つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ちと物足りないか

2007-04-30 23:29:28 | 小説全般
さて、第881回は、

タイトル:サグラダ・ファミリア[聖家族]
著者:中山可穂
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H13)

であります。

カテゴリを細分化してから、な~んか恋愛小説が増えてないなぁ……と言うことで、裏表紙の作品紹介から選択。
でも分類は「小説全般」だったりして……。
さて、恋愛小説だとばっかり思って借りてきた本書ですが、ストーリーは。

『ピアニストとして様々な場所で演奏をし、生活していた響子のもとへ、1本の電話がかかってきた。
電話をかけてきた人物、それは2年前、別れた恋人の透子だった。
一生の恋人とまで思っていた相手だったが、子供が欲しい透子と子供嫌いの響子はやむなく別れることになってしまっていた。

その透子は、取材でパリに行った際に計画的に妊娠し、子供を作り、日本に戻ってきていた。
連絡してきたその日からしばらくして、透子は息子の桐人を連れ、響子に会いに来るようになる。
短い間でも恋人としての関係を取り戻しつつあったふたりだったが、それもまた1本の電話で断ち切られてしまう。

ひどく遠くからかけているような透子からの電話。
その日、透子は事故に遭い、帰らぬひととなっていた。
桐人の父親の恋人であった照と言う男性との出会いと残された桐人。
響子は、透子の言葉に導かれるように一風変わった家族への道を歩み始める。』

純粋に恋愛小説……とは言えないんだよねぇ、この作品。
前半は、響子と透子のふたりの過去や、桐人を出産してからのふたりが描かれ、恋愛小説っぽいところがあるものの、後半は透子が事故死してから、照を交えた桐人と響子の物語に移っていくから。
裏表紙の煽り文句に「とびきり切ない愛の名品」とあり、確かに「愛」を描いたものではあるんだけど。

とは言え、それはカテゴリの話で、物語としてどうか、と言うと、ほぼ終盤に至るまで、透子に対する愛情や、桐人との関係など、響子の姿がしっかりと描かれていて、なかなかおもしろく読めた、かな。
響子と透子の関係も、どろどろした部分はなく、雰囲気としては透明感があるような感じもするので、ゲイのカップルで、異質なセクシュアリティを扱ったものながら、けっこうあっさりと読める。

終盤に至るまで……はいいんだけど、このラストのほうがねぇ。
なんか、照とともに桐人を育てることにしてからの響子の変化が急すぎる感じがするのが尻切れトンボ気味で残念。
と言うか、響子さんや、いきなりキャラ変わってんぜ、とツッコミ入れたくなるくらいだったのでね。
このあたり、もっとページ数増やしてじっくり書いてほしかったかな。

ラストのほうの重要なところがいまいちなのは痛いが、それ以外はおもしろく読めたし、あれこれと知ったピアノ曲の名前とかが出てきて、曲を思い起こしながら読んだりするのは、個人的に楽しかったし、総評としてはそう悪くはない。
でも、いいところばかりではないので、良品とは言い難いけど、十分及第ってところかなぁ。

巨○兵と言ってはいけない

2007-04-29 20:00:37 | ファンタジー(異世界)
さて、他のレーベルはあんまり期待していないんだけどの第880回は、

タイトル:少女は巨人と踊る マテリアルナイト
著者:雨木シュウスケ
出版社:富士見書房 富士見ファンタジア文庫(初版:H15)

であります。

どうも、電撃文庫以外のラノベに手を出す確率が減っているこのごろ。
まぁ、それもやはりレーベルとして電撃文庫のレベルが高い、と言うことではあるし、実際、最近はそんなに×が出る電撃の作品は少ない。
逆に他のがねぇ……。

とは言え、たまには読まないといけないだろう、ってことで……でも3週間ぶりの富士見ファンタジアであります。
第15回ファンタジア小説大賞佳作受賞作の本書はいかに。

『レンドラント大統領の孫娘レアナ・バーミリオンは、自らの忠実な執事の目をかいくぐり、整えておいた旅装に身を包み、旅に出た。
それは、大統領である祖父に届いた一通の封書の内容を知ってしまったからだった。

符術を使う符道士の端くれながら、首都ウォレントの外に出たことなど数えるくらいしかなかったが、それでも自らの忌まわしい過去のために、封書から知った出来事を無視することは出来なかったのだ。

とは言え、あまり計画性のないまま飛び出してしまったレアナの旅の途中、世界に偏在し、丸々1世紀分の歴史が失われたレスフォール時代に建造されたと言う巨人石で起きた不思議な現象を目にする。
封書の事件の手がかりを求め、その場所へ向かったレアナは、そこでリィエンシーから逃げてきたというテリードという青年、シィナという少女に出会う。

レアナは、誰も手の届かない場所へ行く、と言うふたりに、無視できない事件の影を見、追いついてきた執事のイェンとともに同行することにする。
逃げるふたりを追ってくる敵、シィナが見せる能力……レスフォール時代に産み落とされた遺産を巡り、レアナは小さいながらも自らの力で過去と、そして目の前の現実に立ち向かう。』

最初の印象は、佳作と言いながらも全体的にアクションシーンやストーリー展開に勢いのある、なかなか出来のいいデビュー作だ、と言うこと。
ストーリーは、主人公のレアナがリィエンシーという国で起きた事件を知ったことから、それを何とかしようと旅に出て、それを執事であり、レスフォール時代に産み出された生体兵器ドラグ・ヘッドであるイェンとともに解決する、アクションファンタジー。
展開も、テリード、シィナと出会ったことでともに追われることになる序盤からアクションシーン中心に進むが、このアクションシーンのテンポがよく、読み手を飽きさせないだけの勢いがある。
また、レスフォール時代の遺産であるドラグ・ヘッド、マシン・ドライブと言った兵器のこともテンポを阻害しない程度に語られており、ストーリーの流れの中で説明がつくようになっている。

キャラも、大統領の孫娘という特権的な地位にいながらも、リィエンシーでの事件を見過ごせないレアナの動機や過去と言ったところもきちんと語られ、比較的納得がいくものになっている。
この作品のキーとなるシィナのキャラも、レアナとの関係の中で変わっていく姿が比較的うまく描かれており、ラストの説得力にもそれなりにうまくつなげている。

