つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

学園妖怪バスターズについて書いてみる

2008-05-29 20:03:46 | ゲームブック
さて、ふと思い立ったので、な971回目は――。

タイトル:学園妖怪バスターズ ~天魔が来た!~
著者:尾崎克之
出版社:双葉社 双葉文庫―冒険ゲームブックシリーズ(初版:'88)

であります。

唐突ですが――つい先日、ブログピープルに参加しました。
で、ついでに『ゲームブック』の話題を探したのですが……ない。(爆)
なので、作ってみました。

『ゲームブック』
(※最新記事のリンクリストです。トラックバックピープル・ロゴをクリックすると、トラックバック用ページに行けます)

ゲームブックの記事を書いたら、トラックバックしてやって下さい。
もっとも、ディープなアドベンチャラーの方々は既にゲームブック専用のページを持ってらっしゃるようなので、わざわざトラバ入れる必要ないかも知れませんが……。

気を取り直して――今日紹介するのは、一部の方々から粗製濫造と揶揄される双葉文庫―冒険ゲームブックシリーズから、三作続いた人気シリーズの第一作『学園妖怪バスターズ ~天魔が来た!~』です。

ストーリーは、ひょんなことから地元・袖ヶ浦町に天魔を解き放ってしまった悪ガキトリオ(タダシ、ケン、鏡太郎)が、怪しすぎる男・アベノ骨董品店店主の協力を得て、天魔を再び封印するために街中を奔走するというもの。
タダシ達三人が三種の神器の化身だったり、敵の本拠地が彼らの通う袖ヶ浦小学校だったりと、設定はモロに御当地ロールプレイング。(笑)
さらに、敵天魔の中にケンと因縁があるキャラを入れるなどして、単調になりがちなストーリーにちょっとしたアクセントを加えていました。

アドベンチャー部分は、双方向移動可能な袖ヶ浦町を歩き回り、敵を倒して天魔の肝(お金のようなもの)を奪って装備を調え、街の人々から情報を集めてゴールに近付いていくという、これまたRPGを意識した作り。
特筆すべきは巻末に掲載されたマップで、他の双葉社の作品群に比べて異様なまでに広いです。
強敵が待ち受ける地点、重要アイテムを入手できる地点、一定の条件を満たさないと通行できない地点など、イベントポイントも多く、これだけでも作者がいかに凝り性かが解ります。

しかし、こんなのは序の口。

本作最大の特徴は、その戦闘システムにあります。
双葉文庫冒険ゲームブックというと、かの悪名高きバトルポイントシステムが真っ先に浮かんでくるのですが、幸いにして本書はそれを採用しておりません。
代わりに、戦闘開始時にフォーメーションを選び、所持アイテムと使用する魔法によって結果が変化する選択式戦闘システムを搭載しています――これが実に面白い。

登場する敵キャラは何と二十一種類!
主人公達のアイテム(三種の神器)は初期装備も含めて各人四~五種類存在し、所持する品によって戦闘結果が大きく変わってきます。
たとえアイテムが弱くても工夫次第で勝てたり、逆にどんな強い武器を装備していても選択を間違えるとあっさり負けてしまうなど、とにかく力が入っており、鬼のように遊び尽くしました。いや、本当に面白かった。

以下、戦闘絡みの話を中心に、主人公達についてちょっとだけ書いてみます。(各敵に関して細かく語り出すとキリがないので、そちらは割愛……)


◆多摩村タダシ
本作の主人公で玉の化身。これといった特徴がなく、ストーリー面での扱いも低い薄幸な少年。
専用アイテムのまがたまは四種類(石、水晶、ヒスイ、エメラルド)存在し、ランクが上の装備ほど使える術が多い。
『気デッポウの術』(水晶のまがたま以上のランクで使用可)は、破壊力こそ低いが、敵を怯ませる効果があるため中盤戦で大いに御世話になる。さすがに、終盤は殆ど無効化されてしまうが、ツマミギツネやヒノエドラといった大天魔に効く場合もあるので侮れない。
『ダキニテンの術』(エメラルドのまがたまのみで使用可)は、術力消費が激しいものの、効けばほぼ確実に敵を葬り去れる強力な破壊呪文。ただし、意外な敵が弾き返してきたりするので過信は禁物である。
残る二つの術は回復系だが、戦闘中しか使えないため有効利用は難しい。ただ、ケンの体力消費が激しいので、弱敵と出会った時はマメに使っておくのが吉。
なお、呪文を使う以外に、身を守るという選択肢もあるが、大抵死ぬので選ばないのが無難であろう。

◆鏡太郎
頭脳担当で鏡の化身。一人称は「僕」だが、語尾に「~ぜ」を多用するため、どこかアンバランスな印象を受ける。ちなみに次作ではキャラが完全に変更され、容姿端麗で礼儀正しい優等生と化す。
卓見力を消費して敵のランク(堕天魔~天魔主)、持っている肝の数、その他の特徴を分析するアナライザー。専用アイテムの鏡は五種類(銅、鉄、雲母、銀、ダイヤモンド)あり、ランクが上がるほど調べられる敵の種類が増える。ただし戦闘システムの性質上、彼を選んだ後は自動的にタダシに順番が回るため、術が効かない敵の場合は逃走するしか手がなくなるのが悩み所。(「なんてこった! これより強い鏡だけがこいつを倒せると出た!」の台詞は笑った)
他の二人に比べると役回りは地味だが、鏡でしか倒せない敵も存在するため放置すると地獄を見る。最低でも雲母とダイヤモンドの鏡は入手する必要があるだろう。
なお、唯一『逃げる』コマンドを使用出来るキャラであり、強敵と出会ったら迷わず彼を選んで逃走するのが本作のセオリー。

