つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いかにもな

2006-09-30 14:38:34 | 伝奇小説
さて、これぞ男性作家の第669回は、

タイトル:白妖鬼
著者:高橋克彦
出版社:講談社 講談社文庫(初版:H8)

であります。

時代は平安初期、内裏の陰陽寮に勤める弓削是雄ゆげのこれおは、命により陸奥の胆沢鎮守府で陸奥支配の一翼を担っていた。
しかし、突然の免官や都の不穏な情勢に占いを試みるとそこに表れた八卦は不吉なものだった。

自らの卦にも不可解な結果が出て戸惑う是雄は、過日に蝦夷の村で頼まれた占いをするために鎮守府を出た途中に何者かに襲われる。
撃退し、蝦夷の村で淡麻呂というすいかほどの大きな頭を持つ少年を見た是雄は、この少年が自らの占いに出たひとりの仲間だと言うことを悟り、ともに都へ戻ることになる。

是雄といわゆる付き人で弟子の甲子丸きねまるとともに都へ戻るそのとき、襲われた是雄とおなじように術士として名の高い者たちが次々と殺されていた。
是雄もまた、最初の襲撃からいくつかの襲撃を受けるもこれを撃退。
途中、夜盗の女頭目、芙蓉丸と出会い、なぜか付け狙われるものの、ともに都に戻る。

道中、殺された陰陽師のひとりの霊魂から得た情報や、都で聞いたその現状に、鬼の存在を確信した是雄は、鬼を駆逐することを使命とする陰陽師として、その鬼退治の決意を固める。
自らの卦に出てきた仲間である淡麻呂と芙蓉丸とともに。

平安時代が舞台、と言うと中期~後期の貴族文化華やかりしころ、と言うのが多いとは思うが、この時代は藤原基経の時代で9世紀後半。
陰陽師ものならばたいていは安倍晴明あたりが出るものだが、それよりももっと時代が前というのは珍しい。

とは言うものの、珍しいだけでそれ以上でもそれ以下でもない。
まず文章。
なんかいかにも男性らしい簡潔だが、これっぽっちも味気のない事実列記型。
先日の「奇術師の家」とは正反対。
こんな文章からその作品の雰囲気だの何だのを感じられるわけがない。

展開のほうは、無理はないし、すらすらと読めるのだが、ラストが尻切れトンボ。
拍子抜けしたと言う意味では意外なラスト、と言おうと思えば言えるがそれがいい意味でのラストかと言えばそんなことはない。
また、キャラだが、全員ロボットにしか見えない。

雰囲気は感じられずに無味乾燥、文章は事実列記型で味わいもなし、キャラはロボットでラストは尻切れトンボ。
いろんな意味でインパクトのある作品というわけでもなく……うわ……、いいとこなしやな、これ……(爆)

まぁ、おもしろくなかったので仕方がない。
総評、落第。

マジシャンではないらしい

2006-09-29 06:51:50 | 小説全般
さて、レビューって難しいやねの第668回は、

タイトル:奇術師の家
著者:魚住陽子
出版社:朝日新聞社 朝日文芸文庫(初版:H8 単行本初版:H2)

であります。

表題作を含む4作の短編が収録された短編集。
なのでいつものように。

「奇術師の家」
兄の嫁である義姉の言葉と、心臓病の母のことを思い、母が以前住んでいたことがあるという古家に住むことになった鮎は、ある百貨店のクレジットセンターでアルバイトをしていた。
おなじアルバイト仲間の英子や麻子などとの仕事をしながら、日々を送っていた鮎だったが、母は借り家に収められているものを勝手に出してきて使っていたりしていた。

三笠という名前の者が所有するはずの家なのに、この家も、物もすべて鬼頭という人物の者だと言いながら。

アルバイト先のクレジットセンターで起きる事件や麻子との関わり、奇術師という鬼頭という人物と母との関係などが絡み合う物語。

「静かな家」
辛辣な従姉を送る唯子は、すでに15年、夫の敬と連れ添っているはずの妻だったが、そこにはすでに愛情などと言う言葉は存在していなかった。
唯子はただ形式として、儀式としての家にのみ、執着していた。

すでに愛人がいることがわかっており、離婚を切り出されたときにもいつもどおり冷静に家だけがあればいいと告げた唯子に敬は、しかしそれは愛人の要求によって出来ないと反抗する。
そのことを後日、その愛人からの電話でも確認された唯子は家を出て、戻ってきたときに……。

「遠い庭」
夫婦のみで子のいない私は、マンションの掲示板で落としたジグソーパズルを届けてほしい、と言うメッセージを見て、拾ったパズルの微片を手に、そこへ向かった。
昼だと言うのに、現れたのは小学生くらいのミオと言う少女だった。

つんとすましたような少女のミオは、しかし帰ろうとする私を引き留め、それから時折ともにジグソーパズルをしながら、いろんな話をしたりするようになっていた……。

「秋の棺」
喫茶店兼画廊の店を切り盛りしながら画家を目指している私は、あるとき店を訪れた女性に目をとめる。
深井月子と言うその女性は、しばらくしてから再び店を訪れ、店でアルバイトをするようになる。

個性的な美貌を持つ月子が時折見せる様々な表情に思いを巡らせながら店を続けていたある時、自らの個展を開催することとなり、それと同時に月子は姿を見せなくなる。
そうして幾日か過ぎたとき、月子は店に姿を現し、私の残った絵すべてを買い、残った個展の日にちで、ある人物の絵を飾りたいと告げる……。

各短編とも、とても雰囲気があり、作品の世界に浸れる作品と言えるだろう。
表現も小難しい言い回しというわけではないが、秀逸でこの表現の部分に関しては、かなり興味深く読ませてもらった。

短編としてはかなり出来がいいほうなのだろうと思うのだが……単純に、おもしろくなかった(爆)
雰囲気もあり、いい作品なんだろうなぁ、と思いつつも、個人的には楽しめなかったので。
まぁ、ここはかなり読むひとの感性とか、好みの問題もあるので、作品そのもののクオリティが低いと言うわけではないだろう。
と言うわけで、いちおう、及第。

