つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

や、ややこしい……

2012-03-31 21:11:34 | ミステリ
さて、いろんなジャンルを書くねぇの第1002回は、

タイトル:鬼女の都
著者:菅浩江
出版社:祥伝社 NON・NOVELS(初版:'01)

であります。

SFでデビューした菅さんだけど、SFだけじゃなくてファンタジーも書くし、ミステリも書く。
よくまぁいろいろと書くもんだと感心するけど、本書は「長編本格推理」と銘打たれていて、ミステリらしい。
菅さんのミステリと言えば「歌の翼に ~ピアノ教室は謎だらけ」を読んだけど、これはミステリの体裁を取った人間ドラマだったからなぁ……。

で、本書であるけれど、ちゃんとミステリになっているのかどうか……。
ストーリーは、

『優希は、同人誌仲間のちなつと櫻とともに京都にいた。それは優希が憧れていた同人の小説家藤原花奈女の葬式に参列するためだった。
大学で京都に下宿中のいとこの忠雄に車を出させ、花奈女の葬式へ向かう優希たち。
葬儀が終わり、出棺されると優希たちは花奈女の友人で、花奈女の自殺を防ぐことができなかったことを悔やむ梶久美子と出会う。
自殺に至るまでの様子を久美子と語る優希たち――しかし、優希には花奈女の死がただの自殺ではないと思っていた。

ミヤコ――それが花奈女を自殺に追い込んだ者だと言うのだ。
その根拠は花奈女が自殺する数日前、優希に送られてきた商業デビューとなるはずのあらすじと、そのことに関しての電話からだった。
ミヤコは花奈女の中に存在する自己批判の存在――そういうちなつや櫻に、久美子は優希の説を補強するかのようにミヤコから届いたという手紙を差し出す。
古文を引用したその手紙はまるで呪詛のような内容だった。

それを読んでミヤコへの怒りを強めた優希は、必ず正体を突き止めてやると意気込むが……』

読んでいて、めちゃくちゃややこしい話だなぁ、と思いました。
舞台は京都。京女を体現したかのような小説と姿で優希を魅了した花奈女の自殺の真相を探るべく、優希が、遺したあらすじなどから京都を巡り、様々なものを見たり、不可思議な体験をしたりする。
そんな中、第二、第三とミヤコからの手紙が届いたりして、物語はどんどん混沌としていく。
混沌の原因は、京都の歴史や地名との齟齬や、ミヤコからの手紙、手紙に引用された能の「葵上」と京都らしい婉曲表現など。
これらが重層的に絡み合って、作品の雰囲気を濃密にしている。
章段も、能の序破急などを使って区切られていて、雰囲気作りに一役買っている。

推理ものとしては、能の「葵上」、京都らしい婉曲表現が重なり合って謎解きにはかなり苦労するのではないかと思う。
まぁ、ここが読んでいてややこしいと感じた最たる部分なんだけど、謎解きが好きな人には手応えのあるものに映るのではないかと思う。
ミステリとしては、忠雄の友人の杳臣と言う青年が、優希が京都を巡ったりして得た情報をもとに、自前の京都の知識などを加えてミヤコの正体を突き止めると言うもので、いわゆる安楽椅子型のミステリと言えるだろう。

ただ、「本格推理」とか「本格ミステリ」とかから一般的に受けるミステリの印象とはかなり違っている。
どちらかと言うと、これも推理もの、ミステリの体裁を取った人間ドラマと言う印象で、能の「葵上」を引いた手紙の真意や優希たちが体験する不可思議な現象など、謎は散りばめられているが、ミステリと言うにはやっぱり弱い。
花奈女の自殺という要素はあるものの、この後誰かが死ぬわけでもなく、目を瞠るようなトリックがあるわけでもないので、余計に「本格推理」という言葉から受けるイメージからは遠くなっている。
まぁ、謎はかなり複雑で謎解きのおもしろさはあるのかもしれないので、そういう意味では「本格推理」なのかもしれないけど、感性派で謎解きとは無縁な私から見ると、推理ものって感じじゃないんだよねぇ。

とは言え、ストーリー自体の破綻はなく、謎解きも納得できるもの。
前半はもっぱら優希たちが情報を集め、後半にいくに従って探偵役の杳臣が出張ってきて謎を解いていく、と言う体裁。
キャラも竹を割ったような少年っぽい優希に、かわいらしい姿ながら女性らしい計算高さを見せるちなつなど、細やかに描かれている。
ただ、女性陣に比べて忠雄や杳臣と言った男性陣に、女性陣に見られるような細やかさがないので、キャラについてはそこが気になると言えば気になるところか。

能などを引用して作られた濃密な雰囲気、複雑に絡み合う謎、ストーリーは悪くないし、納得できる展開と結末、キャラも気になるところはあるものの立っている。
悪いところはほとんど見られないんだけど、総評として下す結論は、及第、ってところなんだよねぇ。
納得はできるんだけど、謎があまりにも複雑でややこしすぎるのが難点なんだよね。
謎解きを楽しめない人にはこのややこしさは、途中で投げ出しかねない気がするので、オススメしづらいんだよね。
なので、特に悪いところはないけれど、良品とは言えないので、総評が及第になってしまう、と言うことに……。


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2012-03-31 00:00:01 | 雑記
いらっしゃいませ!


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これは少女小説になるのかな?

2012-03-30 21:17:51 | 小説全般
さて、あっさり越えてしまっちゃったなあぁ第1001回は、

タイトル:サマースクールデイズ
著者:深沢美潮
出版社:ジャイブ ピュアフル文庫(初版:'06)

であります。

この人と言えば、「フォーチュンクエスト」シリーズが真っ先に思い浮かびます。
てか、古いですねぇ、「フォーチュンクエスト」(笑)
リアルタイムに読んでいた(あぁ、年がバレる(笑))身としては、しみじみ懐かしいなぁと思ってしまいます。

それはさておき、主に比較的王道のファンタジーを書いている著者ですが、本作はファンタジーではありません。
ストーリーは、

『千里は道に迷っていた。セント・ジェームスというアメリカンスクールのサマースクールに行く途中だったのだが、道がわからなくなってしまったのだ。
近くのコンビニで道を聞こうと思っても、なかなかできないでいるところに出会ったのがセント・ジェームスに通っている少年ジャスティンだった。
ジャスティンに連れられ、無事セント・ジェームスに辿り着いた千里――彼の優しさと際立った容姿に浮かれていたが、サマースクールの始業式で、高校に入ってから突然よそよそしくなって、千里の悪口を吹聴するようになった幼馴染み、瑞穂がいることに気付いて落胆する。

時は少し遡って――引っ込み思案で言いたいこともなかなか言えないような性格の千里は、瑞穂のこともあって学校を休みがちになっていた。
それを見かねて母親に勧められたのがセント・ジェームスのサマースクールだった。
当然、気乗りはしなかったけれど、両親にあれこれ言われるのも面倒くさかったので通うことにしたのだった。

けれど、いいこともあれば悪いこともある。その逆もまたしかり。
大阪から来て親戚の家から通っていると言う有紀と知り合いになり、それが縁でサマースクールに通ってきている子たちとも仲良くなったりもできた。
他にも、コンビニで助けてくれたジャスティン。彼はとても気さくで、見かけると気軽に声をかけてきてくれたりする。
ジャスティンに対する千里の反応から有紀は千里が彼に好意を持っていると思い込んで……』

本作の紹介文を読むと、恋愛小説のように受け取れそうですが、どちらかと言うと友情のお話です。
ストーリーは、引っ込み思案で言いたいことも言えない千里が、サマースクールで出会った有紀たちとの触れ合いやすれ違いを描き、最後には親友だった瑞穂と和解するというもの。
ジャスティンは折に触れて登場しますが、恋愛要素は低く、有紀たちとの関係を描く上で出てくる脇役に過ぎません。
なので、恋愛小説として期待しないほうでいいです。

