つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

あのころはいずこ?

2005-12-31 12:37:35 | マンガ(少年漫画)
さて、大晦日だよ、全員集合! なんてことはないの第396回は、

タイトル:サイキックアカデミー 煌羅万象(全9巻)
著者:克亜樹
出版社:講談社

であります。

「ふたりエッチ」が大ヒットした著者の青年マンガ。
どっちが先かは知らないけど、とりあえず古本屋に全巻まとめて転がっていたし、懐かしさもあって買ってみた。

ストーリーは、21世紀初頭。
オーラと呼ばれる特殊能力をもった人間を育成するため、サイキック・アカデミーという教育機関があった。
主人公の少年汐見愛もオーラ特性により入学することになるところから始まる。

このアカデミーでは、主人公の愛の幼馴染みである織奈がすでに入学しており、前半部分は、この幼馴染みとの話と、愛のオーラの能力に関する話が基本。
とは言うものの、少年マンガ&青年マンガにつきものの、いわゆる従順なお人形キャラの織奈とは対照的なミュウというもうひとりのヒロインとの関わりも描かれている。

そのストーリー後半は、前半のべたべたのラブコメディから、オーラにまつわる不可思議な事象や愛とミュウの関係の変化など、らしいストーリー展開で、目新しいところや意外性はほとんどないが、逆に安心して読める、と言う利点はある。

キャラも、いつものことなのか、主人公の愛は恋愛シミュレーションに出てくるような典型的な優柔不断キャラ。
いちおう、いざと言うときは……ってなところまでそのまんま。
しかも幻のオーラ能力を持つなんて設定もそう。

織奈は上記のとおり、典型的な人形系。
愛とミュウとの関係が変化し、最終的に取り残されるにも関わらず、ミュウとの友情や愛への気遣いなどを忘れない。
まぁ、人気は出そうだけどね。

ミュウは自らのオーラ能力による事故、そしてオーラの研究機関での実験など、暗い過去や身体的な欠陥を持ち、ぶっきらぼうな口調など、織奈とは正反対のキャラにしている。
過去にオーラ能力者しか見ないとされる夢で愛と出会い、そのことを心の支えとしている、と言う設定がある。
ヒロインふたりとも、人気の出そうなキャラには作っているだろうね。

相変わらず、ヒロインの着替えシーンや入浴シーンなど、大昔のマンガ、しかも1種類しか知らないほうにとっては、やはり「ふたりエッチ」の関係で、そういうところを描かざるを得ないんかなぁ、と言う気がする。

まぁでも、ストーリーは上記のとおり、安心できる展開。
あといかにもなヒロインふたり。
絵柄の好みはあるかとは思うけど、すんごいはずれだとは言わない。
こういういかにもな話、キャラが好きなひとはどうぞ。

でも、やっぱり大昔の「符法師マンダラ伝 カラス」のほうが好きだなぁ(笑)

次は……

2005-12-30 18:54:54 | 恋愛小説
さて、年の瀬も迫ってきたと言うのにの第395回は、

タイトル:忘れな草
著者:佐々木丸美
出版社:講談社文庫

であります。

前に読んだ「雪の断章」に続く孤児シリーズの2作目……だったっけな。

前作は飛鳥という孤児院にいた少女が、ひとりの青年に拾われて、育っていく話だったけれど、今回はストーリーの中心となる少女はふたり。
葵と弥生で、ともに孤児。

このふたりは、どちらかがある大企業の継承権を持つ娘だと言うことで、ある家に引き取られたあと、ある邸に引き取られ、そこでふたりは育っていく。
そこでふたりを育てるのは高杉正生という青年。
ふたりが幼いころ、遊んでもらっていたお兄ちゃんだったりとか、この大企業で強い影響力を持つ幹部の懐刀だったりとか、まぁ、いろんな役目がある。

あとは、「雪の断章」でも出てきた家政婦のトキさん。
この4人の邸での生活がストーリー展開の基本となる。

で、肝心のストーリーはと言うと、高杉青年に恋する葵と弥生のふたりの姿と、大企業の継承権争いとが同時並行で進んでいく。
とは言うものの、文体が葵の一人称なので、そこまで継承権争いが前面に出てくるわけではなく、時折、継承権を持つどちらかを獲得しようとする高杉青年側の敵対勢力のほうの情報によって惑わされるふたりが描かれ、そこでそうした争いの断片を知ることが出来るくらい。

