つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

うん

2012-04-29 14:37:28 | ファンタジー(現世界)
さて、やっと借りられたの第1012回は、

タイトル:神様のメモ帳
著者:杉井光
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'07)

であります。

これもアニメになってたね。とりあえず、ネット配信されてたので見てはいたのだけど……正直さしておもしろいとは思ってなかった。
けっこう気に入ってみてたりすると、OPやEDも自然と頭に入ってきたりするんだけど、これはもうさっぱり覚えてないし(笑)

さておき、あらすじはアニメで知ってるんだけど、ストーリーは紹介しとかないとね。

『藤島鳴海は10月に転校してきてから1ヶ月、特にクラスに馴染むこともなく、ひとりで過ごしていて、それを普通だと思っていた。
それが破られたのはある日のこと。IT選択授業がある日で、部員がひとりもいないと言う理由で入ったパソコン部に行けなくなって、屋上の階段棟の上で時間を潰していたときだった。
パソコン部と同じくひとりしかいない園芸部員の篠崎彩夏に見つかり、弱小部同士助け合おうなんて彩夏の言葉に押されて園芸部員として活動させられることになったからだった。
おまけに彩夏がバイトをしているラーメン店はなまるに連れて行かれ、そこで堂々とニートを主張する高校の先輩テツに、ミリタリーマニアの少佐、ヒモをしているというヒロに出会う。ついでに何故か流されるままにニート探偵を名乗る少女アリスにも出会ってしまう。

そんなわけのわからない状況のとき、アリスのところへ依頼者が訪れる。四代目を呼ばれた青年は、四代目が縄張りにしている界隈で行われている薬物売買の原因究明に協力してほしい、というものだった。

たったひとりで過ごしていた日常が変わった日から数日、鳴海は彩夏とともに園芸部をやっていた。これまたあの日のように彩夏に流されるまま、はなまるを訪れ、テツ先輩たちと再会し、ついでにアリスへの出前を頼まれ――何だか日常が変わってしまったような気がするそんな折り、所在不明だった、おなじニートで彩夏の兄であるトシが久しぶりに姿を見せたことをアリスから教えられ、彩夏が心配しているからと事務所にしているアパートを追い出される。
トシを連れてテツたちのいる場所へ向かった鳴海は、またもや場に流されるままゲーセン行きに付き合わされることに。ゲーセンで遊んでいた鳴海たちだったが、抜け出してしまったトシをつい追いかけてしまった鳴海は、トシと会話をし、トシがエンジェル・フィックスと言う薬をやっていることを知らされる。

それからはなまるへ行く頻度が高くなってきて、いろいろあったある日のこと、彩夏が学校の屋上から身を投げ、植物状態になってしまう。
その出来事があってからしばらく学校にも行けなかった鳴海だったが、とあることをきっかけに、彩夏の自殺未遂の真相を知るためにアリスに依頼することになる――』

いろいろ、とはいろいろなのです(笑)
それをあらすじに書いちゃうとあらすじの量が膨大になってしまうので、こんなあらすじになってしまいました、とさ。

それはそれとして……(いいんです、あらすじ書くの苦手なのはわかってます(泣))、ストーリーだけど、クラスにも馴染む気がなく、それを日常としていた主人公の鳴海が、彩夏に連れられていった先であるはなまるで出会ったテツを始めとするニートたち、そしてニート探偵と名乗るアリスと出会って変わっていく日常の中、新種のドラッグであるエンジェル・フィックスの真相究明と彩夏の自殺未遂の真相を語る、と言うもの。
ラノベに分類される小説にしては雰囲気がやや重めで、軽く読むと言うタイプのものではないのは珍しい。
で、ストーリー自体の評価だけど、よく作られていると言う印象。
鳴海が彩夏やテツたち、アリスなどとの出会いと仲間として認知される前半と、そしてトシとの出会いと彩夏の自殺未遂から動き出すエンジェル・フィックスと彩夏の自殺未遂の真相を描く後半と、流れもいいし、エンジェル・フィックスと彩夏の関係もうまく絡められているし、ストーリー展開に破綻はない。

キャラも、安易に女のコキャラを出して萌えに走るのではなく、テツたちや四代目を始めとして女性キャラよりも男性キャラのほうが多いのも珍しい。
これは別に悪い意味ではなく、安易さを求めていないと言う意味では好印象。
また、各キャラについてだけど、天才的なハッカーの能力で情報を収集し、探偵を務めるアリスや、個性も特徴も役割もしっかりしているテツたちニート陣など、それぞれキャラ立ちしていてブレはない。
主人公の鳴海についても、鳴海の一人称でストーリーが進むため、心理描写も適度。
キャラについては文句のつけるところはないと言っていいだろう。

文章面でもかなり好印象。
上記のとおり、鳴海の一人称で語られるわけだけど、一人称の視点からブレることも逸脱することもなく、また他のラノベによくある他のキャラ視点に唐突に移転したりすることもなく、一貫している。
文章の作法も、ラノベにしては――と言うより、ラノベが作法を無視しまくっていると言うべきなのだが――しっかりしている。
若干気になるところがないわけではないが、これだけきちんとした作法で書けて、表現力があるのだから、些事と言うべきであろう。

客観的に見た場合、悪いところがほとんど見当たらないので、ラノベ点を考慮するまでもなく良品、と言えるだろう。
ラノベという枠に括らなくてもいいくらい、小説としてのクオリティの高い作品。
……なんだけど、あくまで客観的に見た場合には良品、なんだよねぇ……。
いい作品だと思うし、安易な萌えに走っていないところも好印象だったりはするし、アニメ化されるくらい人気が出るのもわからないでもないんだけど、あくまで個人的には、だけどあまりおもしろい、とは思わなかった。
いい作品なのはわかるよ、うん、ホントに。……ホントだよ?
でも私個人としては別段……なわけで、続きを読みたい気にさせるだけの魅力には欠けた作品なのですよ。
だから、続きは読まないでしょう。どうせアニメで2、3巻くらいまでの話はだいたいわかってるし、アニメ自体大しておもしろいとも思わなかったし。
まぁでも、いい作品なのでオススメはする。おもしろくなかったのは私の主観なのでね。


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絵は似せるもんじゃないか!?

