つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

作家はあの格好じゃないと駄目らしい

2005-10-31 20:02:01 | ミステリ
さて、大正ロマンだけどはいからさんではない第335回は、

タイトル:平井骸惚此中ニ有リ
著者:田代裕彦
文庫名:富士見ミステリー文庫

であります。

時は大正末期。
お調子者でうっかり者の帝大生、河上太一君は一大決心を致しました。
探偵小説家平井骸骨氏に弟子入りを頼み込むことにしたのです。

しかし、当の骸惚先生はつれない反応。
優しい奥様の手引きで居候することはできましたが、娘の涼様は出会いが最悪だったためか渋い顔。
書生というか、小間使いというか、当の小説の手ほどきも受けられぬまま、太一君は今日もお茶を入れておりました。

そんなある日、先生の友人が自殺したとの連絡が入ります。
通夜から戻ってきた先生は一言、これは自殺じゃない、とおっしゃいました。
事件の全貌を知りながら、そのまま自殺で済ませておこうとする先生に憤慨した太一君、弟子入りをかけて事件解決に乗り出しますが……。

非常に変わった文体で書かれた作品です。
一言で言えば、無声映画の弁士調ってとこでしょうか?
最初は引っかかりますが、慣れるとすらすら読めます。

文体を除くと、基本的には普通のキャラ小説です。
気むずかし屋に見えて妙なとこで優しい骸骨先生とか。
優しそうに見えて、鋭いツッコミで旦那をシメる奥様とか。
最初は反発してたのにコロリと落ちる上の娘、何の前フリもなく主人公を兄様と呼んでなつく下の娘、鼻っ柱の強い女編集者……等々。
王道全開ですね。(笑)

ただ、そういう王道なキャラクター達と作品の雰囲気が非常に合っているので、安心して読める作品だと思います。
謎解きとか、犯人当てとかには期待しないで、いわゆる『想像上の大正時代』を舞台にしたコメディ芝居を楽しんで下さい。
最初から最後までお約束で綺麗にまとめてくれます、上手い。

堅苦しいミステリが苦手な方にオススメ。
ライトノベルらしいライトノベルで当たりを引いたのは久々かも。

裏話

2005-10-30 17:25:30 | その他
さて、たまにはこういうのもいいよねの第334回は、

タイトル:ナースな言葉 こっそり教える看護の極意
著者:宮子あずさ
出版社:集英社文庫

であります。

極意……なんて書かれていると、なんやねんと言う感じではあるけれど、基本的には看護業界で使われるギョーカイ用語を中心に据えたエッセイ。

前に「サッカーの国際政治学」という、こちらも裏話が満載の本を読んだけど、こういうあるギョーカイの裏話ってのはおもしろいね。

特にこういうギョーカイ用語ってのは内輪だけで通じるものだから、そういうものとともに、と言うスタイルもいい。

著者は、10数年看護師を続け、いまは精神科病棟と緩和ケア病棟の看護師長をしているが、いままでのいろんな経験などから看護ギョーカイに関わることを忌憚なく書きつづっている。

とは言うものの、おもしろおかしい話ばかりではない。
国の政策で、いかに入院期間を短くするか、とか、看護婦・看護士から看護師に変わったことに代表される言葉の問題とか、「へぇ」って話もたくさんある。

特にそうだったんだと感心したのはやはり医療政策のことかなぁ。
そういう関係の職場にいればわかるんだろうけど、あいにくいままでそういう方面に関わったことがなかったので、意外と病院ってのは締め付け厳しいのね、ってのはよくわかった。

病院が貧乏ってのは、え? と思ったけど、医者はいい報酬もらってるんだろうけど、病院経営ってのはそうなのかも。
……いや、貧乏なんだろうなぁ。
県立病院で事務してる知り合いがいるけど、企業会計で独立採算だから人数少なくて超過勤務だらけらしいし。

気軽に読めそうな感じではあるけれど、ちょっとこういうギョーカイに向けられる色眼鏡ってのが変わるかもな本かなぁ。
オススメ……できるのかな。
こういうところは微妙かも(^^;

YES!!