◆ケン
名前の通り剣の化身でパーティの主戦力。天魔を解き放つ札をはがしたり、女天魔ニャンニャコとの絡みがあったりと、ストーリー面でも優遇されている。
専用アイテムのつるぎは五種類(鉄、オオクニ、虎牙、ユニコーン、スサノオ)。1ランク違うだけで戦闘結果が大きく変わるので、手に入れた肝は優先的にこちらに回すべきだが、最初に買うのは『水晶のまがたま』をオススメする。これを買っておかないと、タダシが戦力として役に立たないからだ。
正面切って敵と戦うため体力消費が激しく、死ぬ回数も他の二人に比べて格段に多い。の割に、剣技などは習得しない上、専用コマンドもないため、目立ちはするものの使っていて面白みはなかったりするいかにもな古典RPG的戦士キャラである。


何となく、どんなゲームかイメージは掴んで頂けたでしょうか?
三人パーティと言うと、私は真っ先に『ドラクエII』が頭に浮かぶのですが、本作もそれぞれの個性を上手く引き出した良作だと思います。
RPG好きにはかなりのオススメ。運良く発見したら、ちょいと手に取ってみてやって下さい。

最後に一つ注意。このゲーム、バグがやたら多いので、プレイされる場合は下記のサイト――

MANATさんのページ『マナティの浜辺』

にある、バグ修正表を必ず参照して下さい。



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十二秘色のパレット5を買いました ~つれづれ号外~

2008-05-26 18:42:58 | つれづれ号外
さて、今更という気がしないでもない号外漆回目は――。

タイトル:十二秘色のパレット5
著者:草川為
出版社:白泉社 花とゆめコミックス

であります。

前回の号外で、『龍の花わずらい5』を紹介したので、草川為もう一つの看板作品にも御登場願いました。
ちなみに、以前紹介したのは二年と四ヶ月前……敢えて何も言うまい。
例によって、既刊読了前提&ネタバレ満載で参ります、未読の方はくれぐれも御注意下さい。

パレットは読み切り形式の話が多いので、一話ずつさらっと書いてみます。
ちなみに、各話の副題は私が勝手に付けたもので、公式のものではありません。


第16話/ストップ・ザ・医務室
前巻のカメラ騒ぎの続き。本気で不機嫌になったグエル先生を避け続けるセロ君。セロ君の真意が読めず、逆に無視し返す先生。御子様かお前らはな話です。医務室の魔物の話が出た途端、同時に振り向くあたり、間違った意味で息ピッタリな二人でした。ちなみに、助演男優賞は学年主任のリッツ先生・29歳新婚。実は一話からいるらしいのですが……そうだっけ?


第17話/好きかもしれない
モスリンに指摘され、よーやく自分の嫉妬心に気付くセロ君。グエル先生ともなし崩し的に仲直りして、今日は先生が世話になった家の結婚式に参加することに。余興で屋根の上に上がったはいいけど足を滑らせて……な話。無論、受け止めるのはグエル先生の役目で、ここまでは普通なんですが――。
やったな、セロ君。
ニアミスを既成事実に変えやがりました、この子。(笑)
というわけで、五巻目にしてようやくキスシーンです。つられて、教師らしからぬ行動を取りかける(いや、手遅れか?)先生もいい。しかし、最後はしっかりお茶を濁したよーな気も……。


第18話/皆さんごきげんよう
オルガ主役の話。無論、今回のターゲットは、愛しのグエル先生に不埒な真似をしたセロ君。檻など軽く破壊して、いざ出陣!(つーかオパルの連中、鳥達の管理ずさん過ぎますな……)
いやもう何つーか、オルガ様最高最凶です。ヨーヨーを睨む顔怖すぎ、しかも踏むし! そう、弱者を踏みつけてこそオルガ!(をい)
オチは……まー仕方ないかって感じですが、最後の最後にセロ君をしばいたので良しとしましょう。
ちなみに担当さん曰く、パレットの中でオルガが一番キャラが立ってるんだとか。
まったく、とんでもないことを言い出しますね担当さん。
貴方は120%正しい。


第19話/肩を並べて
テオ君がグエル先生を追っかけ回す話。すいません、テオ君邪魔というか、ぶっちゃけ鬱陶しいんですけど。年齢はグエル先生よりかなり上の筈なのに、グラフィックも性格もそれらしいとこ全くないし……。最後の花火のオチは普通に綺麗でしたね。


第20話/ママじゃないったら!
モスリンの相棒ケチョンパの番外編。ケチョンパの弟×5がオパルにやってきて、という話。ある日突然、自分の縮小コピーが五人も現れたら、誰だって死にます。しかもそれが、自分の餌も友達も全部取っちまう上に、逃げても全員同時に自動追尾してくるとあっちゃあ……。しかしモスリン、相変わらずいい女だな。(←関係ない)


第21話/レベル7:3
ある花の影響で、グエル先生が真面目で厳格な性格になってしまう話。髪型を変え、眼鏡かけて変身って、暗悪健太みたい……って、あれは変身前か。セロ君から見たグエル先生って、怠惰・ルーズが個性の八割以上を占めているらしい。ところで、7:3分けより、9:1分けの方が厳格ってどういう理論ですか?(笑)


第22話/武者修行してこなきゃ
オルガに八つ当たり喰らったヨーヨーが、武者修行に出かける話……なんだけど、新キャラ登場のためのつなぎに使われた感じで内容的にはイマイチ。
でもグエル先生がオルガを評した――
「オルガはどんなささいなことからでも因縁をつけていびり倒す猛者。ちょっとやそっとの修行で倒そうなんて甘いよ」
の台詞が素敵だったので、私は満足してます。(をい)