2012-04-28 14:36:28 | SF(国内)
さて、そんなふうに思うわけですよの第1011回は、

タイトル:ミニスカ宇宙海賊パイレーツ
著者:笹本佑一
出版社:朝日新聞出版 ASHAHI NOVELS(初版:'08)

であります。

タイトルは……アニメのほうのお話です(笑)
だいたいアニメ化するに当たっては、多少なりとも原作のイラストと似せて絵を作るものだと思いますが、アニメの「モーレツ宇宙海賊」のほうの絵を、本書のイラストの違うこと違うこと。
原作知ってて、アニメを見た人は絵柄の違いにかなり戸惑うんじゃないかぁ、と思うわけですよ。

それはさておき、「エリアルシリーズ」で一世を風靡した(と思う)笹本氏の新シリーズですが、アニメ先行で見てだいたいのあらすじは知ってはいるのですが……。
ストーリーは、

『白凰女学院高等部1年加藤茉莉香、ヨット部所属。ついでにレトロな喫茶店「ランプ館」でウェイトレスのバイトもこなす元気印の高校生。
ヨット部でのシミュレーターを終えて、他の部員たちより先に学校を出た茉莉香はランプ館でのバイトに精を出していた。
そこに現れた一組の男女。母の知り合いだというふたりは、茉莉香に突然、宇宙海賊の船長にならないかと持ちかけてくる。

わけもわからずその場はしらばっくれた茉莉香はバイトを終えて帰宅。夕食の支度をしていた母の梨理香にランプ館での出来事を話していると、家に来訪者が訪れる。
その来訪者はランプ館で出会った男女で、女性のほうはミーサ、男性のほうはケインと名乗った。
夕食をともにしながら、梨理香とふたりきりだと思っていたら実は父親は数日前に死んだことなど、事情を聞いた茉莉香は正式に「合法の宇宙海賊」である海賊船弁天丸の船長就任要請を受ける。

合法の宇宙海賊――茉莉香たちが暮らす海明星が宗主星との独立戦争の最中、弱体な戦力を補うために時の政府が発行した私掠船免状を持つ宇宙海賊のことだった。
独立戦争そのものは1世紀以上も前のこと。歴史の教科書にすら載っているような時代の話だが、免状そのものは有効なまま。
そしてその免状の更新には、船長の直系の継嗣でなければならないため、茉莉香に白羽の矢が立ったのだった。

とは言え、いきなり宇宙海賊の船長なんて……と返事を保留した茉莉香だったが、そこへ新任の教師として赴任してきたケイン、おなじく新たな保険医として赴任したミーサと再会することになる。ついでにケインはヨット部の顧問にもなっていた。
おまけに編入生として分校からやってきたチアキ・クリハラと言う女生徒までいて、しかもヨット部へ入部。
作為的な匂いがぷんぷんする中、ケインが星間航行の免許を持っていると言うことでヨット部は夏休みの合宿を兼ねて、所有する帆船型の宇宙船オデットⅡ世号で宇宙に出ることに。

単なる女子校のヨット部による練習航海。しかし、中継ステーション係留時からハッキングが行われ、練習航海中も不穏な気配が流れる。
そんな中、茉莉香の取った行動とは? そして茉莉香は宇宙海賊になるのか?』

なんて書いてますが、プロローグで茉莉香が宇宙海賊やってるシーンがあるので、宇宙海賊にはなるんですけどね(笑)

さておき、アニメを見ていたからだろうとは思いますが、絵ってやっぱり偉大ですね。
プロローグはいいんですが、第一章の最初から読むのをやめようかと思いました(笑)
と言うか、この手のSF経験値の低い私には、横文字の単語は意味わかんないし、茉莉香がヨット部のシミュレーターで大気圏突入のシミュレーションを行っているところ、オデットⅡ世号でのトラブルや航海など、ある程度のSFとか、飛行機とか、そういうのの知識がないと、まったく情景が思い浮かびません。
かろうじて読めたのは、アニメでこのシーンはああいう絵だった、と言うのが頼りになったわけで、そうでないとSF経験値の低い方にはかなりつらいのではないかと思います。
特にスペースオペラと銘打っておきながら、内容はラノベに近いので、ラノベ感覚で手を出すとホントにつらいと思います。

ストーリーは、宇宙海賊とは言っても宇宙海賊の仕事をしているのはプロローグだけ。あとは茉莉香が船長になる決断をするまでのヨット部での練習航海での出来事が中心です。
ストーリー展開はまぁまぁです。大きな破綻があるわけでもなく、そつなく進んでいきます。
武装も何もないオデットⅡ世号を襲う謎の宇宙船との電子戦が主となってストーリーは進み、茉莉香の発案でこれを退ける、と言うのが大筋の流れですが、どうやらこれが契機となって茉莉香は船長になる決意をするわけですが……。
決意に至るまでの茉莉香の心理描写が乏しいので、まったく説得力に欠けます。
まぁ、いろいろと想像することで楽しんでください、と言うことなのかもしれませんが、想像するのにすら心理描写に乏しいので、これもかなりきついのではないかと思います。

文章は最近のラノベ作家とはさすがに違って作法を心得ていますが、キャラの演じ分けがうまくないので、頻繁に話し言葉がいったい誰が喋っているのか、と言うのがわかりにくいことがあります。
キャラが多数出てきて……と言うのならわかりますが、当直でブリッジに詰めている茉莉香とチアキのふたりの会話ですら、どっちの台詞なのかがわかんないときが出てくるのはどうかと思いますね。
喋り言葉に特徴をつけるなり、地の文でフォローするなりして、きちんとわかるように書いてもらいたいものです。
典型的な「著者には想像できて書いてるけど、読んでるほうには伝わらない文章」です。

キャラもいまいちです。
アニメを見ていたので、その分脳内補正が効いてくれてキャラが立っているように見えてしまいますが、ホントのところはかなり微妙な線でしょう。
主人公の茉莉香からして、謎の宇宙船との電子戦に対して発案して撃退するなど、普通の女子高生にはどう足掻いても無理っぽそうなことを一晩で計画してしまったりと、遺伝という言葉で片付けるには無理があろうかと思います。
まぁ、宇宙海賊の船長になろう、って言うんだからこれくらいのことはできてくれないと困る、と言う意図はわかりますが、説得力を持たせてくれなければ評価にはマイナスにしかなりません。
主人公の茉莉香がこれなのだから、他のキャラに至っては推して知るべしでしょう。
SF経験値が低い、と言うのを差っ引いても、アニメを見てなかったらさっぱりな作品です。

と言うわけで、軽く読めそうなスペースオペラ……と言いたいところですが、悪いところばかり目立ってしまっているので、総評は落第です。
アニメのほうは絵があってわかりやすいので、おもしろかったのですが、よくアニメ化されたようなぁ、ってくらいです。
SF経験値の高い方にはいいかもしれませんが、それ以外の人にはまずオススメしません。

あ、そうそう、ひとつだけいいことがありました。
アニメを見ていたので、喋り言葉がちゃんと各キャラの声優さんの声で脳内再現してくれました(笑)
これは楽しかったなぁ(笑)
いや、別にそれだけですけど……。


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ア行に戻ってきました(笑)

2012-04-22 19:12:17 | ファンタジー(異世界)
さて、図書館の書棚もぐるりと1回回りましたの第1010回は、

タイトル:花守の竜の叙情詩リリカ
著者:淡路帆希
出版社:富士見書房 ファンタジア文庫(初版:'09)

であります。

ラノベだと電撃以外あまり食指が伸びないのですが、図書館の本棚に置いてあったので手を取ってみた。
ファンタジア文庫と言うと、ラノベの黎明期にはいろいろといい作品があったんだけど、最近はとんと目立つ作品が見当たらないので、ほんとうにいつ以来だろうって感じだけど……。

さて、ストーリーは、

『カロルという島の小国オクトス――エパティークは家族やその側近、神官たちとともに地下の霊廟にいた。
オクトスの父王エルンストの葬儀のためだった。慣例に則って行われる葬儀は、しかし粗野な物音に中断させられる。
対立していた隣国エッセウーナの兵士に襲われたのだ。王の死は国民にすら知らされていなかったはずなのに、エッセウーナはこのときを狙って襲ってきたのだった。
恐怖に駆られる中、何故かエパティークだけは命を取られず、連れ去られてしまう。