2005-10-29 13:46:25 | 伝奇小説
さて、別段不吉ではないの第333回は、

タイトル:ヴァンパイヤー戦争8 ブドゥールの黒人王国
著者:笠井潔
出版社:講談社文庫

であります。

7巻で、長年の相棒ムラキたちとともにブドゥールを目指すことになった鴻三郎一行。
人跡未踏の秘境を目指す何とか探検隊……なんてことは、当たり前だが、ない(笑)

ストーリー上の展開は、前半がブドゥールに至るまでの道中。
トゥトゥインガ族の助けを借りつつ、ブドゥールに至る砂漠を渡るところがほとんどかな。
たいていは、戦闘とかで絶体絶命! なんてことがほとんどだけど、ここでは砂漠という敵とは呼べない自然が相手の絶体絶命。

いやぁ、もう戦ってナンボってのがあるので、こういうので大ピンチを作られるとおもしろいね(笑)

もっとも、ラストに殺すならいざ知らず、主人公たちにこんなところで死んでもらうわけにはいかないので、何とか砂漠を突破する。

突破して、ブドゥールの国に入ってからが後半。
政治を司る王と宗教を司る女王が統べるブドゥール。
長く二重統治が続いてきたこの国で、王位を簒奪したテグ・クゥという王が自らの王の正当性を証明するために、女王側の人間を妃に据えるための策略を展開する。

女王側のほうは当然、傍若無人な振る舞いを続けるテグ・クゥに、正統な王であることを認めさせるわけにはいかず、鴻三郎やムラキたちとともに、それを阻止しようとする。
紆余曲折の末、テグ・クゥ側と戦うことになってしまい、鴻三郎たちは槍や盾のみで武装した原始的な集団戦を行い、テグ・クゥを撃破、そしてケビゼ、ネクラーソフを倒す。

ざっと言えばこんな感じかなぁ。

今回の見どころは、単行本史上初の鴻三郎、フラレるっ!(爆)

……いや、いちばん印象に残ってるの、ここだもん(さらに爆)

ともあれ、この女王側のほうの一族はヴァンパイヤー一族に連なる一族。
ストーリー上、鴻三郎がとにかく惹かれてしまうのが、このヴァンパイヤー一族の女性で、ここは鴻三郎が持つ血や役割と言ったものが関係している。
ヴァンパイヤー一族の女性のほうも、そういった事情から鴻三郎にほぼ確実に好意を寄せる。
だから、ここでも女王側……つか、女王とか、その妹とか、惚れられるのだが、鴻三郎が狙っていた女王オンサは、自分の立場や妹との関係から、自制する。

挙げ句の果てには、テグ・クゥとの戦いのあとの、ケビゼ、ネクラーソフとの戦いの途中で命を落としてしまう。

まー、惚れられていたとは言え、結果的に拒絶されてしまったところは、う~む、このあたりでもういいよ、ってとこで、こういうのを持ってくるあたり、おぬしも悪よのぅ、と悪代官やってしまいそうだ(笑)

……にしても、いったいラミアはどうしたんだろうねぇ。
確か、本編で重要な存在であるはずのヴァーオゥを復活させる鍵であり、ヒロインのはずだと思ってたけど、6巻で出て以来、さっぱりだなぁ。
完結まであと3冊、どうすんだろ?

あーあ、いい雰囲気だったのに

2005-10-28 21:41:10 | ミステリ
さて、ミステリ……なのか? の第332回は、

タイトル:ささら さや
著者:加納朋子
出版社:幻冬舎文庫

であります。

8本の短編連作の話で、帯には「ゴーストになった夫が解く不思議で切ない八つの事件」とある。
この文句のとおり、初っぱなで結婚して、子供が生まれたばかりの夫婦……その夫が交通事故で呆気なく逝ってしまう。
けれど、この死んだ夫が幽霊となって事件を解決……と言うよりは、ちょっとした事件のようなものの解決の手助けをする、と言う感じかなぁ。
まぁ、確かに誘拐騒ぎなんて事件らしい事件もあることはあるけど。

さて、ゴーストになった夫、と言うのが実は主人公ではなく、まだ首の据わらない赤ん坊のユウスケと、たったふたりになってしまった妻のサヤのほうが主人公。

このサヤ、バカがつくくらいお人好しで気弱、最愛の夫が死んで、思い出しては泣いているようなキャラで、まずこういうキャラが嫌いなひとにはまず読めないと思う。
まー、私もこういうキャラは、「だーーーーっ!」と蹴飛ばしたくなるほうではあるんだけど、作品の雰囲気がよいのでさして気にはならなかった。

しかもストーリー上で登場し、サヤを助けてくれる老人3人組や引っ越し先で友達になったエリカと言う同年代の子持ちの女性のキャラのほうが強いから、たいていこういうタイプの主人公は埋もれてしまうんだけど、そこまで薄くはなっていない。

