つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

階段の先には……

2006-02-28 21:26:14 | ミステリ
さて、映画は見てないけどプロットが気になった第455回は、

タイトル:13階段
著者:高野和明
文庫名:講談社文庫

であります。

映画『13階段』の原作です。
映画の公式サイトに、満場一致で第47回江戸川乱歩賞に選ばれた作品の映画化、とあったので拾ってみました。

樹原亮は、独居房の中で死神の足音を聞いていた。
事件前後の記憶を失っている彼は、わけもわからないまま死刑の恐怖に怯えている。
しかし光明はあった、僅かながら記憶が蘇ったのだ――今と同じように死の恐怖に駆られながら階段を上る記憶が。

傷害致死で懲役二年の実刑判決を受けた青年、三上純一。
仮釈放後、彼は刑務官の南郷正二に、ある仕事を依頼される。
南郷とコンビを組み、死刑囚の冤罪を晴らす――それが、仕事の内容だった。

高額な報酬、弁護士を代理人として姿を見せない依頼人、十年前に純一が家で補導された時に起こった殺人事件――。
不審な点はいくつもあったが、純一は遺族への賠償金、そして、冤罪の死刑囚を救った男という肩書が欲しかった。
そして、二人の過去への旅が始まった。

乱歩賞の名に恥じぬ、堂々たる長編です。
二人の主人公の設定、心理描写が巧みで、序盤から一気に引き込まれました。
ちょっとした会話にも互いの過去がきっちり反映されており、非常に味わい深い物語になっています。

最初に目を引くのは、刑法とその背後にあるものの描写。
請願作業、遵守事項、身分帳、検面調書、連絡カード、死刑執行起案書……専門用語の嵐が吹き荒れ、ノンストップで法の世界の内幕を見せていきます。
単なる知識の羅列ではなく、法を扱う人々の微妙な心理、それぞれの立場の違い、主人公の個人的な感想など、様々な方向から描いているのは好感度高し。

殺人の償いとして、別の誰かの命を救おうとする青年、純一。
社会復帰しても周囲の眼は冷たく、また遺族への保証が家計を逼迫しており、家族には暗い影がつきまといます。
それでも、彼は自分が罪を犯したという事実をどうしても認めることができません。なぜなら――。(以下削除)

一方、刑務官の南郷は死刑に携わった者としてジレンマを抱えています。
正義の名の下に、死刑という名の殺人を犯すことの後ろめたさ……そして、罪を認めずに死んでいく者、認めて死を受け入れる者の存在。
死刑容認、死刑反対、二つの主義の間で揺れ動きつつ、最終的に刑務官をやめることを選んだ、非常に奥の深いキャラクターです。

一度終わったことになっている事件を掘り起こすことの難しさ、憎むべき相手を救おうとする行為に対する遺族の反感、道は楽ではありません。
それでも、死刑に疑問を感じる検事の助けを受けて、二人は少しずつ核心へと近づいていきます。
刻一刻と迫るタイムリミット、遂に辿り着いた場所にあった意外な物、そして怒濤のクライマックス――上手い!

ただ……ミステリとして読むと粗が目立ちます。
真犯人について、ラストで『実はこういう過去があったんだよ』という二時間ドラマ的手法で一気にまとめちゃってるのも引っかかるのですが、何と言っても――
(以下、ネタバレなので反転)
何の予備知識も持たない佐村某が、警察も見つけられなかった証拠をあっさり発見してたってのはいかがなものかと。

最後まで一気に読ませてくれる水準の高い作品です、オススメ。
映画の方はどうしようかな……と悩み中、これを二時間にまとめるのはちょっと難しいんじゃないかと思うので。

魔界大作戦

2006-02-27 23:52:54 | ゲームブック
さて、結局450回記念はやらなかったなと思う第454回は、

タイトル:魔界の滅亡
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

ゲームブック『ドルアーガの塔』の最終巻。
四十一階から六十階までの冒険を描きます。
一巻についてはこちら、二巻についてはこちらを参照。

二人の友と別れ、再び孤独な旅を続ける勇者ギルガメス。
強敵ゴルルグを倒した喜びもつかの間、さらに塔の上部を目指す彼の顔に疲れはない。
ようやく、旅の終着地が見えてきたのだ……ブルークリスタルロッド、カイ、そして倒すべき悪魔ドルアーガのいる場所が。

というわけでドルアーガ三部作の最終巻です。
741分岐、500ページ強を誇る、堂々たる完結編。
500分岐、300ページちょっとの第一巻と比べると、その分厚さに圧倒されます。

