つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

俺の葬送曲を聞けぇ~!

2005-11-30 12:06:57 | マンガ(少年漫画)
さて、実はまだ一年じゃない第365回は、

タイトル:ハーメルンのバイオリン弾き(全37巻)
著者:渡辺道明
文庫名:ガンガンコミックス

であります。

壊滅的なギャグとドシリアスを使い分ける少年漫画。
チェロぐらいの大きさの巨大バイオリンを担いだ勇者ハーメル(+愉快な仲間達)と人類を滅ぼさんとする魔族の戦いを描いたファンタジーです。

とにかくギャグとシリアスの差が激しい。
メインキャラすべてにヘタレ属性とトラウマの二種類が用意されており、場面によってコロコロとキャラの顔が変わります。
キャラがシリアスっぽくいけるのは出た当初のみ、どんなマヂキャラだろうが長く出続けるとギャグのネタにされるという恐るべき世界。(笑)
(まー、速攻死んじゃう方は別ですが)

主人公ハーメルは名こそ勇者ですが、筋金入りの守銭奴+人間嫌い。
少なくとも、ヒロインに猿のコスプレやらせた主人公を私は他に知りません。
常に帽子を被っていて、その下にはトラウマの元になったあるものが……。

かなりの長期連載ですが、実は一番盛り上がったのは7巻だったと思います。
いわゆる、人間対魔族の天下分け目の決戦――第二次スフォルツェンド大戦編。
個人戦での名勝負というのは星の数程ありますが、大規模戦闘で言えば少年漫画史上ベスト1と言ってもいいぐらい凄い出来でした。

ヒロインの母が人類最後の希望であるスフォルツェンドの女王だったり、女王に心酔する長髪美形大神官が敵の軍団長に一騎討ちを挑んだり、魔族に滅ぼされた国の王子が魔族一の剣士と渡り合ったり、と序盤は個人ドラマを展開。

それでも人間の力では敗色濃厚……なところに主人公様御一行出現!
世界でも一、二を争う魔曲奏者ハーメルとその親友ライエルが演奏を始めると、力尽きかけた人間達の力が倍増し、魔軍を押し返す!
意気上がるスフォルツェンド、焦り出す魔族侵攻軍、しかし……遠くでそれを見ている魔族の幹部に言わせると――「十年前と同じだ」。

そう、それでもやっぱり人は勝てない。
敵の軍団長が巨大化し、人類側は再び劣勢に立たされます。
ですが……最後の最後に……って、一応それは伏せときましょうか。(笑)

ま、これだけは言えます――
テンション高すぎ。
実際、この七巻で一気に人気が上がったらしいですし。

で、その後なのですが……トラウマ潰しの話が多くなります。
幸せな時間→それを破壊するダークな話→立ち直って旅続行、の繰り返し。
初期はともかく、完全にパターン化してしまった中盤以降は間延びした感は否めません、キャラだけなら好きな奴はいるんですけどね。

シリアスが一段落付いた瞬間にギャグが入るという形がとにかく多く、その落差も激しいため、ちょっと人を選ぶ作品だとは思います――私は好きだけど。
最初崩れてた絵も十巻ぐらいから割と安定してくるので、あのノリに付いてこれる人にはオススメ。

トキワ荘へようこそ

2005-11-29 00:14:47 | その他
さて、私まだ生まれてません、な第364回は、

タイトル:トキワ荘の青春――ぼくの漫画修業時代
著者:石ノ森章太郎
文庫名:講談社文庫

であります。

十八歳で上京し、あまりにも有名なトキワ荘時代を過ごした石ノ森の青春期。
神童、と呼ばれた彼の漫画にかける情熱、苦労、空回り……等々がこれでもかとばかりにちりばめられています。

紹介されているメンバーは寺田ヒロオ、藤子不二雄、鈴木伸一、森安直哉、つのだじろう、園山俊二、赤塚不二夫、横田徳男、長谷邦夫、水野英子……。
いかんせん、その時代まだ生まれてなかった私としては、名前すら知らない方もいらっしゃるのですが、そこはそれ。
それぞれの人物解説はなかなか味わい深いものがあります。

