さて、水と氷の魔術師ではない第293回は、
タイトル:異邦人
著者:カミュ
文庫名:新潮文庫
であります。
カミュと来れば異邦人とまで言われる、彼の代表作。
文章はちとくどいですが、短いのでさらっと読めます。
ムルソーの母が死んだ。
しかし、彼は悲しみの表情を浮かべたりはしない。
彼女を愛していたのは事実、死んだのも事実、ただそれだけのこと。
翌日、ムルソーは女と戯れていた。
その後、彼女は彼に自分を愛しているかと尋ねる。
彼はよく解らなかったので正直に答えた、恐らく愛していない。
ムルソーは人を殺めた。
燃え上がる大気に包まれた浜辺の沈黙を、銃弾で破壊した。
その瞬間、彼は幸福だった……たとえ、裁かれることになろうとも。
ムルソーはいわゆる快楽殺人者ではありません。
薬物により幻覚症状に陥ってるわけでもありません。
ただひたすらに正直なのです、それを異常と呼ぶのかも知れませんが。
弁護士はムルソーの精神に異常を感じ、それを嫌悪する。
判事はムルソーに神を否定され、激高して吠える。
検事はムルソーが母の死に無関心だったことを責め、勝ち誇る。
自らを正常であると信じる人々によって、ムルソーは断罪されます。
彼らにとって、ムルソーは許されざる異分子であり、異邦人なのです。
殺人罪を問う裁判が、魔女狩りの異端審問と化すのは……怖い。
一歩引いて考えれば、ムルソーの犯した殺人は正当防衛です。
問題は、彼の態度が周囲の人々の常識の範囲内になかったこと。
好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、解らないものは語らない。
そんな彼は『白痴』のムイシュキン公爵を彷彿とさせます。
短い作品ですが、時間の合間ではなく、腰を据えて一気に読むのが吉。
ムルソーを狂人と取るか、別のものと取るか、それは貴方次第です。
タイトル:異邦人
著者:カミュ
文庫名:新潮文庫
であります。
カミュと来れば異邦人とまで言われる、彼の代表作。
文章はちとくどいですが、短いのでさらっと読めます。
ムルソーの母が死んだ。
しかし、彼は悲しみの表情を浮かべたりはしない。
彼女を愛していたのは事実、死んだのも事実、ただそれだけのこと。
翌日、ムルソーは女と戯れていた。
その後、彼女は彼に自分を愛しているかと尋ねる。
彼はよく解らなかったので正直に答えた、恐らく愛していない。
ムルソーは人を殺めた。
燃え上がる大気に包まれた浜辺の沈黙を、銃弾で破壊した。
その瞬間、彼は幸福だった……たとえ、裁かれることになろうとも。
ムルソーはいわゆる快楽殺人者ではありません。
薬物により幻覚症状に陥ってるわけでもありません。
ただひたすらに正直なのです、それを異常と呼ぶのかも知れませんが。
弁護士はムルソーの精神に異常を感じ、それを嫌悪する。
判事はムルソーに神を否定され、激高して吠える。
検事はムルソーが母の死に無関心だったことを責め、勝ち誇る。
自らを正常であると信じる人々によって、ムルソーは断罪されます。
彼らにとって、ムルソーは許されざる異分子であり、異邦人なのです。
殺人罪を問う裁判が、魔女狩りの異端審問と化すのは……怖い。
一歩引いて考えれば、ムルソーの犯した殺人は正当防衛です。
問題は、彼の態度が周囲の人々の常識の範囲内になかったこと。
好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、解らないものは語らない。
そんな彼は『白痴』のムイシュキン公爵を彷彿とさせます。
短い作品ですが、時間の合間ではなく、腰を据えて一気に読むのが吉。
ムルソーを狂人と取るか、別のものと取るか、それは貴方次第です。