いちおうミステリーとかそういうジャンルなので、ストーリーはこれくらいにしといて……。

前はあまりそうは思わなかったけれど、このひとの文章……特に、この作品に関しては、とにかくひとを選ぶだろう。

くどい。

と言うか、うざい。

おそらく、「雪の断章」は主人公の飛鳥の視点から描かれる情景描写というものが、緩衝材になってくれていたのだろうか。
この作品では、葵のキャラクターも関係するのだろうが、自然や邸、庭にある様々なものに仮託して語られる葵の心理描写が圧倒的で読むのが疲れる。

ころころ変化する心理もいまいちキャラクターが頭の中がしっかりと固まってくれないし。
片割れの弥生も同様かな。

まぁ、男性キャラは前作同様、ストーリー上のパーツ。
人間味と言うものは微片も感じられない。
高杉青年に関しては「冷徹なビジネスマン」というような意味の描写があるが、冷徹のほうが人間味があるんじゃないかと思えるくらいだし。
まぁ、いろいろと哲学に精通しているとか、仏教がどうだとか、取って付けたようなフォローがあったりするけど、役に立っているかどうかは甚だ疑問。

総評としては落第。
とにかくくどさが先に立ってストーリーなんかどーでもいい。
と言うか、これだけ耐えつつ読んでストーリーなんかに目がいくかいっ。

って、借りたクセにひでぇ書評だな……(爆)

最初は柔道漫画

2005-12-29 01:20:17 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、そろそろいい加減第400回の第394回は、

タイトル:ドカベン(全48巻)
著者:水島新司
出版社:秋田書店

であります。

扇:ひかわきょうこと言えば、と聞かれて『藤臣君シリーズ』と答えるSENです。

鈴:いちおう「彼方から」と言っておくlinnで~す。

扇:小文字に変えやがったな……!

鈴:なら、「Linnで~す」にしてやろうか?(笑)

扇:いや、マンネリ打破という意味ではいいやり方だ。
明確な裏切り行為だがな。

鈴:おもしろけりゃいーじゃん(爆)

扇:違うな、時代は――
おもろけりゃえーやんけだ。(大爆)

鈴:どこの方言だ!!

扇:はて、どこじゃろう?
とゆーわけで、いまだに秋田書店の稼ぎ頭として君臨するドカベンであります。
第一次野球小僧を作ったのが『巨人の星』なら、こっちは第二次ってとこでしょうか。

鈴:第二次なんかのう。
噂で聞くかぎり、あるプロ野球選手はマンガに出してもらってすごいうれしかった、と言う話を聞いたことがある。
っつか、プロ野球選手でもけっこう読んでて、好きな選手って多いんだろうねぇ。

扇:それ……某バラエティでやってた水島○判で登場決定した方ですか?
何だかんだ言って、自分が出るのって楽しいんだろうなぁ。
むかーしあったリトル巨人君って漫画では、原が物凄く美形に描かれてたりしたなぁ。

鈴:楽しいだろうなぁ、選手にしては。
しかし、原が美形? 「月下の○士」の滝川よりはマシだろう(笑)

扇:○川はいい棋士なんだが……羽○が出てからはなぁ。
ま、枝話は置いといて、野球ブームを再燃させた漫画です。
男気と浪花節と水島理論の嵐が炸裂する試合は、娯楽としては最高レベル。

鈴:確かにねぇ。読んでて単純におもしろいからね、このマンガ。
さて、と、じゃぁそろそろキャラ紹介行っとくかね。

扇:では、主人公の山田太郎。
右投左打、不動のキャッチャー。
温厚で真面目、目が線、たまにボケるという可愛らしい人物だが、勝負と里中には厳しい。
鈍足というハンデがあるものの、鋭い読みと並はずれた膂力で超高打率を叩き出す化物打者……つか、この世界のピッチャーはみんなこの方をライバル視している。
プロ野球編では西武に入団、伊藤がいるのにどーすんだよ! と思ってたら、怪我で交代の必殺技でした……。

鈴:では里中智。いまではロッテの渡辺俊介くらいしかいないアンダースローのピッチャー。
基本的には苦労人で、アンダースローからもわかるとおり、パワーよりコントロールのピッチャー。
明訓高校時代から山田と名バッテリーだったが、プロ野球編ではライバルとなる。
おそらく、女性読者の人気を一身に集める人気キャラ(笑)

