つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

(」・ω・)」う~♪(/・ω・)/にゃぁ~♪

2012-05-26 17:44:55 | ファンタジー(現世界)
さて、脳内リフレインしていますの第1017回は、

タイトル:這いよれ! ニャル子さん
著者:逢空万太
出版社:ソフトバンククリエイティブ GA文庫(初版:'09)

であります。

アニメのほうは人気あるみたいですね~。
ネット配信されているので私も見ていますが、アニメはおもしろいです。

なので、最近定番化しつつある「アニメを見る」→「原作を読む」の流れに沿って読んでみました。
さて、原作はどんなものやら……。

ストーリーは、

『八坂真尋は逃げていた。暗い夜道をただひたすらに。
なぜ逃げているのか、なぜ追われているのか、追っているのは何者なのか、さっぱりわからないがとにかく逃げていた。
助けを求めてみても、住宅街だと言うのに真尋の声に反応する者はいない。

そして道を誤ったのか、袋小路に辿り着いてしまい、追っ手の姿を見て愕然とする。
人型はしている。しかし、その背には蝙蝠のような羽を持ち、頭には突起がついていてとても人間には見えない。
進退窮まったそのとき、場違いなほど緊張感のない声とともに真尋に救いの手が差し伸べられた。
右手一本で追っ手の化け物を倒してしまったのは銀髪を靡かせたひとりの少女。人間に見えるその少女は奇妙な自己紹介をしてきた。
曰く「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」……と。

とりあえず、家に帰った真尋は、ついてきた少女――ニャルラトホテプに事情を聞こうとするのだが、ニャルラトホテプは駄菓子にテレビに大忙し。
……話をするために電光石火のフォーク刺しでニャルラトホテプに話をする体勢を整えさせた真尋は、ふとニャルラトホテプと言う名に心当たりがあることを思い出す。
それはクトゥルー神話。アメリカの小説家ラブクラフトに端を発し、他の小説家を巻き込んで発展した小説群の中でもかなり高位に位置する邪神の名前だったからだ。
そんな邪神の名前を冠するニャルラトホテプがなぜ自分のところへ? と言う疑問はもっともで、ニャルラトホテプは真尋が狙われている事情を話し始める。

曰く、地球が宇宙連合の中で保護惑星に当たること、自分が宇宙人であること、とある犯罪組織が地球でなにやら大きな取引をするらしいこと、その中に奴隷貿易も含まれていること、そしてその奴隷貿易の対象となっているのが真尋であることなどなど――。
俄には信じがたいが、先ほど化け物に襲われて、それをニャルラトホテプに助けられたのは事実。
どうやらニャルラトホテプは真尋の護衛と違法取引の組織壊滅の仕事を任されているようだし、真尋にあんな化け物と戦う術なんて持ち合わせていない。

而して、放火で拠点をなくしたニャルラトホテプは、真尋の家にご厄介になりつつ、真尋の護衛をすることになったのだが……。』

う~ん、アニメがかなりテンポよくギャグやアクションを盛り込んで、おもしろく作ってくれているので、どんな破天荒な内容になっているかと思えば、意外と淡々と進んでいってるなぁ、ってのが第一印象。
まぁ、ボケ役のニャルラトホテプ、通称ニャル子とツッコミ役の真尋のコンビはそれなりにいい漫才をしてくれるので、コメディとしてはまぁまぁでしょうか。

ストーリーの流れは、初手でニャル子が真尋を助けてから、真尋の家に居候することになったり、真尋の学校に転校してきたり、護衛と称して同人誌やゲームを買い漁りに行ったりと、ニャル子の趣味丸出し――ここで地球のエンターテイメントは宇宙でもかなりの人気を誇る、と言う設定が加わる――の買い物に付き合わされたりしつつ、時折襲撃してくる化け物を撃退。
それは取引が行われる場所が出現するまでの時間稼ぎで、その場所が出現するときになってからはニャル子は真尋を連れて件の組織壊滅のために動くことになる、という感じ。