ストーリー、キャラともに総じて評価の高い出来になっている作品。
……とは言えるが、手放しで褒められるところばかりではない。

まず、説明不足があげられる。
特に序盤。もちろん、語れないネタというものはあるが、そういったところを考慮しても、説明不足は顕著。序盤の展開は、読者置いてけぼり。
中盤以降は、徐々にストーリーの核心に触れられてくるが、それでも説明不足と感じる部分は多々ある。
だから、キャラの心情や関係、心の変化などはあくまで「比較的」うまく描いている、と言う評価しか出来ない。

また、文章も説明不足に加えて、表現不足のところもあって、繋がりが悪いところがある。
全体的な勢いは十二分にあるからまだいいが、それでも僅かなりとも勢いを殺してしまう欠点ではある。

まぁそれでも、今後の続編をきちんと描けるだけの世界観を持ちながら、きちんと1冊でまとめているし、全体的なアクションファンタジーとしてのおもしろさは備わっている。
多少の欠点はあるものの、デビュー作でこれだけ書ければ十分だろう。
佳作、と言うのも納得できる作品と言える。
勢いのあるアクションファンタジーを読みたいひとには十分オススメ。

総評は……細かいところを言えば、いろいろある(レアナの動機をせっかく過去話できちんと説明しているのに「気質だから」って余計なのを入れんなよ、とか)のだけど、ラノベ点、デビュー作、続編での成長への期待を込めて、良品と言うことにしておこう。
個人的には、序盤の置いてけぼり感はかなりいただけないが、中盤以降はちゃんとおもしろく読めたしね。

なんちゃって産業革命

2007-04-28 23:59:59 | ファンタジー(異世界)
さて、表紙ではなくレーベル買いな第879回は、

タイトル:ユーフォリ・テクニカ 王立技術院物語
著者:定金伸治
出版社:中央公論新社 C★NOVELS(初版:H18)

であります。

お初の作家さんです。
同じレーベルの『煌夜祭』がかなりのメガヒットだったので、もう一冊C★NOVELS拾っとくかってことで買ってきました。
十九世紀イギリスに似た国を舞台にした、長編ファンタジーです。



その娘は、宮殿内を逃げ回っていた。
手には薄い封筒があり、「履歴書在中」とだけ書かれている。
最後の難関、玄関ホール前の衛兵二人を突破し、彼女は里敦の町に飛び出した……憧れの工学技術者になるために。

『水気』の研究者ネルは、助手のユウと共に叡理国の帝都、里敦に到着した。
水気研究の成果を認められて、王立技術院の客員講師として招聘されたのである。
東洋人故に、周囲からの風当たりが強いことは当然予測できたが、当代最高の施設で研究ができることを考えれば、断る理由はなかった。

当然と言えば当然ながら、ネルの研究室を希望する学生は0だった。
工学研究では数が物を言う。豊富な労働力がなければ、研究も一向に進まない。
時間が解決してくれるだろうと楽観的な意見を口にした時、ネルの前に一人の娘が現れ、技官として雇って欲しいとまくし立てた。

彼女の名はエルフェール……その正体は叡理国の王女――!



トラブルメーカーの王女様と、女性の扱いが苦手な講師のラブコメです。
エルフェールは登場前からネルにベタ惚れ、ネルはネルで一途に研究に打ち込むエルフェールに次第に惹かれていく、と展開は王道まっしぐら。
十九世紀イギリスをモチーフにした国が舞台だけに女性への差別は激しく、そういった偏見を持たないネルの元には自然と女性が寄ってきて、エルフェールのイライラはつのるばかり……。

ベタだ……とてつもなくベタだ。

まー、それだけではお話にならないので、主人公達が取り組む『水気研究』の部分もしっかり描かれています。
飽くまで架空の学問なので、読んでて首を傾げる部分もありますが、説明は結構しっかりしている方。
研究テーマが『花火』というのも、このメンバーの雰囲気に合っており、科学ファンタジーとして面白く読めました。

後はやはり、ヒロインのエルフェールでしょうか。
一般常識が欠落している猪突猛進娘、という形容がぴったり当てはまるキャラで、凄まじいボケと有り余る情熱で、最後まで話を引っ張ってくれます。
彼女を見る時のネルの視点が、まんま若いOLを教育する上司だったりするのが、作者の歳と趣味を感じさせて微妙に引きますが……まぁ、異世界でのオフィス・ラブ物と考えれば問題はないでしょう。(そうか?)

最初から最後まで、非常~に素直な作品です。ヒネリとか毒が苦手な人にはオススメ。
ちと奇跡を安売りし過ぎている嫌いはありますが、主人公達が研究の成果である花火を打ち上げるシーンは結構好きです。

夜でも平気

2007-04-27 20:13:32 | 小説全般
さて、第878回は、

タイトル:痴情小説
著者:岩井志麻子
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H18)

であります。

いつもの小ネタはなしで、いきなり本の中身です。
と言うか、短編集で13編もあるので、長くなるの確定~だからなのさ~(笑)
てなわけで、各話ごとに。

「翠の月」
短いながらもアイドルをしていた美樹は、年を経たいまは当時のファンだった幾人かの持ってくる仕事で生活をしていた。
そのうちのひとり、黒岩とともに入ったホテルで美樹は首つり自殺をした父の話を始める。

「灰の砂」
小さな飲み屋をしている小林みき子は、客として知り合った、警察の相談課の職員をしている梅沢直彦と関係を持つようになる。
ただ逢瀬を楽しむだけだった日々は、みき子が次第に直彦の生活を圧迫し始めたときから変わっていった。

「朱の国」
愛人から正妻へ、ではなく、その逆を辿った麻子は、イラストレーターとして生活していた。
すでに30を超えた麻子は、前夫と他愛ない連絡を取り合うくらいの関係を保つ中、ベトナムに恋人を作っていた。
朱色に染まる短いベトナム旅行で、若い恋人とともに過ごす時間の中、夫の新しい妻となった女の語った幻影を見る。