とは言え、紹介文の「揺れ動く少女の心を瑞々しくもリリカルに描いた、ひと夏の青春物語」というのは、本作を端的に表していて納得できます。
文体は千里の一人称で、引っ込み思案な千里の心情をよく表現しています。
サマースクールの授業の発表で動揺する様子や有紀たちとすれ違いを起こして逃げ出してしまう姿など、千里のキャラは生き生きと描かれています。
逆に、有紀たちやジャスティンと言った脇のキャラたちが相対的に薄くなっているのが難点かな。

まぁ、千里以外のキャラの薄さを除けば、枚数も少なめで、文体も一人称で読みやすく、手に取りやすい部類に入るでしょう。
ただし、男性向きではありません。
女性ならば、友達との関係で仲良くしたりぶつかったり――そんな若い時代の感慨にふけることができるかもしれません。
千里と同世代ならば、共感できる部分もあるでしょう。
解説でも同趣旨のことが書いてありますので(もちろん、解説者は女性です)、女性には比較的オススメしやすい作品です。

と言うわけで、総評ですが、悪くはない作品なのですが、及第とさせてもらいます。
どちらかと言うと女性向けですし、良品と言えるほどの感動や雰囲気があるわけでもないので、良品未満と言わざるを得ないでしょう。
ただ、及第とは言っても点数は高めです。Amazonの5段階で☆をつけるなら4つくらいはつけられるとは思います。

なお、少女小説としたのは千里が高校生だからです。
これが中学生くらいの話だったら児童文学に分類してもいいかもしれませんね。


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久々の復活!

2012-03-29 18:57:22 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、第1000回であります。

鈴:活字中毒が再発したLINNで~す。

扇:悪化したので、潜伏中の相方に感染(うつ)したSENでーす。

鈴:いったい何を感染させた!?

扇:三日に一度少女小説を読まないとオネェ言葉になる病気とかどうだろうか!?
まぁ、私はそんな病気に感染したことはないが。

鈴:そんな病気はいらねぇ!(笑)
てか、私だってそんな病気にはなったことはない!

扇:え?
君は確か、ララデラを毎号読まないと鬱になる病気ぢゃなかったか?

鈴:そんな病気あるかい!
LaLaDXももう買ってないしなー。
おかげで新人さん発掘ができなくなったのは痛いが、実家に置き場所ないし、まぁ、いいんだけどね。

扇:記憶違いか……だが、君が病気なのは確実だな。
どんな病気か説明するのは極めて難しいが、どこかの武術家風に言うなら――
「貴方にはリリカルが足らないわ!」

鈴:リリカルが有り余っててもどうかと思うぞ。
って、どこかの武術家風って誰だよ。

扇:バーチャやれよ! 俺はデドアラ派だけどな!
んで、パイを使って勝て! ちなみに私はあやね使いです。

鈴:また懐かしいゲームを持ち出してきたな(笑)
3くらいまでしか知らんぞ、バーチャは。
ちなみに、私はジェフリー使いだったので、パイなんぞに興味はなかったがな。

扇:バーチャは2までしかやってません。
使ってたのはジャッキーとサラかな、コマンドなんてもう憶えてないが。
それはいいとして、サモンナイト1の話の続きだが――

鈴:うわー、素で強いキャラ使ってやがる……(笑)
っていつからサモンナイト1の話になってやがる!
てか、1はやってないから話についていけん……。

扇:出が早くて、コマンド簡単で、攻撃力そこそこだからな金髪兄妹。
ま、それはさておき、4+エクステーゼまでやっといて1だけやってないのは両手落ちだなァ、リンリン。
1はいいぞ! 3で偉そうな顔してたオルドレイクの出オチっぷりがな!

鈴:1はDSか何かで出てるのをやろうと思ってたんだが、DS買わずにそれっきりになっちまったんでな。
しかし、1でも出てたのか、オルドレイク……。
ブレイブクリア気にしなかったら無限回廊でレベルあげまくって、あっさりとやられるかわいそうなキャラと言う印象が……(笑)

扇:はっはっは、3では黒幕っぽく出てきたにも関わらず、企み全部失敗してあっさり退散したからな。
1はもっと悲惨だぞ、今まで名前すら出てなかったところにひょいと現れ、黒幕でーす! ついでにメインメンバー××の父です! と大見得きったはいいが、瞬殺され、装備はがれ、最後は今まで利用してきた××君に喰われてフェイドアウトした。
ラスボスですらない上にフルボッコにされてあっさり死亡とか情けな――あ、ごめん全部言っちゃった、ワザとじゃないよ、はっはっは。

鈴:3ではいちおうラスボスやってたのに、1ではそんな扱いだったのか……。
涙を誘うようなダメっぷりだな(笑)
てか、ゼッタイにワザと言っただろ(笑)

扇:いや、ラスボスって記憶違いだから! あと、ワザとじゃない故意だ!
3のオルドレイクは確か、聖剣狙ってたけど部下に裏切られて終盤前に島から退散したはずだぜ。
で、先生がみんなを守るためにデビルマン化して終わりだったかな、いやぁいい作品だった。

鈴:ありゃ、ラスボスじゃなかったっけ? かなり前だから記憶が曖昧だなぁ(苦笑)
だが、先生がデビルマン化するのはカオスルートだけじゃなかったっけな?
あとは基本、各キャラの甘々エンディングに終始してたような……。

扇:カオスルート云々は正解。
てっきり、マルルゥのことしか憶えてないのかと思ったぜ。
ちなみに私はあのゲーム、女教師×ウィルくん、もしくは、スカーレル×女教師の二択しかないと思ってます。

鈴:あ、やっぱりカオスルートだったか。さすがにそこまでは忘れてはおらんかったか。
てか、マルルゥだけは別格だ
ちっこくてかわいくて、その上Sクラス召喚まで使えると言う反則なキャラだったからなぁ。
ちなみに、3はメインの生徒以外落とした覚えがない。ウィルくんと女教師のは典型的なツンデレのウィルくんがかわいかったのは覚えてるなぁ。

扇:君がロリコンでショタコンなのは変わらんなァ……。
で、そろそろ真面目な話をしようかね――遂にやって参りました、今回でつれづれ読書日記は扇回を迎えました!

鈴:誰がロリでショタやねん!
あー、でも姪っ子はかわいいなぁ……(爆)
さておき、とうとう1000回です。ブランクはありましたが、ようやくこの日を迎えることができました!
ってさりげに自分の名前を入れてんじゃねー(笑)

扇:ロリショタの真偽はさておき、姪御さんの写真はまた今度見せて貰おう。
で、来週のサザエさんだが――。

鈴:あ、写メないや(爆)
って、いきなり来週のサザエさんは関係あるまい!
――で、何やるんだっけ?(爆)

扇:来週のサザエさんとは、予告に始まりジャンケンに終わる様式美の一つだ。
遠い古代においては、ジャンケンが別れの挨拶となっていたという記録も残されている。
おはぎと思われる菓子を口にし、別れの挨拶直後に喉に詰まらせ、「んがんん」とうめくまでの一連の流れは、様式美の究極型の一つである――と当時の賢人が言ったとか言わなかったとか。
…………………………ところで、何の話だったかな?

鈴:どこの記録で、どこの賢人だ、それは!
何の話って、つれづれの前半部分の話題だろうに。
しかし、何やろうか?(素)

扇:この前、TSL(てれび扇鈴)に出てた人だよ!
久々だからなかなかネタがないねぇ……あ、マスター、酒くれる?