前巻あとがきでも触れていたように、今回ギルを待ち受けるのは上下左右くまなく行き来できる立体迷路。
すべてのフロアを歩き回らない限り、ドルアーガの待つ五十九階に辿り着くことはできません……しかも全部のフロアのマップが書ける。(笑)

各階は謎解きのオンパレード。
算数の問題が出たり、『倉庫番』ごっこをやったり、暗号解読を頼まれたり、とパズルマニアにはたまりません。
全部解く必要はありませんが、解けないとかなり辛いことに……幸い、時間制限はないのでじっくり考えましょう。

ただ、謎解き要素が濃くなった分、道中のドラマは薄くなっています。
前作のような、サブキャラとの掛け合いで進む大冒険を期待すると肩すかしを食らうので注意。
ラスト近くはかなり盛り上がりますが……パズルも迷路も退屈、という方はそこに行くまでが結構辛いかも。

ちなみに、スポット的なイベントは過去最多。
登場キャラがとにかく多く、顔ぶれも多彩。(もちろん、例の二人も出ます)
前巻、前々巻で得たアイテムが使えたり、思い出したように懐かしい敵が出たり、原作ゲームにあったシーンが再現されていたりと、遊び心満載です。

エンディングにも少し触れておきましょう。
本作のエンディングは二種類用意されていますが、正統(?)ではないアナザーエンディングの『七一八』が実に美しい。
当のギルやカイにとってみれば『七四一』の方が幸せなんだろうけど……実際プレイされた方、どちらがお好みですか?

一巻、二巻と続けて読んできた方にはかなりオススメ。
ただ……これ単独だとさすがに辛いかなと思います、前を読んでいないと出てくるキャラやアイテムがピンとこないと思うので。

小枝と言うとチョコレート、ではない

2006-02-26 21:44:11 | マンガ(少女漫画)
さて、なんか久々にマンガを扱うなぁの第453回は、

タイトル:オルスリートの銀の小枝(全4巻)
著者:紫堂恭子
出版社:角川書店 ASUKA COMICS DX

であります。

オルスリートという国は昔、魔術国ラバンサラと大国カラマスルートの若き王が絶え間なく勢力争いを繰り広げていた両国の間に、あるときは争いの壁として、あるときには対話の窓口として、平和のために両国の国境に建国したもの。

その建国の理念を受け継ぎ、両国のみならず、世界中に争いなどの問題を解決する「金枝の使者」を送り出してきたシルヴァン学院に学ぶアリアン、フェンネル、ヴィンセンスの3人は、学院長から直々に、ラバンサラのある姫君を学院までお連れする、と言う任務を与えられる。

学院を卒業した金枝ではなく、銀の枝を受け取り、一行は姫君を迎えに学院を旅立つ。
と言うのが1巻第1話のお話。

剣術などの運動は得意だが勉強のほうはからっきし、6人兄弟の末っ子で食事とは奪うものと言う環境で育ったために食い意地は金枝なみ、単純明朗な性格で他のふたりよりも年下のアリアン。
生真面目で努力家、とは言うものの何かとアリアンと口げんかをしているヴィンセンス。
強大な黒魔術ブラックアートの力を持つ家系に生まれた天才肌でいつににこにこ冷静沈着なフェンネル。

この凸凹3人組が、姫君のお迎え……と言っても300年前に殺され、幽霊はたまた霊魂になっていたロスマリン姫と出会ってから、黒魔術を操り、ひとびとに害を成す「仮面の王」との戦いに巻き込まれ、それを解決していくお話。

このひとの作品は、ギャグメインでシリアスな話を持っていくものと、シリアスな話の中だがふんだんにギャグを散りばめたものの系統があると勝手に思っているけれど、こちらは前者のほう。
そもそもアリアン自体がギャグ担当キャラで、しかも主人公だし(笑)

しかも最初の任務で出会ったロスマリン姫は、過去に仮面の王に操られていたこともあり、ストーリーの中でも重要な役割を果たすけれど、学院にいるとき以外は主にアリアンに乗り移って、アリアンを見た目は絶世の美少女へと変身させる。
2巻ではヴィンセンスに乗り移って、カラマスルートの王子に一目惚れされたりする。
もちろん、アリアン、ヴィンセンスと来ればフェンネルもそうだけど、フェンネルは仮面の王とのストーリー上なので、乗り移られたことでのコメディはない。
かなーり残念だけど(笑)

にしても、相変わらずこのひとのギャグセンスはおもしろい。
すんごいシリアスな話や場面でも、ものの見事に気を抜けさせてくれる。
もちろん、ストーリーは仮面の王の過去なども絡んで、ストーリー紹介をするだけなら、けっこうシリアスな話にはなるだろうけどね。

なんか久々に読んだけど、他の「辺境警備」とか、「癒しの葉」とかのシリーズも読み返したくなってきたなぁ。
奇を衒ったような奇抜なストーリー展開はないけれど、シリアスもギャグもふんだんに入っているし、ギャグ中心のものなので手軽に読むにはいいと思うよ。

でも、表紙絵の派手さに引かなければ、の話だけど(^^;



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始めよければ……?

