拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

江戸の婦女子が好むもの

2006-07-10 20:43:55 | 活字全般
月曜日は共通テーマの日。今日のテーマは「ゼミ」。現在自分が大学で所属しているゼミについて思いつくままだらだらと書く。
私は近世、つまり江戸時代の文学を研究するゼミに所属している。江戸時代の文化について興味があったのでそのゼミを選んだ。大の酒好き&タモリ好きの先生の下で毎週一回近世の文学作品を読み、意見交換などをするという活動をしている。ゼミの先生は大学の授業では『奥の細道』や『雨月物語』など、近世を代表するメジャーな文学作品の演習を行っている。しかし少人数で行うゼミではマイナーなものを扱う。江戸の庶民の間で流行した俗っぽい読み物とか、下品で滑稽な笑い話などを読むのだ。後者のような作品を読む際、先生は「授業ではとても扱えない内容ですねぇ。でもこれこそゼミの醍醐味ですよ」みたいな事を言いながらニヤニヤしている。本当にね、ごくたまに下ネタすぎる挿絵の載ったお話を扱ったりするのですよ。そういう話は当時の江戸っ子たちのハートをがっちりつかんでたようです。
ゼミではたまに江戸の町並みの残る場所を尋ねたり、松尾芭蕉や井原西鶴の縁の地を訪ねたりする小旅行のようなものが催されるらしい。5月18日の日記にも書いたようなお散歩旅行(このときは名古屋市緑区・有松周辺の旧東海道をウロついた)。先生の解説つきで一通り散策した後は飲み会が待っている。大人数でにぎやかに酒を飲むのが好きなのだろうか。先生は酒に酔うと人格が変わる。一人称が「私」から「オレ」になる。我々ゼミ生の事は「あんた」又は「オマエ」と呼ぶようになる。そして個人的な話をいろいろとしてくれるようになる。娘の彼氏の話、『タモリ倶楽部』を毎週見ているという話、同僚の教員の様々な裏話…。最近は「娘は彼氏と別れたらしい」というどうでもいい話をしてくれた。でも同僚の教員の話は結構楽しい。○○先生は裏声で松田聖子を熱唱するとか、○○先生はエヴァマニアだとか…ね。そのようなくだけた会話が展開する。授業などで見せる普段の様子とは全く異なる雰囲気を醸し出す先生。
…なんだかゼミの話というよりは先生の話ばかりになってしまった。この記事を読まれる大多数の方には知ったこっちゃ無い話だ。この前のゼミの演習でのことでも書こうか。先日ゼミで『春色梅児誉美』という近世の恋愛小説を扱ったときの事。江戸の庶民・特に若い婦女子の間で大人気を博したこの作品。主人公・丹次郎が正妻と愛妾との間を行ったりきたりした挙句、最終的には正妻と妾双方を自宅に住まわせ三人仲良く暮らしてハッピーエンドという、強引に要約するとハッピーだかなんだかよくわからない物語である。この展開に対してある男の先輩が「このハーレム男の物語がなんで女子の間で人気だったのか?フラフラしまくりで女子的には腹立たないか?」という意見を出した。そしたらある女の子が「丹次郎はフラフラしててもかっこよく書かれてるから腹なんて立たない。江戸の女子も丹次郎のかっこよさに夢中になったのではないか」と。そして先生が「女性はかっこよくて女たらしな男性キャラが好きなんですよ。基本ですよ」「『源氏物語』も女性に大人気でしょ?私たまに卒論で『源氏』やるっていう女の子をからかうんですよ。『女遊びしまくりの源氏って女性から見てどうなのよ』って。でも大抵『かっこいいからいいんです!』って返ってくる」「私は男なんで、当然あまり理解できませんがねぇ、光源氏の魅力」と、色々と語った。すると先の男の先輩が「やっぱかっこよければ何でもいいんすねぇ、今も昔も」と言い、話はどんどん『春色梅児誉美』から恋愛の話へ脱線していった。
こんなゼミなのです。

【今日の数字】
28584
28401
14161
70123