さておき、ストーリーは、夫が死んでから、そこへ夫の姉や両親が、赤ん坊のユウスケを義姉夫婦の養子にしたいと言い出す。
押しに弱いサヤは、このまま夫の両親や義姉夫婦に説得し続けられれば折れてしまいかねない。
そこで、佐々良と言う町に逃げるようにして引っ越していく。

そこで後に仲良くなる老人3人組やエリカとの出会い、そして小さな事件などを、幽霊である夫を見えるひとに1回だけ取り憑くことができる夫の手助けを受けながら解決していく。

ベースはユウスケを養子にしたい夫の両親と義姉のこと。
とにかく、ユウスケを養子にして跡目を継がせたいと言う気持ちから無茶なことをしでかしたりする。

そうしたことを幽霊である夫や老人3人組、エリカの励ましなどで乗り越えて、ようやく独り立ちするサヤが描かれている。

上にも書いたけど、作品の雰囲気はよい。
ミステリという言葉から受ける怖いとかそういう印象はまったくない。
けっこうほのぼのとした家族ドラマ、と言う感じで、老人3人組、エリカやその息子のダイヤと言ったサブキャラもいい味を出している。

幽霊である夫が他人の身体を借りて登場するときに表現される「ささら さや」という表現も、語感から受ける印象がとてもいい。
また、夫がサヤを呼ぶときの「馬鹿っサヤ」という台詞も、文章だと言うのにとても愛情がこもっているように聞こえるくらい。

文章も引っかかりもなくすらすら読めるし、読んでいて優しさを感じるほど。
これはかなり久しぶりだと思う。
話そのもののほのぼのとした印象ととてもよく合っている。

かなりの高得点……と言いたいところだけど、さすがにいいところばかりではない。

まず、ラスト。
ようやくユウスケを養子にするためにあの手この手で迫ってくる夫の両親や義姉と対決する決意を固めるサヤのシーンがあるんだけど、ここが唐突。
確かに、それまでにいろいろとあるのはあるけど、もう1話、2話、そういう変化をじっくりと描いてほしかった。
そうすれば、作品の雰囲気に合った展開になったのでは、と思う。

あと、最初と最後の話は夫の一人称になっているんだけど、最初はいい。
でも、最後にどうも説明っぽい夫の一人称での語りは、それまでの作品の雰囲気や流れから乖離していて、違和感がかなりある。

このラストの2点で、すべて、とまではいかないにしても、かなり評価が下がる。
ただ、それまではいい雰囲気だったし、読みやすかったし、おもしろかったので、辛うじて及第点、か。
ラストがよけれあ90点以上はつけられたのに、とかなり惜しい作品。

初めてなのね~

2005-10-27 19:15:55 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、続きを早速取り上げたのはお初の第331回は、

タイトル:ボクを包む月の光 -ぼく地球 次世代編- 第1巻(以下続刊)
著者:日渡早紀
出版社:白泉社花とゆめコミックス

であります。

鈴:最近大学生もどきやってるLINNで~す。

扇:ほお~、遂にロリコンに走ったかたと突っ込むSENでーす。

鈴:18歳相手にしてロリコンとは言えんぞ。

扇:貴様の歳なら立派にロリコンじゃわい。

鈴:なに、私よりふたつ年上で、高校生と付き合っていたヤツを知ってるし、何より、相棒、おまえも一緒だ(笑)

扇:まぁ、某友人は九歳下と結婚したしなぁ。
ちなみに私は二十歳と×××ヶ月だ、君とは違う。

鈴:30と21ならまだいいが、25と14なら立派なロリコンだよなぁ。
それにしても、その×3つ、漢数字は認められんぞ。

扇:数字は算用数字だけとは限らないぜ、相棒。

鈴:じゃぁ、アラビア数字(笑)

扇:だから、それは算用数字の原形だってば。
数字のお勉強はやめて、真面目な話に戻ろう。
こんな低俗な会話は私の性には合わん。

鈴:合う合わん以前に、なんでロリコンからここまで話が飛ぶんだ?(笑)

扇:まぁ、君がロリコンってことはよく解った。

鈴:いや、別に私はハートマークつけた赤いロボットではないんだが……。

扇:がんばれ、って言ってやろうか?