以上。
何か号外らしからぬ長さになってしまいました。
とりあえず、次巻が出たらまたやるので、お楽しみに~♪



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ホタルとマユの三分間書評『人類は衰退しました』

2008-05-21 23:52:47 | ホタルとマユ関連
さて、すいません更新が大分遅れました、な第970回は、

タイトル:人類は衰退しました
著者:田中ロミオ
出版社:小学館 ガガガ文庫(初版:'07)

であります。


―楽屋裏までお見せします―


 「ホタルでございま~す♪」
 「マユでありんす♪」
 「最初の挨拶って難しいですね……」
 「常春の国マリネラって偉大だよなぁ……」
 「既に御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この度新たに、私達の雑談専用のページ『ホタルとマユの楽屋裏』を設置しました! 最新の投降覧の【☆『目録へのショートカット』兼『総合案内板』】の、『怪しいページを作りました!』の所から行けますので、興味がある方は是否お越し下さい♪」

「現在は、前回紹介したPS2のゲーム『グリムグリモア』の話の続きを掲載している。こういった記事内での雑談の続きをやる場合、後から元記事の方にもリンクを入れるようにする予定だ」
 「この記事の末尾にも、後から楽屋裏へのリンクが張られる可能性があるってことですか?」
 「いんや。今回の雑談は楽屋裏設置の紹介だから、これ以上話すことは何もねーと思うぞ」
 「がーん……せっかくの新企画なのに」


―どんな作品ざましょ?―


 「さぁて、本日御紹介するのは……遂に来ました、ガガガ文庫の一番星君グレート! 『人類は衰退しました』です!」
 「創刊と同時に大々的に売りにかかった、まさに文庫の顔と言える作品だ。ジャンルとしては、まったり系世紀末SFといったところか」
 「緩やかに破滅に向かっている筈なのに、まったく悲壮感がない人類と、彼らに代わって全世界に生息している(と目されている)妖精さん達の微笑ましい交流を描く、ファンタジック・コメディですね!」
 「フッ……こいつを、ファンタジー扱いするとは。ホタル、てめぇ厄いな
 「(なぜここでみどろネタ? しかも全然似てないし……)
 その根拠は? と言うか、マユさんってジャンル限定するの嫌いじゃありませんでした?」
 「別にファンタジー部分がおざなりだと言うつもりはない。つーかむしろ、かなりしっかり描かれていると言うべきだろう。だが、その中に潜んでいるSF要素がかなり濃いんで、あたしはこれはSFだと言ってるだけだ」
 「厄いとか言っといて、随分当たり障りのない答えですねぇ……。
 本書は『妖精さんたちの、ちきゅう』と『妖精さんの、あけぼの』の二つの中編と、おまけの『四月期報告』から成っています。
 第一章『妖精さんたちの、ちきゅう』は、人類最後の教育機関《学舎》を卒業した主人公の少女(かなりの人見知り)が、故郷のクスノキの里に戻り、新任の調停官として新人類《妖精さん》と親睦を深める話。基本的な世界観については、大体この章で語られています。
 第二章『妖精さんの、あけぼの』は、前の話に引き続き、主人公が妖精さんの生態を調べるのですが、原始時代ごっこから始まった彼らの遊びは急速に変化して……というお話。最後のオチは結構ブラックでした」
 「(いつになく真面目な解説だなァ……)
 最大のキーである妖精だが――平均身長10センチ、三等身の小型人類だ。言っとくが羽根は生えてねぇ。
 台詞はすべて平仮名表記、甘い物好きで簡単に餌付けされてしまう、恐怖を覚えるとみんな揃って失禁&気絶するといった間の抜けた特徴を数多く持つ。が、その反面、思い付きだけで何でも作ってしまうとんでもない知性と技術を有し、さらに、生きるために食物を必要としない、繁殖方法が不明で気付いたら増えている、という既存の生物とは一線を画す存在でもある。
 この手の情報は主に主人公の語り口調の地の文と、調停官である彼女の祖父の口から語られるんだが、論理的かつ細かくて実に素晴らしい
  「正直な話、そういった小難しい部分は読み飛ばしちゃっても問題ないです♪
 本作は人類の現状やら、妖精さん達の生態といった説明にかなりのページを割いており、第一章前半などは殆どそれのみで埋まっています。しかし、それらの話は実際に妖精さん達と出会う一章後半でも出てきますし、何より、実際に目の前に対象がいる方が理解もしやすいです。なので、序盤の情報量に挫折しかけた方は、斜め読みでどんどん先へ行っちゃいましょう」
 「ちったぁ真面目に読めよ……と言いたいところだが、その指摘はあながち間違ってねぇ。
 妖精達は、『かんたんのはんたい』とか『にんげんさんは、かみさまです』といった知的なんだか間が抜けてるんだかよく解らね~どっかズレた台詞を吐きまくることで、ラノベらしいライトな雰囲気を醸し出してくれるんだが、人間同士の会話ってのはふざけた所はあっても何だかんだ言って真面目なんだよなァ……。ストーリー自体も、妖精が登場してから俄然面白くなるので、情報過多な序盤でくじけかけた人は、ホタルの言うように斜め読みで済ますか、気合いと根性で突破して欲しい」
 「無論、設定好きの方はしっかり隅々まで読んであげて下さい。マユさんのおっしゃる通り、論理的かつ詳細な解説がなされているので、充分に知的好奇心を満足させることが可能です。不明なとこは不明のままで残してあるのも面白さを引き出してますね」


