つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

特撮と言えばこれ

2005-01-31 18:50:00 | 映像関連
さて、ついにばれてしまった後の第62回は、

タイトル:ウルトラマン対仮面ライダー
著者:池田憲章・高橋信之【編著】
出版社:文藝春秋

どっちが強いかを比べるわけではない。

本書はいわゆるデータ本ではありません。(もちろんデータもあるが)
両作品がいかに凄い作品かを、五人の執筆者が交代で記したコラム集です。

二つのヒーローの誕生秘話から、個性的な敵の紹介、世界観、科学技術、ドラマ演出の妙、メイキングこぼれ話等々……盛りだくさんな内容な上、どのライターも語りが非常に上手い。

『勇者は黙って勝負する!! ウルトラマンの頭脳作戦』
『改造人間は不死身だ! 復活する怪人達の魅力』
『科学の光と影 科特隊とショッカー』

これらの狙いまくったタイトルを掲げ、ある時は子供時代を懐かしみつつ、ある時は大人の視点で冷静に作品を語ってくれるのも素敵ですが、何より、どの文からもウルトラマンと仮面ライダーが好きだということが如実に伝わってくるのがいいです。

はっきり言ってこれさえあれば他の本はいらないっと言っても過言ではないぐらい、いい仕事してます。ファンなら必読必携。

問題があるとすれば、1993年刊ということ。
再版してるのかなぁ……。

シリーズなら副題くらい付けろよ

2005-01-30 13:38:07 | ファンタジー(現世界)
さて、とうとうばらしてしまったあとの第61回は、

タイトル:玉響-たまゆら-
著者:時海結以
出版社:富士見ミステリー文庫

であります。

……ミステリーか?

物語が始まる直前の引用文に万葉集が使われているので、この時点でどういう舞台設定かはわかる。

話もまぁ、それなりにテンポよく読める……と思うし、設定にあった雰囲気が出ている。

ただ、文章に難あり。(上に「……」があるのはこのため)
テンポはよいほうだけど、唐突に詰まる。
それまですらすら読めていたのに、文章がまずかったり、話の展開や流れがおかしくなって、詰まる。

あと、衣装とかの描写で「御統(ネックレス)」や「裳(スカート)」など、安易に説明しすぎ。

いくらでも描写によってそれだと思わせることはできるはずだが、それをしないから場面場面の雰囲気が壊れる。

まぁ、話自体はそれなりに読める話だし、上にもあるように雰囲気は出ているので、悪くはない。

もっと文章がしっかりすれば、と言ったところ。



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もう気付かれてるに決まっているが

2005-01-29 20:29:43 | 雑記
さて、あ、さて、あ、さてさてさてさての第60回は、

タイトル:悲桜祭り
著者:諏訪萌葱
出版社:扇文庫

であります。

諸君に衝撃の事実を明かそう。

実はsen-linnで二人です。

で、そのうちの主な執筆者のLINNでーす。

で、真のメインライターのSENでーす。
(お互い何言ってんだか……)

さて、悲桜祭り、であります。
主人公は大学生、ヒロインは……、

死体だよな? 白骨化した。

なに言ってんだ、てめぇっ! ヒロインは八重、だいたい16歳前後の不思議な少女であります。

「はぁ……、早い…ぞ、八重……はぁ…オレは体力ないんだから…はぁ……もうちょっと…、あわせろよ」
という台詞から解るように、日活ロマンポルノの亜流ですな。
主役の名前も祐×郎だし。

……SEN……、名前もちゃうし、誰からもホラーと呼ばれた話をポルノにする脳みそに感服するよ。
そこは山登りするところのシーンだろーに。

そう、とんがった二つの山を――。

そうそう、二本指でとことこと……
あ、いかんいかん……(無視無視)
で、話の中身ははしょるけど、要するに、桜の古木の精霊が夜な夜な精気を求めて大学生辺りを虜にして、血を吸ったりとか……

電撃くらわしたりとか……

誰が虎縞ビキニの女の話をしとるかっ!
……まぁよい。で、血は吸わないけど、怪しく自分の本体(八重桜の古木)の前で主人公の心臓をえぐり出し、満開の桜を咲かせる八重……まぁ、確かにホラーだよなぁ。

そう、心臓を秤にかけて罪を裁くのだ。

どっかの国の神様にするなっちゅーに。
で、心臓をえぐられて主人公は死亡。
おしまい。
……ぜんぜん話の中身がわからんなぁ。

元ネタは梶井のモッくんだっけ?
ほら、第13回で紹介した桜の下の死体の話。

ジャニーズのアイドルにいたような名前だな。
まぁ、梶井基○郎の「桜の木の下には」がベースには違いない。
つか、ラストでそのまんま書いてるし。

そだっけ?(失念)×2
それにしてもこの話、盛り上がりにかけるっつーか、暗いっつーか……。
短編としてはまとまっているけど、予定調和で終わっちゃってるのが何とも。

