つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

さすがにこれ全部紹介すると死ねる

2006-10-31 23:53:34 | ミステリ
さて、気付いたらキリ番だった第700回は、

タイトル:英米超短編ミステリー50選
編者:EQ編集部編
出版社:光文社 光文社文庫(初版:H8)

であります。

海外ミステリ専門誌『EQ』(現在は休刊中)に訳載された短編を集めたアンソロジーです。
以前紹介したヘンリー・スレッサーほか、多数の作家が登場。
全五十編と凄まじいボリュームですが、短い作品はたった三頁、長いものでも二十頁以内なので、時間の合間に読むのに最適です。

・登場作家一覧
ナンシー・ピカード
ヘンリー・スレッサー
ルース・レンデル
アンドリュー・クレイヴァン
アーサー・ポージス
クリスチアナ・ブランド
レジナルド・ヒル
ジョイス・ハリントン
ピーター・ラヴゼイ
ロバート・バーナード
シャリン・マックラム
ポーラ・ゴズリング
アンドリュー・ヴァクス
ビル・プロンジーニ
コーネル・ウールリッチ
他、多数――

以下、気に入った作品をいくつか紹介します。

『目』(ヘンリー・スレッサー)……そろそろ五十に手が届く殺し屋リオンは、六ヶ月ぶりに仕事にとりかかった。自分より歳のいった相手を始末する簡単な仕事に思えたが、実は――。
スレッサーらしいワントリック。しかしリオン、せめて確認しろよ……。

『発見』(パトリック・アイアランド)……野心に燃える研究者ハロウェイは、単身、古代遺跡に乗り込んでいった。しかし、大発見に浮かれるあまり――。
自業自得、という言葉が非常に似合う主人公の独り相撲。さて、彼はどうなったのか?

『追いはぎ』(アヴラム・デイヴッドスン)……帰宅途中、スタンリー・スレイドは何者かに背後から襲われ、衣類を奪われた。意識を取り戻した時には両手に――。
不条理系のリングストーリー。実際、極限まで来たら彼と同じ行動を取る者も多かろう。

『ヒーロー』(アル・ナスバウム)……その旅客機には、刑事と、彼に護送されている犯人が乗っていた。税関で騒動を起こした子供は、その一方に興味を示すが、機体が事故を起こした時に行動したのは――。
展開は読めるが、オチの一文が素晴らしい。実際どうだったのか……それは秘密の方が美しいだろう。

『バード・ウォッチャー』(ジャック・リッチー)……バード・ウォッチャーの私の前に、死体を抱えた男が現れた。彼は名士で、この州の者なら誰でも知っている。さて、私は――。
キレのいいショートショート。いきなり死体を抱えて現れたにも関わらず平静を装う男との会話が妙に可笑しい。裏技的だが、納得がいくオチもいい感じ。

まだまだ紹介したい作品は沢山あるのですが、キリがないのでこのへんで。

短編好きにはかなりのオススメ。
どちらかと言うとブラックなオチが多いのですが、そうでないものもあります。
ただ、死体が出てくる話が嫌いな方には、やっぱり合わないかなぁ……。

幻想世界と言えばこの方々

2006-10-30 23:44:20 | 事典/図典
さて、こういうのも紹介しないとウチではない第699回は、

タイトル:光脈水焔譜
著者:加藤龍勇(旧:加藤洋之)&後藤啓介
出版社:朝日ソノラマ(初版:H4)

であります。



【天使役を演じているノッペラ星人】

(※上の絵は私がマウスで描いたラクガキで、タイトルも適当に付けたものです。元ネタは本書の中の……)


合作絵師『加藤龍勇(旧:加藤洋之)&後藤啓介』の画集です。
全127点、うち82点がカラー、45点がモノクロ。
巻末にすべてのカラー画の解説もあり、思う存分、両氏の世界を堪能出来ます。

え? 『加藤龍勇&後藤啓介』を知らない?
『ねこたま』とか『オーラバトラー戦記(旧版)』とか『月のしずく100%ジュース』のイラストを描かれてる方々ですってば!

絵を言葉で表現するほど虚しいものはありませんが、敢えて画風を説明すると――。

植物的な衣類と、鉱物的な機械と、アンドロイド的な美しさを備えた人々が存在する幻想世界。

何言ってるか解りませんか?
すいません、言ってる私もよく解りません。(爆)
てっとり早くどんな絵か知りたい方は、両氏のホームページを御覧下さい。

『studio burabura』

本書に収録されているイラストですが、雑誌・小説の表紙・挿絵がメインです。
とりあえず、目に付いたものを適当に挙げていくと――。

・『獅子王』扉絵。
・『オーラバトラー戦記』表紙・口絵。
・『ねこたま』『まさかな』表紙。
・『スクラップ・ドリーマー』口絵。
・『ハイブリッド・チャイルド』表紙。
・『ダーティ・プリンス』表紙。
・『ドラゴンマガジン』目次イラスト。
・『超弦世界のマリア』挿絵。

他にもありますが割愛。
上記の作品を読んだことがある方は、九割ぐらいは絵に惹かれて買った筈。
これらのとてつもなく綺麗な絵に引っかからん奴などいるわけがないっ!(いつになく独善的な見解)