2006-02-25 17:17:01 | ファンタジー(異世界)
さて、終わりのほうもあるけどどっち? の第452回は、

タイトル:狼と香辛料
著者:支倉凍砂
出版社:電撃文庫

であります。

行商人になって7年、25歳になったロレンスは、過去に行商の関係で親しくなった村で毎年のように行われている祭りに立ち会う。
その祭りは麦の豊作を祝うもので、豊穣の狼神を祝うものだったが、いまではまったく形骸化していた。

祭りは村人だけで行われるもの。
そのため、ロレンスは相棒の馬とともに荷馬車でその村を立ち去ることにする。
塩と交換に手に入れたテンの毛皮と、僅かばかりの麦とともに。

そうして日が落ち、野宿だと思いつつ荷馬車のテンの毛皮にもぐり込もうとしたロレンスは、なぜか毛皮の山の中に先客がいることに気付く。
なんだと思って見ると、10の半ばを過ぎたくらいの少女……ただし、茶色の耳と尻尾つき。
悪魔憑きとも思える姿をした少女は、賢狼ホロと名乗った。

彼女は、ロレンスが立ち寄った、祭りをしていた村で、祭られていたはずの狼神だった。
麦に宿るホロは、たまたま立ち寄ったロレンスが持っていた麦に宿り、村を抜け出してきたのだ。
ひょんなことから数百年は生きている狼神を拾ったロレンスは、ホロとともに旅をするようになる。

……最初の最初の掴みはかなりOKだった。
「この村では、見事に実った麦穂が風に揺られることを狼が走るという。」
まぁ、どこかに元ネタでもあるのかもしれないが、あいにくと私は知らないので、なかなかよい出だしだと思った。

だが、序盤を読むに連れて、ロレンスがホロと出会うところや、老獪な、けれど幼い子供を思わせる相反したキャラクターとして描かれるホロとロレンスのやりとりなど、まったくキャラクターと作品の雰囲気が合っていない。

自分のことを「わっち」、ロレンスを「ぬし」、語尾が「ありんす」など特徴的な言葉遣いをするホロと、若手の商人らしいロレンスのキャラクターはいいのだが、序盤はかなりキャラが浮いている状態。

中盤以降に入り、ストーリーが展開するに連れて、テンポはよくなり、読み応えは増してくるものの、出だしの掴みに較べて序盤がへぼへぼなので、悪くするとこの時点でやめたくなってくる。

ストーリーも、主人公が商人だけあって、帯の「剣と魔法の活躍しない」という言葉に嘘はない。
ただし、どうもこの作者、自分がわかって想像できていることをわかりやすく文章にする、と言うことが下手。
展開に破綻はないが、かなりの頻度で文章を読んで情景や場面がまったく想像できないことがある。

ときどき、と言うレベルならまだしも、かなりあるのでこれは致命的。
文章量はラノベにしてはけっこう充実していて、読み応えは保証できそうなのだが、流れと言う面ではかなり低い評価しか出来ない。

また、タイトルの「狼と香辛料」だが、ストーリーの終盤のほうで、「ほらよっ」という感じで投げ込まれたようにタイトルに絡むネタが登場し、これもいただけない。
なかなか興味をそそられるいいタイトルなのだが、ストーリー上での扱いのおかげで、別にこのタイトルでなくともかまわないのではないかと言う気になってくる。

中盤以降の読み応えはなかなかよいし、クライマックスやラストもなかなかのものなので、ぎりぎり及第点と言ったところだろうか。
とは言うものの、今後の精進次第では、かなりよい雰囲気を持った作品を期待できるのではないか、とは思う。



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よくわかる、解説っ!