一方、オクトスを陥落させたエッセウーナでは、オクトスを陥落させた祝宴の中、テオバルトは祝宴を抜け出して中庭にいた。
そこへテオバルトを慕うかわいい妹姫のロザリーが現れ、無邪気に話しかけてくる。
それに応対していると、オクトス陥落の立役者である第一王子のラダーが現れ、テオバルトにオクトスに伝わる銀竜の伝説の話を持ち出してくる。

千年の昔、オクトスが敵の島国に襲撃されたとき、少年王だったオクトスの姉姫がオクトスを守るために聖峰スブリマレから身を投げ、銀竜となってオクトスを救ったと言う伝説を。
捕らえられたと言うオクトスのエパティーク、銀竜の伝説――ラダーの真意に気付いたテオバルトだったが、身分の低い母親から産まれ、その母も今は亡く、何の後ろ盾もないテオバルトに、第一王子で嗣子であるラダーに逆らう術はなかった。

かくしてテオバルトは奴隷商に身をやつし、エパティークとともに銀竜を呼び出すという夢物語のような旅へと旅立つことになった。』

うわー……、すごいふつうでまともなファンタジーだ(笑)

ストーリーは、銀竜を呼び出すために旅をするテオバルトとエパティークが当初は反目し合いながらも、途中買われてきたエレンという少女との触れ合いも通じて、エパティークがオクトスでの実情を知り、変わっていく過程を中心に、テオバルトと和解し、互いに心惹かれ合っていく、と言うありがちなファンタジー。
ストーリー自体に目を瞠るようなネタや展開はなく、エパティークの心の変化がさほど長くない旅では早すぎるきらいがあるものの、気になるところはそれくらいだろうか。
同じことがテオバルトにも言えるのだが……。
他にも、カロルという島がどの程度の大きさの島なのか、と言った基本情報がすっぽり抜けていて、世界観が掴みにくいと言う難点がある。
いいところとしては、伝承されている詩を効果的に使って、エパティークとテオバルトが惹かれ合う姿や、銀竜の伝説を語っていると言うところだろうか。

文章も基本はエパティークとテオバルトの視点から交互に描かれており、文章の作法も問題なく、ラノベとしてはかなりまっとうな部類に入る。
たまに主人公ふたりとは違う視点で描かれる場面があるので、きちんとふたりの視点だけで書いてほしかったと言う面はあるものの、そこまでひどいわけではないのでここはまだ許容範囲内だろう。

あとはキャラだが、上記のようにエパティーク、テオバルトともに心の変化が性急なのがキャラをブレさせる一因となっている。
テオバルトも実際は妹姫のロザリーをかなり可愛がっているのだが、当初はそんなところがしっかりと描かれていないので、銀竜召喚が成功した暁にラダーに望んだ条件なども唐突に見えてくる。
エパティークにも王女としての矜持や、それを見直し、変わっていく過程が表現不足の感があって、やはりキャラのブレが見え隠れする。
ありがちとは言え、ストーリー全体としては悪くないだけに、キャラがこれなのは残念ではある。

と言うわけで総評だけど、キャラのことに目をつむれば、ファンタジーの王道のひとつなので割合安心して読める作品とは言えるだろう。
いまのところ3巻まで出ているとは言っても、この1冊でとりあえずの完結を見ているので、2巻以降を読むかどうかの判断もしやすい。
いいところ、悪いところ、双方ともにあってやはり及第と言ったところになるだろうか。
ファンタジア文庫であまり期待していなかったぶんだけ、好印象ではあるのだけど、さすがに良品とは言い難いので、こういう結果に落ち着くのが妥当なところだろう。
ネタバレになるので言えないのだけど、個人的には2巻以降、エパティークとテオバルトふたりの関係をどう展開してくれるのか、興味はあるので読むとは思うけど……。

それにしてもAmazonでの評価は高いものの、新品がすでに2巻以外手に入らないってのも何だかなぁって感じだね。
まぁ、ストーリーもキャラも王道で、ツンデレとかキャラに萌えるような作品でもなく、アクションが充実しているわけでもないので、悪くない話ながらもあんまり人気は出なかったんだろうなぁ、とは思うけど。


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意外だったのは……

2012-04-21 18:23:31 | 小説全般
さて、いつの間にやらここまで来てたんだなぁの第1009回は、

タイトル:幸せのかたち
著者:松村比呂美
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'06)

であります。

著者は携帯小説出身らしいです。
携帯小説と言うと、どうしてもあの狭いディスプレイで読むことを考えて、書いていくものだろうから、いろいろと偏見があったりなかったり……^^;
なので、はっきり言ってまったく期待はしていなかったのですが……。

ストーリーは、

『買い物からの帰り道、紗江子は中学時代のクラスメイトだった美幸に声をかけられた。
クラスメイトと言っても卒業前に転校して、半年くらいしか一緒にいなかった美幸をすぐには思い出せなかったが、地味でおとなしかった当時とは打って変わって美幸は積極的に紗江子に話しかけ、住んでいると言うマンションに向かう。
そこで見つけた自分の顔が3Dで映し出されるクリスタル――薄気味悪さを覚え、美幸と電話番号の交換はしたものの、二度と会うことはないだろうとマンションを後にする。

一方、紗江子の昔ながらの友人の香織は、紗江子と共同経営で開いたリサイクルショップで暇をもてあましていた。
共同経営と言ってもすでに紗江子は手を引いていてひとり。その原因は香織が持ち込まれた品を言い値で買い取ってしまうからだった。
高値で買い取ってくれると評判になり、売り手は来るが買い手がなく、立ちゆかなくなっていたのだ。
結局、リサイクルショップは失敗、紗江子とも喧嘩別れしたままで味気ない生活を送っていた。

そんな紗江子と香織に転機が訪れる。
紗江子には夫の浮気疑惑、香織には夫の浮気による浮気相手の産まれたばかりの子供、と言う出来事だった。
紗江子はそのことから耳を背けるように、美幸が提案した輸入雑貨の店を出すと言う計画に飛びつき、香織は働いていたころの先輩の様子から育児は無理だと思っていたし、夫の浮気で離婚なんて惨めだと思って動けずにいた。
美幸は美幸で紗江子との輸入雑貨の店をオープンすることに満足していた。

三者三様、それぞれの出来事と思惑が入り乱れる中、紗江子は意外な事実を知ることになる……。』

まず、文章のことですが……。
偏見その1(笑)
どうしても携帯というもので見せる場合には、文章的な制約があって軽い文章を想像していたのですが、いやはや、まともでした。
と言うか、ラノベの文章の乱れっぷりを見ていると、かなりこちらのほうがマシでした。
表現に難はないし、文章の作法も乱れることなく、そつなく書いていて、期待していなかったぶんだけ意外な好感触でした。

ストーリーは、タイトルどおり紗江子、香織、美幸の3人の「幸せのかたち」を描いたもの。
美幸と出会ったことで起きる紗江子の夫の浮気騒動や、それを仕組んだ美幸。
また、美幸のほうも実際は早くに結婚していて子供もいたが、それに伴う苦労、そして夫の両親を含めての交通事故による家族の死、地味でおとなしかった中学時代に出会った紗江子への憧憬と執着……。
そうしたものが過去話とも絡んでしっかりと描かれていて好感が持てます。
ただ、物語の軸が紗江子と美幸にやや重点が置かれているせいか、香織の存在が蚊帳の外と言ったふうに見えるのが残念ですが、夫の浮気相手が生んだ赤ん坊と接し、名前もつけてやったりしているうちに、その子を育てるように思えるようになる下りには無理がありません。
3人の女性が選んだ「幸せのかたち」――タイトルのとおり、それぞれの幸せが何であったのかがしっかりと描かれています。