どこかで両氏の絵を見たことがあり、もっと見てみたいな~と思ったなら、本書はかなりオススメです。
あ、もちろん、ファンは問答無用で買い。(義務)
生憎、私はCDロム画集『夢帽子 before and after blue』は持っていないので、被るイラストがあるかどうかは未確認だったりしますが……アナログにはアナログの良さがあるよ、うん。

復権めざして

2006-10-29 01:33:21 | ファンタジー(異世界)
さて、ここ最近ミステリ/ホラーに押されっぱなしだよなの第698回は、

タイトル:狼と香辛料2
著者:支倉凍砂
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

今月に3巻が出てるなぁと思って買ったのはいいけど、そういえば2巻を読んでいなかったことに気付いていまさら読了。
タイトルどおり、デビュー作でもある前作の「狼と香辛料」の続編で、25歳の若き行商人ロレンスと、ひょんなことから旅の連れとなった豊作の神である賢狼ホロの、行商の旅を描いた物語。

前作の舞台である港町パッツィオでの出来事で手に入れた胡椒を手に、ポロソンという町を訪れたふたり。
ここで店を構えるラトペアロン商会に胡椒を持ち込み、商談を進め、成立、となるところにホロが胡椒を量る秤……ではなく、秤を乗せるテーブルに細工をしていることを見破る。

そのことを突いてロレンスはラトペアロン商会から大きな取引を仕掛け、北の教会都市リュビンハイゲンへと向かう。
利率は低いが安全な武具の取引……のはずだったが、そこでロレンスは思いも寄らない不渡りを出し、多額の借金を背負ってしまうことに。
商人生命どころではないかもしれない手痛い失敗に、ホロはひとつの案を持ちかける。

印象としては前作よりも全体的にレベルアップの跡が窺える。
ライトノベルにしては主人公が商人、ホロは手よりも知恵を出す立ち位置なので、派手な戦闘シーンなどはなく、全体的にテンポは穏やか。
ストーリーも、不渡りを出したロレンスが起死回生の手を打つものではあるけれど、どちらかと言うとそれよりも、そうした話の中で、ロレンスとホロの関係を中心に描いているため、盛り上がりに乏しい。
とは言え、こうしたところはキャラ設定からも仕方がない部分ではあろうし、それで作品のクオリティが下がっているか、と言えばそうでもない。

文章的にも前作に見られた欠点も少なくなり、読み進める苦労は少ないが、商談や取引などにまつわる商人らしい部分の説明には、やはりまだわかりやすい描写と言うものが求められる。

それにしても、この2巻に至ってホロの魅力全開やね(笑)
見た目は耳と尻尾があるだけの15歳前後の少女だが、実際は数百年を生きる神狼。
……なのだが、若いロレンスをからかったり、老獪さを見せたり、少女らしいかわいらしさを見せたり、単に食いしん坊だったり、怒ったりと様々な姿が描かれている。
まぁ、ちと甘いシーンがいくつかあったりと、ベタなところがないわけでないが、そんなホロとロレンスの関係や会話は楽しめる要素であろう。

ただ、ラストのほうがいまいちなところがあるため、総評としては手放しでオススメというわけにはいかない。
まぁ、前作よりも読み応えは出ているし、欠点は少なくなっているので、評点の甘いライトノベルということを差し引いても、十分及第だろう。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『狼と香辛料』のまとめページへ
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1+1÷2=?

2006-10-28 00:35:53 | ファンタジー(現世界)
さて、そろそろ700回だなの第697回は、

タイトル:付喪堂骨董店 ”不思議取り扱います”
著者:御堂彰彦
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

極めて珍しいライトノベルの、しかも今月の新刊。
表紙を見た瞬間、「雨柳堂夢咄」の亜種か? と思って手に取ってみた本で、お初の作家。

「アンティーク」と呼ばれる、ふつうの骨董とは違う特殊な能力を付与された道具を集めながらもその偽物を扱う「付喪堂骨董店~FAKE~」にアルバイトとして勤める来栖刻也、舞野咲、そしてオーナーの摂津都和子が織りなす、ミステリ仕立ての現代ファンタジー短編集。

「第一章 偶然」
それを用いて偶然を願うと、その偶然が起きる「ペンデュラム」を手に入れた僕は、自分と「同じ」者を探していた。いつしか手に入れたはずの彼女は、けれど僕を裏切り、僕はその偶然を彼女にもたらし、殺してしまう。
そしていくつもの偶然を操りながら、また「同じ」者を探していた僕の前に彼女は現れた。

「偶然」と「必然」を中心に、刻也が「僕」を見つける話だが、とかく「偶然」という単語を余りにも使いすぎるところがしつこすぎる。
構成は「僕」と刻也が交互に乱れることなく描かれ、破綻はないが、このしつこさは評価を下げる。

「第二章 像」
ある村で、右手で触れるだけで流行病を治してしまう若き僧侶。その僧侶が作った仏像は、僧侶の死後、養い子となった少女の手を介して人々を癒すはずだったが、次第にそれは逆に病をもたらす像となってしまう。
そんな「アンティーク」に咲は触れてしまい、仏像がもたらす病を受けてしまう。

僧侶の養い子である少女と、刻也の過去と現在を交互に描く秀作。
ありがちな像の「アンティーク」のネタを少し捻り、第四章への伏線も含め、どこか切ない物語を演出している。

