つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

今頃なんて言わないで(笑)

2012-06-24 17:21:35 | ファンタジー(現世界)
さて、ホントに今頃なんですが読んでみましたの第1020回は、

タイトル:図書館戦争
著者:有川浩
出版社:メディアワークス (初版:'06)

であります。

アニメ化もされ、花ゆめでマンガ化もされ、確か劇場版もやっているはず……の人気作ですが、相変わらず人気作ほど読まない、と言う法則(?)で読むのが今頃になってしまいました^^;
まぁ、レンタルでアニメ先に見ちゃったので、話の概要はわかっているのですが、原作はどんなもんかいなと言うことで、読んでみました。

ストーリーは、

『笠原郁、二十二歳、念願の図書館に就職が決まり、日々図書館業務に……もとい、図書館防衛のための訓練に精を出していた。
鬼教官、堂上の厳しいしごきに耐えながら。

図書館防衛……なぜそんなところに郁が就職したかと言うと、昭和最終年度に成立した「メディア良化法」のためであった。
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として成立した本法は、ほとんど恣意的に検閲を許すようなとんでもない法律だった。
それに対抗する形で施行された図書館法によって、図書館はメディア良化法の検閲から本を守るため、武装化。
そのために、通常の図書館員とは別に防衛員という職種まで図書館に配備されるようになったのだった。

郁が図書館防衛員を目指した理由――それは過去の出来事だった。
好きだった児童文学の完結編が出版されることを知った当時高校生だった郁は、その本を買い求めるとき、書店で良化特務機関の検閲に出くわしてしまった。
郁が求めていた本も検閲の対象となっていて、買おうとした矢先にそれを取り上げられそうになってしまう。

そこへ現れたのが郁の「王子様」
図書館法の権限でもって検閲で持ち去られようとした郁が買おうとしていた本を含む書店の本を守った彼に憧れ、防衛員の道を歩むことになったのだが……。

現実は訓練に次ぐ訓練。――しかも嫌われているのではないかと思うくらいの鬼教官のしごきの日々。
だが、それだけでは終わらなかった。
防衛員の中でも特別な職種、図書特殊部隊――ライブラリ・タスクフォースへの配属が決まってしまったのだ。
防衛員の中でもエリート中のエリートに配属され……たのはいいが、結局は訓練に次ぐ訓練、ついでに図書館業務の研修まで入ってしまい……。
タスクフォースへ配属された郁の日々はいかに……!?』

文芸書の体裁を取っていますが、中身はラノベです。

さておき、まずは全体的に見てですが、文章、ストーリーともに軽快で好感が持てます。
基本的に主人公である郁の視点で話が進み、ストーリーは防衛員としての訓練やタスクフォースとなってからの訓練、研修の中で教官の堂上や同僚の芝崎、同じくタスクフォースに配属された手塚などとの絡みを交えながら、クライマックスとなる戦闘シーン、それに外され、図書隊司令の付き添いを任された郁が遭遇する事件を経て、完結を迎えます。
訓練や芝崎などの同僚たち、堂上教官たちとのやりとり、クライマックスの戦闘シーンに至るまで軽快な語り口調でさくさく読み進めることができるでしょう。

ただ、基本郁の視点で語られますが、時折手塚や堂上の視点になったりして――まぁ、それくらいはいいのですが、郁以外の視点になったときに、誰の視点なのか判然としないところが出てくるのが、流れを阻害している感があります。
また、必要なことではあるのですが、図書館とメディア良化委員との関係など、世界観の理屈を語る場面がちらほらあり、これも流れを阻害している原因となっています。
さくさく読める、とは言いましたが、こういうところがあるので、一気に、と言うわけにはいきません。
ここはマイナス点になるでしょうか。
まぁ、そこまで酷くはないのでラノベとしては我慢できる範囲内に収まってはいるのですが。