また、各メンバーの紹介の間に当時の様々なエピソードが挿入されています。
漫画を書いてる時の話だけでなく、食事の話、お金の話、当時まだ中高生で石ノ森のファンだった超大御所少女漫画家達の話等々……。
最初の読者であった姉との死別、トキワ荘の終焉、スタジオ・ゼロの失敗といった、一人の青年を変えるきっかけとなった話も多数あります。

石ノ森ファンのみならず、漫画好きならオススメ。
漫画に青春をかけた人々の奮戦記、とくと御覧下さい。

素材としては面白いんだけど……

2005-11-28 00:30:48 | SF(国内)
さて、それでも作家探しはやめられない第363回は、

タイトル:ルカ ―楽園の囚われ人たち―
著者:七飯宏隆
文庫名:電撃文庫

であります。

第11回電撃大賞受賞作、つまり、つい最近出たばかりの新人さんの作品。
好む好まざるを抜きにして、こういうのには食指が動きます。
受賞作というモノには、個人の気合いという奴が詰まっているからです。

ペルシダーと呼ばれる隔離された世界。
そこに、世界で最後の人間が住んでいた。
一匹の犬と、五人の生きていない人達、それが彼女の家族だった。

しかし時は過ぎ、幼児は少女となり、世界を知る。
アヤちゃん、ヒロ君、コユキ婆、おハルさん、ゲン爺……。
優しいみんなが、どこか自分とは違うことに薄々気付いていく。

『私』は六人と一匹をずっと眺めていた。
彼らのことはすべて知っていた、些細なことまで。
そしてついに、『私』と彼女が出会う日がやってきた――!

綺麗にまとまってるけど、それだけ、といった印象の作品です。
意外性は皆無、キャラクター達の言動も、ほぼ規定の枠内に収まっている感じ。
こういう舞台設定は好きなので、期待しすぎたというのもあるのですが……。

全編、正体不明(でもないが……)の『私』の一人称で書かれています。
彼が、過去のファイルを確認するという形式を取っているので、少し時間が前後したりもしますが、特に支障はありません。
むしろ……『私』が舞台に上がらなかった方が面白かった気も、登場人物の一人になってしまってからは単なるステレオタイプのキャラにしかなってなかったし。

少女と微妙な距離にいるヒロ君の半端さ加減もちとマイナス。
思春期の女の子がちょっと興味を持った相手、以上になってないんですよね。
ベッタベタな『セカイで最後のロマンス』に落とす方がまだマシだったかと。

色々書きましたが、綺麗な作品ではあると思います。
安心して読める作品が欲しい人にはいいかな。

ただし、最後に思いっきり毒を吐いときます。
この作品、応募当初のタイトルが――
『少女禁猟区』
だったそうです。
あまりのプライドのなさ加減に、二度とこいつの作品は読みたくねーなと思いましたね。

余談ですが、相棒に――
「これさぁ、実は五人とも生者でヒロインが人工知能だったって方が良くね?」
と言ったら――
「それもそれでオチとしてはストレートやろ~」
と返されました。
私もまだまだヒネリが足りん……。(爆)

いまごろになって

2005-11-27 16:34:11 | 古典
さて、ようやく続きの第362回は、

タイトル:有職故実(下)
著者:石村貞吉 (校訂:嵐義人)
出版社:講談社学術文庫

であります。

相変わらず、べらぼうに高いな、講談社学術文庫……。
400ページ前後の文庫で1200円~。
まぁ、資料だからいいけど。

さて、官職位階や儀式典礼などを中心に平安時代の制度を解説していた上巻に続いてようやく下巻。(有職故実(上)9月25日

下巻は上巻とは趣を変えて、「服飾」「飲食」「殿舎(寝殿造)」「調度・よ車(「よ」は興の真ん中の「同」が「車」になった漢字)」「甲冑・武具」「武技」「遊戯」の7項目で、どちらかと言えば、「公」が中心の上巻に較べて、「私」の部分が大きくなっている。