「第三章 記憶と記録」
事故により記憶する能力がやや劣るようになった宇和島悦子は、母からもらった書けば忘れることがないノートという「アンティーク」に書いたある出来事を忘れたいがために、付喪堂を訪れていた。
忘れっぽいはずなのに、どうしても憶えている母の事故時にまつわる、忘れたい記憶。それはある人のためだった。

これも切ない、淡い哀しみを醸し出す良品。
忘れたい記憶と事故によってつけることとなった毎日の日記、両親の離婚、日記にまつわる真実などなど、展開に無理がなく、読後感も良好。

「第四章 プレゼント」
親元を離れ、貧乏学生をしている刻也が、突然アルバイトを終え、住み込みでアルバイトをしている咲に、突然プレゼントを渡す。黒ずくめが趣味の咲には、まったく趣味ではないノースリーブの、ひらひらしたピンクのワンピース。
あることから、無表情を貫き、素っ気ない咲は、しかし人形ではなく、まだ16歳の少女で、どこか浮かれる気分を味わっていた。それからと言うもの、毎日刻也は趣味ではないプレゼントを渡してくる。
そこには、刻也が不用意に手にした「アンティーク」の存在があったが……。

第二章、第三章とはうってかわって、ほんのりと甘い中に、咲の持つ影を感じる作品。
第一章の「僕」が持つ内面のプラスとマイナスや、第二章、第三章の切ない物語のあとに来るにしては……心憎い。
ただし、いかにもなあざとさが見え隠れするところは……ライトノベルだから仕方がないのかもしれない。

えー、総評。
近年……というか、おそらくいままで読んだライトノベルの中で最も秀逸な短編集。

文章は、はっきり言って白い。
段落が多く、第一章のようなしつこさもあり、表現力と言う点においてはまだまだ頑張ってもらいたいものだが、作品の雰囲気はとてもよい。
ツンデレ系の咲や、美人オーナーでキワモノ好きの都和子など、キャラ設定はいかにもだが、そこまでアクの強いキャラではない。特に人気を得るための咲は、きちんと陰を感じさせる描写などがあり、引きもしっかりと作り、狙っただけではないところを見せようとする努力が感じられる。

そして何より、ラストの見せ方、余韻が秀逸なのは特筆に値する。
特に第三章のラストはストーリーの謎、クライマックスと相俟って素晴らしい出来。
ただし……、第一章のみ、ラストに物足りなさがあるのが残念だが。

最初は「雨柳堂夢咄」を思い出し、途中「ザンヤルマの剣士」を足して2で割るとこんな設定と話になるかと思ったが、さにあらず。
文章的な欠点を差し引いても、ライトノベルでここまでクオリティの高い作品は滅多になかろう。
第一章にやや残念な部分はあるが、ライトノベルというジャンルにしては、文句なし、オススメ。



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イメージ、ぜんぜんちゃうんですけど

2006-10-27 20:07:51 | ミステリ
さて、表紙よりもずっとかわいく見えるぞの第696回は、

タイトル:妖怪探偵犬姫
著者:前田朋子
出版社:彩図社 ぶんりき文庫(初版:H12)

であります。

たまには、加納朋子以外のふつうのミステリでも読もうかと思い、手に取ってみた。
とは言え、「○○殺人事件」とか、そういうのでないところが私らしいのかもしれないけど。

さて、本書は第一章から第三章の3編が収録されたミステリの連作短編集。
主人公は安倍俊明。浄念寺と言う寺の明恵和尚に何故か気に入られているふつうの高校生だが、ある日、浄念寺の裏手にある通学路の通称「かまいたちの道」を帰宅途中、1匹の犬に出会う。
首に数珠をかけたその犬は、あろうことかひとの言葉を話し始め、俊明を「しゅんめい」と呼ぶ。この犬は、鎌倉の世、人魚の肉を食べて不老長寿を得た八百比丘尼犬姫いぬきと言う人物が、俊明しゅんめいと言う修行僧によって姿を変えられた女性だった。

そんなふたりが町で起きる事件を解決するミステリ、と言うわけ。

「第一章 火車」
犬姫とともに帰る道すがら、ある公園で起きた殺人事件。すでに警察で隔離されたそこで犬姫は、被害者のいた場所にある何本ものタバコの吸い殻に疑念を抱く。

「第二章 かまいたち」
クラスメイトの由紀子から、友人の谷本リサが「三光天の会」という宗教団体に傾倒していることを相談された俊明は、犬姫とともに三光天の会を探っていた。
そのさなか、ある神社の駐車場で、そして被害者の家で、老人が殺される事件が起きる。三光天の会が用いる各種の宝珠、方角などから犬姫はあることに気付く。

「べとべとさん」
立ち直ったリサを慰める意味もかねて、近隣の大学の学生と合コンをすることになった由紀子は、合コンの場の流れで、同席した大学生の友人で料理の得意な青年の家で鍋パーティをすることになる。
しかし、合コン以来、由紀子は誰かにストーキングされている気配を感じるようになり、さらに鍋パーティの料理を担当する青年が卓上コンロのボンベが原因で焼死、また合コンに来たひとりも殺されてしまう。
殺されたひとりに渡されていた手紙……そこに残る違和感に、犬姫は何かを感じ取る。