ストーリーも全体的にまとまっていますし、見せ場も作ってくれているし、ラノベとしてはいい作品に分類できるとは思うのですが……。
世界観にツッコミを入れたくなってしまうのがちょいと難点かな、と。
いろいろと理屈をこね回してはいますが、そもそも検閲を許す法律が成立している、と言う世界が憲法などの法律をかじった人間としてはツッコミを入れたくなってしまいます。
良化特務機関が現実に出版業界や書店に損害を与えていると言う時点で、国賠法などで違憲判決を求めることは可能だし、いくら一度成立した法律を覆しにくいと説明されているとは言え、明らかに憲法違反な法律で違憲判決がばんばん出れば、政治家も動かざるを得ないとは思うのですが……。
まぁ、ここは世界観の根幹を成す部分なので、突っ込んではいけない部分でしょう。
でないと物語が成立しないのですから^^;

ツッコミ部分はさておき、総じて言えば確かに人気作になるだけあって、ラノベとしてはおもしろい作品と言えるでしょう。
全体的に軽快なテンポで進むストーリー、文章はいいところです。
やや文章に難があるところがありますが、ラノベとしてはマシなほうなのでそこまで気にしなくてもいいでしょう。
とは言え、ややマイナスなところもありますし、世界観にツッコミを入れたい気持ちが残ってしまうので、手放しで良品とは言えません。
全体的に悪くなく、どうかと聞かれれば読んでみても損はないとは言えますので、Amazonの評価なら☆4つくらいはつけられるので、限りなく良品に近い及第、と言ったところでしょうか。

と言うわけで、総評としては及第です。
あ、ちなみに文庫版も出ているので、手に取るならそちらのほうをオススメします。


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いまさらですが

2012-06-17 16:12:51 | マンガ(少女漫画)
さて、この人を紹介してなかったんだなぁの第1019回は、

タイトル:革命の日続革命の日
著者:つだみきよ
出版社:新書館 ウィングスコミックス(初版:'99、'01)

であります。

マイナーだけど、おもしろくて好きなマンガ家さんだったのに、目録を見て紹介していなかったことにちょっとびっくりです(笑)
まぁでも、何年ぶりかに段ボールから引っ張り出してなのでしょうがないかとも思ったり……。

さて、ストーリーですが、

『父親との確執に悩む高校生の吉川恵(けい)は、いつものように友人であり仲間である鳥羽、立待、神明とともに屋上にたむろっていた。
いつものバカ騒ぎをしている中、恵の身体には変化が起こっていた。このところ、妙に身体が痛むのだ。
そしてついには倒れて病院に運ばれた恵は、驚愕の事実を教えられる。

「検査の結果、君は女の子だったんだよ」

染色体の異常や遺伝子伝達のミスやらなにやらで稀に見た目は男性なのに、染色体が女性だったりする場合があるらしい。
15年間、男として生きていた恵。――しかし、このことをきっかけに女として生きていくことを決め、父親との確執も解消され、新しい人生、家族を歩むことにしたのだが……。

そうは問屋が卸さない。
学校に事情を話し、半年間の休学を経て、「同じ高校」に吉川恵(めぐみ)として入学した恵。サポート役で世話になっている病院の医者の姪、豊麻琴とともに新たな学校生活を平穏に送ろうとするのだが、同じ高校に入学したと言うことは、いつも屋上でたむろっていた仲間たちや、元クラスメイトに出会う確率はかなり高いわけで……。

案の定、疑惑の目を向けられる恵。
麻琴のフォローも虚しく、事情を洗いざらい元の仲間たちに白状した恵だったが、元仲間たちの反応は――ちょうどいい、だった。
もともと男でいたときから女性的な顔立ちで仲間内ではマスコット的な扱いを受けていたこともあり、仲間たちは完全に恵を女性として見る目に。
半年前までは男をやっていたのだし、しかもそのときの仲間が完全に女を見る目に変わってしまったことに混乱する恵。

男と付き合うなんて無理。しかもある事件がきっかけでほとんど男性恐怖症に陥った恵は一生麻琴の世話になると宣言するも、仲間たちの追及の手は収まらない。
あれこれと仕掛けてくる仲間たちから逃れるために、夏休みはほぼ毎日麻琴の家に逃げ込んでいた恵は、そこで麻琴の弟の実琴に出会い……』

マンガの世界ではなく、実際に稀ではありますがあるようですね。
続のほうに、ファンレターとして送られてきた手紙の中で実際に性別を変えて生きることにしたことを綴ったものが紹介されていて、事実は小説よりも奇なりを地でいくのもあるんだなぁ、と思います。