「青の火」
ひとみは、洋と静夫というふたりの男と付き合っていた。
どちらと結婚するのか。死人の魂で、何かを望むときに現れると言う『ホボラ火』……頑固な父のホボラ火を見たくないと言う母の言葉で結婚し、強くはないが平凡な幸せを静夫と結婚することで得た麻子に、ある時、誰かからの電話が入る。

「白の影」
自称小説家だが実はただのヒモである板野と同棲している奈美栄は、暴力を振るう板野の命令で風俗店で働いていた。
だが、最近板野は新しく引っ越したアパートの隣室の女が恐ろしいと言うようになり、決まって隣室の女の話題になると暴力を振るってきた。
それにたまりかね、一度アパートを飛び出して戻ってきた奈美栄は、そこにはベランダで首を括っている板野の姿があった。

「黒の闇」
ごくふつうのOLの比佐子は、同僚の典子とともにデートクラブにも出入りしていた。
有名商社の女性社員が夜な夜な街角で客を引き、殺害された。そんな事件がある中でも比佐子は、中絶や性病を繰り返したために辞めた典子と違い、デートクラブに通っていた。
客から言われる自らの陰部の黒さと、殺害された女性社員の心の闇を思いながら。

「藍の夜」
子供が出来ず、愛人に子供が出来たために離婚を経験した弘美は、40になろうかと言う年に、離婚歴があり、娘がひとりいる大竹と再婚した。
それなりの年月を経て、夫婦らしく、そして母親らしくなり始めた矢先、継子の玲奈が高校生のときに、知り合った二十歳の男のところへ家出してしまう。

「茶の水」
1年も保たず離婚したため、岡山の実家に戻りづらくなった愛子は正月をベトナムで過ごすことにした。
一年中夏のようなベトナムで気儘に過ごし、財布が心許なくなると旅行者のアメリカ人に身体を売って暮らすような生活をしていた。
そんなベトナムでの生活は、夢で見た男を街角で知ったときに終わりへの時を刻み始めた。

「碧の玉」
東京の小さなプロダクションに就職し、派遣されて東京ローカル番組のレポーターをしているサチは、ベトナム旅行の際に、ひったくりなどのための忠告を聞き入れ、そう高くはない碧のネックレスをしていた。
碧のネックレス……はっきりとおもちゃとは言えず、さりとて高級とも言えないそれに執着と、夢のような村祭りの出来事やベトナムでの生活を見るサチは、祭りの中で罪をさらけ出すために行われる儀式を思う。

「赤の狐」
歌舞伎町に店を出している美子は、その日、まだ常連客のひとりである明男しかいない店で、その明男の相手をしていた。
自分に好意を持っているとわかる明男がしばらく顔を出さなかった後、ストーカーまがいの行動に出るようになっていた。
たまりかねて話をしようと言った美子は、店で常連客のうちのふたりとともに明男との話し合いの席を持ったのだが。

「緋の家」
旧暦で行う桃の節句。幼いころ、三枝子は座敷に飾られた雛壇の緋毛氈に、白い足だけが見える幽霊を見たことがあった。
高校生のとき、身体を売ったことが露見し退学。田舎にいられなくなり、出てきた岡山市内で働いていた三枝子は、いつしか、同僚で役者になりたいと言う多香代の語るひとり芝居、そして久しぶりに連絡をしてきた出来のいい妹から、自らが見た足だけの幽霊を実感する。

「桃の肌」
住宅設備機器販売の会社を興し、それなりに儲けている豊崎賢二は、様々なところでちやほやされ、己が栄華を誇っていた。
それはある店で知ったホステスの朴英愛パクヨンエに出会って変わってしまう。
だが、年甲斐もなく若い英愛と愛人関係を続ける賢二だったが、ビザが切れてしまう英愛のために図った便宜のために、その立場を危うくさせる。

「銀の街」
母が倒れたため、実家に戻ってきた美佐子は、兄の祐一とともに今後のことを話していた。
ともに離婚を経験したふたりだったが、兄は二度目はないと言われた母に『ええお参り』をさせたいといい、美佐子はもう一度結婚して母を安心させたいと願っていた。
だが、美佐子の恋人は、幼いころ、祭りで見た少年にそっくりな韓国人で、それを母には言えなかった。


……これでもかな~り短くストーリー紹介したつもりなのに……長ぇ……(笑)
さておき、それなりに気に入ったのがあったりすれば、いくつかそれを紹介すればいいんだけど……。
個人的にはおもしろい作品を書く作家の範囲にいるはずの著者だが、今回は13編、すべてに対して、これっぽっちもおもしろくなかった。

長編には、濃密な雰囲気や毒々しさ、エロティシズム、そして怖さが強く感じられるのだが、短編になるとどれもこれもそうしたところが薄い。
中には、「緋の家」のように怖さの感じられるものもないわけではないが、それも他と較べて少しはあるくらい、って程度。
こういう話を書く作家、って決めつけるのはよくないんだろうけど、でもやはり期待してしまうところもあるから、そうしたところがまったく感じられないってのはいまいち……。

また、それでもほとんどの作品は、著者らしさがわかる作品ばかりなのだが、「赤の狐」「桃の肌」なんかは在り来たりなネタと展開。
確かに、「痴情小説」にふさわしく、痴情を描いた話ではあるけれど、個性的な小品の中にあって没個性の作品で、余計にげんなりしてくる。
各話のタイトルと内容に色をテーマにしているところも、それなりにうまく働いているところと、まったく意味を見出せないところとがあるのもいまいち。

なんか久しぶりに手にして、けっこう期待してたんだけど、ものの見事に期待はずれ。
個人的には好きな作家さんなんだけど、さすがにこれは落第。
今度はやっぱり長編にしようっと。

表紙のコメントに納得

2007-04-26 21:54:53 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、実は相棒が一回紹介してたりする第877回は、

タイトル:機動戦士ガンダムさん(1~2巻:以下続刊)
著者:大和田秀樹
出版社:角川書店 Kadokawa Comics A

であります。

扇:『あやかしあやし』打ち切りかよっ! と吠えてるSENでーす。

鈴:見たけど、「なんだかなぁ」のラストにげんなりのLINNで~す。

扇:明らかに、後半四十~五十話あたりでやる予定だったネタを詰め込んでたからなぁ。

鈴:まぁなぁ。
脚本の名前見た時点で期待していただけに、けっこう……と言うより、かなりがっかりしたしなぁ、これ。

扇:途中まではかなりいい作品だったんだが、やはりあれかね、年齢層高め狙い過ぎたかね?