鈴:いや、言わなくていい。年齢がばれるから(爆)
……さて、いつもの掛け合いはこの辺りにしとかんときりがないので、作品紹介でございます。
先々週の木曜劇場に出てきた「ぼくの地球を守って」の続編であります。
まだ1巻しか出てないレアな本で、前作の主人公ふたりの子供が主人公のお話。

扇:つか日渡さん、絵崩れ過ぎ
ついでに言うと、輪のキャラ、モロに前作の迅八と被ってるし。
最低続編賞を差し上げてもいいかも知れない、前が良かったとは言えないけど。

鈴:ホント、危険な発言をするなって私が言うぞ。
ったく、そう言ってやるな。
そりゃまぁな、私だって、1話で出てきたありす見た瞬間に、誰だよ、おまえって思ったけど(爆)

扇:どっちかと言うと槐に近い顔してるな。
そうかっ、これは玉蘭と槐の話なんだなっ!(笑)

鈴:ちゃうって。
……ったく、ほっといてキャラ紹介始めよう。
本編の主人公の小林蓮。前作の主人公ふたりのありす、輪の息子。
最初に思ったのが、どうしてあのふたりの子供で、これほど天然突き抜けたキャラになるのかってこと。
ありすもいい加減、天然ではあったが、ここまで突き抜けてなかった気はする。

扇:そりゃ単に作者の趣味だろ。
表紙見た時は女の子にしか見えなかった子。
輪譲りの能力を持つサイキック小学生、おまけにどっかの死霊に取り憑かれている。(笑)
今のままだと物凄いファザコンに育つ線が濃厚。
さらに、じきに額にチャクラが現れることも濃厚。

鈴:私には少年に見えたがな。
って、濃厚2段階で行ってるな。チャクラの線は否定しないが(笑)
では次に日路子でカチコと読む未来路の娘。
……えーっと、親父並の超能力を持つ以外は、その辺の少年少女マンガにそこかしこに出てくるちょっと我の強い=寂しさを表に出せない女の子。

扇:親父出た途端に消えたしなぁ……。
飽くまで未来路を描きたかっただけなんじゃないかと邪推してしまう。
未来路の顔も性格もノリノリで描いてるし、主人公は別の友達ゲットするし。

鈴:まー、紫苑とか木蓮とか、おまえら転生したんじゃんかったのか!? って連中も出てくるわけだし、作者もさしてその辺、気にしてはおらんのだろ。
所詮、前作が好きだったファンへの訴求力を狙ってるんだし、まー、懐かしいしなぁ。

扇:危険な発言をするなっ! 本日二回目(笑)
前作読んでないと話がさっぱり見えないだとか、前作読んでてもキャラの性格変わってんじゃねーかとか、何お前ら和気藹々と今でもお友達やってるんだ人生舐めんなとか……ファンの神経を逆撫でするようなことは口が裂けても言ってはならんぞっ!

鈴:言ってんじゃねぇかよっ!
まぁ、そういう毒は吐かない私には関係のないことではあるがね。
さて、これ以上やらかすと、ほんとうにとんでもないことをやらかしそうな気が、相棒にはしそうなので先に逃げようっと。

扇:吐いてんじゃねぇかよっ!
とんでもないって……もう手遅れだろ。
てなわけで唐突に終わります、皆さんさようなら~。

鈴:手遅れか……。
なら、こそこそと退散しよ~っと。ヘ(-.-ヘ;) コソコソ・・・

猫に誘われて

2005-10-26 18:52:36 | 小説全般
さて、久々に魔が刺した第330回は、

タイトル:予知夢を見る猫
著者:木村初
文庫名:ソノラマ文庫

であります。

表紙の猫の絵に惑わされて買いました。
いや、一応裏の粗筋も読んでは見たんですけどね。
98%ぐらい猫です……ああ、可愛い。

ネット・バーに入り浸り、ウェブマネーを使った賭け事に興ずる主人公。
ある日彼は、流れる映像を記憶してクイズに答えるというギャンブルサイトを発見する、エントリー代は高いものの全問正解すればそれなりに実入りがある。
奇妙な事態が発生したのはその後だった、流されていた映像と現実が一致したのだ……しかもそれは一度では終わらなかった。

これは予言なのか?
何のためにこのサイトはあるのか?
謎を秘めたまま、今日も映像が流れる……。

恐怖新聞?