それはさておき、ストーリーですが、あらすじのとおり、染色体は女性と判断された恵が、女性として生きる決意をし、男時代に仲間だった連中に追い回されるのが「革命の日」の展開。
「続革命の日」は、相変わらず迫ってくる元仲間たちから逃げつつも、麻琴の弟の実琴と出会うことによって変わっていく恵を描いたもの。

基本、コメディです。
最初の話だけは、父親との確執が描かれていてシリアスな部分もありますが、それ以降は迫る仲間たち、逃げる恵の葛藤をおもしろおかしく描いていて、笑えます(笑)
当初、著者として「革命の日」だけで終わるつもりだったのですが、もろもろ指摘を受けてあまりに中途半端に終わってしまっているため、「続革命の日」が描かれるわけになったわけですが、個人的には「続革命の日」で実琴とくっついてくれて終わっているのでこれで完結でいいと思います。
あとがきなどで、恵の元仲間たちをひいきにしている人たちは、その誰かと恵をくっつけて欲しい、と言う意見もあるだろうと書かれていますが、まぁ、そのとおりでしょう。
ですが、どのキャラとくっつけても角が立つので、実琴という新キャラを持ってきてくっつけるほうがいちばん角が立たないとは思うので、これでいいのかと……。

キャラは、いちおう個性の説明はされているものの、元仲間たちは十把一絡げの扱いが多いので、仲間たちについてはややキャラが薄い印象があります。
と言うか、たいていセットで登場してくるので仕方ないところではありますが。
麻琴も当初の印象からかなり腹黒く変わっていっていて、ブレが見られます。(まぁ、麻琴は腹黒が定着してからはキャラがしっかりしているのでまだいいのですが)
始めからキャラがしっかりしているのは、主人公の恵と、実琴くらいでしょうか。
まぁ、それでもマンガとしてはおもしろいから目を瞑っていられる範囲ではありますが。

総じてコメディとしての出来はいいほうだと思います。
キャラひいきによる賛否両論はあろうかと思いますが、オチは納得できるものでもありますし、二冊で終わってくれているのでお財布にも優しいですし、個人的にはオススメのマンガに入るのですが……。
良品として、手放しにオススメできるかと言えば、そうでない部分もあるわけでして……。
Amazonの☆なら4つは確実につけられるおもしろさだとは思うのですが、個人的なオススメだけで良品をつけるわけにもいかないので、ここでは及第とさせてもらいます。


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ブルーレイ予約しちゃったなぁ(笑)

2012-06-03 17:08:01 | ファンタジー(現世界)
さて、8巻出てたので2クールやるんだろうなぁの第1018回は、

タイトル:アクセルワールド 黒雪姫の帰還
著者:川原礫
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'09)

であります。

はい、四月から開始されたアニメ見て読んでみた。いつもの流れだすな^^;
アニメはとてもおもしろいんだけど、原作はいまいち良品って言えるのがないなぁってのが、これまたこのところの流れだったりするんだけど、本書はどうだろうか……。

さて、ストーリーは、

『梅郷中学校に通うハルユキは授業中、とあるメールを受信した。それはハルユキにいつも絡んでくる荒谷からのメールで、昼休みにパシリをしてこいと言う内容のメールだった。
そう、ハルユキはいわゆるいじめられっ子だった。
小柄で太った外見に自信のなさそうな言動、卑屈な思考回路……取り柄と言えば、ゲームのみと言う冴えない生徒だった。

そんなハルユキの唯一の憂さ晴らしは、やはりゲームだった。
ニューロリンカーと呼ばれる身体に埋め込まれた携帯端末から学内ローカルネットに入り、人気のないスカッシュゲームで一心不乱にボールを叩き返し、スコアを更新する――仮想空間に完全ダイブして行うそれだけが現実世界から逃れられる唯一の手段だった。

ある放課後、幼馴染みのチユリとの些細な諍いが原因で、素直に下校する気になれなくなったハルユキは図書室で時間を潰すことにした。
いつものように完全ダイブしてスカッシュゲームのある場所へ向かうと、そこに表示されていたのはハルユキがたたき出したスコアを大きく上回るスコア。――たったひとつの拠り所さえ失ったハルユキに、誰かが声をかける。
声の主は、ハルユキでも知っている学校の有名人「黒雪姫」――副生徒会長を務める美貌の上級生だった。
そしてその黒雪姫はハルユキに向けてこう言った。
「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」――と。