鈴:また怪しげなテレビ局を作るんじゃない!
って、いきなり酒かよ……。私はビール党だから、ビール以外は出んぞー(笑)
……酒……前にタバコやったし、酒もWikiってみるのいいかもなぁ。

扇:チッ……!
じゃあ、久々にwikiってみますかね。


『Wikipediaで逝く!』


扇:というわけで、今日のテーマは~~~~~~~『酒(日本酒限定、ビール? なんすかそれ?)』

鈴:ええい! ビールも酒の一種じゃ!
あ、でも狭義には日本酒のことを指すって書いてあるな……なんか負けた気分……。

扇:まぁ、今から話題にする『酒』とは国内限定ではなく全世界的な意味でだから、ビールも含むだろうさ。
もっとも、我々が興味があるのは飲料としての酒だけだから、厳密にはエチルアルコールと呼ぶべきなんだろうけど。
で……「アルコールとは本来、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置き換えた物質の総称」って、そもそもヒドラトキシン酸って何よ?

鈴:ヒドラトキシン酸ってなんか語感からしてなんかイヤな感じの名前だな。
てか、小難しい化学のことを語られても、文系の私にはさっぱりわけわかんないんだけどさ。

扇:さすがにヒドラと鬼神酸なんてのは聞いたことがないな……というか私も文系だ!
酒税法云々の記述は、普通に酒飲む人間なら大体知ってるかな? 本みりんが酒扱いで年齢制限が付くとか、度数1パー未満は酒じゃありませんとか。
発ガン性物質として指定されてる……ってのも解るんだが、タバコよりはマシなんじゃね? とか思ってしまう私は多分駄目な大人なんだろうねぇ。(笑)

鈴:あれ? 文系だったっけ?(笑)
でも発がん性云々はあんまり聞き覚えがないなぁ。そこまでひどいもんだとは思ってなかったし。
肝臓に悪いのはわかってたけど。
まぁ、タバコのほうは……ね。でもまぁ、確実に酒よりタバコのほうが発がん率は高いと思うけどなぁ。
両方嗜むけど……(爆)

扇:駄目駄目だなぁリンリン!                            俺も両方嗜むけど。

鈴:結局両方呑んでんじゃねぇかよ!(笑)
しかし、酒の歴史ってのも古いもんだねぇ。紀元前7000年頃には中国で作られてたみたいだし。
人類ってのはよほど酒好きなんかねぇ。

扇:酒、というより、味のついた飲み物が好きなんだろうねぇ。
そこに書いてある原材料見てると、単体だと甘過ぎたり、味が薄かったりするものを手軽に味わうために水に漬けて…………………………気付いたら発酵してたってオチがあったんじゃないかな~とか思ってみたり。
穀物信仰とも結びつけやすいから、口噛み酒の役務を巫女が行って「醸す」の語源となったなんて説も、割と説得力があるなぁ。

鈴:まぁ、無味無臭の水なんか飲むよりはいいわな。
ほったらかしてたらあら不思議……ってのはありそうな話だな。
しかし、原材料にある中の「トマト焼酎」って……なんかあんまりうまそうな感じがしないな(笑)

扇:確かに、トマト焼酎は初耳だ――トマト? 何その気色悪い物体! って言ってた御維新の頃から考えられんよなぁ。
歴史が古い分、宗教と密接に絡んでるって話も載ってるな……つか、禁じてる割に黙認されてるとこ多すぎっ!(笑)
まぁ……酒を楽しめないのは人生ちょっと損してる気はする。

鈴:まぁ、仏教でも禁止とか言っても般若湯とか言って飲んでるんだから、実質禁止じゃないしなー(笑)
でもイスラム圏じゃ、けっこう厳格にしてるとこもあるみたいだな。
もったいないことだ……。

扇:物は言いようだよなぁ、色欲とかに関しても小坊主とか――何かヤバイ話になりそうなのでやめよう。
「料理と酒」は一般的な話なのでパスするとして、「健康と酒(主に害の部分)」はさすがに飛ばすわけにはいかないか、な。
アルコール依存症とか、ガンとか、脳の萎縮とか素敵過ぎる単語が並んでますが、LINN君好きなの選んでくれる?

鈴:アルコール依存症ではないし、以前人間ドックでMRI撮ったときも脳の萎縮とかなかったから、ガン……かな?
ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)とか、よくわからんが、日本人が欧米人に比べて酒に弱いって話はよく聞くなぁ。
まぁ、職場の同期なんかにはザルなヤツもいるけど(笑)

扇:ガンだとやっぱ、煙草の方がって気はするねぇ……第890回でちょこっと触れたが。
日本は水の代わりに酒飲む必要がなかったからな、そこらへんで差が付くのは仕方ない気もする。
後の飲酒と社会は飛ばしてもいい、かな? 

鈴:だよなぁ。やっぱガンと言えば酒よりタバコって気はする。肝臓がんだけはわからんでもないが。
飲酒と社会……おもしろみがないなぁ。
飛ばそう、うん。それがいい。

扇:じゃあ、お待ちかね『主な酒』の項目に行きますか。
あ、マスター、アルマニャックと茅台酒とリモンチェッロを1:3:7で~!
どれも飲んだこと無いけど。

鈴:怪しげなカクテルを作るんじゃねぇ!
だが、主なってだけで、まだまだいろんな酒があるんだろうなぁ。
ウォッカベースのカクテルは好きだが、他のベースのはあんま飲んだことない……。

扇:ここに載ってる奴だけでも飲んだことのないのが結構あるな。
酒精強化ワインなんて分類も初めて聞いたし、『オロロソ:独特の香味とこくが特徴。20-24度』とか何それ怖い。
カクテルだったら俺も基本ウォッカベースかな、たまにジンベースもいいが。

鈴:飲んだことがあるのと言えば、ビール、ウォッカ、ワインくらいかなぁ。
ジンベースのカクテルも飲んだことはあるが、やっぱ香り付けしてあるリキュールは苦手だなぁ。

扇:ジュース代わりにはいいんだがな、リキュール。
何か妙に真面目な話ばかりだったが、大体そんなとこかね。
あ、マスター、喉乾いたんでラクとシードルと馬乳酒を1:3:2で。

鈴:そだねー、酒に関してはこんなところか。
って、だからわけのわからん酒を混ぜんなよ、どんな酒になるかわかったもんじゃない。
……さておき、次にいくかね。


『今週の一冊』


扇:今週の一冊ですがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……えーと、タイトル忘れた。
『七海と双葉』だっけ? 百合物で。

鈴:忘れんなよ……。まぁ、覚えにくいタイトル……じゃなくて間違えやすいタイトルだとは思うが。
しかも百合物って……いくら百合が市民権を得つつあるとは言え、花ゆめで百合はなかろうに。
では、まじめに。
今週の一冊は、『八潮と三雲』(著者:草川為)でございます。

扇:いきなり正解言うとはなんと風情のないことを。
そこはボケとこうぜ、『八雲と三潮』でロマンホラーとか! 『六条と四又』で平安愛憎劇とかさ!

鈴:何故に無理にボケなければならんのだ。
それに『八雲と三潮』ってマジタイトルと間違えそうだし、『六条と四又』で平安愛憎って源氏物語知ってりゃおもしろそうなネタにはなりそうだが、わかんないとつまんないと思うぞ-。

扇:すいません、買ってしばらく『八雲と三潮』だと思ってました。
確かに、六条と平安だけで源氏物語! ってのは厳しいかも知れんが、『ざ・ちぇんじ!』だって『とっかえばや』知らなくても読めるから問題ない――まぁ、多分、きっと。

鈴:いや、これは間違えやすいタイトルだと思うぞ、素で。
『ざ・ちぇんじ!』は『とりかえばや物語』をうまくライトにまとめた作品ではあったなー。マンガ版しか知らんが(笑)
それはさておき、肝心の本書だが、早速毒吐いていいか?

扇:毒警報発令! 毒警報発令!
ここから先、リンリンがポイズンブレスを撒き散らします。
草川ファンの方、八潮に惚れてる娘、三雲萌えな野郎は御注意下さい。
警告したぞ! 私は警告したぞ!


ぢゃ、どうぞ。

鈴:一読して……うわぁ、おもんねぇ、この話。
だいじょうぶか!? 草川!? って本気で思ったし、4巻分の金返せ-! って思ったからなぁ……(しみじみ)

扇:まったく誰だろうなぁ、読んでみろって勧めたのは。
ちなみに、具体的に悪いとこを言うと?