ストーリー自体の流れは悪くありません。
適度な漫才に、適度なアクション――一応邪神とされているので、とても正義の味方とは思えないようなニャル子の残虐な攻撃方法など、見所もそれなりにあると思います。
要所要所にパロディも入っていて、わかる人には笑える要素にもなっています。
ただ、設定はご都合主義満載です。
たとえばニャル子たち宇宙人が使う宇宙CQCと言う格闘術。ニャル子は格闘術らしく近接戦闘にバールをメインに用いて戦うのですが、物語終盤に出てくる敵方のクトゥグアは同じ宇宙CQCを名乗りながらも炎のレーザー使う遠距離戦だったりと、何でもありです。
まぁ、作中でも「そういう設定です」と押し切る場面があったりするので、ご都合主義もここまで来るといっそ潔くて気持ちがいいくらいです。

キャラの設定はニャル子を始めとする宇宙人はクトゥルー神話のそれに沿った設定に、アレンジを加えて作られています。
まぁ、キャラ立ちは……しているほうだと言っていいでしょうか。個性はしっかりしていますし。
常識人でツッコミ役の真尋にも邪神=ニャル子さえ恐れさせるフォーク刺しと言う特殊攻撃があったりと、漫才的な意味ではバランスが取れています。
もっとも、キャラにもご都合主義の影響があるので、どうしてもキャラ立ちがはっきりしているとは言えないのが残念なところではあるのですが……。

さて、そういうわけで総評ですが、すごいおもしろい、と言うほどではなく、何事も適度におもしろい、と言う程度に収まっているので、及第というところでしょうか。
アニメのテンポが原作のほうにもあれば、コメディとしてはおもしろいとは思うのですが、案外淡々と進んでいってるほうなので、こういうところに落ち着いてしまいます。
設定もご都合主義満載ですし、客観的に見て小説としてのクオリティはさほど高いとは言えません。
まぁ、ニャル子と真尋の漫才はおもしろいところもありますし、落第にするほど悪い作品ではありませんので、こんなものでしょう。


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へぇ、こんなのも描けるんだ

2012-05-20 16:07:37 | マンガ(少年漫画)
さて、マンガが続くねぇの第1016回は、

タイトル:高杉さん家のおべんとう(1~5巻:以下続刊)
著者:柳原望
出版社:メディアファクトリー MFコミックス(初版:'10~)

LaLaDXを読んでいたときに、この人の作品はずっと読んでた。
けど、はっきり言って、いまいちパッとしない作品が多い印象で、1巻帯にある「一清&千沙姫シリーズ」って名前は聞いたことがあるから、LaLaDXで読んだことはあるんだろうけど、キャラも内容もまったく思い出せない。
なので単行本も買うこともなかったのだけど……。

本屋で1巻の試し読みができて、ぱらぱらっと3話くらいかなぁ、読んでみたところ、なかなかよい雰囲気を感じたのでとりあえず、出てある5冊、買ってみたんだけど……。

さて、ストーリーは、

『高杉温巳は困っていた。いろいろな意味で。
大学の地理学で博士号を取ったのはいいけれど、研究機関、大学教員の公募に落ちまくり、不況のおかげで就職もままならず。
両親が遺してくれたマンションのおかげで住むところには困らないけれど、非常勤講師などをやりながら何とか生活している三十路の31歳。

その温巳の目下の困難は、亡くなった叔母の美哉の娘である久留里の親代わり(正確には未成年後見人)になってほしい、というものだった。
美哉の遺言で、温巳が指名されていたと言うことだったのだが、久留里はこの春中学生になったばかりの12歳の少女。
はっきり言って無理だと思いつつも、弁護士に示された美哉の生命保険などから得られる養育費にぐらりと来るところへ、強引に久留里と引き合わされることに。

なし崩し的に「家族」とされてしまった温巳。
だが、困ったことはそれだけではなかった。叔母の美哉は、温巳が高校3年生のとき、美哉を迎えに行った両親が事故死してしまったことに責任を感じて温巳のもとを去っていった経緯があったのだ。
それが何の因果か、久留里を引き取ることになってしまって、どう接していいのかさっぱり。