「服飾」
「私」の部分が、と言ってもさすがにここは「公」の意味合いが強い。
男女それぞれの礼服が名称ごとに分けられて、解説されているんだけど、……わかりにくい……(笑)
いくら何でも、「ここの帯の先をこう取り回して、後ろに回してから云々」と文字だけで書かれてもさっぱり。
いちおう、巻末あたりにいくつか図絵はあるんだけど、いかんせん量が少ないのが残念。

「飲食」
資料的にここは1、2を争うくらい役に立つところでは、と思うところ。
当時の朝夕の食膳のことから、当時で言う「菓子」(果物)など、どういうものが食べられていたのか、などが解説されている。
ただ、「服飾」のところみたいに項目別に分けられているわけではないので、探すのに難あり。

「殿舎(寝殿造)」
寝殿造とありながらも、鎌倉時代の書院造の解説まである。
いちおう、「寝殿造」と「書院造」の項目はあるけれど、もっと小さな項目分けはされていないので、やっぱり探すのがめんどい……。
巻末の図絵も、寝殿造の建物を鳥瞰したような感じの絵があるだけ。
服飾同様、豊富な絵が入ったのがやっぱりあったほうがいいなぁ。

「調度・よ車」
簾や御頂台などの屏障具、筵や円座などの座臥具、鏡筥なごの家什具、台盤などの飲食具、灯火具などの調度、牛車などの類のよ車の解説。
このあたりは、官職位階によって使うべきものや色などが決められていたので資料的にはここは重要。
つか、使ったらいけないよーなもんを平気で使ってる話なんかあかんやろ(笑)

「甲冑・武具」
いちばん読んでておもしろくなかったところ(笑)
……じゃなくて、やっぱりこれも身につけるもの、と言うものなので、読んでるだけじゃわかりにくいんだよね。
ただ、武具は、武官とか位によって身につけられるものが違ったりするので、疎かには出来ない。

「武技」
カテゴリーを「弓技」にしたほうがいいんじゃないかと思った(笑)
流鏑馬の作法とか、騎射とか、そういうのの作法とかが解説されているところ。

「遊戯」
古典にもよく出てくる貝合(かいあわせ)や歌合などの遊びや蹴鞠など、代表的な遊戯が解説されている。
てか、何とか合わせとか、そういうのってけっこういろんな種類があるのね、と感心。
菖蒲の根合(あやめのねあわせ)って、根っこごときで何競ってんねん、と突っ込みたくはなったけど(笑)

とこんな感じの本ではあるけど、やっぱりどー考えても一般的じゃなさすぎる本だよなぁ。
しかもほとんどが文字じゃわかりにくいものばかりなので、上巻よりも取っつきにくいだろうね。

ジャンルは別にどうでもいいんじゃない?

2005-11-26 15:25:51 | ミステリ
さて、前よりはこっちのほうだなの第361回は、

タイトル:ななつのこ
著者:加納朋子
出版社:東京創元社 創元推理文庫

であります。

以前、この作家さん「ささら さや」というのを読んでみて、ラストでこけたとは言え、作品の雰囲気がよかったので2冊目をば。
どうやらこれがデビュー作で、第3回鮎川哲也賞を受賞した作品と言うことになっている。

「ささら さや」のときにも思ったけど、ミステリというジャンルでくくらなくてもいいんじゃないかなぁ、と思うくらい、いい雰囲気を持った作品だと思う。

構成としては短編連作で、主人公の一人称で話が進んでいく。
中心となるのは、本が大好きな短大生の主人公 駒子が出会った「ななつのこ」という本と、その著者である佐伯綾乃の文通のようなものと、この「ななつのこ」に出てくる「はやて」と「あやめさん」

日常の中での小さな謎に出会う駒子とそれを解き明かす佐伯綾乃のミステリ。
「ななつのこ」の中で出てくる小さな謎に出会うはやてと、それを解き明かすあやめさんのミステリ。
基本構成は、どちらも謎に対して、佐伯綾乃、あやめさんのふたりが答えを語るというもの。
最後のほうで謎解きをしておしまい、と言う構成はミステリ好きならどうなんかなぁ、と思ったりもしたけど、別段ミステリが好きと言うわけではないので、個人的には気にならない。