雌雄合体(謎)

2006-09-28 20:20:40 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、順調に巻数は伸びてるの第667回は、

タイトル:ウィザードリィ外伝第二部――鳳凰の塔(上下巻)
著者:石垣環
出版社:JICC出版 宝島COMIC

であります。

鈴:一個前のキリ番が自分じゃなくてよかったと思うLINNで~す。

扇:額に獣の数字を刻印したりはしないSENでーす。

鈴:しないのか……残念。
きっと相棒がライカンスロープだといういい証拠になると思ったのに……。

扇:ここに智恵が必要である。思慮ある者は獣の数字を解くがいい。
その数字は人を差すものであり、その数字は666である。
「ビーストォォォ!」
あ、ついつい『闇のイージス』ごっこをやってしまった。(爆)

鈴:なんか、そのフレーズ、どっかのマンガかアニメであったような気がするな……。

扇:少なし、『闇のイージス』ではないだろうなぁ。ヤンサン読んでないだろうし。
ビーストってぇと……バツ人間か?

鈴:読んでないなぁ……つか、マンガ雑誌はてんで読まんでな。
って、×人間って思いっきりダメ人間に見えるな(笑)

扇:読めよ――とは言わんがな。俺も雑誌はアフタヌーンか週間現代ぐらいしか読んでないし。
ダメ人間はひどいだろう、せめてペケ人間にしとけ。

鈴:アフタヌーンはともかくなんで週刊現代やねんっ!
……って、ペケでも一緒や(笑)

扇:いや、どこまでホントでどこまでゴシップか考えるのが楽しいんだよ。
ペケも一緒か……なら、エックス人間。

鈴:そのまんまやないかいっ!!!

扇:そのまんまで何が悪いっ!
奴等のコードネームなんて、ヒネリもなくそのまんまだぞ!
ウルヴァリンはアナグマ扱いだし、サイクロップスは一つ眼巨人って、をい。

鈴:……まー、天候を操るからストームだし、氷の能力があるからアイスマン……なんか、ひねりもクソもないな、これ……。
設定上、本人がコードネームつけてんのか、これ。

扇:知らん。
まー、設定からして偽善者バリバリのプロフェッサーが付けてる方が納得いくけど。
って、なんか妙にリアルタイムな話してんな。

鈴:そーね。
X-MENのファイナルディシジョンなんかやってるしね~。
でも、格闘ゲームしかほとんど知らん人間には、ウルヴァリンがなんか「○○のつめ」(FF4)とかつけてるあんちゃんにしか見えなくて興醒めだけど。

扇:ああ、装備したら敵がワンサカワンサカ、イェーイイェーイな爪だな。

鈴:……なんか、それ憶えがあるぞ……。

扇:ドラスリの「おうごんのつめ」だ。ピラミッドで取れるんだったかな?
まー、武闘家って素で強いからああいう制限を加えたんだろうが。

鈴:でも、レベル上げには都合いいよなぁ、この手のアイテムって。
テイルズシリーズには必ず「ダークボトル」ってエンカウント率を上げるのがあったから、レベル上げのときには重宝したな。

扇:使い捨てアイテムでそういうのを用意するゲームもあったな。確か『幻水』だったか……?
使い捨てと言えば――。

鈴:デーモン小暮がCMしてたヤツとか?

扇:「もっと上~、もっと上~、もっと上~。パァーパ!」
「はぁ~~~い(だるそうな声)」
「もっと上~(エンドレス)」
のアレだな? 他にもバージョンがあった気がするが。

鈴:いろいろあったはずだな、あれは。
でも、だいたいはやっぱり初期のほうの作品のほうがおもしろかったがね。

扇:そだな。
顔洗った後、「さっぱりしたぁ~」とかって――メイク落ちてねぇだろ! とか。

鈴:そりゃCMがちが~うっ!!!
つか、あれはメイクじゃないんだよ、閣下なんだからっ!

扇:しまった……閣下のアレは素顔だったな。
自戒して、今すぐ『蝋人形の館』をフルボリュームで流さねばならんっ!

鈴:流してくれ。
ってか、私はまともに閣下の歌を聴いたことはないんだよなぁ。
あのひとの声のすごさは歌番組とかの断片からすごいとは思ってたが。

扇:流してやろう、年末のカラオケで。
某番組内のカラオケ企画で別の歌手の曲歌ってる時があったけど、超絶的に上手かったぞ。
声量あるし、音域広いし、ありゃ化物だわ……聴くなら今度、大量にCD貸してやるぞ。(笑)

鈴:うむっ。
最近は音域も声量も並以下ってのがのさばってるから、まともに実力のあるひと……じゃなくて悪魔のは聞いてみたい(笑)
そういえば、いちおう、このマンガのもとになってるゲームにも悪魔はけっこう出たなぁ。
鳳凰の塔には出たっけか?

扇:出てない。頃も良いし、ストーリー紹介しとくか。
前作『ギルの迷宮』のラスで、ショウが禁じ手の『鳳龍虚空斬』で次元を切り裂いてしまったため、百五十年後の世界に飛ばされてしまったパーティのその後を描きます。
ショウ絡みの新キャラが登場し、益々剣術物っぽくなりました。

鈴:ただ、いちおう、それなりに重要な話をしつつも、ある意味、第三部、完結編に至るための伏線として話、って色が濃いわなぁ。
じゃぁ、キャラ紹介……の前にCMだな。


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鈴:じゃぁ、キャラ紹介。
……と言いつつも、主人公は一緒、ショウ。
鳳龍の名のつく剣術を操る侍で、魔法使い最強の呪文ティルトウェイトすら唱える最強のキャラ。
「ギルの迷宮」では、もともと敵将同士ということはあれど、ルーシディティと盛大な口げんかをしていたころの幼い面影は、これっぽっちもなくなっている。

扇:確かに、妙に大人っぽくなったよなぁ。
前作と違い、本作ではバンバン鳳龍の技を連発してます。
ロードの技っぽいものを使ったり、円月殺法ごっこをやってみたりとやりたい放題。
不死身に近い肉体を駆使して暴れ回る凄い主人公になりました……これも作者の愛ゆえか?