各編とも、寸評はなし。
だって、構成はほとんど一緒だもん。
第一章は、犬姫と俊明の出会い部分があるものの、ストーリー展開は、

「事件」→「現場に残された遺留品や謎を解く小道具を見つける」→「犬姫が推理」(読者にヒントを与える)→「ネタばらし」

まぁ、短編なので大がかりなトリックを仕掛けるのが無理なのはわかるが、推理からネタばらしまでが短く、またネタばらしに視点が犯人などに変わる、など、いまいち主人公の俊明や犬姫が解決に関わった、と言う印象が希薄。
ネタを読者に提供し、さぁ推理してくれ、と言って、その後すぐに答え合わせをするような感覚で、おもしろみがない。

それに、トリックがどんなものであろうと、「このストーリーや登場人物だと、たいてい犯人はこいつだよな」と思ったら3編ともビンゴ。
半分も読まないうちに、トリック以前に犯人が割れてしまう設定などの安易さも、トリックに頭を捻る気になれない要因。

全体的にミステリとしてのおもしろさは、かなりいまいちではないかと思う。
ただ、第一章の中で出てきたネタを第二章の前ふりに用いるなど、連作としての繋がりは悪くない。
もっとも、それくらいしかいいところがない、と言えるのだが……。

それにしても、この作品、表紙はすごいリアルな犬の正面からの絵が描いてあるのだが、中身の犬姫はライトノベルに出ても通用するのではないかと思えるくらい、かわいらしい面を見せたりして、表紙と中身のギャップが激しい。
もっとも、中身の軽さはどちらかと言うとライトノベル向きかもしれない。

総評、落第。

ぢつは本編よりも~

2006-10-26 21:10:52 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、あとの短編のほうがおもしろかったのねの第695回は、

タイトル:めぐる架空亭
著者:草川為
出版社:白泉社 花とゆめコミックス

であります。

鈴:意外にこのひとの出番は多くなるかもと思ってるSENで~す。

扇:少なくとも『ガートルードのレシピ』は確定だと思うLINNでーす。

鈴:まぁ、確かにな。
あと草川の単行本と言えば「龍の花わずらい」だな。

扇:もちろん、『十二秘色のパレット』だな。
草川は本当にレベルが高い――主人公の女の子の性格がどの作品でも同じだったりするけど。(笑)

鈴:思いっきり話が噛み合ってないな>十二秘色のパレット
だが、まぁ、確かに草川のはそれなりにどれも読ませてくれるし、おもしろいからなぁ。
……しかし……それは言ってはいけないぞ、相棒>性格が同じ

扇:だって事実だしぃ~。
ま、可愛いからいいんだけどね。(軟派)

鈴:うわっ、相棒が萌えている……めずらし……きっと明日は雪が降るに違いない……(笑)
もっとも、かわいいと言う意見にはかなり賛成だが(爆)

扇:いや、草川ヒロインは独特の可愛さがあるよ、うん。
って、確かに今日の私はちょっと変だな――LINNが取り憑いているからか。

鈴:……ほほぅ……。
なら、取り憑きついでに私の萌え毒を身体の隅々まで注入してあげやう。
そしたら「乃木坂春香の秘密」とか読めるようになるから……( ̄ー ̄)ニヤリッ

扇:却下。
君の方こそ、SENを名乗ってどうするつもりかね?

鈴:はうあっ!Σ( ̄□ ̄)
……って、相棒こそ何をLINNと名乗っておるか、しかも全角で。

扇:俺は日本語の文章で半角を使うのは嫌いだ。
そっちこそ、勝手にSENを半角にするでない。

鈴:アルファベットは半角に決まっておろう。
職場でも英数字は半角使ってるしな。
世の中、英数字は半角という不文律があるのを知らんのか。

扇:知らんわ、そんな常識。
タイトルと章題だけは大目に見るとしても、文中は全角で書いて欲しいとこだ。

鈴:ん~、そこは使い分けかのぅ、私の場合。
だいたい喋り言葉を英語とかにしたら、全角だとうざいばっかりやし~。

扇:あー、さすがに会話文は全角だと辛いな。
でも、英語とかフランス語の会話文をそのまま書くのってどうかと思うけどね。
日本語で書くか、伏せ字で誤魔化すかして、通じてないってことにすりゃいいだけだし。

鈴:そこはあれだ。最初のいくつかを英語だのフランス語だのにして、そういうものだと言う印象を持たせる、ってのが目的だからな。
そゆときには、やっぱ半角だよなぁ……。
でも、基本的に物書き中のアルファベットは全角やな、私も……(爆)

扇:半角にすると、何か感覚狂うんだよね。
というわけで、次回からSENを使用する時は全角で書いてもらおうかっ!

鈴:まぁなぁ……でも、一太郎だと変だが、Wordだと違和感ないんだよなぁ。
しかし、次回から? 何を言う、横書きだから半角だ!!(笑)

扇:だからウェブ上で小説読む気しないんだよなぁ……。
もっとも、縦書きだとスクロールがメンドイだけだが。

鈴:Webは……単に紙じゃないから読む気しない(きっぱり)
やっぱ小説だの何だのを読むなら紙やろ紙!
印刷しないで、画面ばっかり見てると目ぇ悪くすっぞ!!(なんか論点が違う)

扇:先生~、695回続けたおかげでかなり目ぇ悪くなってると思うんですけど。

鈴:気のせいだっ
私はそれよりもずっと前から目は悪くなったからな。
単に仕事で毎日パソコン画面見てるからだが(爆)

扇:言うな、私もさして変わらん。
さて、そろそろ真面目な話をするかね。
めぐりめぐる七人のサムライの話だったっけ?