これまた期待していなかったぶんだけ、ストーリーも好感触です。
でも紹介文にある「人生の岐路に直面した三人の女性の姿を描く、ミステリアスな物語」のミステリアスってどういう意味なんでしょうね(笑)
「人生の岐路に~」という下りはわかりますが、この作品のどこにミステリアスな部分があるのか教えてほしいくらいです。
あえて挙げるとすれば、美幸の仕組んだ紗江子の夫の浮気騒動くらいでしょうか。
でもそれは美幸が持つ紗江子への憧憬と執着という面を描くためのもので、ミステリアスと呼ぶほどのものではないでしょう。
この言葉が持つ印象からストーリーを期待すると、はっきり期待外れになってしまうので注意しましょう。

と言うわけで総評ですが、期待していなかったぶんだけ好印象が多く、文章もストーリーもそつなくこなしてくれている本書ですが……。
及第以上良品未満――悪くはないんだけど、そこまでオススメできるほどの雰囲気があるわけでも勢いがあるわけでも秀逸な点があるわけでもないので、こういったところに落ち着いてしまうでしょう。
決してハズレではないので、手に取ってみてもいいとは思いますが、強いてオススメできる点がないのでこういう総評に落ち着いてしまいます。


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う~ん、こんなもんか……

2012-04-15 14:45:42 | 恋愛小説
さて、第1008回は、

タイトル:雨恋
著者:松尾由美
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:'07)

であります。

相方が読んでいましたね、この人(笑)
読み返してみると、なかなかミステリとしてはそれなりの評価をしているようですが、本書はミステリではなく恋愛小説。
紹介文には「驚愕の事実」とか、「名手が描く、奇跡のラブ・ストーリー」とか、煽りまくってくれているけれど、どうなることやら……。

ストーリーは、

『沼田渉は、些細なことでアパートの隣人との関係が険悪になったことで、引っ越したいと考えていた。
そこへ降って沸いたのが叔母の寿美子がロサンゼルスへ異動になったために、住んでいたマンションと管理と2匹の子猫の世話を兼ねて住んでみないかという話だった。
結局、その話を承諾し、叔母のマンションに引っ越してきた渉だったが、そこにいたのは2匹の子猫だけではなかった。

ある日、マンションに帰ってきて家事をしていると、リビングのほうから話し声が聞こえた。自分以外は誰もいないはずの部屋で聞こえる声に薄気味悪さを抑えながら入っていくと、はっきりと声が聞こえる。
声の主は小田切千波。このマンションで自殺したとされるOLだったのだが、千波の話では自殺ではなく、誰かに殺されたと言うのだ。
実際、自殺しようとして遺書も書き、青酸化合物も手に入れた千波だったが、青酸化合物を飲むために開けたシャンパンのコルクが天井につり下げられた扇風機に引っかかったことがきっかけで自殺を取りやめたのだが、どうやらそこに居合わせた誰か――犯人に――扇風機に引っかかったコルクを取ろうとして椅子から転げ落ち、気絶した千波に青酸化合物の入ったシャンパンを飲ませて殺害した、らしい。

犯人が誰なのか知りたいのか、未練があるのか、死んでから千波は幽霊としてマンションに現れるようになっていた。
渉としてはこんな幽霊がいては精神衛生上よろしくない。単なるオーディオメーカーの営業に過ぎない渉に何ができるかはわからないものの、千波からの情報を得て、渉は犯人捜しに協力することになるのだが……』

ミステリ風味の恋愛小説もどき――。
第一の感想はそんなところでしょうか。

ストーリーは、犯人捜しに協力することになった渉が、いろいろと情報を得て犯人である可能性のある人物に会ったり、話をしたりして、千波の他殺を証明しようとする中、千波はと言うとひとつひとつ可能性をつぶして納得していく過程で、声だけだった姿が足だけ見えるようになり、ひとつ納得していくと今度は下半身、上半身と姿を取り戻し、それに渉は不気味さと居心地の悪さを感じつつも千波に惹かれていく、というもの。
犯人捜しの手法は、ミステリっぽいものですが、あくまで「っぽい」だけで「驚愕の事実」というほどのトリックがあるわけではない。
恋愛小説部分も、どこが「奇跡のラブ・ストーリー」なのか教えてもらいたいくらい、淡々と進んでいく。
文体が渉の一人称なので、その心の動きはしっかり描かれてはいるものの、さして感慨を覚えるような展開はない。
まぁ、相手が幽霊なので、恋愛小説としてのオチは定番なので、そこに切なさを感じるかもしれないけれど、私にはまったくそういった感慨は感じられなかった。
ミステリとしても恋愛小説としてもなんか中途半端で、消化不良を起こしてしまいそうな感じかなぁ。

ストーリー展開としては無理はない。
「驚愕の事実」はないにしても、犯人捜しから解決に至るまでの流れはスムーズで破綻はないし、納得できる内容にはなっている。
文章も渉の一人称の範囲を逸脱することなく、視点がぶれることもないので読みやすいほうでしょう。
雨の日にしか現れることができない千波を、最初は薄気味悪く、また姿が見えるようになってからの不気味さから、千波に惹かれていく展開も、うまく描いているほうでしょう。
共感できるかどうかは別として。

ただし、作品としてはよくまとまったものだとは言えるけど、恋愛小説と言うほど甘さや人間関係のドロドロした部分もなければ、雰囲気も感じられない。
解説ではいろいろといい点を挙げてはいるものの、はっきり言ってそこまで褒めるような内容になっているのか疑問……。
唯一、あぁ、そうね、って思えるのは「雨恋」が「雨乞い」でもある、と言うところくらいだろうか。
千波は雨の日にしか出てくることができないのだから。

なので、総評としてはかなり微妙なライン……。
客観的に見て、ストーリー展開とかには難がないものの、個人的には雰囲気も余韻もなく、おもしろみに欠ける作品と言ったところだから、及第にするべきか、落第にするべきかが悩ましいところ。
まぁ、あえて判断するとすれば、紹介文のまずさから、落第と言ったところかな。
ホント、いったい何をもって「驚愕の事実」だとか「奇跡のラブ・ストーリー」なのか、書いた人間の顔が見てみたいくらいの内容なので、紹介文にだまされて読むとバカを見る、と言うところでマイナスをつけておきましょう。


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いつまで続くんだ、これ……

2012-04-14 14:20:22 | ファンタジー(異世界)
さて、とりあえずあと1冊だなぁの第1007回は、

タイトル:コーラル城の平穏な日々 デルフィニア戦記外伝2
著者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 C★NOVELS Fantasia(初版:'11)

であります。

図書館で借りれる茅田さんの本はあと1冊「祝もものき事務所2」だけになった。
記事にはしてないけど、「クラッシュ・ブレイズシリーズ」も全部読んでるし、残すはこれだけ。
まぁ、予約数がそれなりに多いので、3巻が出てようやく2巻なんてことにもなりかねないんだけど(笑)

