つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

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えぇ! これが!?

2012-07-15 20:38:41 | ファンタジー(現世界)
さて、第1023回は、

タイトル:吸血鬼のおしごと
著者:鈴木鈴
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'02)

であります。

本を読むのはたいてい帰りの電車の中です。
そして読む速度は、おもしろいかおもしろくないかで顕著に変わってきます。

この作品はと言うと……かな~り読み進めるのに苦労しました。
でもこの作品、第8回電撃ゲーム大賞選考委員奨励賞受賞作なんですねぇ。

さて、そのストーリーはと言うと……

『ところはローマ。神学校に通うレレナは、叔父でもあるガゼット大司教に呼ばれて中央礼拝堂に来ていた。
そこでガゼット大司教から語られたのは、日本行きの言葉。日本人を母に持つハーフであるレレナは日本語がぺらぺらなので選ばれたと言うこともあるのだが、レレナはそこにクルセイダルと言う重要な任務の匂いを感じ取って日本行きを決める。

ところ変わって日本。東京都内にある何の変哲もなく、特徴らしい特徴もないのが特徴のベッドタウン湯ヶ崎町。
そんな町でツキ(黒猫)は、ボスとして君臨しつつも主人である月島亮史を叩き起こすところであった。
月島亮史――職業フリーター、種族吸血鬼。
日光がダメで、にんにくがダメで、十字架がダメで……いわゆるまんま吸血鬼の亮史は、日の出ている日中生活できないため、夜のアルバイトをしながら、血液パックの血を飲み、ついでに普通の人間のようにも食事をしながら、また使い魔のツキとともに何とか平穏に暮らしていた。

そんな亮史が住む廃屋同然の洋館に現れたのは幽霊だった。
顔半分がえぐれてしまったままの状態で現れた幽霊は、「痛い、苦しい」と訴えるが、亮史は幽霊の何たるかを知っていたため、その訴えを取り除くことができた。
……できたのはいいのだが、雪村舞と名乗ったその幽霊は、あろうことか亮史にまとわりつき、亮史の住む洋館にほとんど押しかけ同然で居着いてしまったのだ。

さて、ところ変わらず、湯ヶ崎町の某所。
レレナは目的地である教会を探して迷子になっていた。地図を見て、案内板を見て、場所を特定できたのはいいけれど、そこは空き地で教会などない。
途方に暮れたレレナは、寂しさのあまり、たまたま見つけた黒猫に縋るようにして黒猫を追いかけ――それはツキだったのだが――幽霊に続いて亮史の洋館に転がり込んでしまう。

ツキの忠告も聞かず、舞とレレナを受け入れてしまう亮史。
平穏な生活に珍客が訪れたものの、平穏な日々はそのままだったはずの湯ヶ崎町で事件が起きる。駅の看板に女性のバラバラ死体が杭で打ち付けられると言う残忍な事件だった。
その人間離れした事件の犯人を、亮史は吸血鬼の使い魔が、さらに吸血行為によって行ったために生まれた「亡者」のものと看破するが亡者は人を食らうものと関心を向けない。

しかし、その亡者にレレナがさらわれる事態となって……』

いやぁ、読むのに苦労しました(笑)
ちょうどこの前に読んだ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」がそれなりにさくさく読めたのに対して、こちらはなかなか読み進めませんでした。
と言うことで、はっきり言って、おもしろくなかったです、はい。
これが最終選考まで残って、奨励賞を受賞したのが不思議なくらいです。
私が下読みさんなら、1次選考自体、通しませんね、これ。

まずストーリーですが、ほぼあらすじのとおりです。
ただ、視点移動が頻繁です。ちゃんと視点移動の際に、段落を区切ってわかりやすくしている点はいいのですが、目的も行動原理も異なるキャラたちの視点移動が頻繁なので、かなり流れを阻害しています。
ストーリー展開も穏やかと言えば聞こえはいいですが、だらだらしているだけで、おもしろみの微片もありません。
終盤でレレナがさらわれたことで、アクションシーンが出てきますが、盛り上がりに欠けますし、表現下手なのでわかりにくいことこの上ありません。
一応今後に続く伏線を張っていますが、こうも漫然とだらだらしたストーリー展開でおもしろみもなければ、いくら伏線を張ったところで興味のわきようがありません。

キャラもまったく魅力を感じません。
表紙折り返しの解説文には「魅力的なキャラクター達が大活躍!」とありますが、このお話のどこに「魅力的」で「大活躍!」と呼べるキャラがいるのか、不思議なくらいです。
あえて挙げるとすれば亮史の使い魔であるツキくらいでしょうか。
と言うか、主人公のはずの亮史がだらしなさすぎて相対的にツキのキャラが際立っているだけ、と言うだけかもしれません。
舞、レレナのヒロイン群にも魅力をまったく感じません。
舞は最初の悲劇的な様子から一変して元気いっぱいのキャラになりますが、ただそれだけですし、レレナもこの一冊だけでは目的も見えず、ただ巻き込まれただけの子でしかありません。
解説文に惹かれて手に取ると完全にバカを見るキャラたちです。

ただ、いい点を挙げるとすれば文章でしょうか。
視点移動が頻繁なのはすでに書きましたが、突然視点が変わることもなく、ちゃんと段落を区切っているので、視点移動で混乱することはあまりありません。
無用な傍点ルビや三点リーダーなどの多用もありませんので、作法自体は比較的まともな部類に入ります。
ですが、最近、作法にはうるさくなくなったので、これがプラス点になるかと言えば、そうとも言えません。
好感は持てますが、それだけですね。
肝心のストーリー、キャラにまったく魅力を感じないのでプラス点としては微々たるものです。

と言うわけで総評ですが、あえて言を加えることもなく、落第決定。
まぁ、まだ第8回で、ゲーム大賞の時代ですし、今のようにレベルの高い作品が多数応募されてきているころではないので、こういう作品が出てくるのも仕方がないのかもしれませんが、ホントにおもしろくありませんでした。
ラノベ以外にも多数読んでて、おもしろくないのは途中で挫折するのがほとんどだったりして、及第評価が多かったのですが、久々に文句なく落第決定なのは久しぶりですね(笑)


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これが走りになるのかな?

2012-07-09 20:25:27 | ファンタジー(現世界)
さて、ふたつの意味で走りだと思うの第1022回は、

タイトル:俺の妹がこんなに可愛いわけがない
著者:伏見つかさ
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'08)

であります。

ふたつの意味で、というのはいわゆる「妹モノ」の走りではないかと言うことと、やたら長いタイトルが粗製濫造されているうちの走りではないか、と言うこと。
「妹モノ」は、これの人気にあやかってやたらと出始めた印象があるし、読む気も起きないやたら長いタイトルの作品が目につくようになったのも、これが最初ではないかと言う印象がある。

まぁ、それはさておき、アニメ化もされ、二期も決定している本作の第一作。
Wikiによると、著者人生最後の作品とも考えていたらしい作品であって、人気が出てよかったねぇ、と思ってはいるけど、内容は……。

『「普通」な人生でいい。
高坂京介は、特に趣味もなければ特徴らしい特徴もいらない――そんな「普通」で地に足のついた人生で十分だと思っている高校生だった。
家族構成は両親に妹の4人家族。
だが、この妹が京介とは正反対とも言える存在だった。

まだ中学生だが茶髪にピアス、おまけに雑誌のモデルもやるような美人でいわゆるイマドキの女子中学生の高スペック版とも言える妹で、普通なら自慢できる妹……と言いたいところなのだが、京介と妹桐乃との関係は最悪。
ここ数年、まともな会話をしたこともなければ、帰ってきたときの挨拶すら無視される始末。
もっとも、京介自身も別段そういう桐乃とのことはどうでもいいので、スルーしておけばいいだけのこと。