扇:プロ野球編でサチ子が岩鬼との関係で悩んでる時に、「里中ちゃんに乗り換えようなぁ」とか言われて、「大歓迎だよ」と答えたデリカシーのない奴でもある。
では殿馬一人(かずと)。
右投右打、超絶的に守備が上手いセカンド、ピッチャーをやったこともある。
天才的なピアニストだが、山田の人間的スケールに惚れて野球を始めた。
いつもニコニコしているが、メンバーを冷徹に観察しているフシがある。
自ら秘打男と名乗り、トリッキーな打法で守備だけではなく打撃でも抜群の技術を見せつける、まさに天才と呼ぶに相応しい男。
なお、ピアノを弾くために狭かった指のマタを手術した過去を持つ。

鈴:手術したわりには、オリックスに入ったな、殿馬。ピアニストってのはどこに行ったんだ、って気はするぞ(笑)
では、このマンガ中、最高に強くて、最高におバカなキャラ、岩鬼正美。
トレードマークは口にくわえた葉っぱ。大言壮語癖があるが、たいていは実現してしまう。
悪球打ちで有名で、ど真ん中が打てないクセに顔面近くに来るビーンボールをホームランにしてしまうところが魅力。
悪球打ちと同様、美的センスもどっか行ってる気はしないでもないが、そこも魅力だったりして(笑)

扇:恋人の夏子さんが絡むと、ど真ん中だろうが悪球だろうがホームランにしてしまう属性もあったな、あれで決勝点入れられた不知火って……悲惨。
個人的に好きな敵キャラとか結構いるけど、とりあえずここらへんでいいかな。
次回は……平安妖怪バスターな話です、でわ、さーよーなーらー♪

鈴:敵キャラにも確かにいいキャラは多いんだけど、結局明訓に負ける運命ってのが悲しいところではあるな。
と言うわけで、平安妖怪バスターと言うと、あの感動屋で楽器の上手な親友がいるあのひとの話です。
では、さよ~な~ら~~~~~~~~~♪

百鬼丸よ、どこへゆく……

2005-12-28 19:27:00 | マンガ(少年漫画)
さて、映画化されるからってわけじゃないけど第393回は、

タイトル:どろろ(全三巻)
著者:手塚治虫
文庫名:秋田文庫

であります。

手塚治虫が描く、異色の時代劇。
百鬼丸とどろろの名コンビが恐るべき四十八匹の妖怪に挑む!



天下統一の野望に燃える男、醍醐影光。
彼は欲望のままに四十八匹の魔神に取引を持ちかける、自分の子の身体と引き替えに、力を貸して欲しいと。
果たして、後日生まれた赤子には眼も鼻も口も耳も四肢もすべてなかった……醍醐は高笑いしつつ、我が子をタライに乗せて川に流した。

十数年後、呪われた赤子は立派な青年に成長していた。
作り物の肉体を備え、百鬼丸と名乗ってまとわりつく死霊の群れと戦っていた。
彼の目的はただ一つ! 憎き四十八匹の魔神を斬り、本当の身体を取り戻す!

ある日、百鬼丸は死霊に襲われていた子供を助ける。
天下の大泥棒どろろと名乗ったその子は百鬼丸の持つ名刀に興味を示した。
そして、人間と妖怪どちらからも毛嫌いされる二人の旅が始まった――。



えげつない話です。(讃辞)
どっかの新造人間の如く、肉親のために強大な敵と過酷な運命を背負わされるヒーローは非常に多いけど、ここまで酷い扱いを受けた主人公となると皆無。
自分が死霊を呼び寄せることを知って育ての親である医師と泣く泣く別れ、安住の地を見つけたと思ったら侍の襲撃で仲間は皆殺し、妖怪と戦っても事が終われば周囲の人達から化物扱いされる……やってられないとはこのことです。

しかしそれ故に、百鬼丸の格好良さは他の追随を許しません。
正義とか悪とか関係なし、生き延びて過去の因縁に決着を付ける、そのためだけに旅を続け、立ち塞がる相手があれば妖怪だろうが人だろうが斬り伏せます。
戦う姿はまさに和風サイボーグ――左腕に仕込み刀、左脚に毒の放射器、感覚器官の代わりにテレパシーを備え、太刀を振るえば魔神すら両断する!