さておき、本書は中編2本、短編1本で構成された外伝作品。
前の外伝とは違って、今回はデルフィニア戦記で主人公だったウォルやリィも出てくる作品となっている。
それにしても、いったいいつまでこのキャラで作品書いていくつもりなんだろうね、茅田さん。
もともとは中央公論じゃなくて、大陸書房からデルフィニアは出てたはずだから、かれこれ十何年は続いてる計算になるんだよねぇ。

ま、とりあえずストーリーは各話ごとに、

『「ポーラの休日」
デルフィニア国王ウォルの愛妾ポーラは、とある夕餉の席でウォルから休みを取らないかと提案される。住居にしている芙蓉宮から出たことのないポーラに気晴らしを、との配慮からだった。
最初は遠慮していたものの、王妃であるリィの勧めもあって、ポーラはコーラルの市街見物に出かけることになった。
そんな折、懇意にしているラモナ騎士団長の妹アランナが訪れ、市街見物に同行することに。
市街には詳しいアランナの提案で、魔法街へ行くことになったポーラとアランナ。ふたりは魔法街についてあれこれ話をしているうちに、未だくっつく気配のないイヴンとシャーミアンの話になり、ふたりをくっつけさせるために惚れ薬を買いに行くことに決定してしまっていた。

一方、そんなことが目的になっているとは知らないリィとシェラは、ウォルに頼まれてふたりの護衛のために、ふたりの後をつけていた。
女性ふたりの買い物の長さに辟易しているリィたちの前に、変装したバルロとナシアスが現れる。ふたりは魔法街で起きた誘拐事件の調査をしていると言うのだ。
折り悪く、ポーラとアランナのふたりは問題となっている占い師の館に赴き、姿をくらましてしまう。
すわ、今度はポーラとアランナのふたりまで――リィとシェラ、バルロにナシアスは大慌てで誘拐事件の解決に全力を挙げることとなるが……。

「王と王妃の新婚事情」
結婚式当日、国家間の約束事など無視して攻めてきたタンガの軍勢――結婚式を中止して戦場へ駆けつけ、タンガを退けたウォルとリィ。
戦勝に沸く中、ウォルとリィの天幕は静かだった。中止したとは言え、結婚式を挙げたふたりに遠慮して、ふたりの天幕には人が近寄ってこなかったのだが、そこではふたりが静かに闘志を燃やしていた。
色気も何もないふたりは、カード博打をしていたのだった。

「シェラの日常」
シェラがリィの侍女となってからしばらく――リィとの生活にも慣れてきたある日のこと。長雨が続いた後の晴れた日、リィは友人である黒馬のグライアで遠出をするために出かけていった。ただし、シェラが4日間煮込んだシチューがようやく食べられると言う日で、夕食までには戻ってくる、と言うものだった。
リィが出かけた後、久しぶりの晴れに西離宮の掃除や寝具の洗濯などをするシェラ。
そこへ新たな食糧管理番が西離宮で消費される食料の量が多すぎると言ってきたり、王宮の女たちに国王が頭を悩ませているもめ事について聞いたりと平穏な日常を過ごしていた。

リィがいない間は自由のきくシェラは、王宮の女たちから風邪で仕事を休んでいる女官の見舞いに行くことになり、その帰り道、どうもよろしくない雰囲気で男が貴族らしい女性に迫っている場面に出くわしてしまう。
見過ごすことができず、女性の手助けをしたシェラが待っていたのはトラブルの数々だった。』

デルフィニア戦記のファンの方には懐かしくも、楽しめる作品だろうなぁ。
「ポーラの休日」は、お約束の、実は誘拐なんかされていなくて、リィたちが勘違いで大騒ぎする作品で、オチを見ればリィたちが滑稽な道化師を演じていた、と言うもの。
「王と王妃の新婚事情」はこの人にしては(極めて)珍しく、数ページ程度のショートショートで、結婚式直後のタンガ戦での一幕を切り取ったもの。
「シェラの日常」は、平和な日常だったはずがある貴族の女性を手助けする羽目になったり、リィの刺客が現れたり、そのせいでリィが楽しみにしていたシチューが台無しになってしまうかもしれない、と言う事態に追い込まれたりと後半部分で、いろいろと展開を見せて、いったいこれのどこが「日常」やねん、とツッコミを入れたくなる内容になっていたりする。

各ストーリーの展開はともかく、こちらもまた珍しく、きちんと独立した中編、短編になっているのが茅田さんにしては珍しい。
この人の外伝作品の短編は、「レディ・ガンナー外伝」もそうだったし、「暁の天使たちシリーズ」の外伝もそうだったけど、短編連作に近く、各話に関連性があるのが今までの傾向(難点)であったので、きちんと独立して成り立っているのはいい傾向だろう。
ストーリー自体もちょっと勢いというものが足りない気はするものの、ファンならば十分に楽しめる作品となっていておもしろい。
まぁ、逆にそうでなければ意味はないんだけど……。

デルフィニア戦記のファン、もしくは茅田さんのファンならば買いの1冊であろうけど、そうでなければ人物相関図がわからないので手に取る必要はないでしょう。
まぁ、外伝作品なんてのは本編を知らなければ楽しめない側面があるので、読者限定になってしまうのは仕方がないところではあるんだけど……。

そういうわけで、読者限定という意味で総評は及第。
本編は何も考えずに単純に楽しめる作品なので、18巻という巻数をものともしない奇特な方は本編を読んでから外伝に取りかかってみてください。
基本的に本編はオススメだし、文庫版も出ているので比較的手にしやすくはなってはいるとは思うけど、さすがに18冊を無条件でオススメはしないので。


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誰を攻略しますか?(笑)

2012-04-08 13:36:15 | ファンタジー(現世界)
さて、別にゲームのレビューをするわけじゃないよの第1006回は、

タイトル:緋弾のアリア
著者:赤松中学
出版社:メディアファクトリー MF文庫J(初版:'08)

であります。

アニメは見ましたが、MF文庫なので多大な期待はしていません(笑)
だいたいアニメ自体、ヒロインを釘宮さんがやっていた、と言うだけで見て、それっきりしばらく忘れていたくらいなので、原作を読んでみる気になったのも遅くなりました。
まぁ、アニメ自体、おもしろいともおもしろくないとも言えないものだったので、仕方ないのですが……(笑)

さておき、ストーリーは、

『遠山キンジはバスに乗り遅れて、自転車で通学していた。さすがに2年生になったばかりの始業式に遅刻するわけにはいかなかったからだ。
だが、それも突然の奇妙な声に始業式どころではなくなってしまう。
「そのチャリには爆弾が仕掛けてありやがります」
おまけに無人のセグウェイという乗り物にしかけたサブマシンガンが狙いをつけてくる始末。

ハイジャックならぬチャリジャックに幼馴染みの言っていた「武偵殺し」の名が頭をよぎる。
何もできず、爆弾に吹っ飛ばされるか、セグウェイに乗ったサブマシンガンで撃ち抜かれるか――そんな絶望的な状況からキンジを救ったのは武偵高女子寮からパラグライダーで飛び下りてきたひとりの少女だった。
セグウェイを銃撃でぶっ壊し、パラグライダーでキンジを捕まえて救った少女の名は、神崎・H・アリア。
銃器の使用が認められ、金さえ払えば何でもこなす武偵で最高のSランクの少女だった。