鈴:では、やはり前作から登場の忍者サンザ。
ショウと一緒に鳳凰の塔に入って、いろいろと家捜し(?)をしていた。
基本的に前作との変化はないが、幻影陣なる必殺技を披露したが、……まぁ、基本的に前作のキャラが変わってない時点でう~むなひと。

扇:いや、一応違いはあるぞ――シェーラと入籍した。(笑)
『虚空斬』使って愛刀を折ってしまい、しばらく根暗モード入っていたショウのために、鳳凰の塔にあるという伝説の剣『クサナギ』の噂を聞きつけてきたのが主な役割。
味方の被害を考えずに必殺技かますショウに小言言ったり、敵側の鳳龍技喰らって全身血まみれになったりと、鳳龍剣絡みで苦労が絶えない人。(前回は父親役として苦労してたけど)
必殺の『幻影陣』はこちらの本体を幻影化して攻撃だけ実体化するという反則技だが、サンザは誰かさんのような異常回復能力なんて持っていないため、途中で限界が来た。
あ、死んだわけじゃないです。(笑)

鈴:じゃぁ、次はルーシディティと対をなすヒロインのケイヒ。
女侍で、ショウとおなじ鳳龍の技を使うキャラで、不遇の身ながらタナボタ(?)で跡継ぎになったショウとは異なるながら、不遇という意味では負けず劣らずのキャラ。
屈折しているぶん、人間味は実はいちばんあったりして(笑)

扇:常に冷たい雰囲気を漂わせている、ショウの妹。
ショウがいなくなった後のゴタゴタで父親を斬り殺してしまい、処刑された過去を持つ。(まぁ、父殺しの理由は納得いくが)
長い間寺院の保存死体の一つだったが、某仮面の男(笑)の手により現世に呼び戻され、鳳龍の技を駆使してショウに肉薄する。
腕はショウと互角レベルだが、不死身の肉体を持っているわけではないので、疲れた時は重々しい台詞で誤魔化していた。意外にお茶目かも知れない。

鈴:お茶目っつか、父殺しの原因とか、結局叶わない実力とか、哀愁を誘うキャラだぁやねぇ。
ルーみたいに、どっかん爆発でストレス発散できるキャラだったらまだいーんだろうけど~(笑)
……で、他にいたっけ、紹介できそうなキャラって(爆)

扇:えーと……鳳凰の塔に行く途中でショウとサンザがスカウトした、テツ&リィナ。
テツは侍の才能がなく、戦士止まりのままの傭兵。何かいかにも侍ですって顔したショウに喧嘩ふっかけたはいいが、あっさり破れて仲間になった。弱くて無鉄砲だが、一回だけ美味しいシーンをもらう。
リィナはテツの幼馴染みの僧侶。ショウに気があったみたいだが、彼女がいると知って身を引いた。性格的には、喧嘩は良くないよと言って仲裁に入る優等生タイプ。ちなみに、一回死ぬ。

鈴:うわー、なんか、身も蓋もない、どーでもいいぜ、この二人、って言いたいくらいの解説やな。
まー、実際、役に立ってないからな、この二人(笑)

扇:ひどい言われようやなぁ。
少なくともリィナは役に立ってるぞ、唯一の回復役だし。
えーと……誰か忘れてるような気がするんだが……。

鈴:あ、そういやそうね、僧侶だし。
僧侶は、役どころがまったくなくても、職業だけで得してるよな(笑)
で、忘れてる……、あー、そうそう、若者、おじさんふたりのヒロインじゃないの?

扇:あー、そうそう、前作ではパーティの一員だったルーシディティとシェーラ。
二人とも彼氏と旦那にほっぽかれて、自国でお留守番してます。
何で連れて行ってくれないの! と怒るルーに対し、主婦の余裕の見せつけるシェーラが素敵と言えば素敵かも知れん。
まー、サンザが死んだ息子とショウを重ね合わせていることを知ってるってのもあるんだろうが……前作より遥かに母親化してるわな、シェーラ。

鈴:そゆ意味では、ルーは相変わらず、わがまま王女さまだなぁ。
色恋を知って、なんか変わったか、って強くなっただけで、ほとんど変わってないんだもんなぁ。
いちおう、待つ我慢をちょろっとだけ会得したか(笑)

扇:そこらへんは、第三部『復讐鬼の城』に期待かね。
第二部となっていますが、話はそのまま第三部に続きます。
今回の目玉は、とにかく多い戦闘。一話に一度はバトルシーンが入る、昔ながらの少年漫画をお楽しみ下さい。
では、今宵はここまでに致しとうございます。おさらば~。

鈴:そーねー。
いちおう完結編だし、……ルーの扱いにはやや疑問ありだが……(笑)
と言うわけで、今回はこの辺でお開きでございます。
来週の完結編をお楽しみに~

飛んでコンスタンティノープル

2006-09-27 17:39:12 | 時代劇・歴史物
さて、さりげに獣の数字な第666回は、

タイトル:コンスタンティノープルの陥落
著者:塩野七生
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H3)

であります。

塩野七生の『地中海戦記三部作』の第一部です。
シャレでもハッタリでもなく本物のミレニアム・エンパイア――ビザンチン帝国(東ローマ帝国)、その首都として栄華を誇ったコンスタンティノープルの最期を描く歴史絵巻。
第三部『レパントの海戦』を先に読んじゃったりしてますが、気にしないで下さい。

一四五一年二月、オスマントルコに新たなスルタンが誕生しました。
彼の名はマホメッド二世。十二歳の時に一度即位しながらも、わずか二年で権力の座を追われ、さらに五年後、父の急逝に伴って再び玉座に就いた十八歳の青年君主です。
この若者が歴史上一度しか成功していないコンスタンティノープル攻略に着手することを予測できたのは、ごく僅かな人々だけでした。
(コンスタンティノープル陥落まで、あと二年)