力説しますが、この本のメインは表紙の猫です。
中の文章とストーリーはオマケに付いている包み紙ぐらいに思って下さい。

『ウェブミステリー~予知夢ヲ見ル猫』というゲームの原案になったシナリオを小説化したもの……だそうです。
もっともこれ読む限り、

クソゲーに違いない

ミステリ……どこが?
ネットを小道具にしたSF……だとしたら舐めてます。
カテゴリー分けする時、雑記に入れてやろうかとマジで考えました。

とにかくひどい

怖いモノ見たさで読む人以外は手にとってはいけません。
いっそ、駄作ってカテゴリ作ってやろうか……。

未来が見える?

2005-10-25 18:56:25 | 小説全般
さて、再び乙一な第329回は、

タイトル:さみしさの周波数
著者:乙一
文庫名:角川スニーカー

であります。

お馴染み(私だけか?)、乙一の短編集です。
色々なカラーを使い分ける方ですが、果たして今回は?
例によって一つずつ感想を書いていきます。

『未来予報 あした、晴れればいい』……さほど親しくはないが、家が近いことで何となく関わりがあった少女。偶然知り合った同級生に「お前ら、いつか結婚するぜ」と予言されてから、主人公と彼女はぎくしゃくし始める――。『Calling You』と同じく、綺麗だけどオチが簡単に読めるのでイマイチ乗れなかった作品。単純に好みが合わないのだろう。あと、一人称の小説すべてに言えることかも知れないが、主人公の心情に説得力がないと読んでて疑問符が付いてしまう。特にラストに至るまでの納得の仕方はかなり不自然だった。

『手を握る泥棒の物語』……魔が刺して旅館の壁に小さな穴を開け、金品を盗み出そうとした主人公。しかし、彼の掴んだ物は――。犯罪を犯そうとしたものの、悪人になりきれない主人公がなかなか可愛い。緊張感があるんだかないんだかよく解らないメイン二人の会話も楽しく、コメディとしては良品。読了後、超有名な某古典映画を思い出したが、激しくネタバレになるので割愛。ところで、子供の頃の思い出の品ってみんなずっと持っているものなのだろうか? 私はとうに無くしてしまった(薄情とも言う)。

『フィルムの中の少女』……主人公が映研の部室で見つけた古いフィルム。そこに映っていたのは――。主人公の語り口調だけで書かれた短編。ホラーの手法としては王道だが、実はこれ、ホラーじゃなかったりする。一人で全部説明して、一人で勝手に納得して、一人でオチまで付けてしまう作品というのはかなり書くのが難しいと思うのだが、にしてもラストはやっぱり強引すぎる気がする。

『失はれた物語』……一押し。敢えて粗筋は書かない。異常状況における心境の変化を描くのは乙一の真骨頂だが、それが如実に表れた作品。自分だったら? と考えてしまうのは私だけではないはず。そして逆の立場だったら?

見事に評価が二つに割れましたが、一応オススメ……かな。
乙一作品では今のところ、――。『きみにしか聞こえない』収録の『華歌』が首位独走ですが、他読んだら評価変わるかも。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『乙一』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ

戦うだけじゃなーい

2005-10-24 23:53:53 | 時代劇・歴史物
さて、某ゲームで武将を覚えた人は多いと思う第328回は、

タイトル:戦国武将伝
著者:白石一郎
出版社:文春文庫

であります。

猿をトップバッターに、半兵衛と官兵衛、タヌキと第六天魔王、三本の矢の人、小西のゆっき~、お市さんの二番目の旦那、真田の一番人気男、天草四郎君等々、戦国~江戸の時代を駆け抜けた有名人達の表話・裏話を集めた歴史エッセイ。

内容的には普通……といった感じ、程よく軽いし。
特にとんがった所もなかったような気がします。
日本史苦手な私にはこのぐらいが丁度いいかも。

資料として使うのではなく、軽く流して読むのが吉。
割とマイナーな方々の話も載っているので新たな発見がある、かも。
不勉強な私は、関ヶ原以降、真田のボンが親父と一緒に腐ってたこと初めて知りました……夏の陣のアレはやはり、武士道とは死ぬことと見つけたり~、だったのか。

あ、もいっこ発見が。
世代がちょっとズレてるので知らなかったのですが、岩見重太郎って少年講談のスーパーヒーローだったんですね。
私はずっと、白土三平『忍者武芸帖』のオリジナルキャラだと思ってました……まぁ、実在自体疑われてる人らしいですけど。