それよりも、やっぱり雰囲気がいい。
この雰囲気は主人公の駒子のキャラクターによるところ、それとはやてとあやめさんのふたりの場面によるところが大きいだろう。
本好きで、空想家で、微妙に発想がずれている駒子の描写や、はやてに謎解きをするあやめさんの姿など、ゆぅるりとした優しい雰囲気が随所に見られる。

こういうのを見ると、ミステリってジャンルと思わないで読むほうがいいんじゃないかなぁ、と思ったりする。
ま、ミステリなんてほとんど読まないから、こういうのも他にもあるのかもしれないけど。

ラストも「ささら さや」よりもうまく落としてくれたし、駒子の台詞もいい感じ。
最後にまた佐伯綾乃=……のひとに宛てた手紙のような形で書かれた部分も、やや間延びした感がないわけではないけれど、許容範囲。

分量も全7話で、1話はだいたい40~50ページくらいで読みやすいし、ミステリという言葉から受ける殺人だの何だのと言ったどろどろしたのはないので、ミステリはちょっと……と言うひとでも十分楽しめるはず。

総評として、これはけっこうオススメできる作品と言っていいだろうね。

そういうものということで

2005-11-25 21:39:10 | ファンタジー(現世界)
さて、またまた初めてのひとの第360回は、

タイトル:天球儀文庫
著者:長野まゆみ
出版社:河出文庫

であります。

まずはカテゴリーに迷った。
ファンタジーというと、だいたいラノベ系がほとんどで、迷うことなんかないんだけど、これは小説全般と言いたいところだけど、作品の持つ不思議な世界観からあえてファンタジーに。

内容は春夏秋冬の各季節を舞台にした少年たちの日常を描いたもので、最初は秋から。
そして、冬、春、夏の順番に4つの物語。

まず最初に、この作品は「そういうもの」だと思って世界観を捉える必要がある。
「筆記帳」に「ノオト」というルビを振っていたり、おなじ文字を続けるのに「ゝ」の記号を使っていたりする。

だからと言って、こういう表記の仕方がされていた時代の話かと言うと、そうでもない。
物語が始まるのが秋で、そこが新学期と言うことは日本の区別ではないので、では外国かと言えば、必ずしもそうとは言えない。

こうしたところが引っかかったのは引っかかったが、そのうち、この世界観をそのまんま捉える、と言うか受け止めることで、とても不思議な雰囲気を持つ作品に見えてくる。
文章的なところを拘ると、たぶんこの雰囲気を味わうことが難しくなるのではないかと思うので、まずはそういうものだと思うこと、だろうと思う。

で、ストーリーはアビと言う少年と、その友人である宵里(しょうり)と言う少年の日常を描いた短編連作。

秋 月の輪船
冬 夜のプロキオン
春 銀星ロケット
夏 ドロップ水塔

の各話で、「月の輪船」は学校で行われる野外映画や古ぼけたレコード、音楽室で歌っていた少年との関わりを描いた話。
「夜のプロキオン」は、毎年のように行っていた宵里の伯父の別荘へ行き損ねた夜に出会った小さな子供との不思議な話。
「銀星ロケット」は題名ともなっている、毎月のように打ち上げられている銀星(ルナ)ロケットを絡めた、アビと宵里のちょっとした諍いの話。
「ドロップ水塔」はふたりの別れを描いたもの。

ストーリーの起伏には乏しいけれど、どの話もアビと宵里の少年ふたりの姿がうまく描かれていると思う。
作品の雰囲気もいいし、ラストの、ホテルの屋上にある水塔で見せるアビの姿や、引っ越した先から送られてきた手紙のない小包のシーンなど、いい余韻を持たせてくれるものになっている。

ただ、個人的には好きかと言われれば、う~む……と悩んでしまうなぁ。
雰囲気のあるいい作品だとは思うんだけどね。
ま、そこは趣味の問題なので、こういうのが好きなひとにはオススメかな。
「どういうのが読みたい?」って訊いてみて「こういう感じ」でヒットすれば、薦めるかな。