ちなみに、仇の魔神を一匹倒す毎に身体の一部が戻るのですが、これが救いになっているかと言うと実はそうでもありません。
百鬼丸が魔神に対抗できるのはその属性が敵に近いからです、しかし、肉体を取り戻すたびに彼は人側に近づいていく。
そう、百鬼丸は遅かれ早かれ破れる運命にあるのです、それが最後の一匹との戦いでか、残り何匹か残した状態でかは解りませんが。

悲惨すぎるぞ、百鬼丸

反骨精神の塊のようなどろろもいいキャラです。
ただ、百鬼丸の特殊性に比べるとちと弱い、かな。
初版の設定では『奪われた百鬼丸の身体を使って造られた子供』となっていたのですが……それだと殺されちゃうことになるんですよね、百鬼丸に。(爆)

次々と現れる奇妙な妖怪との戦い、人間達との確執、権力の象徴でありすべての元凶でもある醍醐影光との対決など、ドラマも充実――オススメ。
すべての魔神を倒す前に物語が終わっているため、続きが読みたいという意見も聞きますが、私はあのラストだったからこそ素晴らしい作品になったのだと思います。

純愛? どこが?

2005-12-27 11:06:02 | ミステリ
さて、表紙見てオペラ座の怪人を思い浮かべてしまった第392回は、

タイトル:容疑者Xの献身
著者:東野圭吾
出版社:文藝春秋

であります。

お初の作家さんです。
名前はよく聞く方だったのですが、まだ手を出してませんでした。

出勤時、わざわざ遠回りして『べんてん亭』を訪れるのが石神の習慣だった。
アパートの隣人であり、ここの店員でもある花岡靖子の笑顔を見るために。
店内に他の客がいない時などつい浮き浮きしてしまうが、気の利いた台詞など何一つ出てこない……それがもどかしかった。

靖子は以前、綿糸町のクラブで働いていた。
『べんてん亭』に来たのは、自分の年齢と一人娘の美理のことを考えたからだ。
だが、平和な生活はいとも簡単に崩れ去った……五年前に別れた男・富樫が会いに来たのだ。

富樫は靖子のアパートに押しかけ、執拗に復縁を迫った。
共に住んでいた頃の悪夢が蘇り、靖子と美里は富樫を殺害してしまう。
その時、物音を聞きつけてやってきた石神が言った――何か自分にできることはないか?

花岡親子のために偽装工作を行う石神の視点、彼の友人であり探偵役でもある湯川――のさらに友人である草薙刑事の視点、石神に助けられつつも彼の行動に不安を覚える靖子の視点を上手く使い分けたミステリです。

三人の動かし方が非常に巧みで、すらすらと読めました。
スポット的に登場し、全員に絡んでいく湯川のポジションも見事。
美里の扱いがちょっと……とは思いますが、物語を破綻させる程ではありません。

トリックですが、情報少ないけど、カンのいい人はすぐに気付くかな、と。
全然関係なさそうな所にヒントが転がってたので、偶然解っちゃいました。
あそこで気付かなかったら、そのまま引っかかっていたに違いない。(爆)

問題は、石神に全く魅力が感じられないこと。
彼が靖子に何を感じたかは置いといて、その想いは凄まじいまでの一方通行。
タイトルでオビ文について触れたけど、さらに、献身? どこが? と言いたい。

石神に対して、靖子が恐怖を抱くのは当然だと思います。
そもそもこの二人、心を通わせることはおろか、会話すら殆どしたことがない。
自分の知らない靖子の顔を見た時の心理、トリック、ラストシーン……どれも彼の
妄執を表しているとしか思えません、本当に気持ち悪い。

うーん……上手い作品だと思うんだけど、石神のキャラで全部帳消しかな。
湯川と草薙の微妙な関係とか、結構好きなんですけどねぇ。

二階堂黎人氏が自身のHPで非常に面白い推理をされてました。
ネタバレになるので、反転して、それについての感想を述べます。

半分賛成、半分反対といったところでしょうか。
美里と石神が事件以前から親しい関係にあった可能性は大です。
本文中に否定する要素がありませんし、こう考えると美里の不可解な行動に説明が付けられるからです。

ただ、石神が靖子ではなく美里を愛していたとするのは違うかなぁ、と。
そもそも石神の心理描写のところ(本文197頁とか209頁とか)で、しっかり靖子に気があることを書いてると思うのですが……。

神の目を持つ女……?