そしてアリアの目的は、自分のパートナーを探すことで、その相手にキンジを選んだのだった。
しかし、キンジはと言うと厄介な体質とトラウマになっている兄の死とそれにまつわる出来事から、武偵高校を辞めるつもりでいた。
だが、アリアにはそんなことはおかまいなし。男子寮のキンジの部屋に押しかけてくるわ、自分勝手に振る舞うわ、おまけにパートナーのはずが「ドレイになりなさい」と言う始末。
はっきり言って付き合うのもイヤだったが、しつこく食い下がってくるアリアにキンジは1件の事件だけ付き合うことを条件に、アリアと行動をともにすることを提案。
それを受けたアリアが選んだ事件は「武偵殺し」に関わるものだった。』

さすがMF文庫。
狙いまくってますね(笑)

まずキャラですが、ヒロインのアリア。142センチのロリ体型に恋愛ごとに疎い赤面症のオプションつきツンデレ。
サブヒロインに、キンジに惚れてて献身的に尽くすタイプの巫女さんで幼馴染み属性付きの白雪。
服装はロリだけど、身体は高2らしく、はっちゃけてるながらも実際はひねくれてる理子。
Sクラスのスナイパーで、無表情でクールなレキ……。
とりあえず、1巻で出てくるメインの女性キャラはこれだけですが、さて、

誰に萌えますか?(笑)

ついでに言うと、キンジの厄介な体質――ヒステリアモードと言って、キンジが性的興奮を覚え、それが許容量を超えると発動、普段は最低のEランクなのに、Sランクの実力を出せるようになる体質ですが……。

はい、読者サービスのための設定ですね(笑)

他にも設定にいろいろとツッコミどころはあるものの、ここまで来ると逆に潔いですね。
キャラはギャルゲーでそのまま通用するくらい王道で、読者(ゲームならプレイヤー)サービスも忘れない親切設計。
キャラに萌えられる人にはいい作品だろうなぁ、と思います。

ストーリーは、まぁ期待していなかったからか、さほど悪い印象はありませんでした。
紹介文の「大スケールアクション&ラブコメディー!!」とあるうちのアクションもそれなりの出来で迫力はあるほうでしょう。
展開にも大きな破綻はなく、比較的すんなりと読める作品になっています。
ラブコメのほうについては、まんまギャルゲーですね。フラグたてまくりです。
ギャルゲーなら1巻分が固定イベントで、選択肢によって誰を攻略するかの最初の分岐になるような感じでしょうか。
文章は……ラノベだし、傍点のルビが多くてうざったいとか、擬音でごまかすなとかいろいろと突っ込みたいところはありますが、そこは大人の対応をして受け流しておきましょう。ラノベなのですから、いちいち気にしていては読めませんよ?(笑)

と言うわけで総評ですが、MF文庫にしては当たりの部類に入るのではないでしょうか。
キャラ萌えもできますし、読者サービスもありますし、大スケールアクション……とまでは言わないけど、そこそこアクションも楽しめて、軽く読むには適していると思います。
ツッコミどころはあるものの、ラノベ点という甘さを加えてみれば、比較的オススメしやすい作品だと思います。
と言うわけで、総評は良品としておきましょう。
かなり甘めですが(笑)

それにしても、Amazonのレビューがおもしろいですね、この作品。
★5つのレビューが25で、逆に★1つのレビューが24。ものの見事に評価が真っ二つ(笑)
ここまで評価が割れる作品も逆に珍しいのかもしれませんね。私なら甘めの評価もあって、★4つくらいはつけますでしょうか。
あれこれ考えるより、何も考えずに割り切って読めばおもしろい作品だと思いますよ。
(だいたいうちのラノベのカテゴリ分けって、「ファンタジー」だし(笑))


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意外と早かったな

2012-04-07 13:36:19 | ミステリ
さて、予約数も少なかったしねの第1005回は、

タイトル:万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ
著者:松岡圭祐
出版社:角川書店 角川文庫(初版:'10)

であります。

1巻を忘れないうちに借りれればいいなー、なんて思っていたけど、意外と早く返却されてきたみたいで、あんまり間を置かずに借りることができた。
1巻で引きに引いて終わってくれて期待させてくれた本書ですが、はてさてどうなることやら……。

ストーリーは、

『怪しげな輸入業者の犯行を未然に防いだ鑑定士の莉子と、週刊角川の記者小笠原は、逮捕された輸入業者が取り調べを受けている牛込警察署へと向かっていた。
しかし、そこで待っていたのは思いがけない出来事だった。
輸入業者の犯行は、実は警視庁公安部の行ったもので、極秘裏に進めていた偽札調査のための被疑者確保を目的としたものだった。
被疑者は国立印刷局の工芸官藤堂。紙幣の原盤の絵を描く男で、輸入業者の犯行時に、莉子と小笠原も見かけた男だった。

極秘裏に進めていた偽札調査――だが、それは犯人と目される人物がテレビ局や新聞社、雑誌社に送られた犯行声明とも取れるものによって日本中に知られることとなる。
まったく同じ番号の1万円札。科学鑑定の結果も、偽札とは判断できないほど精巧に作られた代物だった。
週刊角川にも同じものが送られてきており、それを鑑定した莉子も、紙幣に施された偽造防止技術のすべてが再現されている同じ番号の1万円札に、どちらが偽札なのか、判断できなかった。

未然に防いだはずの事件が、実はもっと大きな事件を解決するための糸口だった――責任を感じる莉子だったが、偽札報道は日本どころか、世界を駆け巡り、国際的な円の信用は暴落、国内ではハイパーインフレを引き起こす結果になっていた。
だが、莉子は犯行声明の文書からそれが沖縄で書かれたものであることを知り、故郷である波照間島へと向かう。
波照間島で知った小さな手がかりをもとに、偽札の真相を探る莉子だったが、得られた情報から辿り着いたのは空振りばかり。
馴染みのものと言えば、力士シールの存在だけだった。

一方、小笠原もハイパーインフレの影響を受けて休刊した週刊角川の記者として、何かの手がかりがないかを独自に調査して、ひとりの怪しい人物に辿り着く。
しかし、それも勘違いで挙げ句の果てにはストーカー容疑で警察に捕まってしまう。

何も得られなかった失意のうちに東京へ戻ってきた莉子は――しかし、意外なところから偽札の真相を突き止める。』

引きに引いて、1巻の解説でも煽りに煽ってくれた2巻。
どんなトリックでハイパーインフレを解決してくれるのか、かなーり期待して読んでいたのだけど……。

はっきり言って、かなり拍子抜け……。

偽札で円の国際的信用がなくなった世界、ハイパーインフレで混乱する日本……話がかなりでかくなっているので、さぞかし大々的なトリックでもあるのかと思いきや、あまりに静かなトリックとその解説にがっくり来たのが正直なところ。