とりあえず、家に連れて帰ったのはいいけれど、「家族」になるなんてどうすればいいのかわからない。ネットで検索してみてもネガティブな話題ばかりが眼について、結局諦めてご就寝。
翌朝、起きてから久留里のことを思い出した温巳は急いでキッチンへ向かうと、そこには朝ご飯を作っている久留里の姿。
おまけに貧乏だからと言うことで、久留里はお弁当まで作ってくれていた。

しかしながらお弁当と言っても文字通り蓋を開けてみればきんぴらごぼう1品のみ。
入り浸っている大学のゼミで同級生の香山や特別研究員の小坂にからかわれながらも、先日きんぴらごぼうは作れると、美哉に習ったと泣いていた久留里を思い出して、その特別な思いに気付く温巳。

それから数日、高杉家では保護者として成すべきこととして、ひとつのルールが決まった。
仕事をしている温巳は朝起きて、朝ご飯とお弁当を、久留里は晩ご飯を作る、と言うもの。
そうしておべんとうを通じて、温巳と久留里は一歩ずつ「家族」への道を歩いて行くことになる。』

うん、やっぱり第一印象って大事だねぇ。
1巻をぱらぱらっと読んで、いいと思って買ったものだけど、当たりだった。

てか、タイトルにも書いたけど、この人、こんないい雰囲気を持った作品を描けるんだなぁ、と正直感心したよ。
LaLaDX時代のを知っているだけに、余計に感心度合いが強かったねぇ。
まぁ、白泉社から離れて花ゆめのレーベルに合わせたものを描かなくていい、ってのもあるのかもしれないけど。

さて、ストーリーだけど、基本、1話完結の短編連作形式のお話。
タイトルにあるように、キーワードは「おべんとう」
おべんとうに入る1品を主体に、温巳と久留里の心の交流を描くのがメイン。
とは言っても、場所やネタは様々。温巳が入り浸っているゼミでの香山や小坂と言った面々とのやりとりや、温巳の就職問題、中学校へ通う久留里の日常や友達問題、はたまた温巳のフィールドワークに久留里やその友達がついていったりと、いろんなところでいろんなおべんとうの品や郷土料理などが披露されている。
また、テーマとなる1品には必ずレシピがついていて、これも感心させられる。レシピは温巳が美哉に作ってもらっていたころのものから、特別研究員の小坂の地元北海道のものだったり、舞台となっている名古屋特有のものだったりと、多種多様。
毎回テーマとなる1品を考えるのも苦労するだろうに、レシピまで入っているのにも感心。

帯に「ハートフルラブコメディ」とあるように、ほんとうにハートフルな雰囲気満載で読んでいてほんわかした気分になれるのがいい。
ラブコメディ部分は、人の機微にまったく気付かない残念男温巳に対する小坂と、「家族」の枠を越えてちょっと淡い恋心を温巳に抱く久留里のふたり。
しかし……、小坂は5巻時点で29歳と同じく5巻時点で34歳の温巳とは釣り合うが、久留里、君はまだ中学生だ。5巻時点で中学3年生になって卒業とは言え、温巳はもう34歳。いいのか、久留里!? 相手は19も年上のもうおっさんだぞ!(笑)
まぁ、温巳も温巳で小坂を逃せば、もうこのまま一生独身まっしぐらな気がしないでもないのだが……(笑)

さて、キャラのほうに移るとして、主人公の温巳。典型的な学者バカで人の機微にはこれっぽっちも気付かない残念三十路男(笑)
何とか久留里の保護者として奮闘しつつも、たいてい空回り気味なのがおもしろい。
また、あとがき曰く、いい加減就職しないと困ると言う理由で、1巻最後でゼミの助教授にしてもらったこれまた残念男(笑)
小坂さん、こんな男のどこがいいんですか? と聞きたいが、まぁ、そこはあばたもえくぼと言うことで(笑)