鈴:どうだかなぁ。
いちおう、キャラ的に人気出そうなヒロインは作ったものの、全体的に重めでラブコメ要素低かったってのが、やっぱ今時ではあかんかったんやろうなぁ。
やっぱ、売れるためには、各種属性、ラブコメ必須、女性キャラ多数、ってのが必要なんだろ。

扇:売れるためにはなぁ……。
ただでさえ時代劇は人気出にくいってのに、主役が三十九歳で、話も割と重め、ハッピーエンドではなく、どちらかと言えば虚しさが残るラストが多かったのは痛いわな。
でも、天保版ウルトラマンとしてはなかなか面白かったと思うんだがね。
話が進む毎に科学特捜隊(奇士の連中)は役に立たなくなっていったが。(笑)

鈴:話が進むごと?
すまん、わしは最初から大して役に立った憶えがないぞ(笑)
だいたいお頭なんか、漢字の成り立ち説明する以外になんかやったか!? って気がするしなぁ。

扇:いいのじゃっ!
ムラマツキャップの時代から、リーダーは解説役と決まってるんだからよっ!
まぁ……才蔵がギャグ担当、アビが特攻隊長、江戸元が参謀役で、戦闘になったら主役しか役に立たない……ってのは確かだがな。

鈴:そのころからもうリーダーってのは役立たずだったのか……。
しかし、才蔵がギャグ担当ってのはわかるが、アビが特攻して吹っ飛ばされる盾で、江戸元がイロモノ担当で、アトルは……いちおうヒロインか。

扇:いちおう言うな。
これ五十二話までやってたとしたら、ほぼ確実に往壓とアトルの祝言で終わりだった筈だぞ。
年齢差が凄まじい夫婦だけどな。

鈴:まぁなぁ。
これが50歳と24歳ならまだしも、39歳と13歳だもんなぁ。
いまじゃ立派なロ○だが、まぁ、この時代の武士ならまだ政略結婚だの何だので許容範囲ではあるか。
でも、祝言上げたとしても、普段着で並んでりゃ確実に父親と娘だわな(笑)

扇:まぁなぁ……。
総集編で、アトルが往壓に酒注いでるシーンなんか、そのまんま酒好きの親父と娘って感じだったし。
ともあれ、バトルシーンのマンネリ化、微妙にマイナーなグラフィックなど、打ち切りになる要素は多分にあった作品ではあらぁねぇ。
個人的には、かなり好みなんだが……一般受けはせんかも知れん。

鈴:オヤジと娘って言うより、アトルのあの姿は吉原仕様だったから、客とかむろのほうが似合ってるぞ(笑)
まぁしかし、確かに一般受けはせんわな。
相棒が好みって時点でマイナー街道まっしぐらだ(爆)

扇:お前の漢神あやがみを見せろっ!!!
ちり~ん。(笑)

鈴:なら私も。
お前の漢神を見せろっ!!!
あっ、あれは! ……ハリセンか……。

扇:ハリセンで妖夷が倒せるかぁっ!!!
お前の頭をはたくには充分だがな。

鈴:ふっ……
真剣白ハリセン取りで迎え撃ってくれるわっ!

扇:いや、そもそも剣ぢゃねぇし、横向きではたく代物だし、何か無理がないか?
まぁ、ハリセンで脳が潰れた奴はほっといて……初代ガンダムをネタにした四コマ漫画です。
以前、相棒が紹介してたので私も読みましたが、結構笑えますね。
登場人物の性格が180度変わってるので、それを受け入れられるかがポイント。

鈴:横向きではたく?
なに、白ハリセン取るなら、縦だろうが横だろうが、取ったもん勝ちよ。
さておき、風鈴の音で脳みそがどっか異次元に飛んでいったしまった相棒の解説を読みつつ、追加することないなぁと思ったり……。
まぁでも、その登場人物の性格が変わってるからこそ、おもしろい、と言うのはあるんだがね。

扇:ま、ギャグ漫画としては正しいやり方だわな。
では、CM!


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扇:では、主人公のシャア。
普段は格好付けのワガママ男だが、気が強いララァに突っ込まれるとあっさりヘコむ小心者。
拗ねる、いじける、くだをまく、とネガティブな行動が目立つものの、お調子者でもあり、上司に向かって堂々と『紫バ×ア』と言ったりすることもある。
ネット掲示板に白い奴の悪口を書いたり、スタッフロールでコマネチやったり、表紙でガンダムマニアに喧嘩売ってみたりと、原作のイメージをぶち壊す暴れっぷりは見ていてかなり楽しい。
ただ、劇場大画面で、「俺はロリコンに見えて実はマザコンだったんだぁっ!」と吠えた原作シャアとどっちがヘタレかは結構微妙かも知れない。(笑)

鈴:では、シャアのツッコミ役のララァ・スン。
原作では、シャアとアムロの関係において重要な役割を演じたヒロインであったが、この作品では、ただひたすらに破綻した性格のシャアに対して、冷静に、ときどき強硬手段も使いながらツッコミを入れまくるキャラ。
シャア相手はツッコミ役だが、アムロを相手にする際には、チャネラーなアムロに引かされまくるかわいいところも見せる。……こともたまにある。
しかし、ララァ、シャアみたいな変人に惚れてるなんて、人生、投げてないか?(笑)

扇:男は選べよって感じだよなぁ……。
では、原作の主人公で、こっちでは外道一歩手前のライバルキャラ、アムロ。
あっちと違ってかなりあっけらかんとした性格で、ニコニコ笑いながら毒舌を振るう。
かなり間違った意味で新人類であり、その能力を駆使して下ネタを飛ばすことも多い。
ちなみに、原作再現シーンでは割と真面目な性格しているが、そういう時に限ってしょーもないトラブルに巻き込まれる。(アプリケーションエラーでガンダムが動かない等)