それで日常は過ぎていくのだと思っていたのだが、ある日のこと。
用を足しに向かった先で、出かける途中の桐乃とぶつかってしまい、桐乃のバッグの中身がぶちまけられてしまった。
拾おうとしてもそれを拒絶される始末だが、まぁ、桐乃との関係はこんなもんだと思っていた京介は、桐乃が出かけてしまったあと、玄関で妙なものを拾ってしまう。
それはアニメのDVDのパッケージで、中身は「妹と恋しよっ♪」というタイトルのゲームらしきDVD――。

家族の性格からまったくいったい誰のものか想像もつかない京介は、夕飯時、それとなく話題を振ってみると桐乃の様子が明らかにおかしい。
そこで京介は策を弄してコンビニへ出かけるふりをして桐乃の反応を見ようとしたのだが――見事にビンゴ。
そこには京介が拾ったDVDを探すために京介の部屋を家捜ししている桐乃の姿があったのだ。
明らかに桐乃の持ち物だとわかるのだが、桐乃はDVDの所有を認めない。面倒くさくなった京介は拾ったそれを桐乃に渡してさっさと退散願おうとしたのだが、桐乃の口から出た言葉は「私がこういうのを持っていてもおかしくない?」だった。

人の趣味など千差万別。桐乃がどういう趣味であろうとどうでもいい京介は「いいんじゃないか」と適当に答えてしまったのだが、これがいけなかった。
それをきっかけに、桐乃は「人生相談」という名目で京介を巻き込んでいく……。』

さて……個人的な好みの問題は置いといて、ストーリーの流れはいいと思う。
ストーリーは、京介が桐乃の秘密(オタク趣味で妹萌え)を知り、それに協力するハメになる、と言う巻き込まれ型のストーリー展開となっているが、幼馴染みの麻奈実のアドバイスをもらって、同じ趣味のSNSに入ったり、オフ会の観察を強制されたりしながら、最後には文字通りラスボスである親父との戦いを経て、「何故か」不仲の妹のために奮闘する、と言う内容。
まぁ、その「何故か」というのもわからないでもないので、京介の行動には無理はないのであろう。
私には妹がいないので、文中で同意を求められても何とも言えないが、理解はできるし、そういったところに無理がないので流れが悪くなることはない。

文章は京介の一人称で、やや好みが分かれそうな気はしないでもないが、途中で視点が変わることもなく、京介の語りで一貫しているところは好印象。
オフ会なども女性限定という縛りがあるにもかかわらず、いきなりひとりで行くのはと言う理由で観察者にされて、京介視点で描いているなど、卒がない。
無駄な傍点ルビや三点リーダーの多用などもあまり見受けられないので、文章の作法としてはきちんと一人称の作法を守って書いてくれているので文章面での評価は高い。

で、おもしろいかと言われれば、個人的には「普通」
キャラ萌えをあまりしないタイプなので、どのキャラがいいとかそういうところはない。
たぶん、キャラ萌えする人には作中徹底的にツンを貫いた桐乃が最後の最後でデレてくれたりするところにグッと来たりするのかもしれないが、あいにくとそういうのに萌えないタイプなのでデレてくれたところで何の感慨もない。
まぁ、ラストにタイトルと合わせて終わらせているのはうまく書いたな、と言う印象ではあるけれど。

と言うわけで、総評ではあるが、ラノベ点も加えて、良品としておこうか。
ストーリー展開、流れ、キャラ、文章ともに悪いところが見当たらないので、個人的におもしろかったかどうかは別にして、よくできた作品とは言えるだろう。
あとは読む人の好みの問題だと言えよう。
手放しでオススメはしないが、出来はいいので読んでみて損はない作品と言えるだろうね。

と言うわけで、総評、良品。
しかし個人的に2巻以降読むかは微妙なところ。アニメ見て、だいたいの話はわかってるってのもあるかもしれないけど、個人的にすごいおもしろかった、とは思ってないのでね。
ただ、著者にはホントによかったね、と言ってあげたい。
これが最後のつもりで書いたらしいのだから、人気も出て、続きも出て、アニメにもなって……作家を廃業しなくてすんだんだし、ね。


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匂いってわかりますか?

2012-07-02 20:41:15 | ファンタジー(現世界)
さて、ラノベばっかですいませんの第1021回は、

タイトル:ストライク・ザ・ブラッド1 聖者の右腕
著者:三雲岳斗
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'11)

であります。

雰囲気とか、そういうのと似た感じで時折、匂いを感じることがある。
今回のは巻頭にあるカラーイラストと、そこに紹介されている文章を見て、「とある魔術の禁書目録」に似た匂いを感じて、初っぱなからかなりげんなりした。

とは言え、ストーリーまで似た匂いを感じるわけではないので、読み進めてはみたけれど……。

さて、ストーリーは、

『見習いの剣巫である姫柊雪菜は、所属する獅子王機関の長老である三聖に呼び出されていた。
そこで簡単な実力を試され、三聖の意図するところがわからない雪菜は、わけがわからないまま、第四真祖の存在を知らされる。

「一切の血族同胞を持たない、唯一孤高にして最強の吸血鬼」――それが第四真祖だった。
だが、他の真祖とは異なるその存在は、名前は知られていながらも都市伝説の類だと思っていた雪菜は、しかし三聖から第四真祖が実在することを教えられ、一枚の写真を見せられる。
そこに写っていたのは暁古城という男子高校生のもので、ごくふつうの高校生にしか見えない。
だが、その暁古城が第四真祖であり、雪菜はその監視役――場合によっては抹殺することを命じられる。

一方、自分の生活の裏でそんなことがあったことなと露知らぬ古城は、ファミレスの一角で友人の藍羽浅葱と矢瀬基樹とともに追試の勉強をしていた。
欠席がちで試験にも来ていなかった古城にとって追試は仕方がないのだが、夏休みも終わり間近、九教科の追試に体育のハーフマラソンの追試が待っているとなればやる気も起きない。
しかし、それでも時間は無情に過ぎていく。

勉強を教えてもらっている浅葱は、バイトがあると席を立ち、ちゃっかりと隣で浅葱の宿題を移していた基樹も用が済んだとばかりに帰って行ってしまう。
勉強を教えてもらう浅葱がいなければ、これ以上ファミレスにいても仕方がないので、古城もファミレスを後にしようとしたとき、古城は夕陽を背にしたギターケースを持った少女を見かける。
その少女こそ、姫柊雪菜――古城と雪菜の運命の邂逅だった。』

表紙の返しにある作品紹介には「学園アクションファンタジー」とあるけれど、まんまだね。
良くも悪くも普通の学園アクションファンタジーで目立った特徴もなければ、変わった設定とかもない。
設定については、最初に書いたとおり、「とある魔術の禁書目録」の匂いがするのだが、まぁ、これは後述。

ストーリーは古城の監視役に選ばれた雪菜が、あらすじのとおり接触し、ついでに古城の住むマンションの隣にまで引っ越してくると言う徹底ぶりで監視を続ける中、吸血鬼や獣人などの魔族が襲われる事件が発生し、それに首を突っ込むことになった雪菜と古城が、事件の首謀者であるオイスタッハと戦うハメになり、そしてオイスタッハの真の目的を知り、それをふたりで阻止することになる、と言うもの。
ストーリー自体はまぁまぁまとまっているほうかな。
言葉にできない違和感があるのだが、これは分析型の相方なんかが読むとしっかり説明してくれそうなのだが、感性派の私にはちょいと無理。
まぁ、ややマイナスの要素にはなるものの、そこまで気にするほどでもないのでラノベとしては許容範囲としておこう。