翌日、荒谷のメールを無視して黒雪姫が告げたラウンジへと向かったハルユキは、学内ネットワークのセキュリティを回避するためでもあり、また親密な相手であることを示す直結を黒雪姫から示される。
戸惑うハルユキは、けれどケーブルを介した直結を黒雪姫と行い、そこでハルユキは正体不明のプログラムを黒雪姫から受け取る。
そのプログラムの名前は「BRAIN BURST」。
黒雪姫がハルユキの現実を破壊すると告げたものの正体だった。

いったい何のプログラムなのか、さっぱり見当のつかないハルユキだったが、その効果は意外なところで判明する。
荒谷だった。――パシリを命じておきながらラウンジへ来たハルユキを追ってきた荒谷の暴力を回避するために紡がれた「バースト・リンク」
その瞬間、訪れたのは止まった――ように見える世界。「BRAIN BURST」によって加速された世界だった。』

これ以上書いてるとあらすじが長くなりそうなので、終わり(笑)
基本のストーリーは、ハルユキが黒雪姫から「BRAIN BURST」を受け取り、そのプログラムがもたらす仮想世界で「シルバー・クロウ」というアバターとして、黒雪姫のために戦う、と言うもの。
その合間に、幼馴染みのチユリやタクムとの話などが入って、ハルユキの人となりなどが語られるわけだが、基本的にはバーストリンカーとして「BRAIN BURST」が用意した仮想空間で格闘ゲームをやる、と言うのが大筋の流れ。

こういういわゆる仮想空間を使ったSFファンタジーは、そのうち出るだろうとは思っていたけど、これもそのひとつ、と言うことになるだろう。
さて、ストーリー展開だけど、アニメを見て知ってはいたものの、そつなく、ゲームとしてのアクションも、人間関係も適度に描写されており、全体的なまとまりはいい。
破綻もなく、盛り上げるところは盛り上げられているし、ラノベとしてはかなりクオリティの高い作品になっている。

キャラも美形ではない主人公と言うのが珍しいが、それぞれ個性もしっかりしており、キャラ立ちもしている。
ややハルユキの思考回路に「ん?」と思うことがないわけではないが、全体的に見れば些末だと言っていいだろう。

文章も及第点……というか、ラノベにしてはかなりまとも。
もともとWeb上で作品を発表していたようだが、ネット出身者のほうが文章の作法は心得ているのか、と思うくらいまともだ。
前にも携帯小説出身の作家の本を読んで、文章がかなりまともだったと思ったものだが、下手なラノベ作家よりネット出身者のほうが表現力があるのだろうか。
まぁ、細かいことを言えば言えないこともないが、全体的に表現力はいいほうなので些末なことだろう。
イラストも、アバターや「BRAIN BURST」が描く仮想世界をうまく描写していて、世界を想像するのに上手に配置されているのもプラスに働いているだろう。
まぁ、私はアニメ先行だったので、場面を想像するのはかなりたやすかったが、アニメを知らなくても十二分に想像できる描写とイラストで、うまく補完関係を築いている。

総じて、ストーリー展開、キャラ、文章ともにクオリティの高い作品と言えるだろう。
手放しとまではいかないが、ラノベとしてはオススメの部類に入る作品で、これは久々に良品の評価をしてもいいだろう。

……ただ、巻末にある解説。「境界線上のホライズン」で人気のある川上稔が解説を書いているのだが、これが解説とは名ばかりの駄文。
せっかくクオリティの高い作品に仕上がっていると言うのに、解説はホントに駄文と言うしかないもの。
はっきり言って、解説は読まないほうがいい。作品世界を損なうこと請け合いである。
私は読んで激しく後悔したからねぇ。よくもまぁ、電撃編集部もこんな駄文を解説と称して載せたわ、とその神経を疑いたくなるほどだ。
本編とは関係がないので、本書の評価を下げるつもりはないが、ほんとーに、読まないほうがいい。
これだけは断言しておく。


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