女性の視点って……

2005-11-24 17:38:01 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、……ネタがないの第359回は、

タイトル:ここはグリーンウッド(全11巻)
著者:那州雪絵
出版社:白泉社花とゆめコミックス

であります。

鈴:最後のほうを見て、作者も主人公に一度くらいはっ、いい目を見せてあげようと思ったんだろうなぁと思うLINNで~す。

扇:最初の方を見て、こういういじられっ子って集団に一人はいるよねって思ったSENでーす。

鈴:そういうのが主人公の話だからなぁ。
さて、なんか最近まじめにしていないような気がちょろっくらいはしてるかもしれないストーリー紹介……って、最後の「よかったねぇ」のところのイメージしかない……(爆)

扇:えーと、最後の流行語「おれがついてるよ!」と、『ここは魔王の森』のイメージしかない。(笑)

鈴:「おれがついてるよ!」はよかったねぇ。
初めて読んだときは、うんうん、よかったねぇ、と感慨があったよ(爆)

扇:何とゆーか……青春やね。
モロ少年漫画的な恋愛経路だったけど、敵役の男も影薄かったし。
ま、御都合主義ではあるが、あーでもせんとすかちゃんに勝利はないわなぁ。

鈴:つか、あれでも作者がかわいそうだとでも思わんかったら、あれはなかろ(笑)

扇:同情するなら女くれってとこだな。
こんな可愛い男の子なぞそうそうおらんという意味では、女性向けのファンタジーになってはいるわな、この話。

鈴:身も蓋もないことを……。
まぁ、初恋の女性が兄貴の嫁さんってので男子寮に逃げた主人公だからなぁ。

扇:なんか、すかちゃん談義になってきたので、とりあえずキャラ紹介行きますか。

鈴:つっても、結局最初はすかちゃんからだろ(笑)
では、蓮川一也、通称すかちゃん。
グリーンウッドの名称を戴く緑林寮に、初恋の女性である兄の嫁さん&子供から逃げるために引っ越してきたいじられキャラ。
何はともあれ、最後の最後でいいところをもらい、おそらく、ほとんどの読者の哀愁を誘った稀有なキャラ(笑)

扇:如月瞬、すかちゃんのルームメイト。
俗に言う長髪美形で、校内一女装が似合う男を自負している。
ただし、中身の男っぷりはすかちゃんの五倍ぐらいある上、したたかさは全キャラ中最高。
ちなみに……某アンドロメダな方とは一切関連がない……と思う。

鈴:きっと……いや、たぶん、……おそらく、関連はない……と推察される(爆)
さ、さて、次行こう。
池田光流。緑林寮のすかちゃんの前の寮長。お調子者で、面倒見がよさそうに見えて、けっこうどうでもよさげにすかちゃんを扱う。
特技は、顔の傷を数秒以内に修復することと女運の悪さ。
おそらく、この女運の悪さは、男女を問わず、同情を誘うほど悪い。

扇:でも、同情に値しないような気もするぞ。
手塚忍。
生徒会長、成績優秀、用意端麗、品性下劣という最強のスペックを誇るキャラ。
政治家である親父の遺伝子を受け継いでおり、冷血人間を地でいく男だったが、ただの寺の息子でしかない光流にタイマンで破れてからちょっとだけ丸くなった……以後は親友となる。
たぶん、というか、間違いなくこの漫画で一番人気な人だが、こいつの性格からして、そんなこたぁどーでもいーんだろうねぇ。(笑)

鈴:なんか、男キャラばっかだな、女キャラがいねぇなぁ……。
でもまぁ、女性キャラであえて上げるとすれば、やっぱりすみれちゃんか。
すかちゃんの兄の嫁さんで、すかちゃんの初恋のひと。
にも関わらず、まったくそんなことには気付かず、寮に顔を出しては「やっくんっ!」と抱きついてくる天真爛漫なひと。
……すかちゃん……、南無~……(爆)