2005-12-26 10:13:47 | SF(海外)
さて、先週に続いてこの方な第391回は、

タイトル:シビュラの目
著者:フィリップ・K・ディック
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

再び、ディックの短編集です。
前回の『マイノリティ・リポート』はかなり好みだったのですが、さてこちらは……。
例によって一つずつ感想を書いていきます。

『待機員』……コンピューター・ユニセファロン40Dが大統領を務める合衆国で、マックスはトラブル時に臨時で権限を受け継ぐ待機員に選ばれた。死ぬまで待ち続けるだけの退屈な仕事の筈だったが、ユニセファロンの故障で本物の大統領として権力を握ることになる――。
もしこんな世界が存在したとしたら、当然起こるであろう混乱を描いた話。マックスの変貌していく過程は非常に説得力がある。

『ラグランド・パークをどうする?』……『待機員』の続編。ちょっとカラーが変わり、サイオニック能力をキーにした政戦が描かれる。個人的にはイマイチ。

『宇宙の死者』……財界の巨人ルイ・セラピスが死んだ。片腕のジョニーは遺言に従って遺体を霊安所へと送るが、原因不明のトラブルにより、ルイを復活させることはできなかった。そのしばらく後、奇妙な現象が――。
死者を条件付きで蘇らせることができる世界の物語。怪現象の謎は、穴がすぐに見つかるので簡単に解ける。しかも、かなり長い割には事件そのものは解決していなかったりする。何とも言えない作品だが、半生者のアイディアは好き。

『聖なる争い』……ジュナックスB軍事計画コンピューターがレッド・アラートを発令した。担当者達はジュナックスが読み込んでいる最中だったテープを切ることで、一時的に機能を停止させるが、データの内容を見て愕然としてしまう。なぜ、警報は発令されたのか? 修理待機員スタフォードが謎に挑む――。
ゴシック体で印字されたジュナックスの台詞はインパクト大。スタフォードの謎解きも面白い。ただ、あのオチはちょっと……。

『カンタータ百四十番』……『ラグランド・パークをどうする?』の続編。様々なSFファクターが存在する未来社会での大統領選挙戦を描いた作品。筋自体は通っているものの、場面と人物がごちゃごちゃし過ぎて読みづらいことこの上ない。ドラマにもあまり魅力を感じなかった。

『シビュラの目』……作者の戯言しか聞こえてこない劣悪な作品。

うーん……これ! というのもないし、嫌いな作品は多いし、ちょっと私には合いませんでした。



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単純に楽しみましょう

2005-12-25 14:35:55 | ファンタジー(異世界)
さて、このジャンルは久々の第390回は、

タイトル:彩雲国物語 はじまりの風は紅く
著者:雪乃紗衣
出版社:角川書店 角川ビーンズ文庫

であります。

いわゆる少女向けのライトノベルの文庫であります。
まぁ、たまにはこういうラノベもいいかぁと言うことで、数も出ているし、人気があるのだろうと言うことで購入。

舞台は、尚書などの官吏の名前から概ね随や唐あたりの古代中国だろう。(確かこのあたりの時代の官名だった気が……)
家柄だけは一流だが、その日の食事代にも事欠いてしまうくらい零落した紅家の姫秀麗は、貴族のお姫さまに似合わず、勉強や二胡を教えたり、侍女の臨時雇いに行ったりと、武官であり秀麗の家の家人である静蘭とともに、貧乏暇なしを地でいっていた。

そこへ彩雲国にあって名宰相と誉れ高い霄太師が、父と静蘭、自分を含めて10年以上は軽く暮らしていけるおいしい話を持ってくる。
それは、政務にまったく興味を示さず、しかも男色家の噂がある現国王紫劉輝の妃として後宮に入り、ぼんくら国王をたたき直してくれ、と言うものだった。

かくして、秀麗は金500両のおいしい仕事に目がくらんで、後宮へ行くこととなった。

なんか、ときどきこういうほんとうに文庫の短い解説みたいなの書いてるな、私……。

さておき、この話、何も深く考えてはいけない。
とにかく、単純にストーリー上で動くキャラを楽しみましょう。
それ以上を望むと、バカを見る。

とは言うものの、第1回ビーンズ小説賞奨励賞・読者賞を受賞しただけあって、確かに人気が出そうな話ではある。
と言うか、私が下読みさんだったら、この文庫のカラーからして、確実に通すね。

