つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

野球のほうが好きだけど

2005-09-03 18:23:08 | 学術書/新書
さて、スポーツ観戦は好きなほうなんだけどの第277回は、

タイトル:サッカーの国際政治学
著者:小倉純二
出版社:講談社現代新書

であります。

言わずと知れた国際サッカー連盟、FIFAの理事である著者が、国際社会におけるサッカーのいろんな出来事や思惑、日韓で共同開催したワールドカップでの舞台裏、日本サッカーに尽力してきた人たちなどを綴ったもの。

国際政治学、とあるように、メインは世界のサッカー業界での話題が多い。

この手の本は、やっぱりタイトルだけ見たら、手に取らないタイプのものだったりする(^^;
なので、当然のように借り物。
……だって、こんなのほいほい新刊でも古本でも買ってたら、お金もたないし(笑)

さておき、サッカーよりは野球が好きだけど、地元チームが勝ったか負けたかくらいは気になる程度の私だけど、これは素直におもしろかった。
いわゆる舞台裏の話、と言うのはそう表に出てくるものではないし、スポーツニュースとか見ても、話題性のあるものが前面に出て、その裏に隠されたものはなかなかわからない。
だからこそおもしろいのだろうとは思うけどね。

それに、この本、国際政治学なんて銘打ってはいるけれど、ほとんどFIFAや日本サッカー界のことなどぜんぜん知らない私でもわかりやすく書かれているし、素直に「へぇ、そうなんだぁ」と思える話もある。

この本の中でやっぱり読んでいて興味深く、おもしろかったのは、日韓共同開催になった2002年ワールドカップに至るまでの、各国の思惑や駆け引きなど。
共同開催が決定した当時は、やっぱり日本ってのはこういう交渉事ってのが下手なんだなぁ、と思ったり、やっぱり単独開催がよかったと思ってはいたけれど、読んでみると、いろんな事情とかが絡んでいて、結果的に共同開催の道を選ぶことになった経緯がよくわかる。

もちろん、韓国の交渉のうまさが日本よりも上だった、と言うのはあるのだろうけど、そのときの招致活動に携わっていたひとの思いや決断に至る苦悩と言うものがわかって、いまさらながら「ふむふむ」と納得させられる。

あとは、このワールドカップの開催地を選ぶ際の投票のことが興味深かった。
ってか、ここまで巨大な国際組織のFIFAにあって、投票してもらうためのいわゆる「選挙運動」にルールがない、ってのが、なんだかなぁと言う気にさせられる。

まー、こうした中での立候補国の運動だの、駆け引きだの、アジア、ヨーロッパ、南米、アフリカなどの各地域の思惑だのが絡んで、けっこうどろどろ。
国際政治なんてそんなものだとわかってはいても、「をいをい」と突っ込みを入れたくなるような話がたくさん。

まー、そんなところがまたおもしろかったところではあるんだけど(笑)

この他は、Jリーグに至るまでの話や、FIFAやアジアサッカー協会がが行っている公益的な活動などの話題が散りばめられている。

サッカー好きにはオススメだろうし、それでなくても興味深い話がたくさんあるので、あんまりサッカーには興味はないけれど、と言うひとでもいいと思う。
ただし、日韓共同開催とか、2010年の南アフリカ開催の投票の話とか、時間が経つにつれて色あせてしまいそうな話があったりするので、早めに読むのが吉……かもしれない。