とは言え、ストーリーの作りは問題ない。
1巻で出てきた力士シールの存在と意味や、工芸官藤堂のまるで逃亡者のような行動、偽札のトリックまで、よく調べ、よく練られた作品だと思うし、2冊に渡って散りばめられた伏線をすべて回収して終わっている。
1巻解説であったけど、鑑定士を名乗る前に教導者として出てきた瀬戸内が重要な役回りをする、と言うのもそのとおりで、かなり重要な立ち位置にいて、意外性もある。
2巻の後半に至るまで、解決の糸口がまったく見えず、莉子の行動がほとんど空振りだったりするので、どう収拾つけてくれるのか、心配になったところもあったけど、ストーリー展開についてはまずくない。

ただ、ちょっと気になるのが小笠原のキャラ。
莉子が東京を離れ、波照間島を拠点に調査をしている間に記者魂を発揮して独自に調査をするのだが、これが1巻で見る小笠原のキャラからはまったく感じられないこと。
こいつってこんなに熱いキャラだったか? って感じだし、どちらかと言えば莉子に淡い好意を抱く若者と言った印象だっただけに、これには違和感がある。
でもまぁ、逆に言えば、気になるところと言えばそれくらい。

ストーリー展開に難はないし、小笠原のキャラに引っかかるところはあるけど、他のキャラは行動原理に一貫性があってしっかりしている。
偽札騒動の犯人にも意外性があるし、力士シールとも絡んでいてミステリとしてはよく練られているだろうと思う。

ただ……。
やっぱり1巻で期待させすぎじゃないかなぁ、ってのが……ねぇ……。
総じてストーリーもキャラも悪くないのだけど、オチにがっくり来たのだけは残念。
1巻読んで、解説も読んで、煽られていただけに、静かな着地点に期待外れの印象があるのはしょうがないと思う。
これさえなければ、文句なしに良品をつけられるんだけど……。

とは言え、過度な期待をせずに1巻2巻と読んでいけば、ミステリとしての出来はかなりいいのではないかと思う。
死人が出るわけでもないし、こういうところは好印象だし、客観的に見れば、良品と言ってもいいだろう。
ただ、3巻読むかなぁ……。
また巻末に煽り文句なんかがついてるけど、2巻のオチの拍子抜けを考えるとあんまり期待できないからなぁ。
そのうち、気が向いたら借りて読むかもしれないけど、今の時点では読みます、とは言えないなぁ。


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これも帯買いです

2012-04-06 20:54:29 | マンガ(少女漫画)
さて、何年ぶりだろうなぁの第1004回は、

タイトル:ひよ恋(1~7巻:以下続刊)
著者:雪丸もえ
出版社:集英社 りぼんマスコットコミックス(初版:'10~)

であります。

りぼんなんてホント何年ぶりでしょうねぇ、買うの。
昔はマーガレットでもフラワーでもりぼんでもなかよしでも何でも読んでたけど、いつ頃からか花ゆめ一辺倒になって、手を出さなくなったんだよね。

そんな中、本書の場合はまさに帯買い(笑)
本屋で平積みされていたのを一気に大人買い。暇つぶしににはなるかなぁ、程度の軽~い感覚で買ったものだけど……。

ストーリーは、

『西山ひより、15歳。入学式前日に事故で入院して、12月になってようやくクラスに復帰したものの……。
超がつくほど人見知りなひよりは、自己紹介すらままならない有り様。
それでも意を決して自己紹介をしようとした矢先、それを遅刻してきた男子生徒に遮られてしまう。
しかもでかい。140センチしかないひよりに比べて、男子生徒――広瀬結心ゆうしんの身長は190センチ。その差は50センチ。

出会いからしていい印象はなかったのに、結心とは席が隣同士。
平穏無事に過ごしていきたいのに、結心と並ぶと背の低さは際立つわ、結心は結心でクラスの人気者で人は集まってくるわで心休まる時がない。
性格も身長もまるっきり正反対なひよりと結心。

けれど結心のおかげで、復帰1日目からクラスメイトに名前は覚えてもらったりと悪いことばかりではなかった。
最初は騒がしくて失礼な人だと思っていたけれど――

翌日――結心とともに日直になったひより。でも結心は相変わらず授業中は爆睡中。
仕方なしに日直の仕事をひとりでこなそうとして、黒板を消そうとしたひよりは、とある恥ずかしいアクシデントに見舞われ、耐えきれなくなって教室を飛び出していってしまう。
それを追いかけてきたクラスメイトたちの中から、ひよりを見つけたのは結心。
結心の説得でようやく持ち直したひよりは、そのまま結心が提案した雪の積もる校庭へ。

クラスメイトたちと一緒になって授業をサボって雪遊びに興じるひより――最初はいい印象はなかったけれど、結心のおかげで笑顔を取り戻すことができていた。
自分とはまるで正反対な結心――その優しさに触れてひよりは結心を好きになって……』

注:以下、書評と言うより感想です。あしからず。

いやぁ、りぼんらしい、とてもかわいらしいお話ですね、はい(笑)
上記あらすじは概ね第1話だけだけど、この後、結心発案のクリスマスパーティ――実はひよりの歓迎会があったり、当面のライバルである富永妃が出てきたりとストーリーは進んでいくんだけど、ストーリー同様、キャラもいい子ばかりで和むこと和むこと(笑)
まぁ、掲載誌がりぼんなのでドロドロとはまったく無縁。
当面のライバルの妃とも衝突したりしないし、妃のイギリス行きが決まったあとも結心と妃のために協力したりと、何かとひよりは頑張っていく。

もっとも、極度の人見知りで内向的なひよりが、逃げ出してしまいそうな自分を小さな勇気を振り絞って行動する姿は、とてもかわいらしいので、まぁいいでしょう(笑)
と言うか、この作品の魅力は確実にひよりのかわいらしさにあると言っても過言ではないでしょう。
140センチという小学生並みの身長(高2になって142センチになるけど、結心も192センチになるので身長差は変わらず)、内向的だけどここぞと言うときに見せる小さな勇気など、逆にじれったさにイラっとする方もいるとは思うけど、概ね応援してあげたくなるかわいらしさでしょう。

他のキャラもだいたいいい子ばかり。
クラスメイトは基本、結心が好きなひよりに好意的だし、2年生になって出てくるキャラで若干意地悪なタイプがいるけれど、これも毒になるようなレベルではないし、学年が上がってもクラスメイトは仲良しばかり。
まったくあり得ないくらいのクラスの仲良しさ加減。まぁ、そこは結心の人徳と言うことで納得してもらいましょう(笑)

それにしても……まさか6巻でひよりが告って、結心がそれに応える、と言う流れはまったく予想だにしなかったなぁ。
ひよりのことだから、まだぐずぐずと悩んだり落ち込んだり、そのたびに浮上して――と言う流れが当分続いて、告白すらおぼつかない状況が続くんだと思っていたから、これにはびっくり。
ついでにバレンタインでも本命と思しき相手からはチョコを受け取らない結心がひよりと付き合うことにしたのにもびっくり。
まぁ、何かとひよりに気をかけてくれていたとはいえ、結心とこんなにも早くくっつくとは思わなかった。
結心が応える流れに説得力に欠けるきらいはあるのが残念とはいえ、付き合いだしたふたりが今後どうなるのかは気になるところ。

と言うわけで、総評に移るとして、良品としておきましょうか。
りぼんらしいかわいい作品だし、ドロドロしたところがないので、重い話などを読んだあとの一服の清涼剤には適した作品でしょう。
え? 評価が甘い?
だってひよりがちっこくてかわいいんだもの(笑) ちっこくてかわいいものが大好きな私なので、許してやってください(笑)