ただ、きちんと評価をしようとしたらやはりぼろぼろと欠点が出てくる。
まず、キャラクター。
主人公である秀麗、国王の劉輝、家人の静蘭を除いてキャラがしっかりしていない。
物語の中で準主役格の武官文官のコンビなど、その最たるものだろう。
文章の関係もあるが、すんなりとキャラクターとして飲み込めないところが多々ある。

さらに構成がまずい。
後半に入ってからこういうラノベに必要な事件とその黒幕、動機など、すべて後半で「実はこうでした」と語っているだけで、前半部分と乖離している。
好々爺然とした霄太師や生活能力の欠如した父親の正体など、「あ、そう」としか思えない。
ストーリーの中心にあるテーマは一貫しているので、もっときっちり伏線を作っていれば、説得力を持たせられると思うんだがね。

文章も、古代中国を舞台にした割にはカタカナ文字が入るなど、個人的な好みとしてはどうかとは思うが、文庫のカラーからはまだ許せるかな。
さしてうまいとは言えないが、まずいとも言えないレベルで、甘いかもしれないが文章は及第点だろう。

とは言うものの、上記のとおり、ただ単に軽く読みたいと言うのであれば、これはいいかもしれない。
コメディだしね。

まぁでも、やはりと言うか当然と言うか、や○いの匂いがするんだよね。
ジャンルとして仕方がないと言えば仕方がないんだろうけど。

ふぅむ

2005-12-24 15:38:42 | ミステリ
さて、ちょっと探偵ものっぽいかなの第389回は、

タイトル:月曜日の水玉模様
著者:加納朋子
出版社:集英社文庫

であります。

主人公の片桐陶子は、丸の内のある中小企業に勤めるOLで、いつもの通勤電車の中で、信用取引のリサーチ会社の調査員である萩広海と知り合う。

最初は、ただ単に満員電車で曜日ごとに決まったネクタイをして、船をこいでいるだけの青年だったが、このところよく噂になっているビル荒らしの事件を機に、今度は会社組織というものの中での日常の中で起きる事件を解決する相手役になる。

キャラとしては、探偵役の陶子は頭の回転が早く、しっかりした感じで、逆に助手の立場になる萩は、いつも何がうれしいのかよくわからないくらいにこにこしていて、どこか抜けた、憎めないタイプになっている。

ストーリーも、変わらない日常のミステリと言った趣は変わらないながらも、「ななつのこ」などの、ほんとうに見落としがちな、ほほえましいものではなく、ビル荒らしや製薬会社の不祥事、荷物を含めたトラックまるまるの窃盗など、事件性が強いものになっている。
裏表紙の解説に「名探偵と助手」と言う文句があるように、「事件を解き明かす」という要素が強い。

もっとも、ふつうの探偵ものみたいに、大々的に推理を披露し、事件を解決する、というものではない。
あくまで「解き明かす」ものであって、「解決」するものでないところが、やっぱりミステリを読まない私みたいなのでも、いいなぁと思えるんだけど。

また、事件を解き明かすと言うものばかりではなく、両親がおらず、祖母に育てられたと言う境遇を持つ陶子の母親にまつわる話や、それに関連する、陶子と入れ替わりに退職した先輩との話とかもある。
事件の性質や、こういう話などがあって、この短編連作はどこか苦いものを含んだ、しっとりとした話になっている。

ただ、いままでのとこれまた違った雰囲気の話で、特に事件性が強いミステリになっているので、好みとしては他のよりは好きじゃない、かな。
まぁでも、かな、くらいだし、相変わらずすらすらと読ませてもらえるのは、やっぱりうまいなぁ、と思う。
ラストの陶子の姿も、何となくほっとするような感じがあっていいんだよね。

なんのかんの言っても、軽~く及第点を超えてくれるところは、さすだなんだけどね。

こういうほうが好きかも

2005-12-23 16:00:51 | 時代劇・歴史物
さて、ふと珍しくて買ってみたの第388回は、

タイトル:幽剣抄
著者:菊地秀行
出版社:角川文庫

であります。

伝奇小説では知らない者はいないのではないかと言えるくらいの著者の時代小説。
舞台は江戸時代で、幽霊などと下級武士との関わりや戦いを描いた短編集。

だけど、このひとの伝奇小説によくある派手な戦闘や官能的な描写などはほとんどなく、そう言う意味では地味。
とは言っても、日本的な幽霊の持つ冷たい雰囲気や不気味さは十二分に感じられる作品で、どの短編もけっこうおもしろかった。