扇:つっか、抱きつかれて鼻血吹くあたりと言いベッタベタに少年漫画だな。
しかし、これほど出来た主人公も珍しい……憐れだが、いい叔父さんになってもらおう。

鈴:なるだろう。彼女も出来たことだし(笑)
……って、その彼女ってどういう名前だっけ?(爆)

扇:……五十嵐巳夜、らしい。(忘却)
俗に言う、光流先輩に惹かれてツッパリ(死語)っぽくふるまっているが、中身はごくごく普通の小心者、つーか、ある意味すかちゃんとそっくり。
すかちゃんの必殺奥義、「おれがついてるよ!」で落ちた。
他に書くことないな~。

鈴:つか、落ちたっつか、っぽく振る舞ってる時点で、そういうので落ちるのはまーキャラ的に当然だろ。
……にしても、キャラ的にもストーリー的にも、もうここまで書いたら、書くことがないな、このマンガ(爆)

扇:実際、殆ど日常風景だからなぁ、そん中にたまにファンタジーが混じってるぐらいで。
そこがいいって言う人は多いんだろうけど、表層的で底の浅いエピソードは多かったな。
ま、見事にこれ以後、特に見所のある作品描いてないし。

鈴:そこがいいっつか、キャラがいいってだけではないのか?(笑)
まぁでも、一時代を築いたひとではあるわなぁ、このマンガで。
と言うわけで、唐突ですがネタもなくなったことなので、この辺でおしまいにしておきませう。
では、また来週~~~~~~~~~~~~~~~~~~。

扇:貴様もひどいことを言うねぇ~。
ま、昔を懐かしむにはいいかも知れませんね。
ではそんなところで。さよーーーーーーーーーーーーーならーーーーーーーーーー。

撃墜王を狙え~♪

2005-11-23 23:30:35 | その他
さて、ちょいと変わり種な第358回は、

タイトル:撃墜王列伝――大空のエースたちの生涯
著者:鈴木五郎
文庫名:光人社NF文庫

であります。

まだ、ドッグファイトという言葉が現実味を帯びていた頃。
至近距離の機銃戦で決着を付けていた頃の空戦パイロット達の記録です。

レッド・バロン……って、戦死してたんですね。(無知)
機体を赤く塗ってたことは知ってたんですが、本名がリヒトホーヘンというのは初めて知りました。
彼は第一次大戦時最高の撃墜王だったのですが、それでも最後は墜とされたことが逆に伝説を強化したのかも知れません。

個人的には世界最高記録保持者のエーリヒ・ハルトマンが一番好きかな。
三百五十二機という撃墜数よりも、最後に生き残ったという事実、その理由が奥さんに会いたかったから、というのが非常に味があります。
まだ二十そこそこだったということもあって周囲の人々に愛され、また自身も僚機と共に帰還することを最優先する部下思いの人物だったようです。
堅実派ってことで、英雄を求める方にはイマイチ受けが悪いかも知れないないけど、こういう人って好きですねぇ。

フランスの殺し屋ことルネ・ポール・フォンク――戦後、著書『わが空戦』で自画自賛してるけど、言っちゃったもん勝ち。(笑)
二十六歳から空中勤務開始という遅咲きでありながら、ジョークで若い隊員を和ませつつ、部隊のおにーさん的役割を果たしたデビッド・マッキャンベル。
等々、個性溢れる面々の逸話がズラリ。

戦争の記録、というより、現場の人々の苦労話に近いかも。
普通に人物伝として楽しめます、オススメ。

領土かよ、おい

2005-11-22 23:54:27 | SF(国内)
さて、再びラノベな第357回は、

タイトル:ぴよぴよキングダム
著者:木村航
文庫名:MF文庫

であります。

またも初顔合わせです。
一応、SF……らしい。

遥か三百三十三ワープの旅を終えて、三人の宇宙人は美しい惑星に辿り着いた。
その星には、各人それぞれに定められたパートナーが存在している。
「いざ、恋の試練へ!」――三つの光は弾丸のように地上を目指した。

平凡な高校二年生・森山拓は誰かの声で眼を覚ました。
どう見てもヒヨコにしか見えないそいつ――ビックルが叫ぶ。
これより貴様は我輩の従者であり、かつ領土である!