鈴:ホントに誰だろうなぁ、草川の新刊出てるって言ったのは……。
具体的に……えーっとね、まずストーリーそのものがおもしろくない。
八潮に惚れてる三雲が迫って、邪険にされて、取り立てやって、ただそれだけの話であとは見るべきところがまったくない、ってとこかなー(毒)

扇:ガートルードは「お義兄さん、妹さんを僕に下さい!」、龍の花わずらいは、「過去の男と今の男、貴方が選ぶのはどっち!」、パレットは、「パレット女王の座と旦那、ゲットだぜ!」と明確な目標があったが、『八潮と三雲』に関しては……日々の業務以外にやることがないのは確かかなぁ。
ちょっと粗筋いれてみると――


人間社会の隣にある『九生の猫』社会、そこには九つの命を持つ特種な猫たちが住んでいる。
彼らは残りの命の数に対応した『命名』を持ち、一つ命を失うごとに名が変化する。
名前が変わった猫は所属する縄張りのボスにその旨を報告する義務を負うが……それを怠る猫は多く、一向に減る気配がない。

名前が変わったにも関わらず、前の名前を使い続ける猫はいずれ狂う。
故にエリアボス達は縄張りの治安維持のため、『取り立て屋』を使って半強制的に名前の更新を行っている。
凄腕の『取り立て屋』八潮、彼の『押しかけ助手』三雲、二人は今日も化け猫化する非更新者を殴り倒し、取り立てを執行する!
「取り立て屋だオラァ!!」
「怖くないですよ! 私達は取り立て屋で……」


何か、粗筋だけだと面白そうぢゃね?

鈴:あらすじだけ見るとそうなんだがなー。
前の作品群はそれぞれに雰囲気もあってよかったし、パレットなんかは設定もおもしろかったし、個性的ないいキャラ(鳥含む)がいたんだが、『八潮と三雲』にはそれが感じられない。
まぁ、デレないツンデレの八潮とか、それでもめげずにアタックしては想定外の事態にあたふたする三雲に萌えられるんならいいのかもしれないが、萌えられる要素もまったく感じられないからなぁ……。

扇:草川ヒロインでは三雲が一番好きですが、何か?
最強が誰かって聞かれたら間違いなくサハラだけどね……。

鈴:三雲がいちばん好きだったのか……。
私はキャラ萌えするタイプではあんまりないから、草川ヒロインで誰がいちばん好きかって言われても出てこないなぁ。
それよりも作品に雰囲気が感じられないほうが痛い。
そういう意味では草川作品の中ではパレットがいちばん好きだな。

扇:三雲はヒロイン力だけなら大したもんだぞ、ただ、そこにパワーを注いだ分、脇に魅力が……。
パレットはサブキャラにパワーがある分、主役二人ののんびりっぷりと島の空気がマッチしてたのが良かったのだろう。
ちなみに作品で言うならガートルードが一番好きだ、ヒロイン激強、ラスボス激弱にも関わらず、ガートルードの苦労人っぷりが半端ないので最後まで話が保ってる。

鈴:脇役の魅力に乏しいってのはあるし、マイナスだなー。
三雲のパワーは確かに認めるが……結局それだけじゃね? って感じになってる作品にしか見えない……。
そっちはガートルードか。雰囲気を楽しむのはパレットがいちばんだから、私はパレットになったが、見事に読み方の違いが出ているな(笑)

扇:読み方の違いについては……何年経っても変わらんね。(笑)
サブキャラの話に戻るが、毎回異なるキャラで事件を起こす必要があるってのが上手くハマってないのも原因かなぁ。
出てくるキャラが濃くて再登場も期待出来るならまだいいんだが、そっちは薄味で済ませて飽くまで八潮と三雲だけを追ってる感じなのはちと痛い。
とりあえずレギュラー候補ってことで、しー君出たけど…………………………いなくていいです、ウザイだけ。

鈴:あー、サブキャラは確かに薄いなー。
ボスの一色も見せ場はもらったが、それっきりだし、しー君は……いまのところ弟キャラ以外の扱いではないし、4巻で別の猫社会のボスが出てきたけど、こいつもどう扱われるかわかんないしなー。
それまでを見ると、この話が終わったらそれっきりって感じがぷんぷんするんだが……。
って、相棒も草川ヒロインの中で三雲がいちばん、ってだけであとはけっこうひどいこと言ってんな(笑)

扇:いやぁ、このテの『世界に二人だけいればいい』的ロマンスってさ、すれ違わないと話にならないでしョ?
すれ違ってないんだよこの二人! 何だかんだでいつも一緒にいるし、個人で動くビジョンとか全然見えないんだよ!
せいぜい三雲がちょっと足引っ張るぐらい? 浮気しねぇし、仕事で揉めないし、相手置き去りにして先進んだりもしないし、別の誰かと秘密共有して気まずくなったりもしねぇ! 二人の関係に波風立てない、でもくっつかない、ならせめて強敵出せよ! 仕事失敗しろよ! 二人でいないと駄目な状況作って説得力持たせろやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

鈴:うわぁ……言っちゃったよ、この人……。
なんだかんだ言っても、結局のところ、この作品、ダメなんじゃん(笑)

扇:イヤ~、ニボシ喰ッテル八潮サント、ソレ見テ笑ッテル三雲ッテ微笑マシイヨネ~。

鈴:すげぇ棒読み……(笑)
結局、あれか? 三雲萌え以外に見るところはないってことかえ?
でも、いままでの草川作品がよかっただけに、けっこう期待して買ったからおもしろくなかったときのダメージはでかかったなぁ。

扇:いや、八潮さんも格好良いですよ――三雲必要としてないだけで。
八潮の飼い主絡みの話をもう少し突っ込んでくれればまだマシなんだが、正直、三雲が今の状態に満足してる感じなのがなぁ……あれじゃ話は転がらないし、これ以上の進展も期待できない。
刑事ものみたいにほとんどメインキャラの関係に変化がない作品と割り切って、毎回の事件に凝ってくれればいいんだが、いくら何でも八潮と三雲のロマンス物って体裁を捨てるとは思えないしねぇ。

鈴:そうだねぇ……。
まぁ、八潮の飼い主話は何か重要なところで使いたいんだろう、三雲との関係を一変させる何かに、とか……。
ロマンス物を捨てると言うより、花ゆめなんだから、捨てられないって言うほうが適切だろう。
まぁ、それを差し置いても、取り立てにおもしろいエピソードがあるか、って言われるとないから毎回の事件に凝ってもらえる期待はあんましてないけどな。

扇:何か1000回記念にしてはあれな記事でしたね……つーか、誰かのせいで文字数やべぇ。

鈴:うわ、ホントだ。そろそろぎりぎりじゃんか、文字数……。
でも確かに1000回記念にしては残念な記事にはなってしまいましたが、そろそろお開きにしたいと思います。
と言うわけで、またいつかの機会にお会いできる日が来ることを祈って……。
ではでは~(^^)ノシ

扇:いつの間に戻ってきた!? という感じでしたがこれにてお開きでございます。
もしかしたら今世紀中にもう一回やるかも、とかフラグを立てつつ、さようなら~。



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迷宮には入れませんでした

2012-03-25 14:42:53 | 小説全般
さて、1000回まであと1回になりましたの第999回は、

タイトル:この闇と光
著者:服部まゆみ
出版社:角川書店 角川文庫(初版:'01)

であります。

予約を入れている本がまだのときに手に取る本は、ホンットにてきとーです。
この前は「ナ行」だったなー、じゃー、次は「ハ行」かなー、とかそんな感じで読んだことがなさそうな作家さんを選んで借りてきます。
本屋で平積みされてたりするような小説は、たいてい予約が入っているので、どうしても読むのが遅くなってくるんだよねぇ。