―で、面白かったの?―


 「本作はシリーズ物で、既に三作が出ている。2も読んだし、3も買ってきてはあるんだが、それについてはまた今度だ。とりあえず、この巻の感想としては――」
 「妖精さん可愛いっ!」
 「(に……似てねぇ……)
 あ~、まぁ……何だ。上のホタルみたいな顔した妖精達が、いい意味で予想を裏切る暴れっぷりを見せてくれたので前評判以上に面白かったな
 「いつになく歯切れが悪いですね? 妖精さん達、可愛くありません?」
 「いや……可愛い、とは思うぞ。どこからともなく現れてうじゃうじゃ増えるし、どいつもこいつも恐がりで一斉に失禁するし、行動原理はガキみてーだが、集団になると人類を遥かに上回るテクノロジーでとんでもないもの作っちまうし、まるで電子生命みてぇだ。ちょっかい出したらすぐに反応するから、色々実験してみたくなるよな」
 「貴方の可愛いと、私の可愛いは、根本的にズレてると思います……。
 最後に、各章の見所なぞを紹介しておきましょうか。
 『妖精さんたちの、ちきゅう』は何と言っても、主人公の微妙なアプローチに、はしゃいだり怯えたりする妖精さん達がとにかく可愛いです! 私も主人公のようにスイッチがオンになっちゃいそう。
 『妖精さんの、あけぼの』は、最初から最後までお菓子に振り回される妖精さん達がこれまた可愛い! お菓子のオマケの話も楽しいです」
 「お前、『可愛い!』しか言ってねぇぞ。
 前者は、名前を持たない妖精達が、名付けをしてくれる主人公を神と呼び、勢いで近代都市やら神像まで造ってしまう展開に注目だ。
 後者は、プチ人類史……と見せかけて、飽くまで妖精独自の急激進化(?)を遂げる様が興味深い。前章で語られた、『妖精は生きるために食物を必要としない』という設定をちゃんと生かしているのもいいな」
 「お互い、好きなところが全然ちがいますねぇ~」
 「裏を返せば、それだけ作品の間口が広いってことさ。最初にちょっと話したが、SF要素もファンタジー要素も手を抜かず、上手いこと融合させている傑作だ。主人公やその祖父の名前を敢えて明かさないことで、寓話的な面も持たせており、様々な角度から読むことが出来る。ここ最近のライトノベルの中では、かなりのオススメと言っていいだろう」
 「もしかして、今回はオチなしですか?」
 「商業的には、最近のゆるキャラブームに上手いこと乗っかった作品って見方も出来るぜ♪」
 「作品の出来はいいんだからそういうこと言わないのっ!」



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龍の花わずらい5を拾いました ~つれづれ号外~

2008-05-15 07:09:36 | つれづれ号外
さてさて、さりげにずっと買い続けてたりする号外陸回目は――。

タイトル:龍の花わずらい5
著者:草川為
出版社:白泉社 花とゆめコミックス

であります。

これまた久々に登場な作品です。
以前紹介したのは……一年と七ヶ月前。まだ二巻までしか出てない頃ですね。(爆)
例によって、既刊読了前提&ネタバレ満載で参ります、未読の方はくれぐれも御注意下さい。

ルシンの師匠が登場&正体判明! シャクヤを庇ってクワンが大怪我! ルシンの記憶復活! 龍の宝珠なるマジックアイテムが出てきてさらに話がややこしいことに! と怒濤の展開が続く本作ですが、の割には三角関係にまったく変化が見られないのはどうなんでしょう?
つーか、一巻からこっち、クワン押しっぱなし。(笑)
ルシンも何もしていないわけではないけど……薄いんですよねぇ。

まぁ、パワーバランス崩れっぱなしの三角関係はほっといて、前巻は五年前のルシン暗殺事件に関わるツリ目の男(キコク)ルピナ(何故?)の馴れ初めでした。
恋情に流されたと見せかけて、しっかりキコク逮捕に協力するあたりルピナもなかなか素敵なのですが、生憎敵の方が一枚上手、仕掛けた罠は不発に終わって謎は解けず終い。
で、本巻、逃げたキコクを追って、シャクヤ達三人組とルピナは西方の都市クルクマを訪れるのですが――。

クルクマの近くには、16年前に砂嵐で滅びたオアシスがある。緑陰のオアシスを潰そうとした覆面軍団と何か関係が?(怪しい)
滅びたオアシスが、周囲の町から罪人を押しつけられた流刑地だったことが判明。(怪しい)
クルクマの宿にて、いまだかつてないセクシィモードでシャクヤに迫るクワン!(あからさまに怪しい)

何と言うか……ノッケから飛ばしまくってますね、色んな意味で。(笑)

しかし、事はまだ始まったばかりでした。
嵐が過ぎ去った明くる朝、一行はクワンとスウェ(ルシンの師匠)が行方不明になっていることを知ります。
二人の捜索を警察に任せ、廃墟となったオアシスに向かうも、建物の床が抜けて仲間と分断されてしまうシャクヤとルシン!

これでしばしの間、シャクヤとルシンは二人っきりで建物を探索することになるのですが――私はクワン派なのでそこらへんはどーでもいいです。(をい)
掻い摘んで言えば、例の覆面軍団と出会ってこれを退け、どこからともなく現れたクワンと再会しました。
一方、取り残されたルピナとキントラ(クワンの部下)は、再びキコクと接触、こちらも戦闘状態に。

う~、キャラがバラバラに動いてるので説明がめんどい。

再び覆面軍団が出現し、シャクヤとルシンは手負いのクワンを庇います。
そんな中、もう一人の行方不明者スウェが乱入し、衝撃の一言を――
「ルシン、シャクヤ――クワンから離れなさい…!