で、ヒロインの久留里。この子はとても個性的。
無口であまり感情を表に出さないけれど、時折見せる笑顔がとてもかわいい女のコ。
人付き合いが苦手で、当初は友達すらいなかったけれど、香山の娘のなつ希など、徐々に友達も増えていったりと、こちらは順調に成長中。
趣味は倹約。特売、底値、割引などに目がないとても中学生とは思えない渋い趣味で、温巳がときどき倹約を無視して買い物をすることに腹を立てることも。
喋り方も独特で、これも久留里のチャームポイントのひとつとなっていると言っていいでしょう。

あとは脇役の強引ぐマイウェイで温巳の同級生で准教授の香山、特別研究員の小坂、キノコ狩りで仲良くなった香山の娘で久留里のクラスメイトのなつ希など、適度に場をかき乱したり、コメディに仕立ててくれたりと、雰囲気を壊さない程度にいいキャラが揃っていて読んでいて楽しい。

5巻の帯で「マンガ大賞2012」ノミネート作品とあって、正直そういうのを見ると逆に引いてしまうタチなんだけど、これはコメディとしても楽しめるし、雰囲気も楽しめるとあって個人的にはかなりオススメなマンガだね。
基本1話完結の話なので、手軽にも読めるし、ゆっくりながらも「家族」となっていく温巳と久留里のストーリーも、穏やかな雰囲気と相俟ってじれったさを感じることもない。
総じて、オススメしやすい良品と言えるだろうね。
まだ5巻までしか出ていないので、お財布にも大ダメージを与えるほどではないので、読んだことのない方はハートフルな雰囲気を満喫してほしい、そんな作品だね。


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すいません、好きなんです(笑)

2012-05-19 16:47:55 | マンガ(少年漫画)
 さて、少年漫画か少女漫画か、悩んでしまったけどレーベルから少年漫画にしましたの第1015回は、

タイトル:くちびるためいきさくらいろ(全2巻)
著者:森永みるく
出版社:双葉社 アクションコミックスハイ(初版:'12)

であります。

注意:当作品は百合です。同性愛作品に免疫がない方、嫌悪感を抱く方は読まずに引き返すことをオススメします。

注意書きも書いたことだしっと……。
本作は、前にも1回出ています。同じ題名で一迅社から'06に短編集として出たものの再版……と言うことだと思ったいたのですが、全2巻?
再版にしては2巻に分けるような分量なんてあったっけなぁ? と思いつつも悲しいかな、好きなんです、森永さんの作品(笑)

やわらかい絵柄が好きで、18禁描いてたころからずっと買っていたし、そのときから百合をちょくちょく描いていたのは知っていたのですが、百合だろうが何だろうが抵抗がないので、迷わず購入。
2巻に分けた理由はなんなのかと思いつつも読んでみました。

さて、ストーリーは、

『奈々は目覚めの悪い夢を見てしまった。
中学時代の夢――幼馴染みで、いちばん仲のよかった友達の瞳。子供のころからずっと一緒で、高校も同じところへ通うことを信じて疑わなかったのに、瞳は内緒で他校を受験し、奈々とは同じ高校には行けない……そんな事実を知らされたときの夢。

高校生活も二ヶ月が経ち、中高大と一貫校の桜海女子に慣れてきたころ。――それでも一緒に通えないと知ったあのときから瞳とはメールも電話すらもしない日々。
そんなある日のこと、コンビニへ買い物へ出かけた奈々は、その帰りに偶然部活帰りだと言う瞳に出会う。
髪も短くなって、友達とも仲良く高校生活を過ごしているように見える瞳。
そんな姿に複雑な思いを抱く奈々の心を知ってか知らずか、瞳は奈々との約束があると言い出して強引に奈々の家に行くことになってしまう。

奈々の家では中学時代と変わらずに接してくる瞳。制服がかわいいからと言う理由で桜海女子を奈々に薦め、制服姿を一番最初に見せてと約束した中学時代のことを持ち出して、仕方なく奈々は制服姿を瞳に見せることになるのだが、「似合っている」――そんな瞳の一言で裏切られた瞳への思いが溢れ出す奈々。
けれど、瞳には瞳の理由があった。それは奈々への思い――友達ではなくなった感情のために、奈々から距離を置くことにしたのだった。