キャラも悪くはない。
特に性格や個性、行動原理に問題があるわけではないので、キャラ立ちはしているほうだろう。
ただ、これと言って目立つキャラがいるわけでもなく、ここでも普通さ加減が際立っているのだが……。

文章については、最初、無意味な傍点ルビがあって、これがまた続くのかと思ってげんなりしたものだが、これは最初だけでその後は三点リーダーの多用も少なく、ラノベとしては作法を逸脱しない比較的まともな文章だと言える。
相方がかなりボロクソに言っていたので、どうかと思っていたが、ストーリー、キャラ、文章ともにまともでこれはかなり意外ではあった。

マイナス面も少なく、良くも悪くも普通であることを除けば、悪いところが見当たらなさそうなラノベなのだが、上述のとおり、禁書臭が漂うのが難点だろうか。
邪推と言えばそれまでだが、その邪推をあくまでするとすれば、たとえば、

舞台となる魔族も生活する人口浮島「絃神市」。魔族も生活を保障され、その魔族の研究を行う研究機関や企業が集う街→禁書目録で言う「学園都市」
超人的な肉体を誇る獣人や吸血鬼など→能力者
獅子王機関→統括理事会
オイスタッハと言った祓魔師→まんま禁書に出てくる魔術師
同じくオイスタッハが装備する肉体強化などを行う装備→禁書目録で出てくる霊装

など、禁書目録の設定をアレンジしただけのものにしか見えない設定が多数出てくる。
キャラも終章で基樹が古城を監視する本来のスパイであることなど、友人でありながらスパイであると言うところなどは禁書目録の土御門に似たところがある。
気にしなければいいじゃないかと言う向きもあるかもしれないが、禁書目録を読んだことがある人ならば――ラノベではかなり人気のあるシリーズなのでラノベ好きなら読んだことない人のほうが少ないのでないかと思うが――やはり、この設定に似た匂いを感じる人は多いのではないだろうか。

完全なオリジナルを作ることは到底無理なので、何かしらの作品に似た部分が出てしまうのは仕方がないとは言え、ここまで似た匂いを振りまいていると、二番煎じという感が拭えない。

と言うわけで、それなりに悪い点はないながらも、この禁書目録臭がしてしまうと言う点がマイナスになって落第と言ったところだろうか。
もっとも、これがなくても普通の学園アクションファンタジーなので、及第以上の評価をすることはできないのだが……。


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今頃なんて言わないで(笑)

2012-06-24 17:21:35 | ファンタジー(現世界)
さて、ホントに今頃なんですが読んでみましたの第1020回は、

タイトル:図書館戦争
著者:有川浩
出版社:メディアワークス (初版:'06)

であります。

アニメ化もされ、花ゆめでマンガ化もされ、確か劇場版もやっているはず……の人気作ですが、相変わらず人気作ほど読まない、と言う法則(?)で読むのが今頃になってしまいました^^;
まぁ、レンタルでアニメ先に見ちゃったので、話の概要はわかっているのですが、原作はどんなもんかいなと言うことで、読んでみました。

ストーリーは、

『笠原郁、二十二歳、念願の図書館に就職が決まり、日々図書館業務に……もとい、図書館防衛のための訓練に精を出していた。
鬼教官、堂上の厳しいしごきに耐えながら。

図書館防衛……なぜそんなところに郁が就職したかと言うと、昭和最終年度に成立した「メディア良化法」のためであった。
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として成立した本法は、ほとんど恣意的に検閲を許すようなとんでもない法律だった。
それに対抗する形で施行された図書館法によって、図書館はメディア良化法の検閲から本を守るため、武装化。
そのために、通常の図書館員とは別に防衛員という職種まで図書館に配備されるようになったのだった。

郁が図書館防衛員を目指した理由――それは過去の出来事だった。
好きだった児童文学の完結編が出版されることを知った当時高校生だった郁は、その本を買い求めるとき、書店で良化特務機関の検閲に出くわしてしまった。
郁が求めていた本も検閲の対象となっていて、買おうとした矢先にそれを取り上げられそうになってしまう。

そこへ現れたのが郁の「王子様」
図書館法の権限でもって検閲で持ち去られようとした郁が買おうとしていた本を含む書店の本を守った彼に憧れ、防衛員の道を歩むことになったのだが……。

現実は訓練に次ぐ訓練。――しかも嫌われているのではないかと思うくらいの鬼教官のしごきの日々。
だが、それだけでは終わらなかった。
防衛員の中でも特別な職種、図書特殊部隊――ライブラリ・タスクフォースへの配属が決まってしまったのだ。
防衛員の中でもエリート中のエリートに配属され……たのはいいが、結局は訓練に次ぐ訓練、ついでに図書館業務の研修まで入ってしまい……。
タスクフォースへ配属された郁の日々はいかに……!?』

文芸書の体裁を取っていますが、中身はラノベです。

さておき、まずは全体的に見てですが、文章、ストーリーともに軽快で好感が持てます。
基本的に主人公である郁の視点で話が進み、ストーリーは防衛員としての訓練やタスクフォースとなってからの訓練、研修の中で教官の堂上や同僚の芝崎、同じくタスクフォースに配属された手塚などとの絡みを交えながら、クライマックスとなる戦闘シーン、それに外され、図書隊司令の付き添いを任された郁が遭遇する事件を経て、完結を迎えます。
訓練や芝崎などの同僚たち、堂上教官たちとのやりとり、クライマックスの戦闘シーンに至るまで軽快な語り口調でさくさく読み進めることができるでしょう。

ただ、基本郁の視点で語られますが、時折手塚や堂上の視点になったりして――まぁ、それくらいはいいのですが、郁以外の視点になったときに、誰の視点なのか判然としないところが出てくるのが、流れを阻害している感があります。
また、必要なことではあるのですが、図書館とメディア良化委員との関係など、世界観の理屈を語る場面がちらほらあり、これも流れを阻害している原因となっています。
さくさく読める、とは言いましたが、こういうところがあるので、一気に、と言うわけにはいきません。
ここはマイナス点になるでしょうか。
まぁ、そこまで酷くはないのでラノベとしては我慢できる範囲内に収まってはいるのですが。

ストーリーも全体的にまとまっていますし、見せ場も作ってくれているし、ラノベとしてはいい作品に分類できるとは思うのですが……。
世界観にツッコミを入れたくなってしまうのがちょいと難点かな、と。
いろいろと理屈をこね回してはいますが、そもそも検閲を許す法律が成立している、と言う世界が憲法などの法律をかじった人間としてはツッコミを入れたくなってしまいます。
良化特務機関が現実に出版業界や書店に損害を与えていると言う時点で、国賠法などで違憲判決を求めることは可能だし、いくら一度成立した法律を覆しにくいと説明されているとは言え、明らかに憲法違反な法律で違憲判決がばんばん出れば、政治家も動かざるを得ないとは思うのですが……。
まぁ、ここは世界観の根幹を成す部分なので、突っ込んではいけない部分でしょう。
でないと物語が成立しないのですから^^;