ええ~~~~~!

クワン裏切り者ですか?
そりゃ確かに今の三角関係のバランスは凄まじく悪いですが……。
まさかこういう方法で釣り合い取るとは思いませんでした。

クワンの株が急降下したからと言ってルシンの株が上がるとは限らないんですけどねぇ。
一応、諦めの悪い軟派男から、すべてを奪われた憐れな奴ぐらいには昇格しましたが……じゃあ、彼がシャクヤとくっついてめでたしめでたしかと言うとそうではないわけで。
ついでに言うとこの展開って――まるっきり『ガートルードのレシピ』の焼き直しじゃねぇかっ!
(サハラ→シャクヤ、ガートルード→ルシン、クロード→クワン)

続きは気になるんですが……テンションは一気に下がってしまいました。
しばらく放置状態の『十二秘色のパレット』に浮気しようかなぁ。(これも草川作品だけど)



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ホタルとマユの三分間書評『GIANT KILLING』

2008-05-11 22:14:00 | ホタルとマユ関連
さて、もしかしてサッカー漫画紹介するの翼君以来? な第969回は、

タイトル:GIANT KILLING(1~5巻:以下続刊)
原作:綱本将也  漫画:ツジトモ
出版社:講談社 モーニングKC(初版:'07)

であります。


―久々にゲーム買いました―


 「ホタルっす」
 「こんにちは、マユでーす♪」
 「激しく似合いませんね……」
 「それはお互い様だ」
 「さて、本日紹介するのは、PS2のリアルタイムシミュレーションゲーム『グリムグリモア』です」
 「おい、さも当たり前のようにゲームの紹介すんなよ……
 「つい先日、2800円の超特価で見つけて衝動買いしちゃいました♪ 絵が超好みなので前から欲しかったんですよ~、これ」
 「で、見た目に反してかなりガチなシミュレーションだったんで、三日で轟沈したってオチだろ? パッケージに騙される奴の典型だな、ケケケケ」
 「失礼なっ! ちゃんとノーマルレベルで進めて、もうすぐクリアすることろ(現在5-3攻略中)ですっ!」
 「ホタルがストーリーよりもシステム優先のガッチガチ・シミュレーションを攻略してるとは……明日は雨――いや、槍だな。ついでに流星とかも落ちてくるかも知れねー」
 「そこまで言いますか……。まぁ確かに、シナリオ部分がほとんどオマケに近いことは認めますけど。ううっ、せめて面クリア毎に一枚絵とか入れて欲しかった……」
 「そういうデコレーション部分は置いてといて、実際のゲーム部分はどうなんだ?」
 「うーん……面白いけど、人を選ぶゲームですね~。マップ上に魔法陣を配置してユニットを召喚し、下位ユニットにマナを集めさせて上位ユニットで敵陣を攻めるというオーソドックスなシステムなのですが、リアルタイムなので気付いたら手遅れって事態がよくあります」
 「コマンド選択時にはポーズがかかるんだから、ゆっくりやれば問題ねーんじゃねえか?」
 「このゲームのユニットには四つの属性があって、属性同士の相性が戦局を大きく左右するんですが、乱戦になるとそれを考慮して戦うのが困難になるんです。お互い使えるユニットが限定されている初期マップならまだしも、属性四つ×五種類=二十種類の異なるユニットが入り乱れる後期マップでは、敵の行動を先読みして召喚・指示を繰り返さないと戦況に対処できません。おまけに、属性とは別に実体・霊体の二つのボティタイプがあって、これも無視すると地獄を見ます」
 「それは普通のターン式シミュレーションでも同じだと思うが……リアルタイム式だとユニットが勝手に動く分、不測の事態が発生しやすいってことだな」
 「ですです。あと、痛いのは索敵の概念があることですね。自軍ユニットの視界外のマップは暗くて見えない上、一度ユニットを送り込んでも、それを破壊されるとまた元に戻ってしまいます。暗闇の中から唐突にドラゴンが現れたり、複数のユニットを運べるカロンが大量の敵を送り込んでたりしたら目が点になりますよ」
 「うっわー、今、マップの先が暗くて見えない『伝説のオウガバトル』を想像したぞ……洒落になってねぇ」
 「あれは部隊編成式だし、戦闘は別パート処理でタロットによる介入も可能だからまだいいけど、こちらは全部リアルタイム進行なのでキツ過ぎます。上位ユニットはまだしも、下位ユニットはHPが少ないので、敵に遭遇したら瀕死確定って場面が多すぎ……」
 「とりあえずゲーム話はそこまでにしようぜ。続きは楽屋裏で、だ」


