しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

妄想銀行 星新一著 新潮文庫

2018-01-13 | 日本SF
星新一1001話をつくった人」を読んで無性に星新一のショート・ショートを読みたくなり手に取りました。
実家に行けば当時集めていたショート・ショート集すべてあるはずですが....。
今の手持ちは数冊しかないのでそのなかの一冊です。

本作品集の発刊は1967年6月ですから、ちょうど覆面座談会事件で「進化した星新一」と評されていたあたりでしょうか。
なお1968年に本作は星新一唯一の作品に対する賞、第21回日本推理作家協会賞を受賞しています。

当時のSF作家としては別格の星新一ですから本書も早川でなく新潮社から出版です。

今回読んだ文庫版の奥付を見ると1978年(昭和53年)3月初版です。

古本で買った感じがないので....当時小学校2、3年生の私が買ったのだろうか?
星新一作品を読み始めたのはもう少し後からのような気がしていたので....謎です。

初めて星新一作品を読んだのははっきりしていて当時毎日のように図書館に入り浸っていた私に図書館のお姉さんから「きまぐれロボット」を進められて読んでからです。
(初めて読んだ文庫本であった)
この図書館に入り浸ったのが小学3年以降だったような気がするので....「うーん」です。

内容紹介(裏表紙記載)
人間のさまざまな妄想を取り及う工フ博上の妄想銀行は連日大繁盛。しかし博士が、彼に思いを寄せる女から吸いとった妄想を自分の愛する女性に利用しようとしたのが誤ちのもとだった---奇想天外なユーモアのあふれるる表題作。ほかに、道で拾った凰変りな鍵に合う鍵穴を探すことに情然を傾ける男の物語「鍵」、人生修業に出て説教癖のついたロボツトの話「人間的」、などS·S32編。


本稿書くのにあらためて自分の「きまぐれロボット」の感想読み返しましたが、その時と感想的には重なります。
「ものすごくいい」とまでは思わない+当たり外れ大きいというところです。(笑)

あと今回気づいたところは冒頭部分の「雑」さというか端折り方。
小説の冒頭部分って結構大事かと思うのですが....。

名作とされる「鍵」の冒頭部分
”その男の人生はとくに恵まれたものとは呼べなかった。いままでずっとそうだったし、現在もまたそうだった。といって、食うや食わずというほど哀れでもなかった。”
「古風な愛」冒頭
”昭子は美しく若い女だった。若いといっても初夏の樹のようにはつらつとした感じではなかった。月の光で虹ができるものなら、それに似ているといえよう。どことなく上品で、そして清らかだった。”
「小さな世界」冒頭
”時。二十年後のある日。
場所。大実業家であり大金持ちであるアール氏の事務室。”

すべてがすべてこの調子ではないのですが....。
こんな説明口調でなく作品でそれとなくわからせるのが「日本文学」の機微な気がするのですが....。
そんな配慮はまったくない(笑)
日本の純文学にケンカを売っているのかの如くの書き出しです。

-各話紹介と感想-
保証
クーラーを分割で買った若者は...。

「クーラーぐらいで」というのがミソで非現実性を味わう作品かと。

大黒さま
目の前に現れた大黒様を前にあわてもので強引で変なものに目をつける傾向のある男は...。

短いショート・ショート、要は「パンドラの箱」なわけですが希望はない...でも希望などなくても悪いところがなければ「まぁいいか」ということでしょうかねぇ。
ワン・アイディアな作品なようですが男と大黒さまの会話、なかなか味わい深かったです。

あるスパイの物語
敵国に派遣されたスパイはつかまり厳しい取り調べを受けるが...。

まぁ職業を守るのは大変ですねというお話。

住宅問題
高層マンションに住むエヌ氏の部屋は無料だが広告が流れ....。

広告の行き過ぎた世の中、「スポンサーから一言」のパロディ?

信念
善人であることを拒否した男は...。

これと同じような話を星作品で見たような気が....(産業スパイの話)

半人前
自殺しそうになっていた自称半人前の男がそばにいると...。

逆説のおかしみを味わう作品なんでしょうが....。どうも...。

変な客
高級美術品の店に来た紳士が...。

「狼が来るぞ」のパロディですが、最後の犯人のなりゆきの意外感はいけます。
ミステリーといっていいんでしょうね。

美味の秘密
小さなレストランが出す料理はとても素晴らしく....。

なるほど....と感心しました。

陰謀団ミダス
就職に苦しむ若者は出来心である家に泥棒に入るが...。

この時代テレビ・マスコミとコマーシャリズムが発展しだしたんでしょうね。
時代は感じますが....今読むと古いか?