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これもアニメから入りました

2012-04-01 15:23:02 | ファンタジー(現世界)
さて、ややこしいのを読んだ後のラノベって和みますねぇの第1003回は、

タイトル:れでぃ×ばと(Ladies versus Butlers!)
著者:上月司
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'06)

であります。

上月司って読んでいますね(相方が(笑))
でもたぶん、と言うか、確か――私も読んだ気がします。
やっぱりブランクの長さはいかんともしがたく、目録見るまでこの人の作品を読んだと言う記憶がまったくありませんでした(爆)

さて、そんな著者の新シリーズですが、作品はアニメから知りました。
Amazonってどういう選考基準でオススメを決めるのかわかりませんが、しつこく薦めてくるのでレンタル(をい(笑))で見て、原作を読みました。

では、ストーリーはと言うと、

『日野秋晴は困っていた。この体勢はかなりまずかった。不慮の事故とは言え、体勢は女生徒を押し倒している構図で、片手はボリューム感満点の胸の上。
このままではいけない。そうは思うものの身体が固まって動いてくれない。
そして女生徒がそのことに気付いた瞬間――地獄の鬼ごっこは始まった。

時は少し遡って私立白麗陵学院正門。そこで秋晴は迎えを待っていた。
生粋の金持ちお嬢様ばかりが通う元女子校の白麗陵。共学化に伴い新設された従育科――執事やメイドを育成する学科に編入してきたのだ。
やや遅ればせながらやってきた迎え。編入試験のときにも見た事務員と、ひとりの女生徒。
その女生徒は秋晴を見るなり驚いて絶句して――秋晴を連れて事務員から離れていく。何故か見覚えのあるような気がする女生徒――彩京朋美は、昔のことをあれこれ言いふらすなと釘を刺す。

そのことで幼いころから数々のトラウマを植え込まれた朋美のことを思い出す。あれこれと昔のことがフラッシュバックしたり、何故こんなお嬢様学校に通っているのか、など考えつつも、お互い昔のことは口にしないことで交渉成立。
朋美の案内で学院を案内されることになったのだが、途中、朋美がトラブル解決のために呼び出されてしまう。
とは言え、約束の四時までに職員室に顔を出せばいい秋晴は、ひとりで学院内を見て回ることにしたのだが、それが災難の始まりだった。

不良っぽい見た目に眉の古傷、右耳には安全ピンの三連ピアスと、どう見てもヤンキーな秋晴がぶらぶらと散策していると不意に呼び止められた。
呼び止めたのは、どう見ても外国産、特徴的な金髪縦ロールの美少女。だが、その縦ロールは秋晴を見るなり、その姿形から不審者扱いをしてくる。しかも秋晴の言葉など聞く耳持たずで。
付き合っていられない――軽くいなして、ついでに見事な縦ロールをドリル扱いして、その場を去ろうとした秋晴に美少女――セルニア=伊織=フレイムハートは、プライドを傷つけられて怒り心頭、秋晴に襲いかかってきた。

なかなか鋭い攻撃を躱しはしたものの、体勢を崩したセルニアと秋晴はもつれ合うようにして転がり……件のセルニアを秋晴が押し倒す、と言う構図に相成ったわけだった。』

うむ、「乃木坂春香の秘密」に似た匂いがぷんぷんします(笑)
短編連作という形式や基本秋晴の一人称で進む体裁、お嬢様属性のキャラたち、従育科のメイドたち……かぶるところはそれなりにあるので、似た雰囲気に見えてしまうのは仕方ないでしょう。
まぁ、不幸体質の秋晴と「乃木坂春香の秘密」の裕人とはキャラは違いますし、裕人の語るうざったい比喩表現がないので、こちらのほうが遙かに読みやすいんですが。

さておき、現在12巻まで出ている本書ですが、第1巻の内容は、各種紹介と言ったところでしょうか。
白麗陵に編入して再会した腹黒幼馴染みの朋美、イギリス貴族の血を引くプライドが高くて思い込みの激しい金髪ドリルのセルニア、とある事情で男装して従育科に通う大地薫、天然系超絶ドジっ子の四季鏡早苗と言ったヒロインなどのキャラ紹介に、舞台となる白麗陵の紹介、どこが執事やメイドを育てるんだと言わんばかりの従育科の授業内容とそれを取り仕切る教師長の深閑、数少ない同じ従育科の男子生徒などの脇キャラの紹介などなど。
シリーズとして続けるに当たっての基本事項が第1巻では語られることになります。

ストーリーは……まぁ、バカっぽいです(笑)
と言うか、過剰なくらいおバカです。
基本線は、秋晴が各ヒロインたちが巻き起こす災難に巻き込まれると言うもので、その災難がまずあり得ないくらいバカなネタで進んでいきます。
朋美と大地は比較的常識派なので、朋美が絡むと秋晴のトラウマが刺激されはするものの、そう大きなことになりませんが、他のキャラ――特にセルニアや四季鏡が絡むととんでもないバカっぷりが発揮されます。
ここまで来ると、いっそ気持ちいいくらいです。
キャラもそれに見合った個性の突き抜けたキャラが多く、常識と言う言葉を遙か彼方へ飛ばしてくれるバカさ加減に花を添えてくれます。
文章は……ラノベだからあえては語りますまい……。いろいろ突っ込みたいところはあるけれど、ラノベだからと寛容になるのが吉でしょう。

いちおう、作品紹介には「ちょっぴりえっちなハイソ系禁断(!?)ラブコメディ」とありますが、1巻からはラブコメっぽい要素はほとんど見受けられません。
まぁ、いちおう12巻まで読んでいるので、おいおいラブコメにはなっていきますが、1巻だけ見ればどこがだ? と疑問には思います。
「ちょっぴりえっち」という部分は、まぁ、それなりです。どこかの駄作のようにヤってるシーンがあるようなことはなく、かわいらしい程度のエロさ加減です。
そういう方面を期待するとやや肩透かしを食らうような気はしないでもありませんが、「ちょっぴり」に偽りはないので文句は言えません。
と言うか、あとがきでエロコメと担当に言われて認知されつつあると書いてありますが、そこまでエロいかなぁ、この作品。
ホントにかわいらしい程度ですよ?

で、総評ですが、ラノベ点も加えて良品をあげてもいいのではないでしょうか。
話の流れも悪くないし、テンポもいい。何も考えずに単純に楽しめる軽い作品で、短編連作と言うことで読みやすさもある。
1巻だけ見ると紹介が主で物足りない部分はありますが、2巻以降、基本路線は維持しつつも、朋美、セルニアと言ったメインヒロイン以外のサブヒロインとのエピソードも絡めてラブコメは進展していきます。
キャラものとしても、個性の際立つキャラが多いし、各キャラとも立っていますのでお気に入りのキャラも見つかるでしょう。

そういうわけで、12巻までとりあえず楽しく読ませてもらっているとところも含めて良品とします。
たったひとり相手のラブコメに14巻以上もかけている「乃木坂春香の秘密」とは違って、いろんなキャラとの絡みを交えつつ、完結の道筋をつけてくれているので、シリーズとして安心して手を出せるでしょう。


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