ツッコミ部分はさておき、総じて言えば確かに人気作になるだけあって、ラノベとしてはおもしろい作品と言えるでしょう。
全体的に軽快なテンポで進むストーリー、文章はいいところです。
やや文章に難があるところがありますが、ラノベとしてはマシなほうなのでそこまで気にしなくてもいいでしょう。
とは言え、ややマイナスなところもありますし、世界観にツッコミを入れたい気持ちが残ってしまうので、手放しで良品とは言えません。
全体的に悪くなく、どうかと聞かれれば読んでみても損はないとは言えますので、Amazonの評価なら☆4つくらいはつけられるので、限りなく良品に近い及第、と言ったところでしょうか。

と言うわけで、総評としては及第です。
あ、ちなみに文庫版も出ているので、手に取るならそちらのほうをオススメします。


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ブルーレイ予約しちゃったなぁ(笑)

2012-06-03 17:08:01 | ファンタジー(現世界)
さて、8巻出てたので2クールやるんだろうなぁの第1018回は、

タイトル:アクセルワールド 黒雪姫の帰還
著者:川原礫
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'09)

であります。

はい、四月から開始されたアニメ見て読んでみた。いつもの流れだすな^^;
アニメはとてもおもしろいんだけど、原作はいまいち良品って言えるのがないなぁってのが、これまたこのところの流れだったりするんだけど、本書はどうだろうか……。

さて、ストーリーは、

『梅郷中学校に通うハルユキは授業中、とあるメールを受信した。それはハルユキにいつも絡んでくる荒谷からのメールで、昼休みにパシリをしてこいと言う内容のメールだった。
そう、ハルユキはいわゆるいじめられっ子だった。
小柄で太った外見に自信のなさそうな言動、卑屈な思考回路……取り柄と言えば、ゲームのみと言う冴えない生徒だった。

そんなハルユキの唯一の憂さ晴らしは、やはりゲームだった。
ニューロリンカーと呼ばれる身体に埋め込まれた携帯端末から学内ローカルネットに入り、人気のないスカッシュゲームで一心不乱にボールを叩き返し、スコアを更新する――仮想空間に完全ダイブして行うそれだけが現実世界から逃れられる唯一の手段だった。

ある放課後、幼馴染みのチユリとの些細な諍いが原因で、素直に下校する気になれなくなったハルユキは図書室で時間を潰すことにした。
いつものように完全ダイブしてスカッシュゲームのある場所へ向かうと、そこに表示されていたのはハルユキがたたき出したスコアを大きく上回るスコア。――たったひとつの拠り所さえ失ったハルユキに、誰かが声をかける。
声の主は、ハルユキでも知っている学校の有名人「黒雪姫」――副生徒会長を務める美貌の上級生だった。
そしてその黒雪姫はハルユキに向けてこう言った。
「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」――と。

翌日、荒谷のメールを無視して黒雪姫が告げたラウンジへと向かったハルユキは、学内ネットワークのセキュリティを回避するためでもあり、また親密な相手であることを示す直結を黒雪姫から示される。
戸惑うハルユキは、けれどケーブルを介した直結を黒雪姫と行い、そこでハルユキは正体不明のプログラムを黒雪姫から受け取る。
そのプログラムの名前は「BRAIN BURST」。
黒雪姫がハルユキの現実を破壊すると告げたものの正体だった。

いったい何のプログラムなのか、さっぱり見当のつかないハルユキだったが、その効果は意外なところで判明する。
荒谷だった。――パシリを命じておきながらラウンジへ来たハルユキを追ってきた荒谷の暴力を回避するために紡がれた「バースト・リンク」
その瞬間、訪れたのは止まった――ように見える世界。「BRAIN BURST」によって加速された世界だった。』

これ以上書いてるとあらすじが長くなりそうなので、終わり(笑)
基本のストーリーは、ハルユキが黒雪姫から「BRAIN BURST」を受け取り、そのプログラムがもたらす仮想世界で「シルバー・クロウ」というアバターとして、黒雪姫のために戦う、と言うもの。
その合間に、幼馴染みのチユリやタクムとの話などが入って、ハルユキの人となりなどが語られるわけだが、基本的にはバーストリンカーとして「BRAIN BURST」が用意した仮想空間で格闘ゲームをやる、と言うのが大筋の流れ。

こういういわゆる仮想空間を使ったSFファンタジーは、そのうち出るだろうとは思っていたけど、これもそのひとつ、と言うことになるだろう。
さて、ストーリー展開だけど、アニメを見て知ってはいたものの、そつなく、ゲームとしてのアクションも、人間関係も適度に描写されており、全体的なまとまりはいい。
破綻もなく、盛り上げるところは盛り上げられているし、ラノベとしてはかなりクオリティの高い作品になっている。

キャラも美形ではない主人公と言うのが珍しいが、それぞれ個性もしっかりしており、キャラ立ちもしている。
ややハルユキの思考回路に「ん?」と思うことがないわけではないが、全体的に見れば些末だと言っていいだろう。

文章も及第点……というか、ラノベにしてはかなりまとも。
もともとWeb上で作品を発表していたようだが、ネット出身者のほうが文章の作法は心得ているのか、と思うくらいまともだ。
前にも携帯小説出身の作家の本を読んで、文章がかなりまともだったと思ったものだが、下手なラノベ作家よりネット出身者のほうが表現力があるのだろうか。
まぁ、細かいことを言えば言えないこともないが、全体的に表現力はいいほうなので些末なことだろう。
イラストも、アバターや「BRAIN BURST」が描く仮想世界をうまく描写していて、世界を想像するのに上手に配置されているのもプラスに働いているだろう。
まぁ、私はアニメ先行だったので、場面を想像するのはかなりたやすかったが、アニメを知らなくても十二分に想像できる描写とイラストで、うまく補完関係を築いている。

総じて、ストーリー展開、キャラ、文章ともにクオリティの高い作品と言えるだろう。
手放しとまではいかないが、ラノベとしてはオススメの部類に入る作品で、これは久々に良品の評価をしてもいいだろう。

……ただ、巻末にある解説。「境界線上のホライズン」で人気のある川上稔が解説を書いているのだが、これが解説とは名ばかりの駄文。
せっかくクオリティの高い作品に仕上がっていると言うのに、解説はホントに駄文と言うしかないもの。
はっきり言って、解説は読まないほうがいい。作品世界を損なうこと請け合いである。
私は読んで激しく後悔したからねぇ。よくもまぁ、電撃編集部もこんな駄文を解説と称して載せたわ、とその神経を疑いたくなるほどだ。
本編とは関係がないので、本書の評価を下げるつもりはないが、ほんとーに、読まないほうがいい。
これだけは断言しておく。


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(」・ω・)」う~♪(/・ω・)/にゃぁ~♪

2012-05-26 17:44:55 | ファンタジー(現世界)
さて、脳内リフレインしていますの第1017回は、

タイトル:這いよれ! ニャル子さん
著者:逢空万太
出版社:ソフトバンククリエイティブ GA文庫(初版:'09)

であります。

アニメのほうは人気あるみたいですね~。
ネット配信されているので私も見ていますが、アニメはおもしろいです。

なので、最近定番化しつつある「アニメを見る」→「原作を読む」の流れに沿って読んでみました。
さて、原作はどんなものやら……。

ストーリーは、

『八坂真尋は逃げていた。暗い夜道をただひたすらに。
なぜ逃げているのか、なぜ追われているのか、追っているのは何者なのか、さっぱりわからないがとにかく逃げていた。
助けを求めてみても、住宅街だと言うのに真尋の声に反応する者はいない。