平凡(?)な高校二年生・盤座あかりは怒っていた。
突如現れたヒヨコ宇宙人・チュルリラのおかげでウザイ生活が始まったからだ。
それでも耐えなければならない、なぜなら――。

物語は三部構成。
第一部が拓の一人称、第二部があかり、第三部が双方混合となっています。
好き嫌いは別として、キャラの掘り下げは上手だと思います。

粗筋だけで大体解るかも知れませんが、宇宙人三人、そのパートナー三人のダブル三角関係で進めていくラブコメ……のように見える話。
ライバルとなる筈の宇宙人、パートナー共に非常に薄いキャラのため、実際は三角関係と呼べるような形にはなっていません。
あと、拓のパートナーであるビックル君……ダメ過ぎ、ハッキリ言って同情の余地ゼロ、おかげで宇宙人側の話がまったく面白くない。

拓とあかりに関して言えば、似た者同士です。
違うのは鬱屈した物を溜め込むか撒き散らすか、でしょうか。
そういう意味では、この二人が相手を気にするのは割と自然だと思います。
もっとも、傷を舐め合ってるだけに見えちゃうのは、私的にはどうかと思いますが……。(爆)

ただ、ちゃんとヒロイン側のドラマを描くことで、いわゆるにっちもさっちもいかない鬱屈少年が努力のどの字も感じられない行動で美少女とくっつくという、御都合主義な夢見てんじゃねーよみたいな話になってないのは評価できます。(じゃなかったら途中で放り出していたと思う)

最初に領土がどーこーのと言った台詞に、くすっと笑ってしまったので読んでみたのですが、その部分は殆ど生かし切れてません。
宇宙人とか抜きにして、主人公二人の抱えてる物に関しては割と丁寧に書かれているので、SF部分にこだわらない方にオススメします。
ただし、ラストは盛り上がらないので、あまり期待しないように。


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何となくおかしい世界……

2005-11-21 23:49:59 | 小説全般
さて、童話読むのは久々な第356回は、

タイトル:ルート225
著者:藤野千夜
文庫名:新潮文庫

であります。

またもお初の作家さんです。
カバーの解説文に引かれて手に取ってみました。

中2のエリ子と中1のダイゴ。
公園から帰宅した姉弟二人、しかし先刻までいた筈の母の姿がない。
キッチンには作ったばかりのシチューが残されていた。

結局、次の日になっも両親は戻ってこなかった。
さらに、追い討ちをかけるように次々と奇妙な事実が浮かび上がってくる。
口に出したくはない結論は一つ、ここは元いた世界とは違う。

元の世界に戻る方法を知る者は誰もいない。
途方にくれる二人、しかしたった一つだけ二つの世界をつなぐものがあった。
それは――。

まず言っておきますが、SF要素は飽くまで小道具です。
伏線らしきものは張ってありますが、演出以上の意味はありません。
二人が挑むのは『異常な状況』ですが、未経験の事態をすべて『異常な状況』とすれば、成長過程にある二人を描くのが主題であることはすぐ解ります。

基本的に姉のエリ子の一人称。
地の文、台詞共にこれでもかとばかりに固有名詞がちりばめてあり、物語にリアリティを与えています。
気が強く少々理不尽なところがある姉と、気は弱いけど筋道通った考えた方が好きな弟という性格設定も見事にはまっています。

問題は……ラストでしょうか。
この作品は『成長』という名の途中経過を主題に据えた作品です。
当然ながらそれには決定的な終わりというものがありません、そのため尻切れトンボのような終わり方になっています――多分、合わない人には絶対合わない。

現代風の童話を愛せる人にオススメ。
激しい盛り上がり、派手な演出、謎解き等を求める方には不向き。
特にカテゴライズされてるわけではありませんが、本作は一級品の童話だと思います、私だけ?

最後に、タイトルのルートには二種類の意味が込められています。
答えだけ言っちゃうと、√と道筋の二つ。
秀逸なんだけど、かなりSFを期待してしまう題名ですね。(笑)