2006-02-24 22:13:02 | ミステリ
さて、平成教育委員会風に言いましょうの第451回は、

タイトル:螺旋階段のアリス
著者:加納朋子
出版社:文春文庫

であります。

加納朋子8作目の短編連作。
基本は体のいい早期退職制度に乗って、大手企業のサラリーマンから憧れであった私立探偵に転身した仁木順平と、仁木が転職するときに部下が作ってくれたチラシを見て仁木の事務所を訪れ、助手となった市村安梨沙のふたりが依頼をこなしていく、というもの。

ただし、私立探偵と言っても、「○○殺人事件」とか、そういういかにもな事件性の強いものではなく、作中で仁木がときおり思うように、探偵ってのはこういうものじゃないのではないか、と言えるくらいの依頼。

各話については次のとおり。

「螺旋階段のアリス」
安梨沙が仁木の事務所を訪れ、助手として初めての依頼をこなす話。もちろん、仁木にとっても初めての依頼。
依頼はある主婦が亡き夫が自宅に隠した貸金庫の鍵を探してほしい、というもの。
いっさいの家事を依頼主の主婦に任せっきりだった夫の隠し場所と、夫婦の関係が短い中にうまく描かれている。

「裏窓のアリス」
夫が浮気を疑っているから、浮気なんかしていないことを証明するために仁木の事務所を訪れた女性の依頼をこなす話。
まぁ、これはいかにもなネタがあるので、この手のミステリが好きなひとはちょっとした謎解きがおもしろいかもしれない。

「中庭のアリス」
捜索依頼と思いきや、いなくなった犬を探してくれと言う上品な老齢の女性からの依頼をこなす話。
さらりとした中に、女性に対して過保護すぎた夫との夫婦関係などの人間模様がけっこうえぐい。

「地下室のアリス」
仁木が勤めていた会社の地下の事務室にいる山端という男性からの依頼で、誰もいない書庫で鳴る電話の謎を解明してもらいたいというもの。
山端という男性と書庫で鳴る電話を用いて、したたかな人間とその逆の立場の人間をうまく描いている。

「最上階のアリス」
仁木の大学時代の先輩の依頼で、妻が夫に頼む不思議な頼み事の意味を解明してもらいたいというもの。
これもけっこう歪んだ愛情のようなものを扱っていて、軽くさらりと読めるんだけど、真相はけっこうえぐい。
好みの別れる話だと思う。

「子供部屋のアリス」
青山と言う産婦人科医の依頼で、なんとベビーシッターをやることになる。
これはアリスシリーズをよく知っているひとならば、すぐにぴんっと来る類のネタではないかと思われる。
と言うより、全編そうなんかな。
私はあらすじくらいしか知らないので(笑)

ただ、こちらも真相というより、ベビーシッターを探偵に頼まざるを得なかった事情など、けっこう重いネタを扱っている。

「アリスのいない部屋」
1本の、休暇を取ることを告げる電話を最後に消息が知れなくなった安梨沙を仁木が捜す話。
ここでは、各話の謎解きに重要な役割を果たしていた安梨沙がいなくなり、謎解きをするキャラが変わる。
「掌の中の小鳥」も最後に主人公の圭介から変わったけれど、変わってもまったく違和感がない、と言うか、この謎はこのひとでなければならない、と言う感じがあって秀逸。

安梨沙を捜すと言うストーリーの中で仁木夫妻のあたたかな愛情が感じられる良品でもある。

全編を通して、けっこう深いネタを扱ってはいるのだが、いつもながらに読み進めているとそれを過剰に感じさせない文章と展開は見事。

あと、いつぞやで解説なんざいらないと言っていたし、実際ないほうがいいと思っているけれど、この本の解説はルイス・キャロルのアリスシリーズをよく知らない私にとってはとてもいい解説だった。
ネタバレになるので、解説からと言うわけにはいかないけれど、この作品をよりおもしろく読めるようなものになっている。

解説読んで、もう一度読み返すかなぁとかホントに思ったし(^^


☆クロスレビュー!☆
この記事はLINNが書いたものです。
SENの書いた同書のレビューはこちら

タイトルと主役は異なります

2006-02-23 19:32:15 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、敢えてこっちにしてみる第450回は、

タイトル:天(全18巻)
著者:福本伸行
文庫名:近代麻雀コミックス

であります。

扇:麻雀はからっきし弱いSENでーす。

鈴:生麻雀は高校卒業と同時にやめたLINNで~す。

扇:つーか、高校生が賭け麻雀やってんじゃねーよ。

鈴:なに、高校生らしく点ピン……あ、違った点1でやってたぞ!(爆)