一四五二年三月、マホメッド二世はコンスタンティノープルの目と鼻の先に『ルメーリ・ヒサーリ(ヨーロッパの城)』と呼ばれる要塞の建設を始めました。
自身の領内に無断で城を建てようとする行為に怒ったビザンチン皇帝の抗議を、ボスフォロス海峡の安全確保のためと退け、トルコは八月末に要塞を完成させます。
さらに、ルメーリ・ヒサーリとその対岸に元からあった『アナドール・ヒサーリ(アジアの城)』の両方に大砲を設置し、海峡を通る船に莫大な通行量を要求しました。
若きスルタンがコンスタンティノープル攻略を目指していることは、誰の目にも明らかでした。
(コンスタンティノープル陥落まで、あと九ヶ月)

一四五三年四月十二日、トルコ軍は陸海両面からコンスタンティノープルに襲いかかりました。
陸では巨砲が火を吹いて城壁を震わせ、海では三百艘の船が金角湾の入口に押し寄せます。
攻撃側は陸軍だけで十六万、守備側はすべて合わせても七千しかいません。
ヴェネツィアとジェノヴァの支援を待つ、絶望的な戦いが始まったのです――。

本の解説というより歴史話になってしまいましたが、概要はそんなところです。
後に記録を残している人々が多数登場し、それぞれの視点で歴史を語るスタイルは『レパントの海戦』と同じ。ついでに名前覚えるのが大変なのも同じ……。
物理的な戦いだけでなく、ビザンチン帝国&トルコ&ヴェネツィア&ジェノヴァ、四つの勢力の立場と、コンスタンティノープルを巡る水面下のやりとりも描かれているので、無学な私でも背後関係やら戦いに至る経緯がよく理解できました。

解説に「」を付けただけの説明台詞が多かったり、各人物に対する作者の好みが露骨に出てたり、ヴェネツィア贔屓の視点がそこかしこに見えたり……と、三百六十度全方位で七生イズムが炸裂してますが、歴史年表だと『陥落』の一言で済まされてしまう事件をここまでダイナミックに描いてくれるならそれも良し。

そして皆さん、いよいよ今日のその時がやってまいります。

一四五三年五月二十九日、トルコ軍の総攻撃によりコンスタンティノープルは陥落します。
それは同時に、千年の歴史を誇るビザンチン帝国の終焉をも意味していました。
征服王と呼ばれたマホメッド二世は以後も各地を転戦し、オスマン帝国の版図を拡大してゆきます……。

西洋史好きは必読。
かなりの気合いがいりますが、読んで損はないです。
いや、『その時歴史が動いた』ごっこがやりたくて紹介したわけではないですよ。(笑)

素直に訳すと意味が違ってくるような気が……

2006-09-26 18:15:40 | マンガ(少女漫画)
さて、週に一度は漫画を紹介してるなぁ、な第665回は、

タイトル:ナイトメア☆チルドレン(全五巻)
著者:藤野もやむ
出版社:スクウェア・エニックス ガンガンWINGコミックス

であります。

かなーり前に紹介した藤野もやむの描くダーク・ファンタジー。
例のお家騒動の時期に完結してますが、影響を喰らわなかったのか、割と綺麗に終わっています。



ある日を境に、クレームドゥ=カカオの姉コルクは外界との接触を断った。
まだ八歳で甘えたい盛りのカカオは、姉を治してもらうため、何でも屋のベルスタシオ=イヴルの元を訪れる。

かなりの額の報酬を提示したにも関わらず、なぜかイヴルは依頼を断った。
納得がいかない彼女は、依頼を引き受けてくれるまで彼の小屋に居座ることを決意するのだが――。



舞台は近世ヨーロッパ――っぽい世界。
この世界には二種類のナイトメアと呼ばれる存在がいます。
片方は、その名の通り、人を夢の中に閉じこめてしまう夢魔。
もう片方は、邪眼を持ち、超常能力を行使する人間です。

夢魔は皆、同じ顔の子供の姿をしています。
幽霊のように実体が希薄で、自分の姿を変え、人の心の隙に付けいることができます。
彼らが人を夢の中に閉じこめてしまう理由は解っていません。

邪眼を持つ人々は、超常能力を除けば常人と何ら変わりがありません。
しかし、その力で他人を傷つけることも可能なため、周囲の目は冷たい。
場合によっては、彼らは夢魔と同等かそれ以下の扱いを受け、狩りの対象となります。

イヴルの裏の顔は、銃で夢魔を退治するハンターでした。
撃たれた夢魔は霧のように拡散し、取り憑かれていた人は夢から解放される。
明るく優しいカカオは、イヴルを正義の味方だと信じ、彼になつきます。
このまま妖怪バスターを続ければ、単なるヒーロー物で終わってしまうのですが――。

さすが、可愛らしい絵柄に反して、結構ダークな藤野もやむ。
そんな甘ったるい展開は許しません。

ある時、イヴルはカカオの目の前で邪眼を持つ子供を殺害します。
彼は依頼さえあればどちらのナイトメアでも殺す始末屋だったのです。
頭を撃ち抜かれ血溜まりの中に沈む子供を見て、呆然とするカカオ。
かなりえげつないシーンです。(賛辞)
(イヴルのシメの台詞が妙にズレてる感じがしましたが……ま、置いときましょう)

すったもんだの末、二人はコンビを継続するのですが……そこらへんは本編で。
基本は、カカオの天然っぷりが次第にイヴルの心を溶かしていくという展開。
ただ、これも悲劇的なラストの伏線で――って、これ以上は言っちゃまずいな。

とにかく謎が多いストーリーも魅力的でした。
イヴルの目的とか、コルク昏睡の経緯とか、ナイトメアの秘密とか、カカオ出生の……。(以下略)
これだけ謎が多いと空中分解しやすくなるのですが、おおむね回収されてます。
説明不足な部分もあるけど、想像で補える範囲内なので問題ありません。