一人につき、十五頁ぐらいなので、区切って読むのが非常に楽。
ディープな歴史マニアの方は物足りないかも知れないけど、文章も読みやすいのでオススメ付けときます。

そろそろきつくなってきた

2005-10-23 16:24:53 | 伝奇小説
さて、第327回は、

タイトル:ヴァンパイヤー戦争7 蛮族トゥトゥインガ族の逆襲
著者:笠井潔
出版社:講談社文庫

であります。

ようやく7巻……。
あと4冊で終わり~。

さて、アフリカ編の2冊目。
主人公の鴻三郎、そしてムラキはそれぞれ目的は違うものの、アフリカのブダーという国へ潜入する。

未だ部族単位での慣習が残る国で独裁を貫く大統領のケビゼ。
そうした大統領の反対派と協力して、ケビゼを倒すとともに、ムラキは敵であるネクラーソフというロシア人を狙う。
自分の問題だからと言うことで鴻三郎の協力を拒否するムラキだが、様々な事情が絡み合い、ともにケビゼを暗殺するために王宮へと向かう。

これが前半。

後半は反対派に負けて、ケビゼ、ネクラーソフはアフリカのヴァンパイヤー一族がいるブドゥールへ向かう。
ここで月のマジックミラーの関係でCIAも同様にブドゥールへ。
鴻三郎たちも一路ブドゥールを目指すが、ここでCIAとの戦いがある。
絶体絶命のピンチも相変わらずで、前半では王宮での戦い、後半はこのCIAとの戦いが、戦闘シーンの見せ場だろう。

以上。

……いや、まぁ……(^^;

最近、この作品のレビュー書くのがかなーりめんどくさいんだよね。
ホント、そのまんま少年マンガ的なノリと展開だから、こう進むんだよ、って書いたらそれ以上書きようがないし(爆)

……いや、ホントにおもしろいと思ってんのか? って言う突っ込みはなしよん。
ほら、少年マンガってけっこう読んで、笑って、あーおもしろかった、で2回目はまず読む気にならないのと一緒で、とりあえずは読めるので(^^;

これからってときに

2005-10-22 16:40:22 | マンガ(少年漫画)
さて、これ読んでるとやりたくなるんだよなぁの第326回は、

タイトル:キング・オブ・ザ・ハスラー(第1集~第4集)
著者:谷津太朗
出版社:講談社KCスペシャル

であります。

タイトルどおり、ビリヤードを題材にしたマンガ。

あるビリヤード場で賭け試合をしていた若きハスラー、的場ヒロ。
1セットでも取れば10万、と言う自信に違わず、常勝無敗で通っていたヒロは、あるおっさんと試合をすることになる。
順調にカラーボールを落としていく中、大げさなくしゃみをされてプレイヤーチェンジ。
配置はいきなりナインボールを落とされることはないだろうと思っていたのに、あっさりと落とされてしまう。

わざとらしいくしゃみでプレイヤーチェンジ、そして負け。
そんなので負けてしまって、当然ヒロは再戦を望む。……のだが、あっさりと断られてしまう。
勝負がしたいならと言ってそのおっさんが取り出したのは、ラスベガスマッチと呼ばれるナインボールの世界大会の日本代表決定トーナメントの出場招待通知。

このおっさん、実はこの世界大会のチャンピオンの岡部雄志。
当然、このおっさんに負けっ放しでは気のすまないヒロはトーナメント出場を承諾。

そして日本代表決定トーナメント。
まぁ、ストーリー上、ヒロが負けるわけにはいかないので、優勝して世界大会。
ここもやはりストーリー上、負けるわけにはいかないので、優勝して世界チャンピオンに。

このあたりのストーリーは、こういうマンガだから仕方がないとして、何がいいって、とんでもない必殺技がないことがよかった。
確かに、そりゃちょい無理だろ、ってとこはあるけど、斜めに飛んでいくジャンプボールとか、派手にコールする審判とかは出てこない(笑)

それから、ビリヤードマンガと言えばナインボール。
と言うパターンを崩して、アーティスティックビリヤードに話を持っていったところがよかった。
ポケットのない台で、決められた配置のボールを、決められたとおりに当てたりして、その難易度で得点が決まる競技なんだけど、まー、やっぱりナインボールに較べて、地味

いや、見てるぶんにはアーティスティックってすごいから好きなんだけどね。

でも、だからだろうけど、これ、第4集でおしまい。
アーティスティックの大会に出ているところで、かなーりいいとこで終わっている。
……復刻してくれ。
つか、復刻しなくていいから続きを読ませてくれ(笑)

いや、かなりマジで(笑)