犠牲が出ようが構わずやってしまうというメンタルはエンダーにはない。
軍隊で使われる兵隊としては最高のメンタルです、なんだか身につまされる。

そういう見方でみれば、「エンダーのゲーム」は優秀な若手独身サラリーマンがおだてられて働かせる話、「死者の代弁者」はフリーのコンサルタントが依頼主に肩入れしすぎて巻き込まれている話とも見えそうですね。
「死者の代弁者」のエンダーは比較的フリーな立場だったので読んでいて爽快感があるのかもしれません。

あと惑星パスでの神の子の苦行ですが、東洋宗教思想には「現罪」の観念はないような気がする。
小乗的概念では自分の解脱のために「苦行」をするような気がしますし、大乗的概念では日常のことをきちんと行うことが「行」という感じじゃないでしょうか?
宗教知識はあまりないので漠然とした感じですが、その辺に違和感を感じたような気がする。

ここまで来たらエンダーシリーズ正編完結編「エンダーの子どもたち」は読まないとなぁという気になっています。

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