―どんな漫画かなぁ?―


 「では気を取り直して……本日御紹介するのは、王子と愉快な仲間達がリーグ制覇を目指すサッカー漫画『GIANT KILLING』――通称『ジャイキリ』です!」
 「この漫画の主役は王子じゃねぇっ!」
 「え? 違うんですか?」
 「つーか、主役が二巻から登場するってどんな漫画だよ……。
簡単に粗筋を書くと、絶頂期に日本を離れた名プレイヤー・達海猛が古巣ETU(East Tokyo United)に監督として戻り、癖のあるメンバーをまとめて低迷するクラブの建て直しを図る、ってな話だ。言ってみりゃ、『がんばれベアーズ』のサッカー版だな」
 「(古っ!)各人物の書き分けが非常に上手く、群像劇として面白いのでサッカー詳しくなくても楽しめるのがウリです」
 「監督が主役で、クラブの内幕も描いてるため、試合の場面が少ないのが難と言えば難か」
 「でもその分、試合の盛り上がりは半端じゃないですよ。Jリーグ見たことない私でも、王子がボール持つと興奮しちゃいますもん」
 「それは単に、お前が熱狂的な王子ファンだからだろ……。キャラの話をした方が面白そうだから、ちょろちょろっと主要人物紹介なぞやってみるかね」
 「では、主役の達海猛
ETUの監督さんです。いー加減なようで計算高く、不真面目なようでひたむき、冷たいようで人情派という、ひねくれてるけど基本的にはいい人。弱いチームが強い奴等をやっつける(ジャイアント・キリング)が大好きで、過去に移籍したのも海外の弱小クラブだったようです。多くの方々から一度ETUを裏切った人物と見られていますが、これには何か裏がある――かも」
 「では、こちらはキャプテンの村越茂幸
達海が抜けた後のチームを十年間支え続けた、ミスターETUと呼ばれる男。臆面もなく帰ってきた達海に激しい敵意を向けるが、自分がETUの抱える問題を背負いすぎていたことを指摘され、以後は一選手として精進することを決める。苦労したためかいつも仏頂面だが、実はかなり熱い漢」
 「では、真打ち登場の王子!!!
 「ああ、ルイジ吉田な」
 「王子をその名で呼ぶなぁっ!
王子! もしくはジーノ! それ以外の呼び方は不許可です!」
 「ETUの司令塔で、精度の高いキックを武器にゲームコントールからシュートまでこなす攻撃の要。ただ、守備に参加しない上、疲れるとすぐサボるので使い所は難しい。軽い言動とニヤケた面で周囲を振り回す割には、各個人のことはよく見ており、時々鋭い発言をすることがある。底の見えない年齢不詳男」
 「とにかく気障で格好良いキャラです! 放つ言葉はすべて名言! あ~、入場時に王子と手をつないでた女の子だけ狂喜乱舞してたけど、その気持ちはよく解るっ! 王子最高~♪」
 「(一生そうやってろ……)では、ETU期待の新星・椿大介
とんでもないトップスピードを誇る守備的MF。チキンハートのため好不調の波が激しく、なかなか芽が出なかったが、達海の激励を受けて奮起し、新星ETUの切り込み隊長としてフィールドを駆け回る。王子曰く、「ボクが飼ってる犬のバッキー」(笑)。選手時代の達海と同じ背番号を付けており、今後も色々活躍してくれそうな成長過程キャラ」
 「では最後にゴールキーパーの緑川宏
チーム最年長のベテランで、通称はドリさん。年齢故か一歩引いた位置でチームメイトを見ており、さりげない場面でフォローを入れてくれる素敵なオジサマです。ポジションがポジションだけに、活躍の場面よりも点を取られてしまう場面の方が目立ってしまうのがちょっと可哀相かも(しかもドリさんの責任じゃないことの方が多い)。どう見ても達海さんより二歳年下には見えない件については……言わないであげて下さい」
 「メインはこんな所だが、チョイ役でも意外な所で出番をもらってたりするので侮れない漫画だ。時間があったら、全メンバーリストとか作ってみたい気はするな」


―総評としては?―


 「各キャラの個性溢れる会話が非常に面白いです。特に、落として持ち上げて煙に巻いて導く達海さんの話術は一級品ですね! 試合中の選手同士の会話も楽しいし、とにかくテンポ良く読めます」
 「大人のための少年誌『モーニング』らしい漫画だ。いわゆるジャンプ的王道の努力・友情・勝利を軸に、大人の苦労を入れることで、青年誌らしい作品に仕上げている。まぁ、さすがに必殺シュートとかは出てこないけどな」
 「翼君は、あれはあれで面白いですけどね。サッカー詳しくないので何とも言えませんが、現実にあり得ない点の取り方とか、これは戦術的にどーかなーと思う部分はなかったと思います。なので、サッカー好きの方もそうでない方も一度読んでみて下さい!」
 「トーナメント式の大会ではなく、Jリーグが舞台なので、負け試合も引き分け試合もちゃんとあるのはあたし好みだな。監督が変わっただけで連戦連勝、なんて御都合主義の展開よりも、らしくていい。周囲を唖然とさせるようなやり方で逆境に立ち向かう達海も、ちゃんと主人公してるし、少なくとも今出ている五巻まではオススメの漫画だろう」
 「嘘……マユさんが素直に作品を褒めるなんて……明日は世界の終わり? それとも、もう世界終わった?
 「何なら、お前のセカイだけ今すぐ終わらせてやろうか?」



→この記事の楽屋裏を覗いてみる。


→せっかくだから、『つれづれ総合案内所』にも立ち寄ってみる。

ホタルとマユの三分間書評『ショートショートの世界』

2008-05-07 22:50:22 | ホタルとマユ関連
さて、久々の新書な第968回は、

タイトル:ショートショートの世界
著者:高井 信
出版社:集英社 集英社新書(初版:'05)

