しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

こちらニッポン… 小松左京著 ハルキ文庫

2018-04-22 | 日本SF
2018年初めて読む本が本書となりました。

これでいいのか...ともちらっ思ったのですが、まぁなんとなく...。
最近微妙に小松左京批判していた感じなので、とりあえず作品読んでみようというところでのチョイスです。

本作が小松左京の代表作とも思いませんが....2-3年前たまたまブックオフで見かけ購入していたものが本棚にあったので手に取りました。

小松左京作品、けっこうハルキ文庫で復刊されているのですが、本作は現在のところ絶版のようです。
本作「朝日新聞」夕刊に 1976年4月19日 - 1977年1月22日連載され、1977年に発刊されたもの。

なおこのハルキ文庫版では解説が瀬名秀明氏でこれが結構楽しめます。
私同様小松左京に微妙に批判的なところがツボにはまりました。

抜粋しますと
「素人ならではのわかりやすさ」「ラストの唐突なオチも一般性を維持するための配慮」「もともと小松は謎の収拾よりもそこから発生する行動のほうに興味を向ける作家だが、後年のSF作品ではそのバランスの悪さが表面に浮かび上がりがち-略」
同感です(笑)

瀬名氏は上記文章のあとまだ存命の小松左京へ「まだまだこんなものじゃないでしょう、作品書いてね」というようなことを書いていますが...小松左京あまりゆかいじゃなかったんじゃないですかねぇ....、

内容紹介(裏表紙記載)
“異変”は突然の出来事だった。新聞記者・福井浩介はある朝、普段とはまったく違う光景を目にする―いや、「世界」はそのままなのだが、そこからは「人間」の姿が一切消えてしまっていたのだ!福井の他にも何人かの“消え残り”が確認され、この異様な事態の究明に乗り出すのだが…。人類消失という極限の状況下、人はいかに行動し、文明はいかに機能するのかを描く異色SF長篇。


本作、まったく未読のつもりで途中まで読んでいたのですが、途中新興宗教の教祖的女性が「三種の神器」云々といっているところに見覚えがあったので、小学生頃図書館で借りるかするかで少なくともこの辺までは読んだんだと思います。
記憶ってあいまいですね...。

作品の感想ですが。

シミュレーション小説としてはよくできているとは思いますした。
突然「日本及び世界中から相当数の人間が消えたらどうなるか?」という設定は魅力的ではあります。
著者の電力やら各種インフラへの様々かつ該博な知識に裏付けされた作中のいろいろ事件楽しくは読めましたが...なにかこう小説的な意味で「軽い」感じはしました。

いわゆる「SF小説」ではなく、堺屋太一が書くようなシミュレーション小説という感じで文学的な「葛藤」がないというか...。

前述の通り電力機構やら地震やらなにやらの豊富な知識は盛り込まれているので新聞小説としてそういった情報を得て、仮説としてドラマを置いてみて「考える」というのにはとてもよい作品なんだと思うのですが、「文学」はある程度まで「人間」を通常では思いもよらない形で切り取りなにかしら人間及び人間となにかとの間の意外性を発露させる部分があって欲しい気がします。
(うまく言えていませんが....)

多くの人が分業で動かさないと回らない近代社会と個人、皇居に忍び込んで三種の神器を持ち去り日本をまとめようとする団体との葛藤など掘り下げればドラマが生まれそうなテーマも書かれていますがさわりだけ書いているだけで深く書き込んでいません。

この辺の堪え性のなさがいかにも小松左京の長編小説という感じですね...。
(また批判してしまった)

ネット上でもあまり評判のよくない強引なラスト、これまで書いてきた事象の起きた原因をこれで説明するのはちょっと反則なんじゃないでしょうか.....。
なんちゃってメタフィクションじゃねぇ...正直ずっこけました。

これだったら事象の起きた謎は謎のままにして残された人間たちが「新文明を築いていくんだ!」というラストの方がよほどよかったような...。

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