それはさておき、本書もそんな感じでてきとーに選んで読んでみた作品です。
ストーリーは、

『3歳で盲目になった姫、レイアにとって世界は「冬の離宮」と呼ばれる別荘の2階の自室から行ける範囲、それと父王が話してくれる物語やぬいぐるみのプゥ、犬のダークが世界のすべてだった。
父王は隣国との戦争に負け、レイアとともに別荘で過ごしている――そんな環境ではあったが、幼いレイアにとっては優しい父やプゥ、ダークがいればそれだけでよかった。

だが、それを侵す者もいた。侍女のダフネや階下の兵士たち……。
特にダフネが見せるレイアへの憎悪に満ちた言葉は、レイアにとっては恐怖の対象でしかなかった。
それでも、占領された自国の民への説得などへ出かけ、離れることはあるけれど、父とともに物語を聞いたり、読んだり、音楽を聴いたりする時間は満たされたものだった。

そんなレイアは、成長していくに従って物語は絵本から小説へと代わり、それらから様々なことを学んでいく。また、父からも様々な事柄を学んできた。
折に触れて現れるダフネとその憎悪、それによる恐怖――そんな恐ろしい出来事はあるものの、レイアは満ち足りた生活を送っていたが、突如それは崩壊する。
城下で暴動が起きたのだ。父はそれを沈めるために出向き、レイアはダフネに連れられ、城下の安全な場所へと連れて行かれてしまう。

初めて降りる階段、車、そして知らない場所――安全な場所と言われ、そこで父を待っていたレイアを訪れたのは、レイアの両親と名乗る男女だった。
大好きな父、プゥ、ダークとも離れ、両親と名乗る彼らが連れて行った場所は病院。目が見えるようになる手術をするということで連れられた病院で視力を回復したレイアは、そこで自分が3歳の頃誘拐されたこと、それから自分の本名、女ではなく男であること、ここが日本と言う国であることなど、思いもよらない事実を知ることになる。』

裏表紙の作品紹介の引用。
「魅惑的な謎と優美な幻影とに彩られた、服部まゆみワールドの神髄。一度踏み込んだら抜け出せない、物語の迷宮へようこそ。」

……魅惑? 幻影? 迷宮? なんですかそれは?(笑)
読後、これらの言葉に対する印象は、まったくなし。
かろうじて、幻影の部分のみ、該当するかな? って程度。

ストーリーは、作品の大半を占めるレイアの物語と、そのファンタジーにも似た世界から現実へ連れ戻されたレイア――本名大木伶がレイアとして育った環境と現実とのギャップを主体とした内省、実はレイアとして成長した年月を描く前半は伶が小説仕立てにしたもので、それをもとに誘拐犯でもある若手作家との邂逅を描いて物語は終わる、というもの。
ファンタジー風味の前半から、現実世界に移行すると言う構成ながら、ストーリーの流れは破綻がなく、引っかかるようなところもない。
文章も過不足なく書かれており、文体も特筆するようなところはないが、とりたてて気になるようなところもない。

悪いところはないようにも見えるのだが……。
この作品の鍵は作中で出てくる各種物語であろう。
幼いころの「赤頭巾」「小公子」「小公女」、長じては「嵐が丘」「罪と罰」「デミアン」、そしてアブラクサスという神。
おそらくは、これらの物語を知っている(読んでいる)のとそうでないのとではかなり違いがあるのだと思う。
そしてこれらを知っていることが、作品紹介に書かれているように、魅惑的な物語の迷宮に誘い込んでくれるのだろうと思う。

逆に言えば、これらの作品を知らなければ、魅惑も幻影も迷宮もへったくれもない。
翻訳本の文章が性に合わないので、私はほとんど……と言うよりまったく海外作品を読まないので、絵本になっているような有名な「赤頭巾」や「小公子」「小公女」はともかくも、「嵐が丘」「罪と罰」「デミアン」などはあらすじすら知りません。
アブラクサスだの、グノーシス主義だのという言葉にもまったく縁がありません。
Wikipediaとかで調べればだいたいのことはわかるかもしれないけど、エンターテイメントとして小説を読んでいるのに、いちいちこれらの作品だの言葉だのを調べながらも読むわけがない。

なので、作品紹介にあるような「ワールド」にはまったく引き込まれずに、淡々と終わってしまったと言う印象。
と言うか、知っていること前提で話を進められても、知らない人間にとってはまったく意味をなさないし、元ネタがわからなくても楽しめるパロディではなく、作品の根幹に関わっているらしいとなるとお手上げです、と言うしかない。
おもしろみもなにもありません。

私は週に3冊平均くらいで本を読むので、読書家の部類に入ると思いますが、読書家だから有名な海外の作品なども読んでいるわけではないでしょう。
さらにそれらを読んでいて、本書を読んでいるときにそれらを想起できて、物語と関連して読める人がどれだけいるか。
そういう意味で、この作品はかなり読者を限定してしまうのではないかと思う。

なので、一般的にオススメできるかと言われれば、否としか言いようがない。
そういうわけで、総評としては落第。
ちなみに、解説を読むと他の作品も似たような感じらしいので、2冊目を読むかどうかはかなり疑問……。


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資料のつもりだったんだけど

2012-03-24 15:32:02 | 学術書/新書
さて、小説ではないよの第998回は、

タイトル:源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり
著者:山本淳子
出版社:朝日新聞出版 朝日選書(初版:'07)

であります。

Amazonで本を探すと中身がわからない、ってのが欠点だよなぁ。
資料のつもりで買ってみた本書。資料としてははっきり言って役立たずでしたが……。

構成は、

『「序章 一条朝の幕開け」
一条天皇の先帝、花山天皇の退位とそれにまつわる策謀を中心に描く。

「第一章 清涼殿の春」
若くして即位した一条天皇と、その一条天皇に最初に入内した定子との生活を中心に、出仕したばかりの清少納言や定子の兄伊周などの中関白家の面々を加えた生活、一条天皇の政治への思いを垣間見せる章段。

「第二章 政変と悲劇」
時の権力者で関白の藤原道隆が病で死亡したあとの権力争い――伊周と道長との確執の中、発生した花山院と中関白家の次男隆家とが起こした事件から始まる中関白家の没落を基本に、義兄である伊周を断罪せざるを得なかった一条天皇の苦悩、出家してしまった定子の姿を描く。
また、「枕草子」の執筆の契機となった清少納言の心にも触れる。

「第三章 家族再建」
髪を下ろし、出家してしまった定子を一条天皇が連れ戻し、復縁することを描く章段。

「第四章 男子誕生」
定子の出産――敦康親王の誕生と、道長の娘彰子入内にまつわる章段。力をつけつつある道長に迎合して第一皇子誕生にもわびしさの漂う定子近辺の様子を「枕草子」などから引用し、描写。

「第五章 草葉の露」
定子の三度目の出産とその死を中心に、一条天皇の彰子との幼い関係やその苦悩などを描く章段。

「第六章 敦成誕生」
ここからは定子中心から彰子中心へと描写がシフトする。紫式部が夫を亡くし、彰子に出仕する話や彰子サロンでの紫式部の立ち位置、彰子サロンの特徴などが描かれる。
また、章題にあるように彰子が皇子である敦成親王を出産するまでを「紫式部日記」などから描いていく。

「第七章 源氏物語」
道長という後見人を持つ敦成親王の晴れ晴れしい誕生からの儀式の軌跡と、道長、彰子の後援を受けて「源氏物語」が書物として成立していく様を描く章段。

「終章 一条の死」
一条天皇が死の病にかかったころから、皇太子問題などを経て、おとなしくただ父道長の言うがままだった彰子が自らを変えていく姿を描く。』

ほんとうに資料としてはまったく役に立ちませんでした(笑)
でも、読み物としてはとても興味深く、古典に慣れ親しんでいる私から見ても、新たな視点や発見があってけっこうおもしろかったです。