さまよう犬
毎日同じ犬の夢をみた女は...。

短いショート・ショート。「はぁ」という感じ

女神
道子はみにくいわけではなかったが美しくなりたく....。

ファンタジーな感じで楽しめました、オチも安直ですがこれもまたよしな気がします。

海のハープ
亜紀子は海岸でハープをみつけ

短いショート・ショート、きれいにまとめているお話、きれいすぎるか?

ねらった弱味
弱味を持つ人を見つける勘のある男はある青年に....。

ミステリーですね、ばかばかしい解決ですがそれなりに「?」楽しめました。


道ばたで鍵を拾った青年は...。

「名作」と名高い作品であらすじで読むととてもいいお話なんですが....。
話の肉付けはほとんどなくプロットを読んでいる感じでした。

繁栄への原理
地球からの探検隊がたどりついた惑星は繁栄していたが...。

宇宙開発華やかしき時代の皮肉ですが、スペース・シャトル計画が予算の関係で中断している現代社会ではシャレにならない....。

味ラジオ
食べ物飲み物の味がラジオに乗って届けられる時代に....。

「味気ない」の「味気」とはなにか?と考えさせられる作品。

新しい人生
長い療養生活が終わり退院した三郎は...、ロボットと思いこんでいた症状は直っていたが...。

ハッピーエンドでよかったですー。

古風な愛
美しく若い昭子は若い俳優と恋におち...。

キレイなお話。

遭難
遭難した宇宙船はとある星に着陸し、救助を待つが...。

ちょうどこの感想を書いている時に光瀬龍の「巡視船2205年」を読んだのですが....。
似てる?

金の力
洋三は5年前の強盗で入手した大金の隠し場所に向かい....。

「星新一」精神病院の話も好きですよねぇ...ですが安直に感じました。

黄金の惑星
黄金の惑星からのSOSを受電し向かった宇宙船は...。

くだらないといえばくだらないのですが、人間の本質をついている感じで感心しました。


敏感な動物

都市でのネズミの大量移動に気付いた青年は....。

サスペンスと見せながら喜劇で最後に悲劇、不条理さが素敵。

宇宙の英雄
ある星から助けを求める信号がきて、優秀な若者が助けに向かうが....。

スペースオペラのパロディですが....。
これまた不条理さが素敵。

魔法の大金
エヌ氏はあらわれた悪魔にお金を頼むが....。

短いショート・ショート、「なるほど!」


ホテルで休暇を楽しむ青年のところに深夜かかってきた電話の声は....。

考え過ぎでオチの切れもいまいちなような....。

人間的
人生修行に出たロボットは...。

単純なオチで結構好きです。

破滅
警察に包囲された麻薬犯の主犯はある薬を飲み...。

喜劇なような悲劇なような....シチュエーションが楽しめました。

博士と殿さま
タイムマシンを発明し殿さまのいる時代に訪れるが...。

ありがち...かなぁ?

小さな世界
大実業家アール氏が買う車は....。

セールスマンの売り込む車の機能が現代において実現しているもしくは実現しそうなのがびっくりでした。
・冷暖房・空気浄化装置・ボタンでステレオ・ボタンで角度の変えられる椅子・地図盤の上の目的地を押しての自動操縦・小型レーダーで四方を警戒し事故防止・電話・電話機のボタンを押して切り替えて遠くにいる友人と碁や将棋やチェス・カラーテレビ等々
オチはワンアイディアかなぁ...。

長生き競争
テレビ番組の企画で長生き競争をするが....。

筒井康隆の「48億の妄想」を連想しました。パロディ?

とんでもないやつ
石器時代人グウの前に現れた男のもつマンモスの肉や毛皮と交換するためににあるものを....。

ワン.アイディアですね。

妄想銀行
エフ博士は妄想を取り除いたり、与えたりする銀行業を営み....。

「妄想」を「銀行化する」というアイデイアは出そうで出ないような....

全体通してやはり「すごい」と思う作品はありませんでした「普通におもしろい」というべきか。
この50年経過しても「普通におもしろい」ところが星新一のすごさですね。
どれが一番かというと...難しい....。

シンプルな「大黒さま」、きれいなファンタジー「女神」、コミカルな「黄金の惑星」「宇宙の英雄」うまさの目立つ(このページ数で立派にSFサスペンスしている....)「敏感な動物」かなぁ。
多分読むタイミングでも違ってくるのではないかと思います。

「鍵」は「星新一1001話をつくった人」で名作として紹介されていて期待感高すぎていた分楽しめませんでした....。

ショート・ショート集は作品数多いので感想書くの疲れます....。
それが読まない理由だったりするのかも。(笑)

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