鈴:アプリケーションエラーはなぁ……笑ったなぁ。
すんごい皮肉やったし。
それに、イン○ルイン○イドなんてのもあって、いまどきの定番ネタながら笑えた(笑)
しかし、何だねぇ、4コママンガ系でここまで笑えるのは久しぶりだったねぇ。

扇:もともと、面白いの描く人ではあるんだよ。
デビュー作の『たのしい甲子園』もかなり笑えたしね。
ともあれ、原作を茶化されても怒らない方なら楽しめるギャグ漫画ではないかと。
元のシーンを変えたものから、本作オリジナルの会話、モビルスーツ同士の掛け合い漫才まで、あの手この手で笑わせてくれます。
では、今日はこのへんで、さよーならー

鈴:あ、そうなの?>「たのしい甲子園」
私はこれでこのひと知ったクチだから、よくは知らないのだが……なかなか興味を惹かれる話だな。
まぁ、実際、原作がすごい好きで、傾倒して泥沼はまってるひとには向かないだろうなぁ。
好きだけど、パロディだし、おもしろけりゃOK、ってくらいでないと読めないわな。
著者のところに呪いの手紙とか行ってそうだけど……(笑)
ともあれ、知らなくても笑えるネタはそこそこあり、知っていれば余計に笑えるネタありと、なかなかめずらしいギャグマンガであります。
それでもやっぱり、ガンダムを少しくらい知ってるひとにオススメしたいなぁ、と思いつつも今回はこの辺でお開きであります。
それでは、さよ~なら~

実は恋愛小説?

2007-04-25 23:59:59 | ミステリ
さて、何がごっついのかよく解らない連休が近付いている第876回は、

タイトル:ランチタイム・ブルー
著者:永井するみ
出版社:集英社 集英社文庫(初版:H17)

であります。

お初の作家さんです。(久々の定型文)
三十路を目前に転職し、畑違いの職場で奮闘する主人公の姿を描く連作短編。
例によって、一つずつ感想を書いていきます。


『ランチタイム・ブルー』……新米インテリア・コーディネーター、庄野知鶴は、雑用ばかり押しつけられる日々に嫌気がさしていた。中でも憂鬱なのが社員の弁当の調達で、注文忘れ、注文後のキャンセルなど、実につまらないトラブルが毎日のように起こる。今日も部長の水沢が、注文してもいない弁当を平然と要求してきて――。
昼飯係って、意外に神経使うんだよねぇ……。自分が注文した品を間違える奴がいたり、電話で注文した後で別の弁当に変えたいとかぬかす奴がいたり、しまいにゃ全員が全員、さも当然のようにお札を出してきて釣りくれ――って、私は常に自分の財布を小銭で一杯にしとらにゃいかんのかっ! そんな雑用係の苦労が滲み出ている一編。ミステリとしては、犯人該当者が一人しかおらず、理由も後付けでちとイマイチ。あと、××さん、ちょっとこらしめるって……あンたそれ犯罪だよ。

『カラフル』……その日、千鶴は友人の遠藤美和を連れて、とあるファブリック専門店を訪れていた。一週間前、突然、美和が部屋の内装を替えたいと言い出したからだ。千鶴は、ひとまずカーテンだけでも替えることを勧めるが、ある事件のため、すべては無駄になってしまう――。
本書唯一の殺人事件もの。気が付いた時には事件が解決しており、いささか拍子抜け。これまた最後に真相が明らかになるが、被害者にも犯人にも同情できない後味の悪いものだったりした。千鶴には大いに同情するが。

『ハーネス』……千鶴は、広瀬の代理として高見家を訪問した。カタログを見せて一通りの説明を行い、相手の要望を聞くだけの簡単な仕事。だが、顧客の高見滝子は、それとは別にちょっとした相談を持ちかけてきた――。
うって変わって、明るいタッチの話。滝子はなぜ寝室を二つに分けたがるのか? 犬の散歩をしなくなったのはどうしてか? という謎を、さらっとしたヒントで解かせてくれるのは上手い。オチも綺麗で、本書中最もミステリらしい作品。ちなみに、『ランチタイム・ブルー』にも登場した広瀬が千鶴の直属の上司になっており、この関係は本書ラストまで続くことになる。

『フィトンチッド』……髪を切り、お気に入りのライラックも買ってきて上機嫌な休日、千鶴は奇妙な電話を受けた。低く囁くような男の声で、「髪、切ったんだね。似合うよ」。さらに後日、追い討ちをかけるような事件が――。
後に付き合うことになる、森くん登場編。しかし、何の前フリもなく、いきなり食事に誘うって……顔に似合わず積極的ですな。ミステリとしては顔の見えない侵入者を探すというサスペンスタッチの話で、一人暮らしの女性がこういう事件に遭遇した時の不安感が上手く出ている。ただ、最後の千鶴の謎解きに関して言えば……それで犯人特定するのってかなり弱くないか? ってところ。

『ビルト・イン』……広瀬と分担して、二世代住宅の内装を決める仕事を担当することになった千鶴。しかし、館林真美は、姑の綾子が住む一階の内装が気になるようで、なかなか色よい返事をしてくれない。挙げ句の果てには、なぜ姑にはベテランの広瀬が付いて、自分の方は新米の千鶴が担当するのかと文句を言い出す始末――。
うわ~、性悪な嫁、ってのが第一印象。自分が住む二階が姑の住む一階より見劣りするのは嫌だとか、姑が打ち合わせを別々にしようと言い出したのも自分の住むとこだけに金をかけようって魂胆じゃないのかとか、好き放題ぬかした挙げ句、そこらへんの問題を千鶴に放り投げようとするあたり、客としても人間としても最低レベルだと思う。えー、ミステリとしては、姑がこっそり一階に作ろうとしていたものとは何か? というところまでは面白かったのだけど、その後ヒントが皆無のまま説明台詞だけで終わっちゃったのでイマイチ。さりげに、千鶴と森の関係が進展してたりもする。