そして道を誤ったのか、袋小路に辿り着いてしまい、追っ手の姿を見て愕然とする。
人型はしている。しかし、その背には蝙蝠のような羽を持ち、頭には突起がついていてとても人間には見えない。
進退窮まったそのとき、場違いなほど緊張感のない声とともに真尋に救いの手が差し伸べられた。
右手一本で追っ手の化け物を倒してしまったのは銀髪を靡かせたひとりの少女。人間に見えるその少女は奇妙な自己紹介をしてきた。
曰く「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」……と。

とりあえず、家に帰った真尋は、ついてきた少女――ニャルラトホテプに事情を聞こうとするのだが、ニャルラトホテプは駄菓子にテレビに大忙し。
……話をするために電光石火のフォーク刺しでニャルラトホテプに話をする体勢を整えさせた真尋は、ふとニャルラトホテプと言う名に心当たりがあることを思い出す。
それはクトゥルー神話。アメリカの小説家ラブクラフトに端を発し、他の小説家を巻き込んで発展した小説群の中でもかなり高位に位置する邪神の名前だったからだ。
そんな邪神の名前を冠するニャルラトホテプがなぜ自分のところへ? と言う疑問はもっともで、ニャルラトホテプは真尋が狙われている事情を話し始める。

曰く、地球が宇宙連合の中で保護惑星に当たること、自分が宇宙人であること、とある犯罪組織が地球でなにやら大きな取引をするらしいこと、その中に奴隷貿易も含まれていること、そしてその奴隷貿易の対象となっているのが真尋であることなどなど――。
俄には信じがたいが、先ほど化け物に襲われて、それをニャルラトホテプに助けられたのは事実。
どうやらニャルラトホテプは真尋の護衛と違法取引の組織壊滅の仕事を任されているようだし、真尋にあんな化け物と戦う術なんて持ち合わせていない。

而して、放火で拠点をなくしたニャルラトホテプは、真尋の家にご厄介になりつつ、真尋の護衛をすることになったのだが……。』

う~ん、アニメがかなりテンポよくギャグやアクションを盛り込んで、おもしろく作ってくれているので、どんな破天荒な内容になっているかと思えば、意外と淡々と進んでいってるなぁ、ってのが第一印象。
まぁ、ボケ役のニャルラトホテプ、通称ニャル子とツッコミ役の真尋のコンビはそれなりにいい漫才をしてくれるので、コメディとしてはまぁまぁでしょうか。

ストーリーの流れは、初手でニャル子が真尋を助けてから、真尋の家に居候することになったり、真尋の学校に転校してきたり、護衛と称して同人誌やゲームを買い漁りに行ったりと、ニャル子の趣味丸出し――ここで地球のエンターテイメントは宇宙でもかなりの人気を誇る、と言う設定が加わる――の買い物に付き合わされたりしつつ、時折襲撃してくる化け物を撃退。
それは取引が行われる場所が出現するまでの時間稼ぎで、その場所が出現するときになってからはニャル子は真尋を連れて件の組織壊滅のために動くことになる、という感じ。

ストーリー自体の流れは悪くありません。
適度な漫才に、適度なアクション――一応邪神とされているので、とても正義の味方とは思えないようなニャル子の残虐な攻撃方法など、見所もそれなりにあると思います。
要所要所にパロディも入っていて、わかる人には笑える要素にもなっています。
ただ、設定はご都合主義満載です。
たとえばニャル子たち宇宙人が使う宇宙CQCと言う格闘術。ニャル子は格闘術らしく近接戦闘にバールをメインに用いて戦うのですが、物語終盤に出てくる敵方のクトゥグアは同じ宇宙CQCを名乗りながらも炎のレーザー使う遠距離戦だったりと、何でもありです。
まぁ、作中でも「そういう設定です」と押し切る場面があったりするので、ご都合主義もここまで来るといっそ潔くて気持ちがいいくらいです。

キャラの設定はニャル子を始めとする宇宙人はクトゥルー神話のそれに沿った設定に、アレンジを加えて作られています。
まぁ、キャラ立ちは……しているほうだと言っていいでしょうか。個性はしっかりしていますし。
常識人でツッコミ役の真尋にも邪神=ニャル子さえ恐れさせるフォーク刺しと言う特殊攻撃があったりと、漫才的な意味ではバランスが取れています。
もっとも、キャラにもご都合主義の影響があるので、どうしてもキャラ立ちがはっきりしているとは言えないのが残念なところではあるのですが……。

さて、そういうわけで総評ですが、すごいおもしろい、と言うほどではなく、何事も適度におもしろい、と言う程度に収まっているので、及第というところでしょうか。
アニメのテンポが原作のほうにもあれば、コメディとしてはおもしろいとは思うのですが、案外淡々と進んでいってるほうなので、こういうところに落ち着いてしまいます。
設定もご都合主義満載ですし、客観的に見て小説としてのクオリティはさほど高いとは言えません。
まぁ、ニャル子と真尋の漫才はおもしろいところもありますし、落第にするほど悪い作品ではありませんので、こんなものでしょう。


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うん、いいね

2012-05-06 15:47:25 | ファンタジー(現世界)
さて、記事がラノベに偏ってる気がしないでもないの第1014回は、

タイトル:バカとテストと召喚獣
著者:井上堅二
出版社:エンターブレイン ファミ通文庫(初版:'07)

であります。

これも確かアニメ化されていたような気がするけど、アニメは見てません。
まぁ、単に一期を見逃して、二期から見ようなんてことをする気が起きなかっただけだったんだけど(笑)

さて、第8回えんため大賞編集部特別賞受賞作という本作だけど、ファミ通文庫ということで多大な期待はしてません。

ストーリーは、

『吉井明久は文月学園二年生になって振り分けられる振り分け試験で手応えを感じていた。
振り分け試験の途中、学園二位の姫路瑞希が体調不良で倒れてしまう、なんてハプニングもあったものの、新学期となる春には意気揚々と登校していた。

そして運命のクラス発表――一斉にクラス分けが発表されることがなく、教師が生徒にひとりひとりに手渡すと言う形で行われるクラス分けで明久が受け取った封筒に書かれていたクラスは――Fクラス。
Aクラスから成績順で振り分けられ、その最底辺に位置するFクラスだった。
つまり、明久は、「バカ」の烙印を押されたわけだった。

もっと試験はできたはずだったのにと思いつつも、Fクラスに向かう途中、やけにばかでかい教室の前を通る明久。
黒板代わりのばかでかいプラズマディスプレイにノートパソコン、個人用のエアコン、冷蔵庫にリクライニングシート――Aクラスの教室だった。
そんなAクラスの豪華設備を横目にFクラスへ向かった明久は、Fクラスの設備のひどさに愕然とする。
椅子もなく、床に座布団、机は卓袱台。しかもどれもボロボロで、直してもらおうにも担任は自前で直すようにと言う始末。

とりあえず、設備の最悪さは後回しにしてこれから1年同じクラスとして過ごす面々の自己紹介が行われ――そこへ遅刻して入ってきたのは姫路瑞希。学園二位の実力を誇る彼女がなぜ最低クラスのFクラスに?
理由は簡単。振り分け試験での途中退場は問答無用で0点扱いで、振り分け試験で体調不良になって倒れてしまった瑞希は、結局試験を最後まで受けられずにFクラスに配属されてしまったのだ。

さすがに学園二位の美少女の瑞希をこんな座布団、卓袱台だけのひどいクラスで一年間過ごさせるのは忍びない。
幸いなことに、文月学園には特殊なルールがあった。
「試召戦争」――試験召喚戦争の略称であるそれによって、クラスごとに召喚獣をもって戦い、勝利すればクラスを入れ替えることができる。
つまり、瑞希をAクラスの設備で授業を受けさせることができるのだ。