扇:自慢にならないってば。
まー、休憩時間に競馬新聞読んでる高校生もいたけどなぁ。

鈴:あー、うちの高校にもいたなぁ、競馬ファン。
ホントに100円渡して馬券買ってきてもらったりもしたなぁ(遠い目)

扇:非常に健全な高校生活だねぇ~。
賭け事は人を堕落させるぞ、パチンコぐらいにしとくべきだ。

鈴:あのな……、死人が出てるのはパチンコぐらいやぞ。

扇:何を言う、麻雀だって死人が沢山出てるぞ――どの漫画とは言わんがな。

鈴:第3○6回あたりのマンガかな?(笑)
まぁ、なぜか麻雀マンガとなると、賭博のイメージからこういうのがあったりするわなぁ。
今回の「天」も、結局抗争っぽいのを麻雀でどーにかしよう、と言ういかにもな展開になったし。

扇:そうそう、第36○回あたりの漫画だ。
抗争で血を流すぐらいなら、麻雀って決着付けようって奴だな。
でも代打ちって、負けたら消されるんじゃないのか……?

鈴:消されるのか? 第○70回のはさほど死んでない気がするがなぁ。
あ、勝ってるからか(爆)

扇:いや、第17○回はヒーロー漫画だから。
ちなみにZOOの方々は結構負けてるぞ。

鈴:あれ? 負けてたっけ?
このマンガだと、基本的に主人公は途中からぜんぜん負けてないわなぁ。

扇:ああ、「死ねば助かるのに」の人が出てきたにも関わらずな。

鈴:どういう理論だ、そりゃ……。
まぁでも、こやつの麻雀人生の中で唯一黒星をつけたと仰々しく説明されてたからなぁ。
いっちゃん最初のほーの、すんごいちゃらんぽらんはどこに行ったんだろうねぇ。
って、なんかえらいキャラ紹介っぽくなってるなぁ(笑)

扇:そりゃまぁ、ア○ギ先生は偶機を待つ人ですから。
しょっちゅう人の背中を煤けさせてる人とどっちがマシかって言われると難しいな。

最初の頃の主人公はねぇ……どこがどう天和通りの快男児なんだって感じだったな。
途中からやたら強くなったけど。

鈴:運一本槍で突き抜けてるので煤けてるほうがマシかと……(爆)

強くなっちまったねぇ。
ってか、とてつもなくストーリーの都合上、強くなりましたって感じだったなぁ、主人公。
じゃぁ、その主人公からキャラ紹介行っとくかね。

扇:それ以前に、ストーリー全然紹介してないぞ。

鈴:!Σ( ̄□ ̄;)
ストーリー……えーっと、主人公のひとり天とひろゆきの出会いから、西日本・東日本の雀荘の上納金を巡る東西のヤ○ザの利権争いを麻雀で解決しようと、麻雀勝負を行う話であります。

扇:( ̄へ ̄♯)
本気で忘れてやがったな、お前。
えーと、基本は麻雀漫画なのですが……最終章で真の主人公アカギがアルツハイマーにかかり、自殺しようとする所を他のキャラが止める会話は異常に人気が高いです。(何と、麻雀勝負一切なし)

鈴:関係なかったなぁ、いちおう勝負事はしてたみたいだが。
まぁ、いい頃合いだ、ホントのホントにキャラ紹介しとくべ。

扇:の前に、お知らせだな。


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『作家別目録』、ちょっとずつ更新!
『怪しいページ』も……次回更新する予定。
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鈴:主人公の天。1巻2巻では、おなじアパートの女性に襲いかかるちゃらんぽらんぶりを発揮していたが、東西戦になるころには、東側の最強の打ち手になっていた不思議なひと。

あのちゃらんぽらんなまま、最強だったらどんなにおもしろいギャグキャラになっていたのだろうかと思ったりもしないでもないかも(笑)

扇:何、とぼけた顔してババンバンなキャラクターは、ギャンブル漫画の鉄則だ。
実際、真面目になってもギャグっぽかったと思うぞ、天は。
力業とイカサマが必殺技だしなぁ……。

鈴:じゃぁ、次は背中を煤けさせるひととどっこいどっこいの赤木。
「おれの暗刻はそこにある」とか言いつつ、カンドラに手を出すような不思議なひと。
運も一流なればイカサマも一流。
東西戦でもイカサマできるあたり、独立したマンガの「アカギ」からこっち、心臓の鉄毛はじじいになっても健在らしい(笑)

扇:ないから(笑)
裸単騎に魔法かけたりとかもする、微妙にオカルトな人。
異様な強さと無茶苦茶な理論で天以外のすべてのキャラをシメる、典型的な神様キャラ……つか、主人公より確実に人気が高い。
理外のセンスで勝ってきたらしい、が、要はそれって勘なのでは?