それでも、奈々は瞳が離れていってしまうことがイヤだった。
そんな思いを吐露する奈々に口づけをする瞳――このままでは友達ではいられない。そう告げる瞳に、中学時代の出来事やいま思う瞳への思いが奈々の脳裏をよぎり――
奈々は、瞳と「友達」でなくなることを決意する。』

短編集ですが、全2巻の中心を成す奈々と瞳の物語の第1話のあらすじだけ、書いてみました。
と言うか、一迅社から出た短編集のときは、このふたりの物語は2話で終わっていたのですが、続いていたのですね。
これ以外は一迅社時代の短編集の内容の再録となっています。

まず、奈々と瞳のストーリーですが、晴れて恋人同士となったふたりが思いを深めていく中、突然瞳に外国への転校の話が持ち上がって、それに抗議するために瞳は奈々とともに家出をして――と言う内容。
最終的には大団円なのですが、各話がどうもやっつけ仕事に見えてしまうのが残念なところ。
大団円のラストも拍子抜けしてしまうオチなので、一迅社のときの2話で余韻を残したまま、終わってくれていたほうがマシだったような印象を受けます。

で、他の短編ですが、個人的にはこちらの短編のほうが雰囲気も余韻もあって好みです。
舞台は基本的に桜海女子高校です。

『天国に一番近い夏』――桜海女子に彷徨う幽霊の加藤なつかと、桜海女子OGで養護教諭として働いていて、なつかとは学生時代保健室で仲良くなった小松先生との触れ合いを描いた作品。オチもくすっと笑えて、百合成分は薄めなほうですが、いい余韻を持つ小品。

『キスと恋と王子様』――奈々の友達で演劇部所属の安倍と、演劇部の顔だけど内実は天然系ボケキャラの橘のふたりの物語。役としてキスをしたと誤解して悩む安倍の心情が細やかに描かれている小品。

『いつかのこのこい。』――入学当初に水城から手ひどい言い方をされてしまった鈴木と、それでも何故か水城に心惹かれてしまう恋愛感情を疑似恋愛だと思い込む鈴木の恋の苦しさを描いた小品。

『くちびるにチェリー』――吹奏楽部の演奏を聴いて絵里に恋をしたちはるが、自分の恋心を抑えて絵里の親友として過ごす中での心情を細やかに描いた小品。この作品も心地よい余韻のある好みの短編。

『ホントのキモチ。』――文芸部で古風な恋愛小説を書いている野坂と、それを読んで野坂の人となりに恋してしまった後輩の遠藤のラブコメディ。この短編集の中ではコメディ要素の強い作品で、森永さんらしいコメディ作品。

最後の『ホントのキモチ。』以外は上記に書いたように、雰囲気、余韻ともにあって恋愛ものとしてはいい作品に仕上がっています。
でも、百合ですが……。

個人的には好きなマンガ家さんですし、オススメしたいところなのですが、いかんせんジャンルがジャンルだけにオススメしきれません。
メインとなる奈々と瞳のストーリーがいまいち残念なところがあるのも、百合に抵抗がない人にもオススメしにくいところです。
短編のほうはいい作品が多いので、前の一迅社時代の短編集で終わってくれたほうがオススメしやすかったですね。
もっとも、一迅社時代のはもう古本でしか手に入らないので、新刊ならこちらを買うしか手はないのですが……。(マイナーな百合姫コミックスなので、古本屋でも手に入るかどうかは疑問ですが)

と言うわけで総評ですが、まずジャンルから拒否反応を示す方がいらっしゃるであろうこと、メインとなる奈々、瞳のストーリーがいまいちなことから当然ながら良品とは言えないでしょう。
さりとて短編にはいい作品があるので落第にするのも忍びない。
なので、中間を取って及第というところに落ち着くでしょう。
まぁ、マイナーなジャンルなので、いくら良品並みの評価ができても、読み手限定になってしまうので、良品の評価はできないのではありますが……。