であります。


―ラノベ目録作っちゃいました―


 「皆さん、こんにちは。二度目の登場のホタルです」
 「マユっす~♪」
 「随分御機嫌ですね。何かいいことありました?」
 「以前から管理人に作らせてたライトノベル目録がようやく完成したからな、そりゃ上機嫌にもなるぜ。もっとも、これでしばらく鞭と蝋燭の出番がなくなるかと思うと、ちと寂しい気もするが」
 「(完成までの経緯は聞かない方が良さそうですね~……)
 例によって、最新の投降覧の【☆『目録へのショートカット』兼『総合案内板』】から行けますので、興味のある方はチェックしてみて下さい。
 「本当は1ページでまとめる予定だったんだが、予想以上に冊数が多かったので、やむを得ず二つに分割した。現時点では、【ライトノベル一覧表(その1)】に電撃文庫、富士見ファンタジア文庫、富士見ミステリー文庫の三レーベル、【ライトノベル一覧表(その2)】にそれ以外の文庫の作品をまとめてあるが、記事数の増加によっては変更する可能性もある。これはgooブログの文字数限界の関係なので、ご理解頂きたい」
 「電撃ばっかりかと思いきや、意外に他の文庫も読んでますね」
 「だな。ガガガ文庫はまだいいとして、まさかZ文庫にまで手ぇ出してるとは思わなかった」
 「でも何でわざわざ目録にしたんですか? カテゴリーにしちゃった方が色々便利なのでは?」
 「ラノベの定義がかなり曖昧だからだ。仮にカテゴリーを作ったとしても、既存のジャンルとかち合っちまう」
 「単純にレーベルで判断すればよろしいかと。実際、ほとんどの方がそうされてると思いますし」
 「それが一番確実ではあるんだが……例えば、その他のとこにある『フェンネル大陸偽王伝』とか『星界の紋章』は一般レーベルだけど明らかにラノベだろ? ここらへんを追及しだすとかなり面倒なんだよ」
 「講談社NOVELSはある意味ライトノベル・レーベルなのでは? ――って、確かにキリがなさそうですね、この話」
 「だろ? だからそこの『その他』分類は完全に主観で決めてるし、記事編集時に悩みそうだからラノベカテゴリーも作ってない。ここら辺は、適当なとこで割り切るしかねぇと思う」
 「でも、『GOTH――リストカット事件』とか『六番目の小夜子』までライトノベルに分類するのは乱暴な気も……」
 「言うな……マヂでキリがねー」
 「ではそれは置いといて、私は一つだけ不満があります」
 「そういう時って、一つぢゃねーことの方が多い気がするが……ま、いいや、言ってみな」
 「なぜ一迅社文庫が入ってないんですか?」
 「一迅社……聞いたトキねーな。どこの会社だよ、それ?」
 「マユさんともあろうものが何て不勉強な……百合姫を出してるとこですよっ!」
 「だからあたしの前でそのテの話をするなっつーとろうが! あと、まだ出てねーだろ一迅社文庫!(2008年5月20日創刊予定)」
 「出てます! 私の心の中では出てるんです!」
 「解った……解ったからさっさと戻ってこい」


―どんな本?―


 「さて、今日の紹介ですが、ショートショート(以下、SS)好き必携の一冊『ショートショートの世界』です」
 「世にも珍しいSS専門の解説本だ。作品集はそれなりにあるが、解説オンリーの本ってのは多分国内初なんじゃねーかと思う」
 「不用意にそういうこと言っちゃうと、後でツッコミが入るかもですよ?」
 「その時はその時さ。
 ざっと内容を書くと、第一章『ショートショートの定義』がSSについての様々な意見と、著者の考えるSSの定義。第二章『ショートショートの歴史』が作家及び作品紹介をメインにしたSS歴史絵巻。第三章『ショートショートの書き方』がSSを書くにあたってのちょっとした方法論、といったとこだ」
 「お作法を学んで、過去作を読んで、自分で書いて! と、まさに至れり尽くせりの内容ですね。これなら、SSって何? というビギナーの方にも安心してお勧めできます」
 「ところがそうはいかねぇんだな、これが。元々興味がない読者の場合、無味乾燥な解説を長々と読まされて閉口するのがオチだ」
 「そこまで固い解説でした? 私は非常に丁寧で解りやすいと思いましたけど」
 「一番のネックが第二章だ。189ページ中の100ページ、つまり半分以上を占めてるんだが……この作家がいい、この作品が凄い、星新一万歳っ! そんな話ばっかりで、はっきり言ってうぜぇ
 「(うっわ~、言っちゃった)
 必要なことを書いてるだけですよ。これから読み始める人にとっても、著名な作品以外を読みたい人にとっても、オススメ作家&作品を知ることは重要ですし、星新一がSSの巨人だったのは紛れもない事実です」
 「なーにが、SSに関わる人すべては星新一のデビューした年を深く心に刻み込んでおかなければなりません、だ。偉人崇拝も大概にしやがれ。こういう奴が、結果的にジャンルの衰退を招くんだよ!
 「はいはい、どうどう、いーこいーこ。お願いだから、まずは落ちついて下さい。カタログとしては優秀ってことで第二章には目をつぶるとして、他の章はどうですか?」
 「(こいつになだめられるようになったら、あたしも終わりだな……)
第一章で提示されている、SSの定義については……ま、そんなもんじゃねぇの? って感じかね」
 「『約二十枚以下のアイディア・ストーリー』という、あれですね。私も賛成です。息抜きにちょっと読んでみるのに最適な長さだと思います♪」
 「もっと突っ込んだ説明があったろ? 『初めにアイデアがあり、そのアイデアを最も効果的に生かすために登場人物を決め、ストーリーを構築する――アイデア最優先の物語』って奴だ。もっとも、こういう細かい定義付けはジャンルの寿命を短くするがね。実際、SFやミステリは古い定義を破壊することで命脈を保ってるわけだし」
 「それについては、飽くまで自分の理想とするSSの定義だと言及されてますよ。別にこれ以外の定義を完全否定してるわけじゃないんだから、あまり拘らない方がよいかと」
 「でもなぁ……青い鳥文庫等の児童書で子供達が星SSに触れることはSSの未来にとって明るいことだと考えます、みたいなことを書かれると……激しく萎えるんだよ。過去の呪縛なんぞ捨てちまって、キャラ物ショートショートとか、連結ショートショートとか書かない限り、いつまで経っても狭っ苦しいSS村の中だけで盛り上がってるって状態からは脱出できねーぜ、きっと」
 「ちなみに第三章ですが、アイディア・ストーリーを書くにあたってのヒントが簡潔に示されています。SS以外の作品を書く際にも参考になるので、物書き志望の方は一度目を通しておくと良いかも♪ ただ、ページ数はそんなに多くないので、既にディープな知識を蓄えていらっしゃる方にはちと物足りないかも知れませんが……」