絵は前作より安定してるし、雰囲気はいいし、程良く毒も含んでるしとかなりの良作です。オススメ。
ハッピーエンドとは言い難いオチは好みが分かれるかも知れませんが、私はかなり綺麗な終わり方だと思ってます。
『ぷりんせす☆ぶらいど☆すとーりー』という外伝もあります。こちらもどうぞ。



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王女人形売り出し中

2006-09-25 17:01:32 | SF(国内)
さて、先週に続いて、な第664回は、

タイトル:星界の紋章II――ささやかな戦い
著者:森岡浩之
出版社:早川書房 ハヤカワ文庫(初版:H8)

であります。

老舗ハヤカワが社運を賭けた(半分冗談ではない)、スペースオペラ長編の二巻目です。
実は私、スペオペには物凄い偏見がありまして、これもなかなか手出す気になれませんでした。
ま、基本はボーイミーツ・ガールだし、気楽に読めばいっか~、と自分の背中をテラトンハンマーで押してみたのですが……さて、結果は?
(一部前回の記事と重複する箇所があるように見えますが、目の錯覚です)



帝都に向かう途上、ジントとラフィールの乗る巡察艦は正体不明の敵に補足された。
勝ち目が薄いことを悟った艦長は、二人を小型連絡艇に乗せて艦外に送り出す。
二日後、連絡艇はフェブダーシュ男爵領に到着した。

男爵領での『ささやかな戦い』にケリを付け、二人は再び平面宇宙に入った。
だが、スファグノーフ門を前にして、敵の戦列艦に出くわしてしまう。
どうにか追跡を振り切り、通常空間へ戻ったものの、目指す惑星クラスビュールは戦場と化していた。

ジントとラフィールは、通信艦隊の基地から帝都行きの便に乗るという当初の計画を破棄し、クラスビュールに強行着陸するのだが――。



というわけで、作者は見事、ジントとラフィールを二人っきりにすることに成功しました。(笑)
前巻でかなり世界説明をしたおかげか、二人の会話の分量も多くなり、大分ラブコメの色が濃くなっています。
長衣姿のラフィールを見て感動的な抱擁を期待するジント君、敵軍に向かって乙女が口に出来ないようなスラングを叫ぶラフィール、敵の占領下にある街に入るために半分趣味で選んだ服をラフィールに着せるジント君! 等々、御子様二人の小冒険に相応しい(?)お遊びイベントは概ねやってますね。

物語は二部構成で、前半は宇宙を舞台にした脱出行、後半は地上を舞台にした隠密行といったところ。
宇宙ではラフィールの技能が頼みの綱でしたが、地上はジント君の独壇場となり、立場が逆転します。
地上育ちの成り上がり貴族ジントが、不慣れな世界に戸惑う王女ラフィールをフォローするという展開からして、冗談抜きで地上編は『ローマの休日』ごっこかも。

結構危険な状況にも関わらず、二人のノリが割と軽いので、空気が重苦しくなってないのは良いです。
でも、ジントが検問突破する時に脇にいるラフィールのことを、「人形です」と言って誤魔化したり、終盤辺りで、反帝国クラスビュール戦線を自称する馬鹿丸出しな連中が出てきたのはどうかと……。
まぁ、アーヴのルーツをたどっていくと地球の弧状列島にたどり着くなんていう呆れた設定に比べりゃ可愛いもんですが。

それと、前回の記事でも指摘した『奇妙なひらがな表記』ですが、さらにひどくなっています。

「しょうじき(正直)」
「きょくりょく(極力)」
「どうよう(同様)」
「ちょくせつ(直接)」
「そうばん(早晩)」

これが台詞の中だけの話なら、ジントとラフィールの年齢を設定から七歳引き(つまり十歳と九歳になる)にすることで何とかフォローできるのですが、地の文でもやっちゃってる時点で――
お話になりませんね。

飽くまで、ジントとラフィールのラブコメとして見るならギリギリ及第点……にしようかと思ったけど、やっぱ駄目な物は駄目。
二人のズレた会話とすれ違う認識は見てて楽しいんですが、それ以外がひどすぎる。
一応、次巻も読みましたが――。

天秤はどっちかなっと

2006-09-24 19:56:50 | ミステリ
さて、わんちゃんは出てこないぞの第663回は、

タイトル:レインレイン・ボウ
著者:加納朋子
出版社:集英社(初版:H15)

であります。

結婚して2年足らずの美久の家に、高校時代、同じソフトボール部のキャプテンで憧れでもあった片桐陶子から電話があった。
高校を卒業し、すでに7年が経過して久しぶりにかかってきた電話の内容は、やはり高校時代に同じソフトボール部のメンバーであった牧知寿子、通称チーズが死んだ、と言うことだった。

もともと心臓病を抱えていた知寿子は、しかし誰からも好かれるようなタイプの女性で、ある商事でOLをしていた。
残業続きだが楽しそうに仕事をしていた知寿子の死因は、心不全。

陶子は、高校時代のソフトボール部のメンバー……と言っても9人しかおらず、弱小チームだった部員全員に電話をかけていた。
知寿子の通夜の席で久しぶりに出会ったメンバーたち。
しかし、その中には、知寿子と最も仲のよかった、そして知寿子の死を陶子に知らせてきた長瀬里穂の姿がなかった……。

高校時代の友人の死、と言うものをきっかけとして描かれる加納朋子らしい短編連作のミステリ。
7編の短編から成っており、それぞれ、9人のソフトボール部員のうち、死んだ知寿子、通夜に出席しなかった里穂を除く7人の物語を通して、知寿子の死にまつわる謎が解明される。

ちなみに、
「サマー・オレンジ・ピール」
冒頭にあるように美久が陶子から電話を受けてから通夜に関わる話で導入部。

「スカーレット・ルージュ」
ソフトボール部の元副キャプテンで、ある出版社の編集者となった小原陽子が、担当する若手作家との打合せの中で、知寿子の死やその当時のメンバーの人物像などについて語られる部分。