各話は、

「影女房」
辻斬りに遭い、殺された小夜と言う女幽霊が伯耆流抜刀術の使い手榊原久馬に、辻斬りを斬ってほしいと依頼され、それを果たす話。

「茂助に関わる談合」
茂助と言う奉公人にまつわる話で、館林甚左衛門の甥の喜三郎のところへ奉公に出し、そこで暇を出されたはずの茂助が何食わぬ顔で、甚左衛門の家にいる、と言う話。
茂助の不気味さが、茂助本人ではなく、甚左衛門や喜三郎と言った者たちの言動によってうまく描かれているショートショート。

「這いずり」
藩の金を横領した罪で殺された地次源兵衛の幽霊を、おなじく地次を討った討手が再び倒しに行く話。
腰を悪くして這いずるようにして剣を振るう地次と、数十石の下級武士が武士階級の底辺で這いずるように生きるしかない現実とを描いている。

いちばん好きな話。

「千鳥足」
何人もの武士が足を滑らせ、溺死する千鳥ヶ淵の怪異譚を藩随一の剣の使い手である大辻玄三郎が確かめる話。
過去の戦乱の話と怨霊の話の使い方、ラストの一文がすっきりとうまくまとめてくれているショートショート。

「帰ってきた十三郎」
宵宮良介の兄の嫁になる世津という女性が、過去に恋仲にあった十三郎という、過去に剣の修行に出て行方不明になった男が、世津のもとへ姿を現したため、良介のもとへ、これを斬ってほしいと頼まれ、対決する話。

「子預け」
突然、ある女が「これはあたなのご主人の子供です」と言って子供を預けていく話。
もちろん、その子供、親ともども化け物だが、預けられたほうの夫婦のやりとりがおもしろいショートショート。

「似た者同士」
愛しさが極まれば斬らずにはいられない性癖を持った二重人格の武士が、そのもうひとつの人格を殺すために雇った浪人、そしてその武士の妻、妾を巻き込んで繰り広げる話。

結局、殺してくれと言うのが、極まった自己愛に起因するものというオチではあるけれど、読むぶんにはいちばん読み応えがある話だったかもしれない。

「稽古相手」
ただひたすらに剣の稽古に明け暮れていた、藩では敵なしの武士が稽古中に出会った好敵手と出会い、互いに討ち果てる話。
なんかショートショートは短いながらもしっかりしたのが多いなぁ、と思う。

「宿場の武士」
ある宿場の前に行き倒れになっていた、修行中の武士が、その宿場で自らが求める剣の道を見つけ、それを修得するまでの話。

短編集なので、話の中には好みとかでどうかと思うのはあるけど、総評としてはけっこうおもしろかった。
伝奇小説のほうは、パターン化されてて、似たようなものが多いのであんまり読む気にはならないけど、これは次を読んでもいいな、とは思う。

それにしても、著者紹介のところで「2004年7月には、著作300冊……」とある。
300冊!? 300作品の間違いじゃないのか!?
と言う気がしないでもない。
と言うか、Wikipediaでは作家になって23年くらいとあったから、年に14、5冊のペースで書いてんのか、このひと……。

やはり、化け物だな。

ベタの伝道師(笑)

2005-12-22 20:01:03 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、そろそろ400回の第387回は、

タイトル:聖・はいぱあ警備隊(全11巻)
著者:森生まさみ
出版社:白泉社花とゆめコミックス

であります。

鈴:またもやオーディオに金使いまくりのLINNで~す。

扇:本が何冊買えるだろうとか考えるSENでーーーす。

鈴:ん~、アンプとCDプレイヤーあわせて15万くらいだから、500円くらいの本で300冊だな(爆)
……なんか冊数に換算すると、すごい高いんだなぁ、っていまさらながらに実感できるな(笑)

扇:300冊あったら一年時間が潰せるぜ、おい。
つか、そんな金があったら青年マンガ買えよっ!
ハズレてもいいから読め、そしてレビューを書けっ!

鈴:だからオススメを言えっつーの!
だいたい青年マンガ、ふつうのマンガの単行本より高いんだから買うの躊躇するに決まってるじゃないかっ!

扇:それは十五万のオーディオと比べても高いのかね?

鈴:直接財布から出て行くんだから高いんだよっ!(爆)

扇:小市民だな。(くすっ)
つーか、本当にネタがなくなってきたねぇ……。
そろそろマヂでアフ○ヌーンとかビッ○コミックとか読む気ない?