鈴:勘? セブンセンシズの間違いではないのか?(爆)

次に主人公のひとり、ひろゆき。
理と言う計算で麻雀を語る、麻雀好きの一般人だったが、天、赤木のおかげで麻雀の裏社会にどっぷり浸かるハメになってしまったひと。
まぁ、本人が望んだんだからいーんだけど(笑)

扇:いわゆる、イキのいい若手キャラ。
一番の常識人なためか、理を越える天に圧倒され、いぶし銀の赤木に手玉に取られる役回りが多い。
だが、若者らしい暴走で窮地を突破する場面もあり、先輩達からは可愛がられている、結構幸せな奴。

鈴:幸せだったねぇ。結局、東西戦の天の相方にもなったし。
キャラ紹介はこれくらいかな。
あと、私的には、銀次が好きなんだけどねぇ。強い弱いではなく、技術(ガン:牌に印をつけるイカサマ)でどうにかしてる唯一のいぶし銀なひとなのがよかったなぁ。

扇:確かに、麻雀漫画らしいキャラではあったな。
結構長いけど、麻雀漫画としてはオススメの方です。
天はともかく、ひろゆきと赤木、敵キャラの原田や僧我の使い方は上手かった。
では、短いですが今日はこの辺で、さよ~よなら~。

鈴:そだね。
お約束じゃ、天と赤木なんだけど、きちんとひろゆきにするあたり、いい感じだよね。
ではでは、この辺で。
バビブベボー ヾ(◎皿◎)→ ばいば~いき~ん

扇:(▼へ▼メ)
マジで殺すぞ、ガキ。

お嬢様は最強

2006-02-22 22:40:52 | ミステリ
さて、何だかんだ言いつつ続けて読んでしまう第449回は、

タイトル:覆面作家の愛の歌
著者:北村薫
文庫名:角川文庫

であります。

『覆面作家は二人いる』に続く、覆面作家シリーズ第二段。
一作目はどうかなぁ……と思ったのですが、にゅきみさんたぬきさんのオススメを頂きましたので、続けて読んでみました。
短編集なので、例によって一つずつ感想を書いていきます。

『覆面作家のお茶の会』……春が来て、良介の周囲でも人の入れ替わりがあった。馴染みの先輩の人事異動、ライバル会社に勤める静美奈子との出会い、新人の配属、ゆっくりとだが確実に時間は流れていく。いつものように千秋と打ち合わせをしていたところに美奈子が現れたため、面白くない顔をしていた良介だが、土産菓子が出てから話はなぜか不思議な方向に――。息子の嫁が作ったサンマルクに感動し、修行のため寺に引き籠もってしまった菓子職人を巡るミステリ。例によって千秋が抜群の洞察力で事件の裏を完璧に読み解く。美奈子が千秋の褒め役に徹してるのが引っかかるが、ストーリーとしてはすらっと読めていい感じ。皆の悩みをあっさり解決してしまう爽やかなオチも悪くない。

『覆面作家と溶ける男』……接待でカラオケに出かけた良介は、偶然、千秋と美奈子に出会う。何となく面白くない顔をすると、美奈子は一枚の写真を見せた。そこには、美奈子と一人の少年、そして兄の優介が写っている。帰宅後、その件についてそれとなく探りを入れようとすると、兄は現在関わっている誘拐事件の話を始めた――。不審な男、被害者に良く似た少年、雨と晴れ……数多くのピースが登場し、今までの話の中で最も非常にミステリらしい話になっている。だが、途中で良介が指摘しているように、千秋の推理はちと強引な感じ。優介が美奈子に興味を持つという展開はちょっと面白かった。

『覆面作家の愛の歌』……祐介は千秋、美奈子と一緒に芝居を観に行くことになった。待ち時間の間、美奈子は今まで謎だった千秋の過去を話し続ける。ようやく千秋が現れて楽しい観劇と相成ったのだが、数日後、その舞台の主演女優が殺されるという事件が起きた――。挑戦的な犯人と、物怖じしない千秋の会話がかなり面白かった。トリックも凝っていて、謎解き好きにはたまらない話になっている。ただ、途中まで面白いキャラクターだった犯人が、最後の最後でただの間抜けに落ちたのはちと残念。でも、ラストで祐介に罠をしかける千秋に拍手喝采してしまったので、いいとしておこう。