「ひよこ色の天使」
保育士となった善福佳寿美が勤める保育園で起きた小さな失踪事件について語られる部分。

「緑の森の夜鳴き鳥ナイチンゲール
看護婦となった井上緑が軽度の胃潰瘍で入院している青年との関わりと、定期検診に来た知寿子との姿を描いた部分。
この辺りから長短はあれど、過去に知寿子と出会ったと言う話が出てきたりして、ミステリ色が匂い出す。

「紫の雲路」
暇をもてあますプーの坂田りえが姉の結婚式の二次会で出会った知寿子の兄と、知寿子の死について調査を始める部分。

「雨上がりの藍の色」
管理栄養士となり、福利厚生に関しては悪名高い商事の社員食堂に派遣されることとなった三好由美子が、一癖も二癖もある調理師たちとともに社員食堂を切り盛りする部分。
この商事が知寿子が勤めていた商事だったりと、ミステリ部分の輪郭がだいぶ見え始める。

「青い空と小鳥」
ラストで「月曜日の水玉模様」の主人公でもある片桐陶子、そしてやはりそのときの登場人物である萩広海が、里穂の失踪をきっかけに、それぞれのメンバーの情報などを得て、知寿子の死にまつわる謎が解明される部分。
広海が出てくるまで、ぜんっぜん陶子が「月曜日の水玉模様」の主人公だと気付かなかったよ、ったく……(爆)

さて、日常で発生するミステリの中から、1本の大きなミステリを解明していくと言う手法は加納朋子らしい作品で、それぞれの短編も楽しめつつ、ラストの知寿子にまつわるミステリをしっかりと締めてくれるのは相変わらず見事。
もっとも、そうしたらしさはいまいち薄い感じがするけど。

「月曜日の水玉模様」の主役ふたりが出てくるが、この作品を知らなくてもまったく問題ないし、いつもながらにきちんと読ませてくれるし、それぞれの違ったキャラの書き分け、短編ともにいいのだが、なんかいまいちラストがすっきりしない。
総評としては当然、及第だし、良品と言っていいのだが、辛うじて良かな、と言ったところ。
やっぱり、ミステリのキーとなる里穂が主人公となる短編がなく、情報不足なのがすっきりしないところかもしれない。
まぁ、レインボーだから7色=7人だからしょうがない部分はないのかもしれないけど……。

感性派向き(?)

2006-09-23 18:24:08 | ホラー
さて、ぢつはミステリなキリ番の第662回は、

タイトル:妖櫻忌
著者:篠田節子
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H16 単行本初版:H13)

であります。

起業してまだ年月の浅いアテナ書房の編集者をしている堀口は、著名な女流作家である大原鳳月の突然の死のため、その喪の手伝いをしていた。
その後、鳳月の優秀な助手である若桑律子が、きっと未完で終わるはずであろうと思っていた原稿とともに、自らの小説を持ち込んできた。

以前、律子の話を読み、研究者=論文としてはいいが、小説としては売り物にならないとしていた堀口は、その原稿を読み、ひとつの案を思い付く。
名の売れた若手演出家と死に、話題を提供した大原鳳月を影で支え続けてきた助手の、大原鳳月をモデルとした手記にすれば売れるのではないか、と。

その目論見は当たり、担当している雑誌の売り上げは上昇。
しかし、続きの原稿を見た堀口は、律子の筆に大原鳳月の影を見出す。
律子は、鳳月の遺作を自らの作品として発表しようとしているのではないか。
そんな疑念を持ち、様々な状況からそうした証拠を見つけ、確信するものの、次第に変わっていく律子の様子から理性と感情は乖離していく。

そして、死んだはずの大原鳳月は……。

裏表紙にホラー小説とあったのでホラーに分類はしたけれど、ホラーかなぁ、これ……。
確かに、ホラーっぽいところはないことはないが、ホラーという言葉のイメージとは違う、人間が持つ執着と言ったものの恐ろしさを十二分に感じ取ることが出来る。
だから、怪談のような日本的なぞっとするような怖さや、ハリウッドのB級ホラー映画のような直截的な恐ろしさ、と言うものを期待するとダメ。

この作品は、そうしたものではなく、もっと生々しい恐ろしさ、と言うのが魅力だろうからね。

ただし、やや読みにくい部分があるのが残念。
作中作として、律子が書いた作品の部分があったりするのだが、そうしたところの密度が濃すぎるきらいがある。
作中の人物の作品なのだから仕方がない部分もあるのだろうが、1行あけるなどの区切りをつけて、明らかに異なるもの、と言うところを見せてくれたりしたら、もっと読みやすくなったのではないかと思う。

ただ、雰囲気など、十二分に作品に浸れる……と言うか、引き込まれるものなので十分良品と言えるだろう。

しかし……作中で、時折登場しては主人公の堀口にあれこれと言ったりする村上顕子という女性編集者がいるのだが……。
いい女性キャラだねぇ、このひと(爆)

理性派御用達(?)

2006-09-22 20:37:27 | ミステリ
さて、ほんとうに久々にご登場願うの第661回は、

タイトル:コッペリア
著者:加納朋子
出版社:講談社(初版:H15)

であります。

自動人形に恋をする男性の姿を描いた同名のバレエ作品と同様に、人形に、様々な形の愛執を持つ人物を描いた作品で、たぶんミステリの手法を用いているのだろうが、どちらかと言うとミステリとは言いにくい。

ストーリーは、若くして独特の作風が注目された如月まゆらという人形作家が作った人形がコッペリアの位置にあり、それを中心に複数の人物が入り乱れながら進んでいく。

まずは主人公であるヒロインの聖子。
女優たった2名のアングラ劇団で女優をやっている勝気な女性で、パトロンからの豊富な資金力でありがちな貧乏劇団員とは一線を画した生活を送っている。
主人公なので当然この物語の中核であり、まゆらの作った人形の1体と瓜二つということから、様々な人間との関係を持つこととなる。

もうひとり、男性側の主人公(のはず)の了。
まゆらの人形に魅せられ、恋をするフランツ役で、まゆらが自宅兼工房にしていた家から捨てられた失敗作を持って帰るほどだったが、聖子……劇団では聖と出会い、ストーカーのように周囲に出現するが、基本的に害のない人物。