小説ではないので主人公と言うにはふさわしくないかもしれませんが、本書の中心をなすのは一条天皇とその后である定子と彰子。
「この世をば……」で有名な藤原道長の影に隠れて存在感の薄い一条天皇ですが、在位25年に渡る長期政権下で、どのように政治を執り行ったのか、また貴族たちの白眼視が免れない中で行った定子への復縁とその愛情など、実は賢帝として長く治世を敷いた姿が見事に描写されています。

定子の側では定子サロンの特徴や、「枕草子」や「栄花物語」から窺える政治に翻弄される姿、一条天皇との関係などが描かれ、彰子の側でも、サロンの特徴や定子サロンとの違い、幾代もの天皇を見守り87歳まで生きた彰子の成長の記録が描かれている。

個人的には「枕草子」は読んでますし、定子のほうにはさほど目新しいものを感じませんでしたが、彰子の側については特に興味深く読めました。
両サロンの違いはもとより、彰子が自らの子を差し置いて、兄弟順であることを理由に定子の子である敦康親王を皇太子に立てることを道長に直談判したりする逸話や、一条天皇の政治理念を受け継いでその権力をふるう話など、彰子の持つイメージががらりと変わりましたね。

本書は「源氏物語の時代」が主題となっていますが、どちらかと言うと副題の「一条天皇と后たちのものがたり」のほうがしっくり来ます。
もちろん、主人公3人に終始するわけではなく、藤原行成の日記などの資料をもとに、貴族たちの動向や「枕草子」「源氏物語」の成立にまで話題は及んでいますが、柱はやはり一条天皇と定子、彰子の3人です。
なので、「源氏物語」に関する事柄を深く知りたいと思っていると、これはハズレになります。
本書の柱はあくまで主人公3人なので、その点は注意しておく必要があるでしょう。

ともあれ、源氏物語が成立した時代に生きた主人公3人に貴族たちなどを見事に活写した本書は古典好きならまずオススメです。
そうでない方にも学校で習ったはずの「枕草子」や「源氏物語」の時代がどのように流れ、人物が生きてきたかを知ることができる良書です。
学術書に分類はしましたが、読み物としての出来はかなりいいので、総評として良品と言っていいでしょう。


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サスペンスらしいです

2012-03-18 14:57:09 | 小説全般
さて、このジャンルって初めてかもしれないなぁの第997回は、

タイトル:記憶 ニライカナイより
著者:永嶋恵美
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'11)

であります。

読んでいるうちに、ミステリっぽいなぁなんて思っていたのですが、解説によるとサスペンスらしいです。
テレビでもサスペンスなんて見ない……と言うより、テレビそのものをほとんど見ないで読書三昧なので、サスペンスと言うジャンルがどんなものか、はっきり言ってよくわかっていません(笑)

でもまぁ、ジャンルに拘らないで読めたので別にかまいはしませんが。
では、ストーリーですが、

『水野春菜がそのことを知ったのは、夫とともに朝食の席でつけていたテレビのニュースキャスターの声からだった。
沖縄で起きた殺人事件。その被害者、副島奈槻の訃報を知らせる内容だった。同姓同名の他の誰かだと思いたい春菜は、しかしいくつかの局のニュースで、それが恋人の奈槻であることを知らしめられ、愕然とする。

奈槻と出会ったのは、新宿二丁目のレズビアンバー「イリス」だった。
漫画家の幼馴染みの友人池谷千恵子が描くマンガで、同性愛者を主人公に据えると言うのでその取材も兼ねて訪れた「イリス」で知り合ったのだ。
ただそれだけで終わればよかったのだが、春菜は既婚であることなど、嘘をついていたことに罪悪感を覚え、奈槻と再び会うことにする。
そこから、春菜は奈槻との恋人関係を始めていくことになる。

その奈槻が殺された。しかも遠く沖縄の地で。
抵抗した様子もなく、物盗りでもない殺人事件――怨恨の可能性が高いと判断された警察から、春菜は事情聴取を受けることになる。
春菜と奈槻の関係をすでに知っているらしい刑事は、まるで春菜が犯人であるかのように事情聴取を進めていく。
夫にはもちろんのこと、周囲にも秘密にしていた関係……それを知るのは「イリス」の常連としか思えない。

さらにふたりの関係を記事にした週刊誌が出回り、奈槻との関係を夫にまで知られてしまう。
激昂する夫の姿に耐えられず、家を飛び出してしまった春菜は、離婚の相談をしていた弁護士の荻津の助けもありながらも一所に落ち着くことができたかに見えたが、そこにも刑事の姿があった。
発作的に荻津まで振り切って逃げ出してしまう春菜は、自身に罪はないとわかっていながらも、そのまま逃亡者になってしまう。』

まず、同性愛に関して寛容になれない方は、ちょっと手を出しづらいかと思います。
性描写などはまったくと言っていいほどありませんが、春菜と奈槻の関係に嫌悪感を抱くのであれば読みづらいでしょう。
私は気にしませんし、同性愛者の友人もいますし、BLだって読もうと思えば読める人間なので、まったく苦になりません。
(BLもレーベルが確立されていない昔は、スニーカー文庫のレーベルで出てたりして、表紙買いで間違えて買ってもったいないから読んだりしたものです。今は進んで読もうとは思いませんが、読めと言われれば読めるでしょう(笑))

この1点をクリアできたならば、本書はいい作品だと言えるでしょう。
まずよい点から上げていくと、春菜のキャラ。描写のほとんどが春菜視点で描かれていますが、春菜の心の動き――心理描写が巧みで、過去に起きた出来事や、それに関連して形成された人格など、まったく無理がありません。
また、春菜視点と言うことで散りばめられた伏線も無理なくストーリーに溶け込んでいて、犯人はいったい誰なのかと言う想像を二転三転させてくれます。
ただ、逆に春菜の視点からの情報だけですので、奈槻を含めた他のキャラが薄い印象は否めません。これだけはちょっと残念なところ。

ストーリー展開は、起伏に富んでいると言うわけでもなく、割合淡々と進みます。
描写が春菜視点であること、春菜の心理描写が多用されていることからも、盛り上がりに欠けるきらいはあります。
読むひとによっては、春菜の逃亡劇にどきどきしたりはらはらしたりすることもできるかもしれませんが、私にはそれはありませんでした。
ラストで犯人が誰なのかが判明しますが、劇的なものがあるわけでもありません。
まぁ、その結末には納得できますので、ストーリーとしてはうまくまとまっている作品でしょう。

……あれ? なんか最初にいい作品と書いた割にはあんまり褒めてないような……(爆)
あー、でもサスペンスって初めて読んだ(と思う)のですが、著者の特徴なのか、やはり心理描写の巧みさは特筆すべき点でしょう。
これがなければ落第を決定づけてしまいかねない凡百の作品に成り下がってしまいそうです。

少々気になるところはあるものの、ストーリー展開に無理はないし、結末も納得できるものですし、心理描写は秀逸。
読んでも損はない作品で、比較的オススメしやすい作品と言えるでしょう。
ちょっと甘めの評点ながら、総評、良品。


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実は読んでました(笑)

2012-03-17 14:58:44 | ファンタジー(現世界)
さて、1000回までカウントダウンの第996回は、

タイトル:乃木坂春香の秘密(3~14巻:以下続刊)
著者:五十嵐雄策
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'05~)

であります。

えぇ、イラストの破壊力に屈することなく、地味に読んでいました(笑)
だって図書館にちゃんとあるんだもの、1巻からきちんと(笑)
さすが政令指定都市の市立図書館、ラノベでさえもきちんと新刊がでれば揃えるんだから大したものだ。
ちなみに、司書の人に「これでよろしいですか?」と書庫から出してもらうときの恥ずかしさにももう慣れました(爆)

さて、そんなわけですでに1巻と2巻はレビューしているものの、3巻からまた1冊ずつと言うのも何なので、現時点で借りれる14巻まで一気にストーリー紹介といきます。
(なお、15巻は2012年1月に出ています)