仕方あるまい。
作者としても、最初から最後まで計算して作った初の話だからなぁ。
つか、最初で最後だろうなぁ、ここまでまとまってるのは。

あ、言っちゃった。
実は本作、LINNが書いた作品です。
彼に悪口雑言を浴びせれば公開される可能性はあるかも。

絶対ないな(断言)
まぁ、でも、これ、何故かコバルト文庫の公募で2次選考まで通ってしまった話。
予定調和すぎて個人的にはいまいちな話だと思っていただけに、かなり意外だったなぁ。
まぁ、いまとなっては懐かしい話だが……

気にするな、過去のという奴さ。
とゆーわけで、駄文で埋めた第六十回ですがそろそろお別れの時間です。(黒柳徹子風)
次回からはどっちが書いてるか予想しながら読んでみちゃって下さい。
上品な物言いをしている方が私で、著者とファンに喧嘩売ってる方がLINNです。

まぁ、こういうことを言うほうが……ってのは賢明な読者にはわかると思うので、あえて言わないけど。
ともあれ、第60回はこれにて。

いやー、書物って――本当に素晴らしいですねぇ。

あ、さいなら、さいなら、……さいならっ(どっかの映画評論家風に)

ミステリと言うか、ミステリーと言うか?

2005-01-28 14:09:15 | その他
さて、小説の探偵って魔法使いだよな、な第59回は、

タイトル:ミステリーの書き方
著者:アメリカ探偵作家クラブ
文庫名:講談社文庫

であります。

ミステリ作家によるミステリ作りの種明かし。

ま、こう言ってしまうとミもフタもないのだが、そういう本なので仕方ない。

なぜ書くのかに始まり、アイディア、プロット、構成、キャラ作り、会話、文体等々、ミステリのみならず小説全般における書き方のコツが紹介してあります。

無論、これ読んだからってすぐ書けるようになるわけではないし、共著なので人によっては正反対のことを言ってたりもするんだけど、これから書いてみようとか、書いてるけどつまっちゃってる人が本業の人間の苦労話を聞くぐらいの気持ちで読んでみるのも悪くないでしょう。

ちなみに物書き畑の人間でなくても楽しめます……多分。
種類を問わず、楽屋を覗くのって楽しいですから。

これ、日本人バージョン作ったら売れるんじゃないかな?
既にあるんだろうけど

最近いまいちなんばっかだなぁ

2005-01-27 22:51:17 | 小説全般
さて、生きていけても魔法ってのはいいなぁと思う第58回は、

タイトル:君の嘘、伝説の君
著者:清水マリコ
出版社:MF(メディアファクトリー)文庫J

であります。

いつごろか忘れたけど、初めて見る文庫だったから買ってみたもの。

裏表紙の文句は、

「K中学に通う二年生の男子、浅井操は、授業で読書感想文の音読をさせられ、とんでもなく不機嫌になってしまう。しかし、その作文を欲しいと言う女の子があらわれた。色が白く、薄茶っぽい髪と目、卵形の顔、すっきりした目のラインに沿った長いまつげ。人形のような容姿で語りかけてきた彼女の名前は神鳥智奈。ここから彼は“嘘”と“伝説”、そして“魔女”を巡る数ヶ月の物語に静かに、そして深く取り込まれていく―。」

と言うもの。

中身は……あぁ、そうですか、レベル。

十数年前のアイドル? おとなしいヒロインと快活なヒロインが同一人物。

あぁ、さいでっか。

話の雰囲気は、まぁ、ぼちぼち。
ストーリーの展開も、まぁ、ぼちぼち。

ぼちぼちばっかでおもしろいとは思わなかった。

もっとマシなのはないんかいっ!
(酔っ払いの暴言と聞き流してくれいっ)

タネも仕掛けもございます

2005-01-26 13:16:58 | 学術書/新書
さて、魔法が使えなくても生きていける第57回は、

タイトル:大魔術の歴史
著者:高木重郎
文庫名:講談社現代新書

であります。

魔法ではなく手品の話。
カップと玉(玉が消えたり増えたりする奴)から、現代のイリュージョン(と言っても昭和六十三年当時だけど)まで、さらっと解説してくれてます。
奇術の歴史をざっと一望したい人には打って付け。

カップと玉、ハンカチやシルクハットから鳩、消えたり現れたり、首切り、人体浮遊、ラップ音、ポルターガイスト、白骨化、弾丸受け、大脱出、人体切断……等々。

しかしこれだけ並べると、いかに人間がアナログ好きかってのがよく解りますね。
すべてを自分の理解の範囲内に納めようとするのに、それでいて説明つかない現象を見たがるものなのだなー、と。