鈴:め~ぐりめぐ~る~♪
って、なんでNHKでやった(やってる)アニメの話になるっ!!!
じゃぁ、まじめにストーリー紹介と行くかぁ。
ある町で二人目の小説家となった小山笹舟。一人目の小説家であり、夭折した雪村千鳥の未完の遺作「架空亭」の原稿を手に取ったとき、小説の世界であるはずの架空亭に招かれる。
その架空亭では主人甘喃など、個性的なキャラがいるが、ここは小説の世界。招いた人物の生気を糧にして成立する世界であるため、病弱な笹舟では役不足。そこで新たな取り憑き先を探すことになったりするが、この架空亭、実は雪村がある思いを託して描いた物語だった。
……と言ったところかなぁ。

扇:さすが、私が憑依してるだけあって真面目な解説だな。

鈴:……してるか?
と言うわけで(何が?)、CM~。


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鈴:では、主人公で小説家、雪村とおなじく病弱な小山笹舟。
病弱であるがために、生気に乏しく「笹舟ごはん」と言うご飯に煮干しを乗っけただけという食事しか架空亭にもたらせなかったが、知り合いのサーファー……もとい、作家を捕まえて豪勢な食事を確保した。
本来、取り憑く人物を変えると架空亭も移動するはずだが、笹舟からは何故か移動せず、雪村の思いとそれによって作られた架空亭、甘喃などの人物との決着をつけるファクターとなった。

扇:では、架空亭の主人、甘喃あまなん
草川ヒロインらしく、明るさ、賢さ、度胸を兼ね備えた最強のスペックを誇る少女。
笹舟を架空亭に召喚し、強引に引き留めようとするが失敗、逃げ出した彼に向かって、「おのれ根性なしが」と言い放った。素晴らしい御方である。(笑)
ただし、草川ヒロインのもう一つの特徴『何かしらの不安』も抱えており、笹舟に頼るシーンも、一応、あった。
架空亭の中では非常に特異な位置にあり、最終話でその謎が明かされる。(※主人という立場以外の問題である)

鈴:では、次に笹舟の祖父、小山芳舟。架空亭が笹舟の前に招いていた客で、齢70にして、笹舟を凌ぐ生気を持ち、笹舟とは較べものにならないほどの豪勢な料理を並べることが出来るほどの、生気=体力の持ち主。
ちなみに、このこと以外で、このじいちゃんが役に立ったことは、ひとつもない(笑)

扇:では、すべての元凶、雪村千鳥。
『架空亭』という未完の小説を残し、若くして亡くなった小説家。
架空亭が実体化し、原稿を読んだ人間を取り込むようになったのは、すべて彼の妄執が原因である。
詳しくは書けないが――取り込んだ者を利用して未完の原稿を完成することで、道ならぬ恋を成就させようとする……極めて低俗かつ傍迷惑な奴。
以下、ちょっとだけネタバレなので反転。
要するに、二人でともに逝きたい(生きたい)とひっかけてあるようだが、最終話見る限り全然上手くいっていない。草川にしては珍しく、稚拙な終わらせ方だった。

鈴:あ……、木曜漫画劇場初のネタバレ反転!!!!
しかし、あとは……おなじ作家仲間の柄井真向からいまこうくらいかなぁ。
その原稿に宿る力を知って、架空亭に本格ホラーを持ち出した、どっからどう見てもサーファーか何かにしか見えないアウトドア系作家。
ただし、架空亭にとってはある意味、生気の乏しい笹舟よりも重宝されるはずの存在だったりして(笑)
まぁ、笹舟くん、真向が友人であるかぎり、架空亭の食事は豪勢になるから、せいぜい関係を途切れさせないようにしとくべきだろう(爆)

扇:それで終わりかな。
最後に、作品について一言どうぞ。

鈴:尻切れトンボな話だったなぁ。

扇:お粗末様でした。(笑)
まぁ、短期集中連載で力を出し切れなかったのだろう、と好意的に解釈しておく。
んじゃ、本編より出来が良かった付属の短編の話もしとくかね。

タイトルは『999番目のハナ』。
とある高校に転校してきた度会ハナが、学校の生きた伝説である千年桜に触れることで『番号持ち』と呼ばれる存在になり、三年生の飴宮不二人と協力して桜の精『千』を呼び出す話。
召喚者同士が手をつなぎ、二人の番号の合計が千になる場合のみ『千』を呼び出すことができるというルールがあり、ずっと一緒にいる内にハナは不二人に惹かれていくのだが――以下略。

鈴:以下略……ってな、要するにネタバレ防止ってことだろ(笑)
まぁでも、確かに、言っちゃぁ悪いが、本編よりもこっちのほうがおもしろかったからなぁ。
ラストの千の台詞とか、あと見せ場とか、いい感じになってる。