聖子=聖のパトロンとして現れる創也。
宝石商の息子で富豪ということや雛人形職人だった祖父からの知識からまゆらの才能をいち早く見抜くとともに、最もまゆらの人形に執着を持つ人物。
聖のパトロンも、もともとは瓜二つの人形がそのまま動いている、そのことから接近。

物語のキーのひとつである草太。
ネタバレからすると、あまり多くを語らないほうがいいんだが、これくらいならということで、人形作家如月まゆらの息子で、幼いころ、まゆらと別れ、祖父母に養育された。

そして最後に物語の根本をなす人形の作り手の如月まゆら。
美大に在学中、人形を描いた絵を創也に見出され、人形作家へとなった、屈折した愛情表現を持つ女性。

さて、複数の人物が入り乱れ……とは書いたが、私はミステリに明るくないので、たぶん、こういう手法はよくあるんだろう、と思っているだけなんだけど……。
それは、一人称で、各主要キャラが様々な行動を起こす……聖なら劇団でのこと、了ならまゆらや聖との関係、創也は現在の聖、過去のまゆらとの関係などが、短い間隔で語られる。

そうした中で、私みたいな感性派の流れに身を任せるタイプは、けっこう各キャラの現在、過去の状況が入り乱れ、錯綜して幻惑された印象が強い。
おそらく、相棒のような理性派で、じっくりと読み解きながらのタイプには、あれこれと想像、解読していく楽しみがあるのではないかと思う。
いちおう人死には出るが、殺人事件とかそういうものではなく、多様な人間関係のひとつの結末としての描かれ方をしているので、想像したり解読したりする楽しみはあるが、ミステリというジャンルとはかなり遠く離れた趣の作品であろう。

個人的には、前半部分でだいぶ頭の中をシェイクされてしまったので、ほほぅ~、と感心したのだが、ラストに至るところがちと消化不良かな。
まぁ、このラストでいいとは思うけど、そこに至るまでがちょっとねぇ。
やっぱり、このひと、恋愛物は苦手なんだろうなぁ、と思ったり(^^

総評、良品、ただし若干の難あり。

しかし、また通常とは違う書き方になったな。
ネタバレしないように、って思ったらこんな感じになったってことだけど(^^

お金の迷宮ではない

2006-09-21 21:04:18 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、実は外伝の方が長い第660回は、

タイトル:ウィザードリィ外伝第一部――ギルの迷宮
著者:石垣環
出版社:JICC出版 宝島COMIC

であります。

扇:GYAOで宇宙版必殺仕事人にハマってるSENでーす。

鈴:ストイックのWRCにハマってるLINNで~す。

扇:なにそれ? 意味不明なんだけど?

鈴:あー、すまん、World Rally Chanpionship、世界ラリー選手権のことだ。
GYAOで見れるのでな、F1とかよりよっぽどかこっちのが好きなのさ~。

扇:ああ、砂漠を突っ切っていくあれか?

鈴:そりゃパリ・ダカやっ!

扇:何っ! あれよりもっと凄いのか?
じゃあ、北極の氷の上を走ったり、月のクレーター越えたりするんだなっ!

鈴:いったいどこのマンガやっ!
ったく、そこまではせんが、アイスバーン走ったり、未舗装の道走ったりはするぞ。
……で、なんでGYAOの話ではなかったんかえ?

扇:さすがラリー、やることが違うな。
そうそう、銀河旋風の話だった――。
ブライガーめっさ面白ぇ!

鈴:結局そこかいっ!
まー、実際、おもしろいのは認めるが(笑)

扇:第一話の詰め込み方は凄かった……。
主要キャラ三人を強引に仲間にして、車が巨大化して戦闘機、戦闘機が巨大化してロボットになるメカニズムを説明して、さらに仕事の依頼を受けて悪人をぶった斬るとこまでたった20分ちょいでやっちゃおうってんだから……。
とりあえず、最初の仕事でいきなり、「悪人に情けは無用!」って、命乞いするザコ敵の戦闘機を握り潰しちゃう時点で――
子供番組じゃないよね。

鈴:さすが昔のアニメはひと味もふた味も違うのぅ(笑)
こういうばかばかしい(?)のが最近ないからなぁ。
ストーリーとか小難しいのを追いまくって破綻してるのがたくさん……まぁ、代表的なのはあえて言うまい。

扇:言わない方がいいだろう。
その点、ブライガーは割り切り方が凄かったな。
やってることは復讐代行なのにメインキャラのノリはひたすら軽いし、小難しい話は「イェイ!」の一言で終わらせてしまうし……アラがかえって味になるという、奇妙な作りをしている。

鈴:まー、そゆとこがまたよいのであろう。
私も……い、いや、やめよう……。

扇:な~んだ? 言ってみなはれ?
つーか、ノリで進む話って滑ると痛すぎるから、実は理詰めで書くより難しかったりするけどね。

鈴:いや、言わんっ。
もうここでは……たぶん……きっと……おそらく、言わん……と思う……。
ま、まぁ、ノリはほんまに勢いと発想が命だからなぁ。出んと話にならんし、出たら突っ走らんとあかんからのぅ。

扇:読者の皆様方、来週の木曜漫画劇場にどうぞご期待下さい。
だから、止まると停滞期間が長いんだよねぇ。(笑)

鈴:断っじて言わんっ(爆)
まぁ、そこがネックだわなぁ。
まるっきり私の書き方と一緒……(爆)

扇:それ、言ってるって言わんか?

鈴:言ってないっ! 断じて言ってない!!!
プ……はっ……やばいやばい……危うくつられるところであった……。

扇:つーか、過去の木劇漁ると――

鈴:ええいっ、やめいっっっ!!!
口と鼻両方とも塞ぐぞっ!