『容姿端麗、頭脳明晰で、ピアノなど習い事はすべてプロ級という完全無欠のお嬢様である乃木坂春香。
彼女の秘密にしていた趣味――アキバ系を知った綾瀬裕人は、その秘密を共有することで親しくなったおかげで、平々凡々とした日常が、良くも悪くも変わっていった。

春香の誕生日にはハッピースプリング島での誕生会があったり、秋の学園祭では椎菜と実行委員になって、そのせいで春香と気まずくなったり。
冬には裕人の家でクリスマスパーティをしたり、ふたりで春香の両親の思い出の場所で初日の出を見たり。
はたまた新年明けて椎菜たちクラスメイトの友人たちと温泉旅行に行ったり、そこで春香が好きなアニメのイベントに参加したり。
バレンタインには春香をアイドルデビューさせようとするプロダクションとのいざこざがあったりと、春香と出会ってからは何かと今までの生活とは違う日々を送っていた。

そんな様々なイベントを乗り越えていく中で、ふたりは徐々に仲を深めていくのだが、北海道への修学旅行で裕人に転機が訪れる。
それは裕人に好意を寄せていた椎菜の告白で、裕人が春香への気持ちを自覚したのだ。

気持ちの変化があった裕人は、3年生になった新学期――イベントで同人ゲームを出したいと言う春香の言葉に、当然のように協力する。
当初はふたりで小さなイベントでの配布を考えていたが、紆余曲折を経て、椎菜たちクラスメイトの友人たちを加え、配布予定のイベントも夏コミに変更、椎菜たちの他、春香の妹の美夏や乃木坂家メイド隊の面々の協力もあってゲームは完売したり、春香が以前通っていた学校の幼馴染みたちと和解したりと3年生になっても春香絡みの日常は過ぎていく。

そんな中、裕人は密かに夏コミを機会に一大決心をして春香に告白することを考えていた。
夏コミが終わり、打ち上げを辞して春香に告白をする裕人――それに対する春香の答えはイエス。
晴れて両思いとなった裕人と春香だったが、ふたりは関係は順風満帆とは言えず、両思いになった数日後、春香の家を訪れた裕人はそこで春香の結婚話を知らされる。』

はい、14巻時点で52話です。
よくもまぁ牛歩どころかカタツムリレベルの歩みを見せるラブコメを書いたものだと、惘れるのを通り越して感心すらします。
もちろん、裕人と春香の話だけでなく、バイトで執事をやったり、美夏が副部長を務める現代舞台芸術文化研究部の活動に付き合わされたり、デートに連れ回されたり、はたまた単なるバイトだったはずの執事勤めが縁になって招待された執事やメイドたちの交流会に参加したりと、脇道に逸れたエピソードがあったりするので、単純に春香とのラブコメだけを扱っているわけではないのですが……。

それでも、裕人、春香ともに、鈍感すぎだろ。

裕人は裕人で何遍告白めいた――と言うより、一般的に見れば告白としか考えられない台詞を言いまくってるし、春香も春香ではっきりと裕人に好意を寄せているシーンは多々ある。
それでも両思いに至るまでに14巻52話を費やすとはじれったいにもほどがある。
完全無欠ながら中身は天然系ドジっ子の春香に萌えられるのなら、それはそれで楽しめるのでしょうが……。
ともあれ、今年の1月時点で15巻出ている長丁場のシリーズなので、このじれったさに耐えられなければ手を出さないほうがいいでしょう。

また、裕人の一人称で語られる文章の比喩表現……これが特徴でもあるわけですが、1冊、2冊程度であれば特徴として見られるのですが、14巻も続くとはっきり言ってうざったい。
たとえば顕著なのが裕人の記憶力のなさを表現する場面。世界最小の蝉を持ち出したりと何かと脳みその容量が少ない動物ネタでしつこく書いていたりするのは鬱陶しくてしょうがない。
文章や文体が気になる人はこういった面でも拒否反応を示すかもしれません。

とは言え、ストーリーの体裁は短編連作で作風も軽く、ベタなネタとお約束で読みやすい作品であることは以前のレビューでも書いたとおり。
キャラも春香の天然系、美夏の甘えんぼな妹系、寡黙・フレンドリー・ロリと言ったメイドさんたちなど、ベタながらも誰かひとりはお気に入りができそうな設定・配置でキャラものとしても見所はあるかと思います。
上記2点を気にされない方は、手に取ってみてもいいかもしれません。
あ、あとイラストの破壊力に負けないと言うところも(笑)

と言うわけで、総評としてはラノベ点を考慮しても、いいところ、悪いところともにあり、やはり及第というところに落ち着いてしまいます。
単純にラブコメが好きという方には比較的オススメできるとは思いますが。

ちなみに、この作品、アニメ化されていて2期までやっているのですが14巻あとがきにて3期が作成・放映されることになったようです。
奇を衒って破綻するより、ベタでお約束な作品だけに安心できるのか、はたまたキャラに萌える方々がたくさんいるのか、3期が放映されるほど人気があるとは思いませんでした。
まぁ、それでもアニメ見ましたけどね、私(爆)
アニメの感想は当ブログの範疇ではないので控えますが、ひとつだけ、春香の声優さん(能登麻美子さん)だけは絵柄やキャラから見てミスマッチだと思いますがね。(大人っぽい声質なので)


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帯の文句に負けました(笑)

2012-03-16 22:21:59 | ミステリ
さて、本屋はすでに図書館で借りる本を探す場と化しているの第995回は、

タイトル:万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ
著者:松岡圭祐
出版社:角川書店 角川文庫(初版:'10)

であります。

ミステリと言うと、人がばたばた死んでいくイメージがあってあまり好きなジャンルではありません。
なので、死人が出まくりの「金田一少年の事件簿」より、人が死なない場合もある「名探偵コナン」のほうが好きで、だから日常のミステリを優しく描く加納朋子さんが大好きです。

本書の場合、書店に平積みされていた帯に「人の死なないミステリ」とあってので、読んでみることにしました。
ストーリーは、

『角川書店の週刊誌「週刊角川」の記者、小笠原悠斗は、銀座から始まったと言われる「力士シール」の謎を記事にするために活動を行っていた。
ただ太った中年男を描いただけのような「力士シール」――そのサンプルを持ち帰るために、シールをはがそうとしている区役所の職員に声をかけ、短いやりとりのあと、ガードレールの波板を借りることでサンプルを得ることができた。

しかし重い波板を持ち帰った編集部で待っていたのは、頼りにしていた鑑定士の鑑定依頼拒否の連絡と、他紙より先んじて記事にすべしとの編集長の言葉。
サンプルは入手したが肝心の鑑定士がいない。――誰か他の鑑定士がいないかと一縷の望みをかけてネットで検索をかけて見つけたのは「万能鑑定士Q」

そこへシールのサンプルである波板を持ってその事務所に出向いた小笠原は、先客らしい男と対応に出た若い女性と会う。
名前から鑑定士の寄り合い所帯のようなものを想像していたのだが、事務所には若い女性――凜田莉子だけしかいなかった。
先客の男も小笠原と同じように考えていたようで、話にならないとばかりに帰ろうとするが、莉子はそれを押しとどめ、依頼品である絵画の鑑定を行う。
すると淀みなく絵画に施された偽装を見抜いていく莉子。
結果に満足して帰って行った先客の男のあと、小笠原は手首にしていた時計からその実力を試そうとするが、着ている服や持ってきた波板などから莉子は小笠原の勤めている会社や週刊角川の記者であることまで見抜いてしまう。
その観察眼に脱帽するしかない小笠原は、よほどの秀才かと想像するが……。

莉子は、高校時代、おちこぼれだった。普通科目の通知表はオール1。高校入学、進級ですら奇跡としか言いようのない成績だったが、性格だけは前向きでよかった。
そんな莉子は、沖縄の波照間島の出身で高校卒業後は上京して働こうと考えていた。
とは言え、致命的に成績の悪い莉子がすんなり就職できるはずもなく、生活は苦しくなっていくだけ。