扇:かなり質の高い短編だと思う。
めぐる架空亭の一話目も、こんな感じにまとめて欲しかったところはあるな。
んじゃ、キャラ紹介ね。

鈴:では、ヒロイン兼主人公の渡会ハナ。転校してきた途端、名物の千年桜の番号持ちになり、それが縁で知り合った不二人に惹かれるものの、玉砕。
しかし、相変わらずの草川ヒロインらしく、すっきりとした性格で、なかなか好感が持てる。
ラストには……まぁ、ここまではさすがに言えんな(笑)

扇:言ってるのと大して変わらんわっ!(怒)
では、一見するとモロに彼氏役な飴宮不二人。
番号は一で、九九九のハナと合計すると千になる。
ハナに全く気がないため素面で彼女と手をつなぎ、『千』召喚の礼も兼ねてか何かと世話を焼く……悪意はないが、ぬか喜びさせてくれる素敵な先輩。
役目が終わったということか、ラスト数ページではただの背景と化していた。(笑)
いや、『いいひと』ではあるんだけどね。

鈴:草薙?(笑)>いいひと
さておき、あとは……やっぱり千かぁ。
千年桜の精霊で、宴会大好き……なのだが、学校上げて宴会させるところは、いいのか!? って気はせんでもないが、やはりラストの吹き出し以外の台詞がおもしろい。

扇:実体が消えかかってる筈なのに、妙に明るいキャラだったなぁ。
ラストの台詞も良かった。

鈴:なに、消えるはずの実体もヒロインのおかげで復活したからよいではないか(激しくネタバレ)
……と言うわけで、えー加減、長くなってるはずので、今回の木曜劇場はこの辺でお開きと言うことにして、相棒からの追求を逃げることにります。
でわ、さよ~なら~……脱兎

扇:貴様言うてはならんことをっ!
では、私は相棒を追っかけるので、これにて。

(鈴:へへ~ん、捕まえられるもんなら捕まえてみな~)
(扇:キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン、ってか?)

殷周革命でGO!

2006-10-25 23:36:38 | 時代劇・歴史物
さて、実は『封神演義』は未読だったりする第694回は、

タイトル:周公旦
著者:酒見賢一
出版社:文藝春秋 文春文庫

であります。

酒見賢一、三度登場です。
『墨攻』にするか『童貞』にするか考えていた時に、たまたま見かけて拾いました。(爆)



文王が没し、子の武王が即位して九年……遂に武王は殷討伐の兵を挙げた。
だが、この時の武王は殷の臣下・西伯に過ぎず、いかなる理由があろうとこれは大逆だった。
武王は文王の威光にすがり、各諸侯が対殷戦争に反対しないことを祈るしかなかった。

行軍中、王弟・周公旦は一人の人物に注目していた。
武王の師にして自軍最高の軍師・太公望呂尚である。
ある二名の賢人が武王の行く手を遮った際、その場を収めた呂尚は天下を望む者の顔を垣間見せたのだ。

仮に呂尚が天下を獲んとしたならば、周公旦は彼と争わねばならない。
だが、同時に自分と呂尚が争うことはあるまい、とも思う。
文王には及ばぬものの武王もまた覇者の資格を持つ人物であり、彼が健在である限り、呂尚とて迂闊に動けはしないからだ。

周公旦の妄想は、妄想で終わらなかった。
周建国の後、武王は早々に病没したのである。



私が『後宮小説』を読んで、相方が『墨攻』を読んで、三冊目となる、酒見賢一ですが――

圧巻でした。

例によって、いくつもの資料を紹介し、それについて著者が持論を述べるという歴史書風の書き方で、古代中国の一大事件『殷周革命』とその後の顛末を描きます。

著者は冒頭で、武王の弟であり、周の重鎮であった周公旦に興味を持った理由――主君である成王に疑惑を持たれ、楚に亡命したこと――を書いています。
南蛮の国・楚は周と折りの合わない異文化圏で、はっきり言ってしまえば敵国でした。
なぜ、成立したばかりの周を支えるべき人物が、自領に帰ることも有力諸侯に頼ることもせず、わざわざ危険な敵国に逃げ込んだのか? 著者の探求はそこから始まります。

また、著者は周公旦の特徴として、彼が祭祀を司る神官であったことを挙げています。
当時既に、専門家の仕事であった呪術行為を、貴人である彼がなぜ行ったのか?
そして、彼が整理改編に一生を捧げた『礼』とはいかなる概念か?
著者は、各種記録を読み解くことで、周公旦という人物を掘り下げていきます。

物語は概ね二部構成で、前半は武王と殷の戦い、周の建国、武王の不調等のイベントを通して、周公旦が『礼』を研究、実践する姿を描くのがメイン。
で、武王の崩御をターニング・ポイントとして、後半は冒頭にあった楚への亡命、『礼』が異文化に通じるかの実験、そして、周への帰還と最後の後始末が描かれます。
戦争描写は皆無、物語的な盛り上がりも乏しいのでカタルシスを求める方は不満を覚えるかも知れませんが、呪術と政治が密接に結びついていた時代を丁寧に描写しており、その中で繰り広げられる政争はかなり読み応えがありました。

もちろん、それだけではただの解説書で終わってしまうので、小説ならではのアレンジも加えられています。
もっとも顕著なのは、周公旦がシャーマンとして呪術を行うシーンで、歴史小説と言うよりはファンタジーに近い描写がなされています――いや、もちろん『封神演義』のようにド派手なことはやらないんですけどね。
個人的には、聖人の如く扱われている太公望を、冷徹な現実主義者として描いているのが新鮮でした。野望に責任を混ぜることで自分を納得させる所など、非常に味があって好きです。

中国史マニアは必読。
やっぱりこの人の歴史観は好きだなぁ。

彦馬が撮る!