デジタルからアナログを作り出すってのは創作全般に言えることだけど、手品はそのアナログ部分をどーにかして知りたい、と思わせるところが素敵である。

満月にちなんで

2005-01-25 22:01:31 | ファンタジー(異世界)
さて、野獣の幽霊なんざいらない第56回は、

タイトル:混ざりものの月 スカーレット・クロス
著者:瑞山いつき
出版社:角川ビーンズ文庫

であります。

第1回ビーンズ小説優秀賞受賞作で、混ざりものの吸血鬼ツキシロとサドな神父ギブの吸血鬼もの。

まぁ、だいたい文庫の名前とイラスト、それから裏表紙の短い説明を見た瞬間、

「あぁ、コバルト文庫みたいな少女小説系ファンタジーだろうなぁ」

……ビンゴ。

まぁ、でも読むものがないので、試しに読んでみたけど、金返せ、とは思わなかっただけマシかな。

好きなひとにはいいんだろうけど、まぁ、こんなもんか、と言う感じ。

いや、別にけなすつもりはない。
ふつうに、さらっと読めたぶんだけ、まずくはないと思う。
ただ、こういう話が「おもしろいっ!」と思えないだけ。

あ、けなしてんのか!?(爆)

まぁでも、Amazon.co.jpで検索すると4作続いてるし、文庫のカラーには合ってるんだろう。

太陽剣……満月斬り! ってそれは違うか。

2005-01-24 10:20:09 | 時代劇・歴史物
さて、鬼が出るかジャガーが出るかの第55回は、

タイトル:眠狂四郎京洛勝負帖
著者:柴田錬三郎
文庫名:新潮文庫

であります。

眠狂四郎って誰? とか聞かないように。

ミステリ調の〈消えた兇器〉。
狂四郎の独白で進行する〈悪女仇討〉。
作者自身が円月殺法について語る〈武蔵・弁慶・狂四郎〉。
等々、七編を収録したバラエティ豊かな短編集。

個人的には〈武蔵・弁慶・狂四郎〉が面白い。
武蔵、弁慶の人物像について自身の見解を述べた後、眠狂四郎というキャラクターがどうやってできたかについて解説してある。
作者自身が、円月殺法は理屈の産物であり、眠狂四郎は剣豪ではないと言っちゃってるところが凄い。
(無論、それで狂四郎の魅力が減退するわけではない)

時間の合間に読み、しばし江戸にタイムスリップされるがよい。

なんか最近、短編集ばっか読んでるなぁ……。

原典読んでるといまいちな部分も

2005-01-23 17:21:48 | 小説全般
さて、鳴く虎は怖い第54回は、

タイトル:むかし・あけぼの 小説枕草子(上)(下)
著者:田辺聖子
出版社:角川文庫

であります。

原典のエピソードを入れつつ、かなり上手に組み立てている、と言うのが第一印象。

原典を読んでいるひとには、「にやり」とするようなところがちりばめられていてるし、そういうところが殿上人とのやりとりになっていたり、見せ方はおもしろい。

ただ、やはり小説なので、ひっかかるところはある。

逆にこういうものを読んで、原典に興味を持って読んでみる、と言うのがいいのかもしれない。

話の中に出てきたあの場面は、何段のここだったのかとある意味、見つける楽しさってのがあるのでは?

自分のコピーを作って楽しいか?

2005-01-22 19:07:52 | SF(海外)
さて、泣く子も黙る(意味不明)第53回は、

タイトル:ソフトウェア
著者:ルーディ・ラッカー
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

機械の身体をタダであげよう。

1.くれ
2.いらん

不治の病にかかったら考えます(弱気)。

というわけで、マッドな数学者ルーディ・ラッカーの登場です。
はっきり言ってもう無茶苦茶。(讃辞)

とっかかりを簡単に言うと――。
かつて、コッブという学者が人間からロボットを解放しましたとさ。
ロボット達は自らをバッパーと呼称し、月に自分達の国を作りましたとさ。
しかし、人類から解放されたはずのバッパー達には不満がありましたとさ。
大バッパーというスパコンが彼らを支配していたからです。
(スパコンはスーパーコンピューターの略)

そんな時、引退してフロリダに引きこもっていたコッブの所に手紙が届く。
「人間から僕らバッパーを解放してくれたお礼に機械の身体をあげるよー」
コッブは老い先短い自分の肉体に見切りをつけ、ドラッグ好きの不良青年ステイハイを連れて月に向かいます。

これだけ聞くと、生命の尊さを語る話を想像できないこともないんだけど――。

そんな教訓話ではありません。

脱線、脱線、また脱線。
コッブはバッパー達の内部抗争を無視して自分の欲求のままに動きますし。
ステイハイもとりあえず自分が分解されなきゃ後は適当でいいやって奴です。

無論、最終的に二人は対決することになるのだけど……。
それは大局的な流れではなく飽くまで個人的な理由からです。(それがいいのだが)

序盤は退屈ですが、中盤から一気に面白くなります。
SF好きにはかなりオススメ。



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