非常に良くできたミステリ短編集です。
前作は妙にキャラクターの個性を押しつけてくるような感じだったので、個人的には本作の方が好きですね。
相変わらず、無駄のない構成と読みやすい文章であっという間に最後まで読ませてくれます――非常に上手い人、という印象がさらに強くなりました。

ミステリ好き、キャラ物好き、どちらにもオススメ。
本巻で一気に時間が経過しましたが、完結編はどうなるやら……楽しみです。

地上の星座

2006-02-21 23:58:15 | その他
さて、旅先でふと手に取ってみた第448回は、

タイトル:ナスカ 砂の王国――地上絵の謎を追ったマリア・ライヘの生涯
著者:楠田枝里子
文庫名:文春文庫

であります。

ナスカの地上絵に魅せられ、その分析・保護に半生を賭けたマリア・ライヘの生涯を追うドキュメント。
「世界まる見え!テレビ特捜部」「なるほど!ザ・ワールド」等の司会で知られる楠田枝里子著。

地上絵が天文図であると提唱した学者。
正直、マリア・ライヘに対する私の認識はその程度でした。
しかし、本書で印象がガラリと変わりました――この方、本当に凄い。

マリア・ライへは1903年生まれ。
著者がペルーで彼女に出会ったのは1985年。
マリアが故郷ドイツを離れてから、実に53年の歳月が流れていました。

マリアは、長身と言われる著者よりさらに背の高い女性でした。
ドイツ語で話しかけると、親しげな笑みを浮かべます。
過去の話になり、真面目なお子さんだったのでしょうね、と言う著者にマリアは答えました、一つのことに夢中になると他はお構いなしになる性格だったと。(笑)

マリアの過去を追って、ドイツを訪れる著者。
壁崩壊前の東ドイツ、スパイを警戒する空気の中、僅かな手がかりだけを頼りに彼女はベルリンの町をさまよいます。
当然ながら、せっかく資料を得たとしても持ち出しは厳禁、写真も駄目、おまけに町並みはすっかり変化している。

それでも、本人の語る思い出と、彼女が通っていた大学に残された資料、この二つからマリア・ライヘの実像が少しずつ浮かび上がって来ました。
森を駆け回った少女時代、最愛の父を奪った第一次世界大戦、急激なインフレのおかげで進学できた大学、そして運命の募集広告――教師求む、場所はペルー。
何度も挫折しつつも、破天荒な姉と正反対に堅実な妹レナーテや異郷の地で得た親友エイミーに支えられ、マリアは地上絵に挑みます。

ドキュメンタリーと言うより、ミステリに近い感覚で読めました。
ペルーと東ドイツの景色や人々を眺める著者の視点は非常に優しく、自然に出てくる個人的感想も面白いので、引っかかるところもなし。
マリアの足跡を追いつつも、後半では地上絵研究の変遷、その保護活動についても大きくページを割いています。

地上絵の謎解き、と大上段に構えた書ではありません。
しかし、激動の時代を駆け抜け、無理解と戦い続けてきた女性の生涯は、それだけで心を打つものがあります、オススメ。
最後に、我々が現在でも地上に描かれた芸術を堪能できるのはマリア・ライヘのおかげです、これだけは強調しておきたい。

ドルアーガ包囲網

2006-02-20 23:55:27 | ゲームブック
さて、450回記念はやるべなのか? と思う第447回は、

タイトル:魔宮の勇者たち
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

ゲームブック『ドルアーガの塔』の第二巻。
二十一階から四十階までの冒険を描きます。
一巻についてはこちらを参照。

最上階目指して、ドルアーガの塔の中を旅する勇者ギルガメス。
彼は二十一階の市場で、旅に役立つ品を探していた。
上の階に潜む強力な魔物に対抗するには、現在の装備では心許なかったのだ。

来るべきドルアーガとの決戦に備えて、ギルは情報も集めていた。
その過程で彼は、強力な協力者を得ることに成功する。
だが、順調に進み続ける勇者の前にドルアーガの腹心ゴルルグが立ち塞がる!