『ムービング』……以前遭遇した事件を期に、千鶴は引っ越しすることを決めた。築五年、三階の角部屋、駅から徒歩五分となかなかいい物件も見つかり、いざ契約と不動産屋に向かう。しかし、保証人を広瀬にしていたことが問題となり――。
保証人は親族じゃないと……というのは納得いくが、男性の方がいいってのは確かにちとアレかも。ミステリ色は皆無で、千鶴と森の痴話喧嘩がメインとなっている。ただ、読者の視点では明らかに千鶴の勘違いと解るので、盛り上がりはさほどなかった。

『ウィークエンド・ハウス』……いつになく真剣な表情で、話したいことがある、と森は言った。だが、直後に起こったトラブルでうやむやになってしまい、その後も千鶴はその話を聞くのを先延ばしにしてしまう。そんな折、二人は広瀬の別荘に招待され――。
当然出てきた千鶴と森の結婚話。それ以外……何もないかも。一応、広瀬の母と、三島という怪しげな人物が登場し、倉の中のワインが消えるという騒動が起きるのだが、森くんがあっさり謎を解いてしまうので感慨も何もなし。

『ビスケット』……千鶴は、森と仕事の間で揺れていた。転勤となる彼に付いていくなら、今の仕事は辞めざるを得ない。だが、ようやく今の仕事の面白さが解ってきたのに、ここで打ち切ってしまう気にもなれない。果たして、彼女の決断は――?
千鶴が自分の気持ちに整理を付ける完結編。ゲストの老夫婦の話も面白く、なかなか読ませる。夫の身体を気にして内緒でリフォームの話を進めようとする妻、自分の留守中に建築業者を家に入れたことを怒る夫、と、ここまでなら普通のトラブルだが、これに、夫婦が交互に倒れるというエピソードを入れているのが上手い。夫の発した台詞により、千鶴が仕事に対する視点を広げるという展開も見事。


な、長かった。
ミステリかどうかは置いといて、千鶴の成長物語としてはなかなか面白かったです。
森との関係が、妙にあっさりと進展してる気もしないではありませんが、まぁ、良しとしましょう。

突き抜ける面白さはありませんが、さらっと読めます。
でも……やっぱりミステリと言うより恋愛小説だよなぁ。

たまにはこっちも

2007-04-24 21:27:53 | マンガ(少女漫画)
さて、「ごっついで、をい」と言いたくなるような連休のことだよ、明智くんの第875回は、

タイトル:青色図書館
著者:林みかせ
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:H17)

であります。

私がマンガを紹介したのはかな~り前だよなぁ、と思ってカテゴリから見てみると、前に紹介したのは去年の9月3日でした……。
あれからもう半年以上、経ってんだなぁ……としみじみ思いつつ。

さて、マンガ、しかもおなじ花ゆめだけど……ストーリーはこちら。

『高校生の朝比奈麻衣は、学校の帰り道、ウィンドウに飾られていたワンピースに一目惚れ。
心惹かれるも1着なんと1万2千円なり。
すぐに手が出る値段ではないながらもやっぱり欲しい。

そんなとき、「時給1000円 日払い可」でしかも急募のアルバイト募集の貼り紙が。
勢い込んで募集に手を挙げたそこは、「青色図書館」という私設図書館だった。
本を読むなんてほとんどないくらい活発な朝比奈麻衣……通称ヒナだったが、時給の高さには勝てない。

かくして、本好きが集う図書館で、来客者に輪をかけて本好きな22歳の館長、通称先生こと、下籠谷あさぎ(草かんむりに杏)のお叱りを受けながら、ヒナのバイト生活は始まった。
そんな図書館でのバイト生活。
変わっているけれどどこかかわいい先生や来客たちとの触れ合いにヒナの中で図書館は大切な存在になっていく。』

ストーリーは、先生の祖父が残した膨大な蔵書を見てもらいたい、と言うことから設立された私設の「青色図書館」で、ヒナと先生のふたりの関係を中心に描かれる恋愛もの。
図書館でアルバイトを始める第1話から、ハッピーエンドとなる第4話までの1話完結の短編連作の形式となっている。
まぁ、もともとがLaLaDXで連載されていたもので、この雑誌はだいたい連載でも1話完結が基本なので、どうしてもこういう形になってしまうんだけど。

さておき、ストーリー展開のほうだけど、こちらはけっこうベタ。
快活で前向きなヒナに、無口でマイペースな先生。
正反対なタイプのキャラが出会って、ラブストーリーに移行すると言うところは定番のシチュエーションだし、第3話なんかは小説家の先生(下籠谷)のあとにデビューした新人が出たりして、ネタも目新しいものはない。
お約束なので安心できるとは言えるが、恋愛ものとして意外な展開とか、劇的な展開と言ったことはまったくないので、そういうことを期待してはいけない。
と言うか、恋愛ものには必須アイテム(?)とも言えるライバルが登場しない時点で期待しようにも出来へんって(笑)

まぁ、だいたいこの著者の作品、絵柄も関係はするんだけど、ほほえましくもかわいらしい作品が多い。
この作品も例に漏れず、「おまえら、小学生かっ!」とツッコミを入れたくなるほど進展しないヒナと先生の関係などはほほえましい以外の単語が見つからないくらい(笑)
また、毒もなければ、どろどろしたところも皆無なので、濃ゆい恋愛ものが好きなひとには向かないかも。

ただ、逆にたまに読むには清涼剤っぽい感じでいいと思うんだよね。
ラストもホッとするような綺麗な終わり方をしてくれているし、何より全4話なので1冊で完結しているところが手軽でいい。
置き薬……ってわけじゃないけど、気分を変えてあっさりしたのが読みたいときには最適だと思うけどね。

何冊か単行本は出ているけれど、個人的にこの著者の作品はこれが一番オススメ。
……と言うか、最初のシリーズ「地球行進曲」は「赤ちゃんと僕」の二番煎じで、おもしろいとは思わなかったのだが、「地球行進曲」以外の単行本や短編はなかなかだったりして……(笑)



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美ューム!

