つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

あぁよかった(笑)

2006-12-31 14:21:09 | 恋愛小説
さて、スリーセブンはどちらに? って計算しろと突っ込まれそうなの第761回は、

タイトル:蕎麦屋の恋
著者:姫野カオルコ
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H16)

であります。

いったい何冊目だ、このひと……と思ったらすでにこれが5冊目だった……(笑)
ここまで数読んでる作家は、意外と少ないからなぁ。
まぁ、おもしろいから読んでしまうんだけど。

さておき、本作は表題作を含む3つの短編が収録された作品集で、3作とも違った形の恋愛小説となっている。
では、各話ごとに。

「蕎麦屋の恋」
一 京浜急行に乗った男の章
山藤製薬経理部課長、秋原健一。算盤が得意で、妻子のいる平凡なサラリーマンだが、妙に女性に好意を持たれるタイプだった。
会社初の女性部長の笛子、暗算の出来るところに憧れた間宮恵理、取引のある広告代理店の室長沙耶など……仕事に、愛する家族。平凡だがごくふつうの生活の中で、ふと関係を持ってしまう姿が描かれている。

二 京浜急行に乗った女の章
大学を卒業し、務めていた三隅商事を退職し、調理師専門学校を経て、その学校の臨時講師のようなことをしている波多野妙子は、成長過程から炬燵に入って誰かと一緒にテレビを見る、と言うのが何よりの幸せだった。
だが、そうした気持ちが理解されることなく、30を超えてしまった彼女は、いつもの「快速特急」で見かける男と短い会話を交わす。

三 京浜急行を降りた男と女の章
ふとしたことで知り合った秋原と妙子。ある日、秋原から仕事が終わった後、逢う約束をする。
ただ「快速特急」に乗っている間でも話が出来れば……それくらいのことだったが、途中普段は降りない駅で降りたふたりは、近くの蕎麦屋で夕食を取る。

その店の座敷席で、妙子は誰かとテレビを見ながら食事をする……そんな幸せを味わい、秋原もそんな妙子の様子を大人の余裕を持って眺めていた。

なんか、ほっとするような感じのラストだったなぁ。
蕎麦屋っていつまでたっても出てこないからどうなんだ、と思っていたけど、こういう使われ方なのね、って妙に納得。
しかし、三部作の主人公の境遇と似た感じのヒロインだが、こちらは何となくハッピーエンドな終わり方なので、すっきりしていい感じ。

「お午後のお紅茶」
総合美容師を目指す小林くんは、緊張したり恥ずかしいことがあると足の指がまるまる癖がある、美しいものには性別を問わないバイセクシャルな青年だった。
そんな小林くんが、恋人の二階堂さんと入ったときが初めてのお店「ポプリ」で知った女主と、その料理のコンセプトに足がまるまるのだった。

2度の食事から行かなくなった「ポプリ」だったが、美容室の先輩との話が弾んでいたため、3度目の来店となったそこで、足の指だけでなく、手の指までまるまりそうに……。

皮肉に満ちたユーモアで、くすっとさせられる良品。
ラストのオチにつけたのも皮肉が効いていておもしろい。

「魚のスープ」
学生時代の友人から送られてきた旅行代金半額のチケットでスウェーデンに行くことになった江藤夫妻。
夫である「ぼく」は、妻の桜子とともにスウェーデンで友人である本城和……通称カズと言う女性の案内で6日間の観光をすることになる。

大学時代の微妙な思いを抱えながら、カズと接する「ぼく」だったが……。

これは珍しく穏やかであっさりとした短編で、最後に「ぼく」が気付く大学時代の「ぼく」とカズ、そして最終的に桜子との生活を、改めて心に固める「ぼく」と短いながらもすっきりとまとまったものになっている。

とは言え、やっぱり、らしいのは「蕎麦屋の恋」や「お午後のお紅茶」だろうなぁ。
特におもしろかったかのは「お午後のお紅茶」だね。
「蕎麦屋の恋」はハッピーエンドっぽいところが意外だが、これはこれでありかな。三部作のうちの2冊だと、こういう終わり方はしていないから、たまにはこういうのがあるのはうれしいかも。

それぞれオチがけっこうよくて、この作品集は比較的、誰にでもオススメしやすい作品が集まっているのではないかと思うね。

これまた微妙な

2006-12-30 18:07:21 | 小説全般
さて、うちに年の瀬なんか関係ないのさの第760回は、

タイトル:駆ける少年
著者:鷺沢萠
出版社:文藝春秋 文春文庫(初版:H7)

