つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ティーガーかタイガーか?

2005-09-13 11:16:07 | 時代劇・歴史物
さて、別にミリタリー・マニアってわけじゃないけど第287回は、

タイトル:独ソ大戦車戦―クルスク・史上最大の激突
著者:G・ジュークス
文庫名:光人社NF文庫

であります。

クルスクという町がある。
1943年、ドイツとソ連はこの町を巡って激しい攻防を繰り広げた。
両軍合わせて415万強の兵力が激突した未曾有の戦いの結末は……。

ナポレオンもヒトラーも冬将軍に負けたものだと思ってました。(無知)
どうもドイツ対ソ連というと、スターリングラード攻防戦の印象が強いのですが、このクルスクの戦いはその後、なおも東部戦線を維持しようとするドイツとウクライナの首都キエフまでの版図を取り戻そうするソ連の激突です。

スターリングラード奪回後、追撃を続けるソ連は途中でドイツの反撃を喰らい、やむなく後退することになりました。
この際、一部の土地を保持しておいたのですが、それは当然のごとくドイツの占領地に挟まれていました。
「<」こんな形で、尖った先っちょがクルスクです。

次の戦いの争点は明らかでした。
ドイツ側は総攻撃のために戦力を集中させ、ソ連側は防備を固める、しかし上層部からの会戦命令はなかなか来ません。
ヒトラーはアフリカ、イタリア方面が気になって、なかなか全面対決に踏み切れなかったのです。

んで、タイトルの通り戦車戦がメインになるのだけど、これに関してもドイツ側には不安材料がありました。
戦車は男の子のロマンの一つですが、ドイツな方々も三つ子の魂百までの感覚が抜けきれなかったのです。
ロシアの戦車T34が結構強かったのに対抗して、ティーガーI型という戦車を作ったはいいが、そっちの生産を増やすために今までの標準機のラインを止め、生産力が一気に低下してしまいました、おいおい。

現場からすれば、旧型でいいから数を増やして欲しいところ。
やって来る新型は確かに強いんだけど、部品は現行機のものが使えない。
逆にロシアはT34の生産に専念し、月産千台ぐらい作る。
この時点で既に勝負が見えてます……。
(ちなみに、ティーガーIは確かに強力だったけど構造的な欠陥があったらしいです、装甲が平面なので弾を弾きにくいとか)

でも、両軍にとって最大の敵はしょっちゅう口を挟むお偉方(ヒトラーとスターリン)だったかも知れません。
特に、いったん手に入れた土地を放棄し、後方で戦力回復に努めるなんてことを上申すると大抵怒られます。
なんか現代にも適用できそうな話です。

とにかく町の名前が沢山出てくるので、地図を片手に読み進めていくことを苦にしない方にオススメ。
戦争の狂気がいかに人間の判断力を狂わせるのかがよく解ります。