そのことを悪友の雄二に持ちかけたところ、雄二も試召戦争でAクラスに戦いを挑むことを考えている様子。
Fクラスの面々も設備の格差に不満たらたらで現状を打破したい思いは強かった。
そうして、各々の利害が一致した明久たちFクラスの面々は、Aクラスに試召戦争を挑むべく、戦いに身を投じていくのだった。』

いやぁ、期待していなかったのですが、この作品、勢いがあっていいですね(笑)
こんなに勢いのあるラノベは9Sシリーズ以来、久々ではないでしょうか。9Sシリーズには劣りますが……。
個人的には、こういう勢いのある作品は好きなので、楽しく読ませてもらいました。

とは言え、個人的にはいいのですが、客観的に見てどうかと言うとアラがやはりあります。
まず世界観の甘さが挙げられるでしょうか。
現世界をベースとした学園物ですが、よくもまぁここまで頭のいい生徒と悪い生徒が同じ学校にいられるのが不思議でなりません。
試験校と言うことですが、それ以外に何の説明もないため、明久たちFクラスの生徒がよく進級できたものだとこれまた不思議でなりません。
また、試召戦争ですが、設定自体は試験の点数がHPと戦闘力の代わりになって、それを召喚獣同士を戦わせることで勝敗を決める、と言うもので試験の点数の善し悪しがもろに戦闘に影響する、と言う一風変わったもので、これはこれでおもしろい設定でしょう。
他にも試召戦争には諸々のルールがありますが、これも戦争での戦術を構築する上での重要な要因になっていて、うまく使って物語を盛り上げてくれています。
ですが、なぜ明久たち生徒が召喚獣を召喚できるのか、そのための世界観の説明がすっぽり抜けているのは難点です。
そういうところが気になる人は、世界観の甘さに眉をひそめることになってしまうでしょう。

ストーリーは、勢いがあるのでテンポよく進んでいきます。
Fクラス代表の雄二の戦略で、いきなりAクラスではなく、段階的に上のクラスを攻略し、最終的にAクラスに戦いを挑む、と言う流れで進んでいきますが、適度にラブコメの要素も入っていて、ラノベとしての要素はきちんと押さえてあります。
キャラもメインキャラの個性はしっかりしているほうなので、好感触。
章の区切りに簡単なテスト問題がキャラの視点で回答されているところがありますが、こうしたところでも明久や他のキャラのバカさ加減が強調されていて、おもしろいです。
文章のほうも、明久の一人称で進み、途中他の誰かの視点が入ると言うこともなく、一貫して明久の一人称で進んでいくのもブレがなく、好印象です。

意外といい印象が多い本作ですが、上記に書いたように世界観の曖昧さは致命的です。
特に、分析型の読み手にとっては世界観だけでなく、他にもアラが目立つでしょうから、この手のタイプの読み手さんにははっきり言ってオススメできません。
逆に、感性派の読み手で、細かいことに拘らずにいられて、勢いや雰囲気を楽しめる方にとっては、勢いのある本作は単純に楽しめる作品と言えるでしょう。
ラブコメ要素を期待する人にも、明久をいじめて楽しんでいる島田美波や小学校の頃から明久を知っている姫路瑞希ともども、明久は惚れられているらしいので、ラブコメ展開にも期待が持てるでしょう。(美波は好きだからいじめる、と言う男性小学生レベルのようですが(笑))

……あれ? あんまり悪いこと書いてない気がしますが、これだけは言えます。
何も考えるな、勢いに任せて読み進め!(爆)
これができない分析型の人は手を出さないほうがいいでしょう。世界観や設定の甘さに突っ込みどころ満載だと思いますので。

と言うわけで、個人的にはオススメの○をつけてあげたいところですが、そうは言っていられないところがあるのでラノベ点を加えて及第と言ったところにしておきましょうか。
いや、ホント、個人的には楽しめたのですけどねぇ。客観的に見ると読み手を選ぶと言う点が致命的です。


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うん

2012-04-29 14:37:28 | ファンタジー(現世界)
さて、やっと借りられたの第1012回は、

タイトル:神様のメモ帳
著者:杉井光
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'07)

であります。

これもアニメになってたね。とりあえず、ネット配信されてたので見てはいたのだけど……正直さしておもしろいとは思ってなかった。
けっこう気に入ってみてたりすると、OPやEDも自然と頭に入ってきたりするんだけど、これはもうさっぱり覚えてないし(笑)

さておき、あらすじはアニメで知ってるんだけど、ストーリーは紹介しとかないとね。

『藤島鳴海は10月に転校してきてから1ヶ月、特にクラスに馴染むこともなく、ひとりで過ごしていて、それを普通だと思っていた。
それが破られたのはある日のこと。IT選択授業がある日で、部員がひとりもいないと言う理由で入ったパソコン部に行けなくなって、屋上の階段棟の上で時間を潰していたときだった。
パソコン部と同じくひとりしかいない園芸部員の篠崎彩夏に見つかり、弱小部同士助け合おうなんて彩夏の言葉に押されて園芸部員として活動させられることになったからだった。
おまけに彩夏がバイトをしているラーメン店はなまるに連れて行かれ、そこで堂々とニートを主張する高校の先輩テツに、ミリタリーマニアの少佐、ヒモをしているというヒロに出会う。ついでに何故か流されるままにニート探偵を名乗る少女アリスにも出会ってしまう。

そんなわけのわからない状況のとき、アリスのところへ依頼者が訪れる。四代目を呼ばれた青年は、四代目が縄張りにしている界隈で行われている薬物売買の原因究明に協力してほしい、というものだった。

たったひとりで過ごしていた日常が変わった日から数日、鳴海は彩夏とともに園芸部をやっていた。これまたあの日のように彩夏に流されるまま、はなまるを訪れ、テツ先輩たちと再会し、ついでにアリスへの出前を頼まれ――何だか日常が変わってしまったような気がするそんな折り、所在不明だった、おなじニートで彩夏の兄であるトシが久しぶりに姿を見せたことをアリスから教えられ、彩夏が心配しているからと事務所にしているアパートを追い出される。
トシを連れてテツたちのいる場所へ向かった鳴海は、またもや場に流されるままゲーセン行きに付き合わされることに。ゲーセンで遊んでいた鳴海たちだったが、抜け出してしまったトシをつい追いかけてしまった鳴海は、トシと会話をし、トシがエンジェル・フィックスと言う薬をやっていることを知らされる。

それからはなまるへ行く頻度が高くなってきて、いろいろあったある日のこと、彩夏が学校の屋上から身を投げ、植物状態になってしまう。
その出来事があってからしばらく学校にも行けなかった鳴海だったが、とあることをきっかけに、彩夏の自殺未遂の真相を知るためにアリスに依頼することになる――』

いろいろ、とはいろいろなのです(笑)
それをあらすじに書いちゃうとあらすじの量が膨大になってしまうので、こんなあらすじになってしまいました、とさ。

それはそれとして……(いいんです、あらすじ書くの苦手なのはわかってます(泣))、ストーリーだけど、クラスにも馴染む気がなく、それを日常としていた主人公の鳴海が、彩夏に連れられていった先であるはなまるで出会ったテツを始めとするニートたち、そしてニート探偵と名乗るアリスと出会って変わっていく日常の中、新種のドラッグであるエンジェル・フィックスの真相究明と彩夏の自殺未遂の真相を語る、と言うもの。
ラノベに分類される小説にしては雰囲気がやや重めで、軽く読むと言うタイプのものではないのは珍しい。
で、ストーリー自体の評価だけど、よく作られていると言う印象。
鳴海が彩夏やテツたち、アリスなどとの出会いと仲間として認知される前半と、そしてトシとの出会いと彩夏の自殺未遂から動き出すエンジェル・フィックスと彩夏の自殺未遂の真相を描く後半と、流れもいいし、エンジェル・フィックスと彩夏の関係もうまく絡められているし、ストーリー展開に破綻はない。