であります。

表題作を含む3編の短編が収録された短編集なので、いつものように各話ごとに。

「銀河の町」
30を過ぎても定職に就かず、その日暮らし同然の生活をしているタツオは、常連となっている飲み屋「小雪」で、いつものように飲んでいた。
ある日、またいつものように「小雪」を訪れたタツオは、早めの時間にもかかわらず、タツオよりも長く通っている常連が神妙な顔をして飲んでいた。
そこで常連のひとりである山崎が亡くなり、その葬儀の帰りに集まっていたことを知る。

「駆ける少年」
会社を経営している龍之は、ある夢をきっかけに、菩提寺から過去帳を手にする。
祖父、以十、父、龍之介が書いた過去帳に、不思議な記載を見つけた龍之は、仕事の合間に父の過去を調べていく。

出版社を興し、成長、倒産を経験し、若くして死んだ父と同じように会社を経営し、やはり同じように危機に見舞われる中、龍之は過去に見た父の姿に、ようやくあることに気付く。

「痩せた背中」
父であるオイサンが死んだと言う訃報を受け、実家に戻った亮司は、そこでオイサンとほぼ内縁関係にあり、幼いころ、ともに暮らした町子の姿を認める。
葬儀の最中、ただオイサンと町子と、3人で暮らしたときの出来事を思い起こしながら、自らの裡に渦巻く思いを再確認していく。


最初の「銀河の町」がやや趣を異にするが、あとの2編は、家族、特に父との関係を描いた作品となっている。
3編のうち、個人的によかったのは「痩せた背中」かなぁ。

内縁の妻である町子とオイサンとの関係や、それを見て成長してきた亮司が故郷を離れつつも、故郷への強い思い、それを見まいとする心情など、丁寧に描かれており、良品と言えるだろう。

「銀河の町」は、常連たちの昔話やタツオの生活の中に哀愁を感じられる物語だが、いまいち弱い。
おもしろいかと言われると、他の2編よりもどうしても劣る印象。

「駆ける少年」は、「痩せた背中」同様だが、父の生い立ちと成長、会社など、他の要素が絡みすぎて邪魔をしている印象。
納得は出来る話ではあるが、引き込まれる強さは「痩せた背中」のほうがあるので、次点ってとこかな。

とは言え、どの話もさしてインパクトがあるわけでもなく、おもしろくないとは言わないが、じゃぁおもしろいかと言われると悩んでしまう。
「痩せた背中」もこの3編の中で較べるならば、と言うところでの良品なのでオススメとまでは言えないかなぁ。

しかし、このひとの作品は最初がOKで次がダメ、そんで今回が微妙な線……と来ればどうするかの判断がしづらいよなぁ。
まぁ昨日みたいに酷評する要素もないし、とりあえず保留ってことになるだろうから、次読んでからかな。

第2弾でGO!

2006-12-29 20:47:26 | 小説全般
さて、今年も雪が降ってるなぁの第759回は、

タイトル:蝶の皮膚の下
著者:赤坂真理
出版社:河出書房新社 河出文庫(初版:H11)

であります。

なんかどっかで聞いたことがあるような名前なんだけど、お初の作家。
タイトルからなかなかよさげな感じがしたので借りてみた。
さて、ストーリーは……。


ホテルに接客関係の部署で働く高橋梨花は、あるとき、ひとりの男と出会う。
岡野航というその男は、世界チャンピオンにまでなったボクサーだったが、ボクサーだったがためか、脳に病を得て21歳の若さでボクシング界を去った人物だった。

初めて出会ったときからそんな航に傾倒した梨花は、航の見る世界や言葉、行動に魅了されながらも、航の病を解決するためにある精神科医を訪ねる。
航の主治医だという吉岡という医者は、航の病を治療するためには梨花の協力が必要だと告げ、航のための薬を作るために、梨花を半ば人体実験のような形で使うことを提案。
梨花はそれを承諾し、そのおかげで航は次第に回復しつつあった……。


この作品を端的に言うと、

おもしろくない
主人公が気色悪い
読んでいて気分が悪くなる

の3つしかない。

いやぁ、ここまでひどいのは、第501回の井上荒野以来だなぁ。
まだ井上荒野は短編集だったからまだマシかな。
こっちは長編だからずるずると苦痛が長引く感じがして、余計にきついかも。

ともあれ、ストーリーはアル中でヤク中の主人公、梨花が航の治療を通して、立場が逆転していく中で様々な世界や人物を見ていく話、なのだろうが……物語じゃぁないよな、これ。
まず、独特とか、特徴的といえば聞こえはいいのだが、サイコな作品世界で通常の感覚であればかなり変、もしくは妙な印象を持つだろう。
その上、主人公の梨花もサイコで、その梨花の一人称で話が進むから余計にそう感じるし、すごい読みにくい。
文章表現もあさっての方向に飛びがちだし、句読点の区切り方が変だからさらに読みにくい。