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うん、いいね

2012-05-06 15:47:25 | ファンタジー(現世界)
さて、記事がラノベに偏ってる気がしないでもないの第1014回は、

タイトル:バカとテストと召喚獣
著者:井上堅二
出版社:エンターブレイン ファミ通文庫(初版:'07)

であります。

これも確かアニメ化されていたような気がするけど、アニメは見てません。
まぁ、単に一期を見逃して、二期から見ようなんてことをする気が起きなかっただけだったんだけど(笑)

さて、第8回えんため大賞編集部特別賞受賞作という本作だけど、ファミ通文庫ということで多大な期待はしてません。

ストーリーは、

『吉井明久は文月学園二年生になって振り分けられる振り分け試験で手応えを感じていた。
振り分け試験の途中、学園二位の姫路瑞希が体調不良で倒れてしまう、なんてハプニングもあったものの、新学期となる春には意気揚々と登校していた。

そして運命のクラス発表――一斉にクラス分けが発表されることがなく、教師が生徒にひとりひとりに手渡すと言う形で行われるクラス分けで明久が受け取った封筒に書かれていたクラスは――Fクラス。
Aクラスから成績順で振り分けられ、その最底辺に位置するFクラスだった。
つまり、明久は、「バカ」の烙印を押されたわけだった。

もっと試験はできたはずだったのにと思いつつも、Fクラスに向かう途中、やけにばかでかい教室の前を通る明久。
黒板代わりのばかでかいプラズマディスプレイにノートパソコン、個人用のエアコン、冷蔵庫にリクライニングシート――Aクラスの教室だった。
そんなAクラスの豪華設備を横目にFクラスへ向かった明久は、Fクラスの設備のひどさに愕然とする。
椅子もなく、床に座布団、机は卓袱台。しかもどれもボロボロで、直してもらおうにも担任は自前で直すようにと言う始末。

とりあえず、設備の最悪さは後回しにしてこれから1年同じクラスとして過ごす面々の自己紹介が行われ――そこへ遅刻して入ってきたのは姫路瑞希。学園二位の実力を誇る彼女がなぜ最低クラスのFクラスに?
理由は簡単。振り分け試験での途中退場は問答無用で0点扱いで、振り分け試験で体調不良になって倒れてしまった瑞希は、結局試験を最後まで受けられずにFクラスに配属されてしまったのだ。

さすがに学園二位の美少女の瑞希をこんな座布団、卓袱台だけのひどいクラスで一年間過ごさせるのは忍びない。
幸いなことに、文月学園には特殊なルールがあった。
「試召戦争」――試験召喚戦争の略称であるそれによって、クラスごとに召喚獣をもって戦い、勝利すればクラスを入れ替えることができる。
つまり、瑞希をAクラスの設備で授業を受けさせることができるのだ。

そのことを悪友の雄二に持ちかけたところ、雄二も試召戦争でAクラスに戦いを挑むことを考えている様子。
Fクラスの面々も設備の格差に不満たらたらで現状を打破したい思いは強かった。
そうして、各々の利害が一致した明久たちFクラスの面々は、Aクラスに試召戦争を挑むべく、戦いに身を投じていくのだった。』

いやぁ、期待していなかったのですが、この作品、勢いがあっていいですね(笑)
こんなに勢いのあるラノベは9Sシリーズ以来、久々ではないでしょうか。9Sシリーズには劣りますが……。
個人的には、こういう勢いのある作品は好きなので、楽しく読ませてもらいました。