キャラも、安易に女のコキャラを出して萌えに走るのではなく、テツたちや四代目を始めとして女性キャラよりも男性キャラのほうが多いのも珍しい。
これは別に悪い意味ではなく、安易さを求めていないと言う意味では好印象。
また、各キャラについてだけど、天才的なハッカーの能力で情報を収集し、探偵を務めるアリスや、個性も特徴も役割もしっかりしているテツたちニート陣など、それぞれキャラ立ちしていてブレはない。
主人公の鳴海についても、鳴海の一人称でストーリーが進むため、心理描写も適度。
キャラについては文句のつけるところはないと言っていいだろう。

文章面でもかなり好印象。
上記のとおり、鳴海の一人称で語られるわけだけど、一人称の視点からブレることも逸脱することもなく、また他のラノベによくある他のキャラ視点に唐突に移転したりすることもなく、一貫している。
文章の作法も、ラノベにしては――と言うより、ラノベが作法を無視しまくっていると言うべきなのだが――しっかりしている。
若干気になるところがないわけではないが、これだけきちんとした作法で書けて、表現力があるのだから、些事と言うべきであろう。

客観的に見た場合、悪いところがほとんど見当たらないので、ラノベ点を考慮するまでもなく良品、と言えるだろう。
ラノベという枠に括らなくてもいいくらい、小説としてのクオリティの高い作品。
……なんだけど、あくまで客観的に見た場合には良品、なんだよねぇ……。
いい作品だと思うし、安易な萌えに走っていないところも好印象だったりはするし、アニメ化されるくらい人気が出るのもわからないでもないんだけど、あくまで個人的には、だけどあまりおもしろい、とは思わなかった。
いい作品なのはわかるよ、うん、ホントに。……ホントだよ?
でも私個人としては別段……なわけで、続きを読みたい気にさせるだけの魅力には欠けた作品なのですよ。
だから、続きは読まないでしょう。どうせアニメで2、3巻くらいまでの話はだいたいわかってるし、アニメ自体大しておもしろいとも思わなかったし。
まぁでも、いい作品なのでオススメはする。おもしろくなかったのは私の主観なのでね。


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コメント (1)

誰を攻略しますか?(笑)

2012-04-08 13:36:15 | ファンタジー(現世界)
さて、別にゲームのレビューをするわけじゃないよの第1006回は、

タイトル:緋弾のアリア
著者:赤松中学
出版社:メディアファクトリー MF文庫J(初版:'08)

であります。

アニメは見ましたが、MF文庫なので多大な期待はしていません(笑)
だいたいアニメ自体、ヒロインを釘宮さんがやっていた、と言うだけで見て、それっきりしばらく忘れていたくらいなので、原作を読んでみる気になったのも遅くなりました。
まぁ、アニメ自体、おもしろいともおもしろくないとも言えないものだったので、仕方ないのですが……(笑)

さておき、ストーリーは、

『遠山キンジはバスに乗り遅れて、自転車で通学していた。さすがに2年生になったばかりの始業式に遅刻するわけにはいかなかったからだ。
だが、それも突然の奇妙な声に始業式どころではなくなってしまう。
「そのチャリには爆弾が仕掛けてありやがります」
おまけに無人のセグウェイという乗り物にしかけたサブマシンガンが狙いをつけてくる始末。

ハイジャックならぬチャリジャックに幼馴染みの言っていた「武偵殺し」の名が頭をよぎる。
何もできず、爆弾に吹っ飛ばされるか、セグウェイに乗ったサブマシンガンで撃ち抜かれるか――そんな絶望的な状況からキンジを救ったのは武偵高女子寮からパラグライダーで飛び下りてきたひとりの少女だった。
セグウェイを銃撃でぶっ壊し、パラグライダーでキンジを捕まえて救った少女の名は、神崎・H・アリア。
銃器の使用が認められ、金さえ払えば何でもこなす武偵で最高のSランクの少女だった。

そしてアリアの目的は、自分のパートナーを探すことで、その相手にキンジを選んだのだった。
しかし、キンジはと言うと厄介な体質とトラウマになっている兄の死とそれにまつわる出来事から、武偵高校を辞めるつもりでいた。
だが、アリアにはそんなことはおかまいなし。男子寮のキンジの部屋に押しかけてくるわ、自分勝手に振る舞うわ、おまけにパートナーのはずが「ドレイになりなさい」と言う始末。
はっきり言って付き合うのもイヤだったが、しつこく食い下がってくるアリアにキンジは1件の事件だけ付き合うことを条件に、アリアと行動をともにすることを提案。
それを受けたアリアが選んだ事件は「武偵殺し」に関わるものだった。』

さすがMF文庫。
狙いまくってますね(笑)

まずキャラですが、ヒロインのアリア。142センチのロリ体型に恋愛ごとに疎い赤面症のオプションつきツンデレ。
サブヒロインに、キンジに惚れてて献身的に尽くすタイプの巫女さんで幼馴染み属性付きの白雪。
服装はロリだけど、身体は高2らしく、はっちゃけてるながらも実際はひねくれてる理子。
Sクラスのスナイパーで、無表情でクールなレキ……。
とりあえず、1巻で出てくるメインの女性キャラはこれだけですが、さて、

誰に萌えますか?(笑)

ついでに言うと、キンジの厄介な体質――ヒステリアモードと言って、キンジが性的興奮を覚え、それが許容量を超えると発動、普段は最低のEランクなのに、Sランクの実力を出せるようになる体質ですが……。

はい、読者サービスのための設定ですね(笑)

他にも設定にいろいろとツッコミどころはあるものの、ここまで来ると逆に潔いですね。
キャラはギャルゲーでそのまま通用するくらい王道で、読者(ゲームならプレイヤー)サービスも忘れない親切設計。
キャラに萌えられる人にはいい作品だろうなぁ、と思います。

ストーリーは、まぁ期待していなかったからか、さほど悪い印象はありませんでした。
紹介文の「大スケールアクション&ラブコメディー!!」とあるうちのアクションもそれなりの出来で迫力はあるほうでしょう。
展開にも大きな破綻はなく、比較的すんなりと読める作品になっています。
ラブコメのほうについては、まんまギャルゲーですね。フラグたてまくりです。
ギャルゲーなら1巻分が固定イベントで、選択肢によって誰を攻略するかの最初の分岐になるような感じでしょうか。
文章は……ラノベだし、傍点のルビが多くてうざったいとか、擬音でごまかすなとかいろいろと突っ込みたいところはありますが、そこは大人の対応をして受け流しておきましょう。ラノベなのですから、いちいち気にしていては読めませんよ?(笑)

と言うわけで総評ですが、MF文庫にしては当たりの部類に入るのではないでしょうか。
キャラ萌えもできますし、読者サービスもありますし、大スケールアクション……とまでは言わないけど、そこそこアクションも楽しめて、軽く読むには適していると思います。
ツッコミどころはあるものの、ラノベ点という甘さを加えてみれば、比較的オススメしやすい作品だと思います。
と言うわけで、総評は良品としておきましょう。
かなり甘めですが(笑)