2006-10-24 23:34:56 | 時代劇・歴史物
さて、初めて名前を知った第693回は、

タイトル:坂本龍馬の写真―写真師彦馬推理帖
著者:伴野 朗
出版社:新潮社 新潮文庫

であります。

お初の作家さんです。
日本初の写真家・上野彦馬を探偵役にした時代ミステリ。
短編集なので、一つずつ感想を書いていきます――

と、普通なら言うところですが……。

すいません、これ進む毎にテンション下がる作品なんで、今回はまとめて紹介します。

冒頭にも書いた通り、主人公は日本初の写真家・上野彦馬。
坂本龍馬の有名な写真(木の台によっかかってる奴)を撮った方です……初めて知った。(爆)
全七編の連作短編で、二十七歳で龍馬と出会い、六十六歳で没するまでの彼の人生を追います。

どの短編も彦馬が撮った写真がタイトル、及び、事件解決のキーとなっているのが特徴。
最初の坂本龍馬だけでなく、桐野利秋(人斬り半次郎)、丁汝昌(日清戦争時の清の提督)、ニコライ皇太子(後のニコライ二世)等、歴史の有名人が多数登場します。
また、写真技術の解説が非常に詳しく、短編も時代順に並んでいるため、読んでいるだけで写真史の勉強になります――興味がない方は退屈に感じるかも知れませんが。

ミステリとしては……良く言えば素直、悪く言えば安直。
事件終了と同時に話を切って、『彦馬の撮影控』で謎解き、または、まとめを行うパターンもちと強引に感じました。
ただ、犯人が既に解っている状態で、彦馬が写真による罠を仕掛ける『幽霊の写真』は面白かった。
後付けで犯人を作る必要も、他に候補がいない状態で犯人当てをする必要もなかったのが幸いしたといった所でしょうか。

時代小説として読めば……そこそこ。
ただ、一編終わる毎に五~十年の時が過ぎ、それに伴って彦馬の俗物ぶりが目立ってくるのはどうかと……特に女性関係のだらしなさは呆れるばかり。
基本的に彦馬中心の話のため、出てくる人物達にほとんど魅力が感じられないのも引っかかりました。歴史上の人物も存在感薄いし。
(好奇心の塊の龍馬が、暗室まで入ってきたのは笑えたけど)

駄目! とは言いませんが、イマイチ。
写真史に興味がある方はさらっと読んでみてもいいかも知れません。
当時の写真家の苦労がよーく解ります。

一人多い時はどうする?

2006-10-23 22:11:03 | マンガ(少女漫画)
さて、吸血鬼の紹介はまた今度、な第692回は、

タイトル:11人いる!
著者:萩尾望都
出版社:小学館 小学館文庫

であります。

少女漫画界の巨星・萩尾望都が放つ、SF漫画の傑作。
初出は1975年ですが、古くささは皆無です。
あちこちで題名をネタにされてるので、名前だけ知ってる方は結構多いかも。



時は未来……地球連邦と五十一の植民惑星との連合政府・テラが星間連盟に加入して四百年が過ぎた時代。
A22宇宙船内部では、三百年の歴史を誇る宇宙大学の最終試験が行われていた。
筆記試験が終わり、男女七百名の受験生はヘルメットを被ると、指定されたエアロックへと散っていく。

B63には、十名の受験生が集められていた。
試験官は一切の質問を封じ、ここにいるチームで最終テスト場である別の宇宙船へ行くよう指示する。
最終テストの内容を知らされていなかった受験生達は、突然の宇宙遊泳に戸惑いながらも、指定の宇宙船に入った。

船は無人だった。 
老朽化しているが、電気系統は生きているらしい。
オレンジ色の安全照明が灯ったので、ひとまずヘルメットを脱ごうとした時、誰かが叫んだ。

一人多いぞ、十一人いる!



試験の概要は――

五十三日間、宇宙船・白号の乗員として船内に留まること。
十名のチームの協調性を試すのが目的であり、一名でも落伍者が出た場合は全員が不合格となる。
外部との交信は不可だが、スクランブル発生時のみ非常用ボタンを押すことが許される。(ただし、試験は不合格)

いきなり非常事態なんですが。(笑)

凄まじく完成度の高い群像劇です。
孤立した老朽船、不明点だらけの内部構造、トラブルの要因となる数々のギミック、と舞台装置は完璧。
これに、五十三日というタイムリミット、頼るべき教師役の不在、外部との交信不可、そして何と言っても、『一名だけ謎の侵入者がいる』という秀逸な状況を加えることで、ドラマを組み立てるための条件をきっちり満たしています。

後はキャラクターを立てるだけですが、さすが萩尾、凄いメンツを揃えてきてます。
十一人全員に個性を与えるにはちょっとページ不足だったのか、捨て駒も何人かいますが、それでも記憶に残るキャラが三名を越えているのは驚異的。
目立つ連中だけ挙げると――