とは言え、個人的にはいいのですが、客観的に見てどうかと言うとアラがやはりあります。
まず世界観の甘さが挙げられるでしょうか。
現世界をベースとした学園物ですが、よくもまぁここまで頭のいい生徒と悪い生徒が同じ学校にいられるのが不思議でなりません。
試験校と言うことですが、それ以外に何の説明もないため、明久たちFクラスの生徒がよく進級できたものだとこれまた不思議でなりません。
また、試召戦争ですが、設定自体は試験の点数がHPと戦闘力の代わりになって、それを召喚獣同士を戦わせることで勝敗を決める、と言うもので試験の点数の善し悪しがもろに戦闘に影響する、と言う一風変わったもので、これはこれでおもしろい設定でしょう。
他にも試召戦争には諸々のルールがありますが、これも戦争での戦術を構築する上での重要な要因になっていて、うまく使って物語を盛り上げてくれています。
ですが、なぜ明久たち生徒が召喚獣を召喚できるのか、そのための世界観の説明がすっぽり抜けているのは難点です。
そういうところが気になる人は、世界観の甘さに眉をひそめることになってしまうでしょう。

ストーリーは、勢いがあるのでテンポよく進んでいきます。
Fクラス代表の雄二の戦略で、いきなりAクラスではなく、段階的に上のクラスを攻略し、最終的にAクラスに戦いを挑む、と言う流れで進んでいきますが、適度にラブコメの要素も入っていて、ラノベとしての要素はきちんと押さえてあります。
キャラもメインキャラの個性はしっかりしているほうなので、好感触。
章の区切りに簡単なテスト問題がキャラの視点で回答されているところがありますが、こうしたところでも明久や他のキャラのバカさ加減が強調されていて、おもしろいです。
文章のほうも、明久の一人称で進み、途中他の誰かの視点が入ると言うこともなく、一貫して明久の一人称で進んでいくのもブレがなく、好印象です。

意外といい印象が多い本作ですが、上記に書いたように世界観の曖昧さは致命的です。
特に、分析型の読み手にとっては世界観だけでなく、他にもアラが目立つでしょうから、この手のタイプの読み手さんにははっきり言ってオススメできません。
逆に、感性派の読み手で、細かいことに拘らずにいられて、勢いや雰囲気を楽しめる方にとっては、勢いのある本作は単純に楽しめる作品と言えるでしょう。
ラブコメ要素を期待する人にも、明久をいじめて楽しんでいる島田美波や小学校の頃から明久を知っている姫路瑞希ともども、明久は惚れられているらしいので、ラブコメ展開にも期待が持てるでしょう。(美波は好きだからいじめる、と言う男性小学生レベルのようですが(笑))

……あれ? あんまり悪いこと書いてない気がしますが、これだけは言えます。
何も考えるな、勢いに任せて読み進め!(爆)
これができない分析型の人は手を出さないほうがいいでしょう。世界観や設定の甘さに突っ込みどころ満載だと思いますので。

と言うわけで、個人的にはオススメの○をつけてあげたいところですが、そうは言っていられないところがあるのでラノベ点を加えて及第と言ったところにしておきましょうか。
いや、ホント、個人的には楽しめたのですけどねぇ。客観的に見ると読み手を選ぶと言う点が致命的です。


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またですか……

2012-05-05 16:14:10 | 小説全般
さて、ようやく2巻でありますの第1013回は、

タイトル:祝もものき事務所2
著者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 C☆NOVELSファンタジア(初版:'11)

であります。

けっこう読んでも記事にしない小説が多々あります。
何の感慨もなかったり、感性が拒否反応を起こして途中で読むのを断念したりと理由は様々ですが……。

そんな中、茅田さんの作品は比較的安心して読める話が多いのですが、この2巻はどうなっていることやら……。

ストーリーは、

『事務所に訪れたのは宿根と名乗った人物だった。事務所所長の百之喜太朗は厄介ごとが嫌いな面倒くさがり。どんな依頼なのかと思っていたが、宿根の依頼は拍子抜けするほどのことだった。
依頼内容は、とあるビルのカフェで出くわした人物の安否の確認をしてほしい、と言うものだった。