―結論言っちゃいます?―


 「ショートショート好きの方は必読! と言っていいでしょう。上でも言いましたが、SS名作カタログとしても御利用頂けます。まだ知らない、素晴らしい作品に出会えるかもです♪」
 「入門書としては落第だ。あたしなら、この本より先に『ショートショートの広場』を勧める。あれで様々な作品に触れ、自分に合いそうなジャンルだと感じたなら、こちらも読んでみるといい」
 「まったく……最後までネチネチと。少しは褒めるところを探す努力をしたらどうですか?」
 「とにかくSSが好きで、自身もSS作家で、ついでに星新一信者っていう著者らしい内容だわな。SSは面白いんだ! みんなそれを知らないだけなんだ! 触れれば必ずこの面白さが伝わる筈だ! あ~うぜぇうぜぇ。お前の近場にもいないか? 自分の村の素晴らしさを延々と語って下さる鬱陶しい奴がよ」
 「うっさい、年増。屁理屈ばっかこねんな」
 「道理を知らねぇ餓鬼が吠えてんじゃねぇっ!」



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来たっ! クレイモア最新巻! ~つれづれ号外~

2008-05-03 22:41:52 | つれづれ号外
さてさて、放置状態からようやく復活の号外伍回目は――。

タイトル:CLAYMORE――クレイモア 第14巻
著者:八木教広
文庫名:集英社 ジャンプコミックス

であります。

完全に放置状態だった『つれづれ号外』ですが、クレイモアの最新巻が出たのでちょいと復活してみました。
以前に紹介したのが二年と五ヶ月前(爆)なので、間四巻ほどすっ飛ばしてますが、それについての話はまたいずれ……。
号外なので例によって、既刊読了前提&ネタバレ満載で参ります、未読の方はくれぐれも御注意下さい。

組織に復讐するため、遂に立ち上がったクレア達・七人の侍!(笑)
しかし南下した矢先、深淵の者リフルと組織の覚醒者討伐隊の戦いに遭遇してしまう。
再びクレアと対峙したリフルは、面白いものを手に入れたので自分に協力しないかと提案するのだが……。

一方、現ナンバー47のクラリスは、ナンバー4のミアータとコンビを組み、かつてのナンバー3・ガラテアの討伐に向かっていた。
精神的に不安定な面はあるものの、圧倒的な戦闘力で妖魔を屠るミアータに、クラリスは密かに恐怖を覚える。
旅の果て、遂にガラテアの潜伏地を突き止めた二人、そこは――。

――というのが、前巻のおおまかな粗筋。
で、本巻ですが、クレア達の動向はひとまず置いといて、丸々クラリス達の話になってます。
前巻と同じく本編四話+外伝二話構成なので、話の進行は遅いのですが、クオリティ高いんで無問題。
(エンジェル伝説の頃からそうだったけど、八木さん短編も上手いよなぁ……)

ガラテアの潜伏地は、かつてクレア達が訪れた聖都ラボナでした。
ってことで、二巻で登場したシドとガークのコンビがゲスト出演。
さりげに、シドの方は髪伸ばして前より格好良くなってたりします。七年歳を喰ってる筈なんですが。(笑)

肝心のガラテアですが、シスターに扮して教会に隠れてました……狙いまくってますね。(だが、それがいい)
フォロー専門(笑)なのに大見得切ってガラテアに喧嘩を売るクラリス、獣のように襲いかかるミアータ、そして……フードを外し、久々に読者の前に素顔を晒す防御型最強戦士!
問題は、ガラテアがどうやって数年もの間、人の都にいられたか、なのですが――

「目を潰してから…以前より妖気を読む力が上がったんでな…」

ガラテア様来たぁぁぁっ!
作者のお気に入りだからか、読者人気が高いからか、その両方なのかは不明ですが、鮮烈と呼ぶに相応しい見事な復活をしてくれました! 八木さん、凄くいい仕事してます!
しかも、自分の目を潰してまでラボナに残っていた理由が、この地に潜む覚醒者を倒し、町と人々を守るためってんだからもう、盛り上がるなって方が無理。ガラテア様、相変わらず最高です。

んで、クレイモアが三人揃ったことに呼応して、強力な覚醒者・鮮血のアガサ登場。
しかし、飽くまで組織の命令を実行することに拘るクラリスは、アガサを無視してガラテアを狙います。
アガサとミアータ、二体の化物を相手にして、さすがのガラテアも満身創痍になるのですが――後はコミックスの方でお楽しみ下さい、殆ど言ってしまいましたけど。

本編が四話と短いため、相変わらず凄くいい所で終わってます……そこだけがキツイところ。
外伝の方は、一つがプリシラ対イースレイの話、もう一つがクレアの修業時代の話でした。
イースレイがプリシラに惚れ込んだ理由が判明したり、少ない出番で強烈な印象を残した獅子王リガルドがゲスト出演してたり、クレイモアの(実にらしい)卒業試験が見学できたり、と見所満載でこちらも楽しめました。


あー! 早く続きが読みたいっ!



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