『タダ』……主人公。テラ系出身で、直感力を持つエスパー。初めて乗る筈の白号の内部構造を知っており、十一人目の疑いをかけられてしまう。判断力、発想力、分析力、行動力、どれを取っても一級品な完璧超人だが、少し天ボケな所もあったりする。

『フロル』……星系に属さない星から来た、輝くブロンドの美形。感情の起伏が激しいトラブルメーカーで、白号到着時、自分を女性と間違えたタダにいきなり喧嘩を売った。ある種族的秘密があり、本人の意思とは無関係に全員から女性扱いされる。

『王様』……サバ系の星の王。自分の星系を尊び、テラ系を蔑視する差別主義者で、リーダーを自認するが、単なる仕切り屋以上にはなれなかった。短絡思考な上、危機対応能力が低く、暴走してチームの和を乱す。

『ヌー』……辺境星から来た、鱗に覆われた肉体を持つ僧。静かな雰囲気の運命論者で、五十三日目を待たずしてチームが崩壊することを予言した。非常に理知的な人物だが、実はチーム一力持ちだったりする。(笑)

『ガンガ』……サバ系出身の短命種で、クロレラによる延命手術の実験体。フロルを制御でき、ぶつかり合うタダと王様の仲を取り持つ、影のリーダーである。エンジニアのイメージが強いが、実はタダを越える完璧超人で、クライマックスにおいてチーム崩壊の危機をたった一人で食い止めた。

他にもちょこちょこ出番をもらっているキャラがいるけど割愛。
ともあれ、これだけ濃いメンツを揃えれば中編としては充分でないかと。
ここでは詳しく書いていませんが、本編では各キャラの過去、種族による文化の違い、大学に入る目的についてもきっちり描写されています。
(1ページあたりの情報量は『銀の三角』に匹敵!)

侵入者が混じっているという心理的圧迫に耐え、次々と発生する物理的な問題を処理し、十一人は試験に合格できるのか?
SF好きなら必読、そうでなくても、絵に抵抗がなければ読んでおくべき珠玉の名品です――つーか読め!(笑)
試験後の彼らを描いた『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』、『スペース ストリート』も収録されてますが……前者は××と×××のハネムーン、後者はショートコメディなので、『11人いる!』ほどの衝撃はないかな……。



――【つれづれナビ!】――
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記事のためならえ~んやこ~ら♪

2006-10-22 13:50:20 | 恋愛小説
さて、どんな作品でも最後まで読むぞの第691回は、

タイトル:ラスト・ワルツ
著者:盛田隆二
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H17 単行本初版:H5 新潮社刊)

であります。

18歳で上京してきた青年の「ぼく」は、12年後のいまはある情報誌の編集の仕事をし、妻と2歳になる娘がいる男だった。
あるとき、新宿のバーで、花菜子さんに再会した。

12年前、上京したときに3週間ほど一緒に暮らしたことがある花菜子さんは、上京したばかりのときに出会ったメグが所属するアングラ劇団のメンバーとして出会った。
3歳の息子がいる花菜子さんと暮らすようになったとき、花菜子さんは犬の首輪をつけて帰ってきた。
それはある男と他人のままつながっている証だった。

それをきっかけに、様々な事情から同居生活を解消した「ぼく」は、12年ぶりに再会した花菜子さんと、いまの家庭生活の中とで揺れ動く。

あー、おもしろくない小説の作品紹介ほどどーでもいーことはないなぁ、マジで。

構成は、1985年と1973年のふたつの時間の「ぼく」が主体となっており、最初の1985年はプロローグのようなもの。
花菜子さんとの再会が描かれ、次に1973年の「ぼく」が上京したとき、そしてまた12年後に再会してからの物語が描かれている。

まずはひとつ。
これはまぁ、男が書いた男のための恋愛小説、と言えるだろう。
しかも何となくもしかして……と思っていたら、「ぼく」は著者がモデルの小説だと堂々とあとがきで書いてあった……。

私小説かよ……最悪……

まぁ、私小説嫌いにはこの時点で評価はがた落ちだが、読みにくさもまた評価を下げる。
著者の初期作品で、あとがきでも自分の文章の稚拙さに愕然としたとあるが、ほんとうに、下手だ。

何はともあれ、とにかく「間」が悪い。
場面転換などでの「間」や、行間の「間」など、想像力がそのシーンを描き、流れていく、そんな流暢さはほとんどない。
特に前半部分はそれが顕著で、キャラの行動、言動すべてにおいて激しくコマ落ちするアニメでも見ているようなもの。

そのせいで作品の世界には入っていけないし、読み進めるのには苦労するしでいいとこなし。

ストーリーも、世界に入っていけないとなかなか同調することは出来ないし、だらだらと進むだけでメリハリもない。
読みにくいだけで、物語そのものがおもしろければまだいいのだが、私小説であることを差し引いても、まったくおもしろいと思える余地はなかった。

もっとも、これは他の作品を含めて「恋愛小説三部作」と言うことになっていると言うことで、別の作品を読んでいれば、また違った評価になるかもしれない。
ストーリー面においてのみ、だが。
総評、落第。