それにしても、Amazonのレビューがおもしろいですね、この作品。
★5つのレビューが25で、逆に★1つのレビューが24。ものの見事に評価が真っ二つ(笑)
ここまで評価が割れる作品も逆に珍しいのかもしれませんね。私なら甘めの評価もあって、★4つくらいはつけますでしょうか。
あれこれ考えるより、何も考えずに割り切って読めばおもしろい作品だと思いますよ。
(だいたいうちのラノベのカテゴリ分けって、「ファンタジー」だし(笑))


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これもアニメから入りました

2012-04-01 15:23:02 | ファンタジー(現世界)
さて、ややこしいのを読んだ後のラノベって和みますねぇの第1003回は、

タイトル:れでぃ×ばと(Ladies versus Butlers!)
著者:上月司
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'06)

であります。

上月司って読んでいますね(相方が(笑))
でもたぶん、と言うか、確か――私も読んだ気がします。
やっぱりブランクの長さはいかんともしがたく、目録見るまでこの人の作品を読んだと言う記憶がまったくありませんでした(爆)

さて、そんな著者の新シリーズですが、作品はアニメから知りました。
Amazonってどういう選考基準でオススメを決めるのかわかりませんが、しつこく薦めてくるのでレンタル(をい(笑))で見て、原作を読みました。

では、ストーリーはと言うと、

『日野秋晴は困っていた。この体勢はかなりまずかった。不慮の事故とは言え、体勢は女生徒を押し倒している構図で、片手はボリューム感満点の胸の上。
このままではいけない。そうは思うものの身体が固まって動いてくれない。
そして女生徒がそのことに気付いた瞬間――地獄の鬼ごっこは始まった。

時は少し遡って私立白麗陵学院正門。そこで秋晴は迎えを待っていた。
生粋の金持ちお嬢様ばかりが通う元女子校の白麗陵。共学化に伴い新設された従育科――執事やメイドを育成する学科に編入してきたのだ。
やや遅ればせながらやってきた迎え。編入試験のときにも見た事務員と、ひとりの女生徒。
その女生徒は秋晴を見るなり驚いて絶句して――秋晴を連れて事務員から離れていく。何故か見覚えのあるような気がする女生徒――彩京朋美は、昔のことをあれこれ言いふらすなと釘を刺す。

そのことで幼いころから数々のトラウマを植え込まれた朋美のことを思い出す。あれこれと昔のことがフラッシュバックしたり、何故こんなお嬢様学校に通っているのか、など考えつつも、お互い昔のことは口にしないことで交渉成立。
朋美の案内で学院を案内されることになったのだが、途中、朋美がトラブル解決のために呼び出されてしまう。
とは言え、約束の四時までに職員室に顔を出せばいい秋晴は、ひとりで学院内を見て回ることにしたのだが、それが災難の始まりだった。

不良っぽい見た目に眉の古傷、右耳には安全ピンの三連ピアスと、どう見てもヤンキーな秋晴がぶらぶらと散策していると不意に呼び止められた。
呼び止めたのは、どう見ても外国産、特徴的な金髪縦ロールの美少女。だが、その縦ロールは秋晴を見るなり、その姿形から不審者扱いをしてくる。しかも秋晴の言葉など聞く耳持たずで。
付き合っていられない――軽くいなして、ついでに見事な縦ロールをドリル扱いして、その場を去ろうとした秋晴に美少女――セルニア=伊織=フレイムハートは、プライドを傷つけられて怒り心頭、秋晴に襲いかかってきた。

なかなか鋭い攻撃を躱しはしたものの、体勢を崩したセルニアと秋晴はもつれ合うようにして転がり……件のセルニアを秋晴が押し倒す、と言う構図に相成ったわけだった。』

うむ、「乃木坂春香の秘密」に似た匂いがぷんぷんします(笑)
短編連作という形式や基本秋晴の一人称で進む体裁、お嬢様属性のキャラたち、従育科のメイドたち……かぶるところはそれなりにあるので、似た雰囲気に見えてしまうのは仕方ないでしょう。
まぁ、不幸体質の秋晴と「乃木坂春香の秘密」の裕人とはキャラは違いますし、裕人の語るうざったい比喩表現がないので、こちらのほうが遙かに読みやすいんですが。

さておき、現在12巻まで出ている本書ですが、第1巻の内容は、各種紹介と言ったところでしょうか。
白麗陵に編入して再会した腹黒幼馴染みの朋美、イギリス貴族の血を引くプライドが高くて思い込みの激しい金髪ドリルのセルニア、とある事情で男装して従育科に通う大地薫、天然系超絶ドジっ子の四季鏡早苗と言ったヒロインなどのキャラ紹介に、舞台となる白麗陵の紹介、どこが執事やメイドを育てるんだと言わんばかりの従育科の授業内容とそれを取り仕切る教師長の深閑、数少ない同じ従育科の男子生徒などの脇キャラの紹介などなど。
シリーズとして続けるに当たっての基本事項が第1巻では語られることになります。

ストーリーは……まぁ、バカっぽいです(笑)
と言うか、過剰なくらいおバカです。
基本線は、秋晴が各ヒロインたちが巻き起こす災難に巻き込まれると言うもので、その災難がまずあり得ないくらいバカなネタで進んでいきます。
朋美と大地は比較的常識派なので、朋美が絡むと秋晴のトラウマが刺激されはするものの、そう大きなことになりませんが、他のキャラ――特にセルニアや四季鏡が絡むととんでもないバカっぷりが発揮されます。
ここまで来ると、いっそ気持ちいいくらいです。
キャラもそれに見合った個性の突き抜けたキャラが多く、常識と言う言葉を遙か彼方へ飛ばしてくれるバカさ加減に花を添えてくれます。
文章は……ラノベだからあえては語りますまい……。いろいろ突っ込みたいところはあるけれど、ラノベだからと寛容になるのが吉でしょう。

いちおう、作品紹介には「ちょっぴりえっちなハイソ系禁断(!?)ラブコメディ」とありますが、1巻からはラブコメっぽい要素はほとんど見受けられません。
まぁ、いちおう12巻まで読んでいるので、おいおいラブコメにはなっていきますが、1巻だけ見ればどこがだ? と疑問には思います。
「ちょっぴりえっち」という部分は、まぁ、それなりです。どこかの駄作のようにヤってるシーンがあるようなことはなく、かわいらしい程度のエロさ加減です。
そういう方面を期待するとやや肩透かしを食らうような気はしないでもありませんが、「ちょっぴり」に偽りはないので文句は言えません。
と言うか、あとがきでエロコメと担当に言われて認知されつつあると書いてありますが、そこまでエロいかなぁ、この作品。
ホントにかわいらしい程度ですよ?

で、総評ですが、ラノベ点も加えて良品をあげてもいいのではないでしょうか。
話の流れも悪くないし、テンポもいい。何も考えずに単純に楽しめる軽い作品で、短編連作と言うことで読みやすさもある。
1巻だけ見ると紹介が主で物足りない部分はありますが、2巻以降、基本路線は維持しつつも、朋美、セルニアと言ったメインヒロイン以外のサブヒロインとのエピソードも絡めてラブコメは進展していきます。
キャラものとしても、個性の際立つキャラが多いし、各キャラとも立っていますのでお気に入りのキャラも見つかるでしょう。

そういうわけで、12巻までとりあえず楽しく読ませてもらっているとところも含めて良品とします。
たったひとり相手のラブコメに14巻以上もかけている「乃木坂春香の秘密」とは違って、いろんなキャラとの絡みを交えつつ、完結の道筋をつけてくれているので、シリーズとして安心して手を出せるでしょう。


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