2007-04-23 19:50:45 | マンガ(少女漫画)
さて、GW? 何それ?な第874回は、

タイトル:毒師プワゾン
著者:魔夜峰央
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'90)

であります。

奇才・魔夜峰央の描く、耽美スプラッター・ホラー・アクションの傑作。
実は、『パタリロ西遊記』が出るまでは魔夜漫画の中で最も好きな作品でした。
一冊で終わっているので、ストーリーの奥行きでは『パタリロ西遊記』に及びませんが、キャラは文句なしにこっちの方が好きだったりします。
(三蔵様御一行も好きなんですが、それを圧してプワゾンのキャラがいい)



毒を使った暗殺を生業とする者達の総本山・毒師ギルド。
その本部で、一流の毒師であるプワゾンは裁判にかけられていた。
彼が若くして枢機卿の座についたことを快く思わぬ者達によって、罠にはめられたのである。

罪状は、依頼人の許可を得ず、その政敵を抹殺したこと。
だが、ギルドの長・毒皇までもが陰謀に加担しており、弁明は無駄に終わる。
処刑命令が下された瞬間、プワゾンは真面目な仮面を剥ぎ捨て、伝説の影毒で毒皇を仕留めた!

今までとうって変わって、尊大な態度で幹部達を仕切るプワゾン。
だが、死んだと思われた毒皇の反撃を受け、わずか三日で孵化し、肉体を食い破るという毒バエの卵を産み付けられてしまう。
やむなく逃走した彼は、毒バエの対処法を求めてある村を訪れるが――。



と言うわけで、超一流の毒師・プワゾンと毒師ギルドの戦いを描くホラー・アクションです。
本作の目玉は、何と言っても主人公のプワゾン! 物凄く格好良いのです!
黒髪で右目を隠した黒衣の美青年というビジュアルもさることながら、お茶目なアウトローという設定が絶妙で、これが少年漫画だったら軽く十巻は連載続けられるぐらいキャラクターが立っていました。

そもそも、第一話からして凄い。
毒師ギルドの幹部連中に囲まれ、もはや処刑を待つだけといった場面で軽く縄を溶かし、さっさと頭から潰してやるぜ! って感じで――

「毒皇! 死ねや!」

来たぁっ!(笑)
本誌でこれ見た瞬間、私、思いっきり吹き出してしまいました。
蝙蝠の形で宙を飛び、あらゆる毒を中和する光毒スクリーンすら貫いて敵を仕留める伝説の影毒――って、どう見ても毒じゃねぇだろ! という無粋なツッコミなど入れてはいけません。格好良ければすべて許されるのです。(をい)

これだけでも充分掴みはオッケーって感じですが、そこは魔夜峰央、まだまだネタは続きます。

古書に記されていた村で、プワゾンは毒バエの幼虫を体外に追い出す方法を発見しました。
しかし、身体の外に出た幼虫の群れが暴れ回り、村は潰滅の危機に陥ります。
襲い来る幼虫の前で上半身裸になり、背中を向けて薔薇の刺青を見せるプワゾン!

「これがプワゾンの、薔薇毒!!」

掛け声とともに背中から放射される溶解毒!
あらゆるものを輝きのなかに消し去ってしまうそれは、まるで無数のレーザービームのようです。
しかも効果音が――美ューム!(笑)

連載第一回目から凄まじいインパクトを与えてくれるプワゾンですが、その後も順調な活躍を見せます。
迫り来る追っ手をかわしつつ、ギルドの潰滅を狙うのが基本線なのですが、枝葉のエピソードがかなり楽しい。
毒師ギルドの見習い毒師をからかってみたり、若い女の子と男の子相手に二股かけてみたり(バイセクシャルとは言わず、「オレは博愛主義者だ」と断言するのがいい)、師匠と漫才しながら敵を迎え撃ったり、と、真面目なんだか不真面目なんだかよく解らない暴れっぷりは爽快です。

敵とのバトルシーンもなかなか見物。
超一流の毒師であるプワゾンに対抗するべく、ほぼ毎回、奇妙な連中が登場します。
対するプワゾンも心得たもので、爆裂毒や爪手裏剣など各話毎に新たな技を披露していました。
(しかしこの作者、本当に『伊賀の影丸』大好きなんだなぁ……)

魔夜ファンのみならず、バトル漫画好きには五重丸のオススメ。
愛だの正義だの関係なく、毒師ギルドを潰滅させるという目的のためだけに戦うプワゾンは、ある意味非常にストイックなキャラクターです。
しかし、これが花ゆめ本誌に連載されていたなんて、今じゃ考えられませんねぇ……。(笑)



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さよか~(投げやり)

2007-04-22 22:41:41 | ファンタジー(現世界)
さて、GWは読むだめするぞ~と思ってるの第873回は、

タイトル:リバーズ・エンド
著者:橋本紡
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H13)

であります。

今週は、なんのかんのとラノベが3つも続いてしまった……。
別に企画でも狙ったわけでもないんだけどねぇ。
まぁ、たまにはこんな週があったっていいよね、と言うことで、今回の日曜ラノベであります。

では、早速ストーリー。

『14歳の中学生、瀬川拓己ひろきはある日、不思議なメールを受け取った。
「海はありますか?」
そんな件名のメールの差出人はyui。
友人でもない差出人だったけれど、拓己は返信する。

そこからyui……同い年の少女、藤木唯は拓己のメル友になった。

その後、唯は偶然、拓己の学校に転校してくることになり、二人の距離は非現実のメールだけではなく、実在の友人として拓己の前に存在することとなる。

友人の良太、良太の彼女で幼馴染みの有香を交えた4人で過ごす学校生活……次第に拓己の中で唯の存在が大きくなっていく。
しかし、唯には誰にも言えない秘密があった。
それを巡り、拓己と唯は突然窮地に追い込まれる。』

まず、ストーリーだの何だのを云々する前に……。

白っ!!