転機が訪れたのはあるリサイクルショップのキャンペーンだった。そこで出会ったリサイクルショップの社長、瀬戸内陸。
莉子の感受性の高さを見て取った瀬戸内は、莉子に知識を得る方法、計算する能力などを、見聞きしたり経験したりしたことから莉子に教えていく。
その甲斐あって莉子は片っ端から知識を得、瀬戸内の計らいで働くことになったリサイクルショップで観察眼を磨き――万能鑑定士を名乗ることになったのである。

そして小笠原の持ち込んだ「力士シール」の鑑定に挑むことになった莉子は……』

1巻で終わらないのかよ、このエピソード……。
正直、最後に注記された「(「万能鑑定士Qの事件簿Ⅱにつづく。次刊このエピソード完結)」にはがっくり来ました。
まぁ、裏表紙の紹介にも「シリーズ第1弾」とあるのだから「2につづく」もありだとは思うけど、シリーズがおもしろいかおもしろくないかを判断する1冊目。個人的には解決してもらったほうが判断しやすいと思うんだけどなぁ。
まぁ、中途半端に終わるから続きが気になる、と言う見方もできるけど、気にならない程度ならそれまでの話だし。

で、本書の場合ですが、正直続きが気になります(笑)
私にしてはかなーり珍しく、オチなしでも許容できるくらい、読める作品でした。

ストーリーは、力士シールの謎から始まりますが、おちこぼれだった高校時代のエピソードや、ふとしたことで知った輸入業者の犯罪を見抜く事件、ハイパーインフレに陥った未来などが、細かい章立てで描かれています。
時系列が前後したりと、読みにくい箇所はあるものの、ストーリーの流れが破綻するほどではないので許容範囲内。
瀬戸内が莉子に知識を得るための方法を教授する場面や科学的な説明など、説明的な文章がうざったいこともありますが、まぁ、これは仕方がない面でもあるでしょう。ミステリですし、莉子が万能鑑定士を名乗るきっかけにもなるエピソードだったりするのですから、大目に見ましょう。

文章も過不足なく書かれていて読みやすいほうでしょう。
キャラが薄い印象がありますが、各キャラの個性や行動原理と言ったものはしっかりしているので、大きなマイナスにはなっていません。
他にも出版社の内実を描写した場面など、リアリティがありますし、解説によると莉子が万能鑑定士を名乗れるほどになった原因も論拠のあることのようですから、よく調べ練られたものであることが窺えます。

……と、いいところも気になるところもありますが、やっぱり「続きを読みたい気にさせた」という点で、シリーズ1作目としては成功していると言っていいでしょう。
これまた解説によると、莉子の指南役としてしか描かれていない瀬戸内も2冊にかかるエピソードに絡んでくるようですし、力士シールの謎やハイパーインフレに陥った近未来などを2巻でどのように解決させてくれるのか、興味は尽きません。

と言うわけで、気になるところはあるものの、それは些細なこと。
総評としては良品と言っていい作品だと思います。
もちろん、オチが気になるので2巻も読みます。――もっとも、図書館頼みで予約が数件入っていたので、2巻が読めるのはいつになるかはわかりませんが(笑)


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原作よりも

2012-03-11 15:02:57 | マンガ(少年漫画)
さて、久々にマンガなんかを紹介するの第994回は、

タイトル:とある科学の超電磁砲レールガン とある魔術の禁書目録外伝(1~7巻:以下続刊)
著者:原作 鎌池和馬  作画 冬川基
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃コミックス(初版:'07~)

であります。

原作は本編、新約併せて20冊以上出ている人気ラノベの外伝で、本編のヒロインのひとりである御坂美琴を主人公にした外伝作品です。
これも実はアニメ先行で見て、おもしろかったので原作を買ってみました。

さて、ストーリーは、

『人口230万人の約8割が学生という学園都市。その中で7人しかいない超能力者レベル5で第3位の御坂美琴は、夏休みも間近に迫った7月の半ば、いつものように暴漢に絡まれ、撃退していた。
そこへ現れたのは同じ常盤台中学の後輩で、学内の治安維持組織である風紀委員ジャッジメントの白井黒子。
これまたいつものようにレベル5ではあるものの、一般市民に違いはないと説教をされながらも歩いていると、黒子と同じ風紀委員の初春飾利ういはるかざりと出会う。
そんな中、銀行強盗の現場に出くわした3人。風紀委員の黒子と初春はその犯人を取り押さえようとするが、うちひとりが逃げ出そうとする。
無駄な抵抗と静観していた美琴は、犯人が逃げる際にいた美琴を押しのけようとして、美琴が持っていたクレープをはじき飛ばし、あろう事か美琴の制服を汚してしまう。
それにキレた美琴は車で逃げようとする犯人を、車ごと必殺の超電磁砲レールガンでぶっ飛ばしてしまう。

そんな非日常に近い日常の中、学園都市では連続虚空爆破グラビトン事件が発生し、黒子たち風紀委員はその事件を追っていた。
アルミを基点に重力子を加速させ爆弾に変える能力で起こされる事件――人を負傷させるほどの爆発を起こさせる能力者はすぐに調べられたものの、アリバイがあり、犯人ではない。
捜査が行き詰まっている中、初春と同じ中学で親友の佐天涙子から都市伝説として聞いた幻想御手レベルアッパーなるものの存在。

連続虚空爆破事件の犯人が自らの能力以上の能力を発揮して犯行に及んでいたこともあり、幻想御手についても調査を開始する黒子たち。
幻想御手とはいったい何なのか――連続虚空爆破事件に関わった当事者として美琴も加え、黒子たちは事件の解決に乗り出す。
その中で、美琴は学園都市を取り巻く闇に関わっていくこととなっていく。』

原作は1巻しか読んでませんが、原作よりもこっちのほうがおもしろいのは何故だろう……(笑)
原作のほうもまぁストーリーは悪くなかったけど、文章面での評価が悪かったので印象が悪いのだけど、こっちはマンガと言うこともあるだろうけど、さくさくと読めるのもいい。

ストーリーは、導入部の銀行強盗撃退から始まって、マンガオリジナルの幻想御手編、その後の美琴のクローンである妹達シスターズを利用した原作と重複する絶対能力者進化レベル6シフト計画への美琴の介入などが語られる。
オリジナルの幻想御手編は、幻想御手を広めた犯人の動機など、きちんと説得力のあるものになっていたりするし、絶対能力者進化計画編は原作とかぶるものの、こちらも美琴視点での行動やそれを迎え撃つ暗部組織との戦闘など、アクションも充実。
このあたりは原作を知らなくても十分楽しめる内容になっていて、好感が持てる。

持てるのだが、これも6巻までで、7巻がちょっと……。
絶対能力者進化計画編は、7巻で終わるので、これはまだいいとして、その後が問題。
オリジナルの細かいエピソードを挟んで、大覇星祭に一気に話が飛躍するのだが、絶対能力者進化計画編と大覇星祭の間のエピソードがごっそり原作依拠なので、原作(またはアニメ第二期)を読んでいないと、なぜ黒子が車椅子に乗っていて大覇星祭に出場していないのか、一方通行がなんで杖ついて歩いてるのか、などわからないことが出てくる。
おまけに超電磁砲レールガンアニメを見ていないとわかんないネタとかもあったりして、せっかく原作知らなくても楽しめる作品だったのに、かなり残念。
もっとも、この作品を知っているまたは持っている人は原作を知らない人間のほうが少ないだろうからいいのかもしれないけど……。

そんなわけで原作が好きな人には買いでしょうけど、そうでないと7巻でマイナス点がついてしまったので総評としては及第。
まぁ、7巻のマイナス点さえなければ良品と言えるので、及第以上良品未満とそれなりにいい点数はつけられるので、興味を持った方はどうぞ、ってくらいにはオススメできます。

あ、ちなみにアニメはオススメです。
アニメのほうも原作アニメよりもおもしろかったし、完全に原作を知らなくても楽しめる内容になっているのでね。


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