宿根が言うには、とあるビルのカフェで遅い昼食を摂っていたとき、そこに居合わせた客で、同じビルの山根コーポレーションに勤めている小林という人物のことで、そのとき、その小林と言う人物は糖尿病の発作で倒れてしまったのだ。
騒然とする店内で、当初は宿根も何もできないでいたが、カフェには医療関係者が居合わせていたらしく、小林にインシュリンを投与しようとしていた。
だが、宿根には過去に猫の糖尿病で得た知識があり、その医療関係者が投与しようとしていたインシュリンの量が半端ではなかったのだ。

高血糖ではすぐ死なないが、低血糖では死ぬ。そのことを知っていた宿根は小林が倒れた原因が低血糖であると判断し、血糖値を下げるインシュリンではなく加糖するべきだと判断して、グルコースを飲ませたのだった。
その後、小林は救急車で運ばれてしまい、安否はわからずじまい。
本当に自分のした処置は正しかったのか、そのことで悩んでしまった宿根は、百之喜も恐れる大家の越後屋銀子の紹介で事務所を訪れたと言うのだ。

どんな厄介な依頼かと思いきや、案外簡単そうな相談だったので依頼を受けた百之喜は、秘書の凰華とともに小林が勤めている会社に向かったのだが、そこには該当する人物がいない。
仕方なく件の事件が起きたカフェで聞き込みをしていると、倒れた当の小林が現れた。――のだが、彼は小林ではなく、樺林慎であり、山根ではなく、周コーポレーションに勤めている会社員だった。

そしてそこから事態は泥沼の様相を呈してくる……。』

読んでいてまず思ったのは、また親族ネタですか……、ってとこでしょうか。
1巻も相続絡みの親族ネタでしたが、今回はそれに輪をかけて複雑な親族、人間関係が絡んだ遺産相続にまつわる話でした。

ストーリーは、宿根の依頼を受けていろいろと調査をするうちに、徐々に明らかになってくる離婚、再婚などを巡って発生する遺産相続問題に樺林が巻き込まれ、最初の事件であるインシュリン投与事件に端を発する樺林の殺人未遂などを絡めて、誰が樺林を殺そうとしているのか、が解き明かされていく、と言う内容。
相変わらず、何でもないことや他愛ない出来事から事件を大きくしていく手腕は見事ですが、今回はキャラがとてもたくさん出てきて、しかも離婚、再婚で親族関係や遺産相続問題が絡んでいて、人間関係がとてもややこしいです。
はっきり言ってさっくりと一読した限りでは、相関関係を想像するがかなり難しいくらいです。
……と言うか、この人間関係の複雑さには辟易しました。

キャラも主人公の百之喜や凰華は変わらずですが、これまた相変わらず非常識人といろんな意味で強い女性を描くのは茅田さんらしいところでしょう。
特に女性キャラ。昔、スニーカー文庫で出ていたころの「桐原家の人々」シリーズのあとがきで、著者本人が「強い女性が好き」と語っていましたが、芯の強い女性キャラがこれでもかと言うくらい出てきます。
この辺りは著者の趣味でしょうか。……と言うか、億単位の遺産相続をそれがどうしたってくらいに剛胆に構えられる人物はそうそういないと思うのですが、当たり前のように出てきます。
まぁ、非常識を書かせれば天下一品の著者ですから、逆に言えばこうした強い女性たちも非常識の範疇に入るのかもしれませんが……。

ともあれ、人間関係のややこしさを除けば、上記のとおり、小さな出来事から事態を大きくしていく著者らしい展開で、ファンにとっては楽しめる作品ではないでしょうか。
もっとも連続して親族ネタで攻めてくるのはいかがなものかと言う気はしないでもありませんが……。
あと、前作よりも人間関係がややこしすぎて、著者の魅力である何も考えずに読める、と言うのが阻害されているところもマイナスでしょうか。
でもまぁ、まだ2巻。今後はどんな事件を扱うことになるのか、期待はしたいところです。

と言うわけで、総評としては及第と言ったところでしょうね。
個人的に茅田さんの作品は好きだけど、「デルフィニア戦記」のように手放しでオススメできるような作品ではないけど、さして落第にするようなひどい話でもないので、こういうところに落ち着いてしまいますね。


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