何がすごいって、ここまでページが白い小説は夢枕獏以来……というか、夢枕獏にも匹敵するか、もしくは凌駕するほどに白い。
昔、あまりの白さにあかほりさとるを毛嫌いしていたけど、あかほりさとるなんざ敵じゃねぇぜ! ってくらい、白い。

私は読むのが早いほうだが、昼休憩の残り30分で100ページ以上を読めてしまうくらい、と言えば、どれほど白いかを想像してもらえるだろう。
とは言え、やっぱり読み慣れてきたのか、丸くなってきたのか、ラノベだからこんなもんさね、と割り切ってたりはするんだけど。

さておき、まじめに評価しよう。
まず、ストーリー展開。
プロローグの掴みはOK。構成の仕方として、ラストのほうの描写をプロローグに持ってくる、と言うのはよく使われるものだが、ここで物語全体に渡る作品の雰囲気をうまく伝えている。
また、雰囲気とともにストーリーの方向性を決める描写も、今後を期待させるに十分なものがある。

プロローグはOK……なのだが、その後の展開は……。
基本は、拓己、唯を中心として、良太、有香を加えた4人の日常と、唯の秘密について語られ、ラストにプロローグで描写されたところに戻ってくる、と言うものなのだが、唯の秘密とプロローグに至る理由が、マジで「さよか~」(ホントに投げやりに)な程度で、インパクトはないし、説明不足だし、かなり中途半端。
続きを意識して、ぼやかしてると言うのはわかるのだが、それにしてもインパクトがなさすぎ。
これでは続編を読もうと言う気にならない。

Amazonで2巻のレビューを見ると、興味は湧いたが、他人のレビューでしか興味が出ないのはどうよ? って気にはなるわねぇ。

次にキャラだが、メインキャラはステロタイプの方々ばかり。
拓己と唯を窮地に追い込むファクターとなるキャラも、なんか理由があったほうがいいからつけました、くらい必要性を感じない。
むしろ、他のキャラは薄くてもいいから、拓己と唯のふたりをもっときっちり描いたほうが、ストーリーにも厚みが出ていいのではないか、と言う気がする。

あとは文章だが、まぁ、白いところを除けば、きちんとしているほう。
目についたところでは、読点で区切るところを句点で区切って段落をつける、と言う手法を使っているが、あまりしつこく使わず、適度に使っているところはいい。
頻出するとうざったいだけだが、これは効果的に使っている。

全体的に、ラノベにしては比較的少ないセンシティブな物語で、そうした雰囲気も十二分に感じられる作品、と言えよう。
ただ総評とするなら、及第と落第の境目ぎりぎり、ってところ。
やはり続編への訴求力に乏しい、と言うのは致命的。
それに、電撃文庫ではめずらしい作品と言えるだろうが、それ以外、特に少女小説や少女マンガではまったくめずらしくない雰囲気の作品だし。
むしろ、こういう雰囲気の作品なら、少女小説とかそういうほうを読むだろうなぁ。

とは言え、はっきりと総評をつけるなら、雰囲気のある作品は嫌いではない、と言う一点で及第、ってところか。
逆に言えば、そうしたところを楽しめないひとにはオススメできない、ってことだけど。



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〈メドゥサを読んだ〉

2007-04-21 23:59:59 | ホラー
さて、第872回は、

タイトル:メドゥサ、鏡をごらん
著者:井上夢人
出版社:講談社 講談社NOVELS(初版:'97)

であります。

二度目の登場となる、井上夢人の長編です。
前回読んだ『プラスティック』はかなり特殊な作品でしたが、こちらはネタこそ奇抜ながら割と普通のミステリっぽく――見える作品。
実際どうだったかは、粗筋の後で書きます。



作家の藤井陽造が自殺した。
異様なのはその死に方だった……彼は自らをセメントで塗り固め、石像になっていたのである。
さらに、彼の死体と一緒に塗り込められていたガラスの小瓶には、奇妙なメッセージが残されていた――〈メドゥサを見た〉と。

ある日、藤井の娘・菜名子が、「父の家に行ってみようかって思うの」と電話をかけてきた。
彼女の婚約者である〈私〉は、ようやく父親の異様な死と向き合う決心が付いたのだろう、と納得し、同行を約束する。
行きの電車の中で菜名子は藤井の日記を見せ、そこに出てくる最後の原稿を探し出したいと言った。

藤井はなぜ自殺したのか?
最後に書かれた原稿の行方は?
彼が見たという、メドゥサとは一体何なのか?

菜名子の制止も聞かず、謎の泥沼へと踏み込んいく内に、〈私〉の周囲で奇妙な現象が――。



例によって一言で言うと――

理不尽系のホラーです。

ミステリだと思って読んでいると痛い目に遭うのでご注意下さい。

それでも、序盤はかなりミステリ色が濃いです。
奇妙なやり方で自殺した作家、意図的に処分されたと思われる原稿、不可解なメッセージと引きは充分。
主人公である〈私〉の行動もミステリのやり方に沿っており、地道に死者の足跡を追ってきます。

カラーが一変するのは、四分の一を過ぎた辺り。
ロジックで説明がつかない現象が頻発し、空気もかなり重くなります。
常識が崩壊する中、どうにかして筋の通った答えを見つけようと足掻く主人公の姿は……憐れと言えば憐れだけど、警告無視して首突っ込んでる時点で自業自得。(笑)

ま、好奇心猫を殺すってところでしょうか?

理不尽系ホラーだから仕方ないと言ってしまえばそれまでなんでしょうが、オチも当然、納得とか理解とかロジックとかって言葉とは無縁の不可解なものでした。
岡嶋二人名義ながら、実質、井上夢人個人の作品だった『クラインの壺』はまだ、「結局どっちなの?」で済みましたが、こっちはもうそういうレベルではありません。
次々と発生する超常現象やら、主人公を襲う異変やら、某キーパーソンの目的やら、ありとあらゆる謎と疑問をほったらかしにしたまま――そうなるしかないわな、という定番のオチで強引に終わっています。

前半の勢いに比べて、後半の失速っぷりが凄まじいので、総評としてはイマイチ。
「だから結局何がしたかったの?」と、理由を求めてしまう人間にこういう話が合わないだけかも知れませんが。(爆)



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