つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

すいません^^;

2012-08-22 20:23:04 | 恋愛小説
さて、だいぶん間隔が長くなってしまってすいませんの第1024回は、

タイトル:陽だまりの彼女
著者:越谷オサム
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:'11)

であります。

いや、本は読んでなかったわけではないのです。(なんか前にも言ったな、これ(爆))
今回は読んでいたのが、すでに記事になっている9Sシリーズだったりとかして、記事にならなかったんです^^;

で、ようやく予約の順番が回ってきた本書をようやく読了したので、記事にすることができました。
確か書店で見たときには「女子が男子に読ませたい」という帯の文句があって、それに興味を惹かれて図書館で予約したと思います。

さて、ストーリーは、

『僕――奥田浩介、鉄道関係の広告代理店に勤めるまだ二年目の平社員。
今日はいわゆる「お供の若手」として、近年成長著しいランジェリー・メーカー「ララ・オロール」の営業に上司にくっついてきていた。
だが、そこにいたのは中学時代の幼馴染み、渡来真緒とその上司だった。

中学時代、かわいいけれど、分数の計算もできない学年有数のバカだった真緒。
そのこともあってか、真緒はいじめられっ子だった。
だが、あることをきっかけに僕は真緒を助けることになり、またそれをきっかけにして僕と真緒は中学時代、浮いた存在としてクラスからも教師からも見られるようになっていた。
それは僕が中学三年のときに転校するまで続き、その間、僕は真緒に懐かれていて、よく勉強を教えてやっていたりしていた。

そんな真緒が十年ぶりに僕の前に現れたときには美人で、モテ系の出来る女へと変身していたのだ。
新規のクライアントとして「ララ・オロール」との交渉に挑む資料を作ったのは僕で、その資料にミスがあって、さらにはそれを真緒に指摘されてしまったのだ。
それがきっかけで交渉は真緒のペース。
中学時代とはまったく逆転してしまっていた。

けれど、仕事でのやりとりを続けていくうちに、真緒とのやりとりは次第に仕事絡みの他人行儀なやりとりから、次第にくだけたものに変わっていった。
そして仕事以外で会うことも多くなり、徐々に僕と真緒の距離は縮まっていく……』

すいません、あらすじが短いのはネタバレを防ぐためです。
あんまり長く書いてしまうとホントにネタバレになってしまって、どうしようもないのでこれくらいにしておきます。

さて、第一印象ですが、やはり男性の書く恋愛小説だなぁ、と言うところでした。
はっきり言って情趣にも雰囲気にも乏しく、世界観に浸れない作品で、読み進めるのにだいぶ苦労しました。

ストーリーは、僕こと浩介と真緒の甘々のラブストーリーです。
ここで断言しておきますが、さぶいぼ症候群の方は手を出さないほうがいいです。
ベタ甘です。
幸せオーラ満載です。
そういうのが苦手な人にはこの作品は無理でしょう。
私はまだ耐えられるほうなのでいいのですが、そうでなければ読み進めるのは無理だと思います。

さて、さぶいぼ症候群を発症しない方には、出来のいい恋愛小説である、といえるでしょう。
甘々な僕と真緒のやりとりや真緒の不可解な行動、些細な喧嘩と仲直りなど、恋愛小説の定番は揃っていますし、そんな中にラストに至る伏線が周到に張り巡らされていたりと、小説の構成としてはかなり出来がいい作品です。
ラストまで読んで、なるほど、あの日常の光景や過去話は伏線だったのかと、うまく作られた展開には素直に感心しました。
またタイトルと作品の内容とのマッチングもよく考えられているなぁ、と言う印象があります。

ストーリーは再会から付き合うようになり、そして駆け落ちまがいの結婚をしてのふたりの十ヶ月を描いたものです。
ラストは作品解説でも触れられていますが、私はハッピーエンドだと思っています。
確かに作品解説で語られているように浩介の今後を不安視する視点もありだとは思いますが、個人的には悲恋ものとは思えないので、ハッピーエンドでいいのではないでしょうか。

キャラはしっかりしています。
……が、平凡な浩介と、ラストで明かされる真緒の正体とその性格の関連性など、主人公ふたりはよくできています。
まぁ、ほとんどふたりだけの世界を作って構成されているので、脇役などはほんのスパイス程度です。強いてあげるなら真緒の養父母ですが、これも浩介の上司と言ったスパイス程度よりは出番が多いと言う程度のものなので、やっぱりスパイスの域を出ないでしょう。
もっとも、浩介と真緒ふたりの激甘ラブストーリーなので、さほど気にする必要はないでしょう。

文章も一貫して浩介の視点で描かれ、ブレがないのが好感が持てます。
読みづらい点もありませんし、章立ての最後に語られる浩介の一言などにくすりとさせられる場面もあるでしょう。(私はさしてありませんでしたが(笑))
文章面でも及第点ですし、ちょっとしたスパイスもあり、よくできた文章と言えるでしょう。

さぶいぼ症候群の方を除けば、客観的に見て、小説としてよくできた作品、と言えます。
万人にオススメできるほうではないですが、作品として見るならば良品と言えると思います。

ですが、作品の帯にあった「女子が男子にすすめたい」という文句――これははっきり言って疑問です。
中学時代の幼馴染みがモテ系の美人になって再会し、恋人になり、幸せな結婚生活を送る――男性受けはするでしょうが、女子が薦めたくなるような作品とはとうてい思えません。
個人的にも雰囲気に乏しいし、おもしろい作品だとは思いませんが、周到に張り巡らされ、日常の中に隠された伏線やそれを収斂したラストなど、小説としての出来はかなりいいので良品の評価をしたいと思います。
個人的な感想と客観的評価は別ですので。

と言うわけで、総評、良品。
……でもやっぱり男性向けで、「女子がすすめる」と言うところには違和感を拭えません^^;


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