扇:まだまだだな、俺は掌にも口を持っている……。

鈴:うわっ……、やっぱり人外だったか……。

扇:人外言うな。
ちょっと菊地秀行キャラの血を受け継いでるだけだ。
額に眼があったり、後頭部に口があったりはせんぞ。

鈴:いや、悪い悪い、思わず本音が……(笑)
って、菊地キャラの血受け継いでる時点で、マジで人外やし、額に目がなくても、後頭部に口はなくても、掌に持ってんだから人間ちゃうやん、やっぱり。

扇:まったく、住みにくい世界になったもんだ……。
そろそろ文字数もかなり来てるんで真面目な話をしよう。
ウィザードリィの世界観を利用したオリジナル作品です。外伝となっていますが、原作ゲームとは殆どつながりがありません。(つーか、ファンタジー剣術物だし)
第一部である本作は、ひょんなことでパーティを組むことになった侍・君主・忍者・司教の四人組が迷宮支配者のギルに戦いを挑むというストーリー。

鈴:そねー。
今後の外伝のメインキャラ登場編&ストーリー導入編ってとこだぁやね。
じゃぁ、CM行っとくか。


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扇:では、いつものごとくキャラ紹介。
主人公のショウ。鉄鎧着た侍。(この世界では普通だけど)
ホウライの名家の末っ子(ただし、後で妹が生まれた)だったが、出来のいい兄貴が戦死したため跡取りにされ、ふて腐れて最前線で戦っていた時にルーと接触。彼女と死闘を演じている最中にこの世界最凶のお邪魔虫ル・ケブレスに召喚され、ギルの迷宮に放り込まれてしまう。
必要とあらばバサバサと敵を倒し、たまには情も見せたりする、至って合理的な性格。破天荒だが中身は堅物のルーとしょっちゅう衝突していたが、最終的にはお約束な関係に落ち着いた。
鳳龍剣という独特の剣術を身に付けており、魔法剣は使うわ、バリアは張るわと無敵街道まっしぐらの主人公だった。免許皆伝の腕前なので、展開に困ったら新技を出してもオッケーってあたり、存在自体が反則である。
ちなみに、モデルは『聖戦士ダンバイン』のショウ・ザマ。(笑)

鈴:では、ショウと同様にル・ケブレスに召喚されたルーシディティ・リルガミン(たぶん)
ショウと同時代に生まれ、姫将軍として名を馳せた君主(ロード)であり、作中、必殺技を持つショウとは異なれど、若くしてほとんどの僧侶呪文を修得し、剣圧で山をも砕く、と言うロードの達人の片鱗を見せるほどの実力派。
ただし、性格は極めて直情的で感性型。
当初はもともとリルガミン、ホウライ両国で敵対していたため、ショウとはことあるごとに口げんかをするなどしていたが、ショウの生真面目な侍ぶりに心を開いていく。

扇:ちなみに名前の元ネタは英語の『lucidity(洞察力、明るさ、等の意)』らしい。
では、ル・ケブレスの依頼で迷宮の調査をしていた忍者のサンザ。
忍者だが性格は中立(要するに盗賊の短刀で転職した)で、パーティ一の軽い発言で若者二人の仲を取り持つムードメーカー。最年長らしく、意味深な台詞を吐くこともあるが、普段は気のいいオッチャンといった役回りを演じている。
結構暗い過去があったりもするが、それについては後の巻の紹介で。

鈴:そのまんまやな、ルー(笑)
さて、ではサンザとともに迷宮でショウとルーを迎えたもうひとりのシェーラ。
この時点ですでに「死言マリクト」(僧侶Lv7)を唱え、「大凍マダルト」(魔術師Lv5)を唱えられる高レベルのビショップ。
もともとこの迷宮を作った狂信者集団「牙の教徒」の首魁ギルの側近だったが、その行動などに疑問を持ち離脱。
以後、ギルと敵対しつつも、老練な冒険者であり、年上のよき相談役としてお姉さん(おばさん?)ぶりを発揮する。

扇:モデルがマーベルだったりするからなぁ……。
黒髪フェチのギルさんに見初められて御子様には言えない関係になったり、次に惚れた相手が子某脳で出張続きのオッサンだったり、自分から苦労を背負うタイプだわな。
ギルは……別にいっか、紹介しなくても。どうせ後でまた出てくるし。

鈴:しまくってんなぁ、シェーラ……(合掌)
まー、いーんでないかえ、最終的には幸せになれば。最初のシルビアみたいに(笑)
……つっか、その手の話は、まんま前作のサコン、シルビアやんっ!

扇:そういやあのパーティって、サコン&ロキ&シルビア&謎の女性の四角関係で崩壊したんだった。
シルビアは強引に割り切るタイプだったが、シェーラは――末代まで祟りそうだな。
いや、好きなキャラだし、いないと困るんだけどね。
ルーとは茶飲み友達、ショウとは歳の近い叔母さんと甥って感じで上手くやってたしな。(はうっ!)

鈴:まー、どっかの狂信者集団にもいたことだし、祟るなら末代どころか……いや、やめよう、こっちが祟られそうだ……(爆)
そゆ意味では、ショウとルーのふたりって、どう考えても、見た目はショウがルーに敷かれてる感じだが、まぁ、実質はショウのほうが立場は上だよな。
ただし、ショウのばやい、「侍たるもの……」とか、言いながら我慢してそうだけど(笑)

扇:あの子の生き方、そのまんま侍だからね。
四人の色分けが上手くいってるので、コンビを切り替えて会話を進めるシーンはどれも面白かったな。ルーとサンザ組だけはイマイチしっくりいってなかったが――って、これは後の巻の話か。(爆)
以後五巻も続く外伝の序章だけあって説明的な部分は多いのですが、ウィズ物の一編としてチェックしても悪くない作品かと思います。
では、本日はこの辺で……さよーなーらぁー。

鈴:チェックってな……。
手に入りにくいんだよ、いまじゃ
まぁでも、手に入りにくいとは言え、ウィズファンには十二分に楽しめる作品のひとつとしてはオススメ。
ベニ松さんの「隣り合わせの灰と青春」とともに、日本で手に入るウィズものとしては、稀有なクオリティのある作品です。
ちなみに、まだまだ続きますが、今回はこの辺で、さよ~なら~