鈴:まー、ちまちま古本屋通いしているのに言われたくはないがな(くすすっ)
アフタ○ーンやビッグ○ミックかぁ。なんか最初はいいんだけど、ダメになる話がいままでたくさんあったので、なかなかのぅ……。

扇:ケッ、マンガのレビューで常に「古本屋で揃えましょう」とか言ってる奴にいわれたかーねーなぁ。(ウケケケッ)
だから伏字の意味がねーだろ、って、最初はいいけど駄目な話かぁ。
『ブラム!』とか『蒼天航路』とか、最初は良かったんだがなぁ……。

鈴:なに言ってんだ、突っ込みつつもほとんど同意できるものではあるだらう(笑)
しかし、『蒼天航路』は気にはなってたんだがねぇ。
やっぱり最初から買ったりしないとダメだね。せめて2巻くらいで買わないと、手出す気が起こらないんだがね。

扇:『蒼天航路』はねぇ……曹操賛美もきかない赤壁はどーすんのよって感じのとこで見事なまでに……。(以下略)
『闇のイージス』は個人的に好きなんだが、お前には合わないだろうしなぁ。
あ、『陰陽師』はどうよ? 最後二冊ぐらいで大コケかましたけどさ。

鈴:あー、『陰陽師』くらいだなぁ。
これは原作なんかぶち抜いてしまったくらいおもしろいので、これでもOKだと思うんだがね。
……ところで、ぜんぜんタイトルのマンガの話をしていないんだが……?

扇:あ、俺この作品嫌いだから
読んでて爪先までかゆくなるんだよね。

鈴:そりゃそーだろうなぁ。
だいたいこのひとのマンガは、とてつもなくべたべたな話だからなぁ。
私は免疫あるからいーけど。
って、「やめとけ」って言わなかったっけ?

扇:言ったな、俺が一巻読んだ後で。(怒)
ほんとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~にベタベタだな。
つか、この彼氏役って70年代後半ぐらいに量産されてた記憶があるなぁ。
いわゆる、真面目でカタブツでオクテで、その上バカという非常に女性に都合のいい男だよね、扱い易いし。

鈴:筑波さくらのときもおんなじだったなぁ。
つか、買う前に聞けよ(笑)
あ、ちなみにこの都合のいい、生徒会の風紀委員の堅物くんは、ヒロインの梨本つぶら(梨本と聞くと大嫌いなオヤヂを思い出すが)の相手役、高屋敷くんのこと。

扇:聞く前に買っちまうんだよ! ノリで。
ヒロインもあっぽだったが、まだ可愛げがあった……かな、勢いだけだし。
でも、はいぱぁ仮面はどうかと思うぞ、つか、誰か気づけよ!

鈴:ったく、そのあたりのは私のほうが詳しいんだから、とりあえず聞いとけよ(笑)
まぁ、はいぱぁ仮面は確かにどうよって気はしないでもないが。
で、気付く? そりゃあれだよ、目の前で変身してるのに、変身前だと誰も気付かない魔法少女ものと一緒だと思えば、ぜんぜんOKだらう(笑)

扇:その意味では魔法少女ものはもっとひどいな、顔露出してるやん。
まぁ、なんつーかね、一言相棒に言いたいことはあるよね。
「お前よくジンマシン出ないよな、これ読んでて」って。

鈴:「なに、この程度まだまだ許容範囲だ」(笑)
よく引き合いに出すが「恋愛中毒」が耐えられる時点で、私の間口はかなーり広いぞ。

扇:それは素直に認めよう、あれは読む前から頭が痛くなった。
美形出してて、絵がそこそこ上手けりゃ漫画だと抜かすカス作家に比べりゃ、遥かにちゃんとストーリー作ってるとは思うんだけどね。
でも……合わないってのだけはどうしようもないなぁ。
あ、でも生徒会長のキャラは良かったな、あの人だけは楽しい。

鈴:まぁねぇ。ギャグセンスはけっこうあると思うし、テンポいいし。
なんか「Wジュリエット」のとこでも書いたけど、こういうところの絵ならではのところは、いいなぁと思いつつ、読んでるなぁ、私。
……ってところで、突然ですが、そろそろこの辺で。
さよ~なら~

扇:ほんとにいきなり終わるなぁ。
まとめは全部、上記の人物が言っちゃったので、私は素直にさよならします。
では、また来週この時間……チャンネルはそのままで。