サッカーも、ずいぶんと様変わりしたものである。
私が少年団でプレーしていたころとは使う単語も変わるもので、前回(→こちら)は「ピッチ」なんて昔はなかったという話をした。
そこで今回も「浪速のレアル・マドリード」と呼ばれたチームでプレーしていた私が、新旧サッカー用語の変遷について語りたい。
というと、おいおいちょっと待て、お前のチームのどこがレアル・マドリードだ。
世界最強のスター軍団と、大阪のちょぼこい少年チームでは、差がありすぎるではないかという意見はあるかもしれない。
たしかに私のチームは「銀河系軍団」ではなかったかもしれないが、休憩時間によく読んでいたマンガが車田正美の『リングにかけろ』だったので「リンかけ軍団」ではあった。
他にも「こんなん、昔は言わんかったなあ」というのには、「ボランチ」という言葉がある。
「守備的ミッドフィールダー」という意味だが、これも最初聞いたときは「なんやそれ?」であった。
我々のころには、そんなものはなかった。
まあ、あえて言うなら
「ディフェンシブ・ハーフ」
であったが、そもそも今のヤングたちは「ハーフ」なんて単語を知らないのであろう。
ボランチとは逆に、私のころには使っていたが、死語になってしまった単語も多い。
「センターフォワード」
といえば、私が子供のころは花形であった。
かの大空翼君も、師匠のロベルト本郷(なんとブラジル代表の10番をつけていたすごい人)から
「翼よ、ミッドフィルダーになれ」
と言われてポジションを変えたけど、元はセンターフォワード。
また、『コミックボンボン』で連載していたサッカーマンガ『がんばれ!キッカーズ』では、ミッドフィルダーだったデコくんのパパ(スポーツ用品店経営)が、
「これからも送り迎えや新品のスパイクなどチームをサポートするから、息子をセンターフォワードにしてくれ」
キャプテン(小学生)に土下座して頼むという、シビれるエピソードがあった。時代であるなあ。
CFが使われなくなると同じように、サイドの「ウイング」もあまりなじみがなくなった気が。
そういえば「センタリング」も、いつから聞かなくなったんだろう。
「ハーフバック」なんてのも、今ではまったく消え去ってしまった言葉。
バックなんて言ってるが、これは今でいうミッドフィルダーのこと。
もっとも『キャプテン翼』でも出てこない単語だから、当時でもすでに古かったのか。
今でも、世代によっては「ハーフ」っていう人はたまにいる。
やっぱ、なじみがある言葉の方が、使いやすいのだ。
私も今ではさすがに慣れたが、子供のころは「ミッドフィルダー」と聞くと、なんだか
「カッコつけとるのう」
と感じたものだった。
真ん中がハーフなら、ディフェンダーは「バックス」といってた。単に「バック」とも。
専門的に守る人は「フルバック」。
今のように、ディフェンスでも、ガンガン攻撃参加するようなプレーは、あまりなかったところが古い時代だ。
あと、今ではたぶん、あまり考えられないだろうが、昔は弱いチームではよく
「下手なやつはバックにまわされる」
ということがありました。
かくいうウチのチームもそう。補欠だった(今はサブか)私が、たまに試合に出ると、かならずバックだった。
一番うまい子がセンターフォワード。
次にうまい子がウイング。
次がセンターハーフ。
とにかく主力選手を前から並べていくだけの「超攻撃型」布陣。
「守備が大事」という概念は、まったくなかったらしい。当然キーパーはデブか
「おまえはバックもできへんグズやから、キーパーでもやっとれ」
という子が担当していた。今にして思えば、ひどいチームであったなあ。
そういう言い方すると、ディフェンスの選手が、自分のプレーに誇りが持てないではないか。本当は、すごく重要なのにね。
ただ、守備の中でもそれなりに評価されていたのが、センターバック。
「スイーパー」と呼ばれていました。
掃除屋。なかなかシブいネーミングである。
たいてい、体のデカイ人がやらされる。守備の要。なんたって、ベッケンバウアーのポジション。
これも、今では滅んでしまった。のちに「リベロ」なんてハイカラな言葉が出てきたが、それを知ったのはサッカーの中継とかではなく、マンガの『リベロの武田』。
こうして見ると、同じようなポジションでも、名前が変わると役割も違うもので、元日本代表の名良橋選手だったかが、
「陽の当たらないポジションである、守備的ミッドフィルダーに『ボランチ』っていう言葉ができたことによって、正当な評価がされるようになった」
て語ってたから、言葉というか固有名詞って大事なのかも。続けて
「だから、がんばってるのに注目されない、サイドバックも新しい名前がほしい(笑)」
とおっしゃってました。センスのいい方、だれかお願いします。
(次回に→【こちら】続く)