というわけでドルアーガ三部作の第二巻です。
元のゲームだとたった一人で戦い続けるギルですが、本作では旅の友を得ます。
盗賊王タウルス、魔術師メスロン、この二人が非常にいい。

タウルスは盗賊王と名乗るだけあって、典型的なトリックスターです。
話術、詐術はお手の物、鍵も開ければ罠を仕掛けたりもする。
かなりのビッグマウスなので、一見ただの山師に思えますが、口に見合うだけの実力を持った頼れる人物です。

で、へヴィメタル魔法使いのメスロン。(そーゆー格好をしてるのです)
一流の魔術師にして、これまで間接的にギルを助けてくれていた協力者。
まだ青年なので精神的に不安定なところはあるものの、強力な魔術と豊富な知識はギルの及ぶところではありません。

冒険の舞台もちょっと変化しています。
前巻は塔を上へ上へと進んでいく、一方通行の面クリア式ゲームでしたが、本巻は二十一階の町を拠点として、塔を上下に行き来できるシステムを採用。
つまり、上の階でお金を稼いで、下の階で買い物をするという、普通のRPGゲームに近い遊び方ができるのです。

また、迷路ばかりでは退屈……と考えたのか、いったん塔の外に出て旅をするイベントがあったり、強制的に移動するだけの階があったり、地図が公開されている階があったり、相変わらず豊富なアイディアでマンネリを防いでいるのはお見事。

ちなみに、内容を濃くしたためか、ギャグが減ってます。
魔法封じの呪文が『断公九封呪魔』(麻雀解る人なら笑えます)だったりしますが、前巻よりさらにシリアスになり、ホラー色も濃くなっています。

一巻から続けて読む方が面白いけど、これ一冊でも充分楽しめます、オススメ。
どうしても見つからない、という場合は……復刊を待って下さい。

トリビアだといくついくかな

2006-02-19 23:18:27 | 小説全般
さて、そういやぞろ目を何も記念しなかったなぁの第446回は、

タイトル:ハミザベス
著者:栗田有紀
出版社:集英社文庫

であります。

読む本がなくなったとき、とりあえず本屋の文庫棚に並んでいるもののうちで、聞いたこともないひとのを手に取ってみたりする。
これもそうした感じで買ってみたもので、表題作の「ハミザベス」と「豆姉妹」という中編の2話が収録されている。

「ハミザベス」
母と子ふたりで生活していた主人公のまちるのところへ、ある日、死んだとばかり思っていた父がほんとうに死んだという知らせが入る。
その遺産の管理をしている花野あかつきから、まちる母子に遺産があるから受け取ってほしいとのこと。

遺産なんていらないと断りに行くまちるは、父の同居人でもあったあかつきと話しているうちに、いつの間にか遺産として残されていたマンションの一室を受け取ることになる。
どうせだからと言うことで母と暮らした家を出て、マンションに移って暮らすようになったまちるの日常を描いた話。

ちなみに、ハミザベスとはあかつきが手のモデルの仕事を辞め、長期間家を空けることになるからと言うことでまちるが譲り受けたハムスターのこと。

「豆姉妹」
母の再婚を気に、年の離れた姉の永子とともにふたり暮らしをするようになった高校生の末美に、看護婦をしていた永子は突然SMクラブで働くことにすると宣言する。
年は離れていても、とてもよく似た姉妹であった末美と永子。
転職を機に、鏡写しのようだった姉が変わっていく様子や、意味もなくアフロにしてしまうまちるの日常の姿などを描いた話。

トリビアの「へぇ」が「ふぅん」だったら、いったい何ポイントくらいになるんだろうなぁ……。
ってくらい、ぜんっぜんおもしろくなかった。

さらに解説に、「しばしば、途方もない「笑い」を起こさせる」と書いてあったのだが、これのいったいどこで「途方もない笑い」を起こさせてくれるのだろうか、甚だ疑問である。
まぁ、そこは感性の領域なのだろうから、とやかく言うほどのものではないが。

とは言うものの、ストーリーは別として、文章や読みやすさと言う点では申し分ない。
「ハミザベス」での、まちるとあかつきのやりとりや、「豆姉妹」のラストのほうで義理の弟である良太と末美、永子姉妹とのやりとりなど、会話文の流れるような文章はとてもうまい。

それから、おもしろくないと言っても、すべてまずいと言うわけでもない。
「ハミザベス」では、まちるとあかつきの姿よりも、まちるとその母との関係の描写などはよかった。
読みやすいが、無味乾燥な文章のおかげで、マンションに住むことになって出て行ってしまったまちると、残された母の姿が、重くなりすぎず、比較的あっさりと読める。

「豆姉妹」でも、良太が義母に恋をしていると語るラストのほうのやりとりも、おなじような感じでけっこうあっさりしている。

こういうところは特徴としていい部分だとは思うんだけどねぇ。
それ以外、私にはこれっぽっちも魅力を感じない作品。
少なくとも2冊読んで今後読むかどうか決めるつもりではあるけれど、手出しにくいな、このひと……。