解説には、
「論理的な因果関係がつかみにくい難解なすとーりーだ。しかしこの難解さは衒学趣味とは対極にあるリアルな難解さ、まさに「主体」が解消した後の「人類」そのものを記述するうえでの難解さだといっていい。」(原文ママ)
とあるが、よくもまぁ、こんな気色悪くて気分が悪くなるような本に、そこまで言えるもんだとある意味感心するわ。

総評は……言うまでもないか。

で、どっちが主役?(笑)

2006-12-28 21:13:50 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、腹話術って使えたら楽しいよね、な第758回は、

タイトル:人形草紙 あやつり左近(全4巻)
原作:写楽麿  漫画:小畑健
出版社:集英社 ジャンプコミックス

であります。

扇:ついこないだPS版FF1をクリアしたSENでーーーす。

鈴:苦手なはずのシミュレーションゲームのサモンナイト4を延々やってるLINNで~~~~す。

扇:で、今度は誰を手籠めにするんだ?

鈴:手込め3だけやっ!!
……たぶん……。
まぁでも、いつもの「夜会話」では、当然竜の子に決まっておろう。

扇:ああ、元気系ロリね。

鈴:……竜の子って、3種類いるからロリだけじゃないんだけど。

扇:でも、君が選ぶのは元気系ロリ。(笑)

鈴:ふっ……、選んでないわぁっ!
あ、でも、やってると3で出たマルルゥが番外編で出てちょっとうれしい(爆)

扇:やっぱり、元気系ロリか。
まぁ、君の嗜好はよく知ってるから、敢えて止めないけどね。

鈴:つか、止められんのか?

扇:止・ま・ら・な・い♪
さぁ、ココナッツボーイズのメンバーって、何人言えるかな~?(笑)

鈴:ひとりも言えん……。
……つーか、C-C-Bのほうが有名だろ。

扇:敢えてそこで、ココナッツボーイズと言うところに味があるのだよ明智君。
まー、俺もメンバーの名前全然憶えてないけど。(爆)

鈴:憶えてないんかいっ!!!
まぁ、Wikiで引いたら思いっきりヒットしたけど。
相変わらず、このあたりのネタって、Wiki強いよなぁ。

扇:どれどれ……。(Wikiを引く)
何というか……ほんとに憶えてないな、個人では。
曲も、『Romanticが止まらない』しか知らないし。(爆)

鈴:知らないっつーか、この「Romanticが止まらない」だけでじゅーぶん。
すべてとは言わなくても、たぶん、カラオケ行ったらほとんどは歌えるはずだ。

扇:すまん、赤ペラで歌える。(笑)
というわけで、次回のカラオケのネタは決まったな。
まず初手に『ああ電子戦隊デンジマン』を歌って――。

鈴:うむっ!!!
……つか、このあたりの曲は最初のころでなければ、喉を潰すからなぁ(笑)

扇:その癖、シメは『ウィー・アー・ザ・ワールド』で、お前がシンディ・ローパーなんだよなぁ。
まぁ、俺もレイ・チャールズだったりするが。(笑)

鈴:まー、シンディ・ローパーは……声高いからなぁ、こいつ……。
しかし、このところ、締めは完全に「We are the world」だよなぁ。
前は、「まんが日本むかしばなし」、そしてその前はダンバインの「見えるだろうバイストンウェル」だったのになぁ……。
つか、なんなんだ、この変遷は……(笑)

扇:言うな……俺もその選曲は正直どうかな~、とは思ってたんだ。
あ、次回のオープニングは麻倉未稀の『HERO』で確定なんでよろしく。

鈴:「HERO」か……望むところよっ!!(笑)
しかし、なんか最近のカラオケって、こういうなつかしの曲のほうが最近多くなってないか?

扇:そうでもないぞ、アニソンだけは最新のを歌ってる……筈だ。
何なら、もっかい『亡國覚醒カタルシス』歌おか?(笑)

鈴:アニソンだけ、ってのがある意味、悲しいところではあるが……。
だが、見てるぶんだけでCD買うとかしてないから1番しか歌えないのばっかりだが~(笑)
で、歌うか、っつってな……。
あ、でも、前歌ったとき、ぜんぜん気にしてなかったなぁ、その歌。

扇:まぁ、原曲は何と言うか……わざとコード外して歌ってるんで。(笑)
んで、カラオケの話は次回の会合に回すとして、そろそろ本題に移るかね?

鈴:そうね。
じゃぁ、毎日電車でスリを働く青年が、人形を手に入れて、スリ稼業に精を出すとともに、いつのまにか殺人事件に巻き込まれて、それを人形とともに解決する少年マンガであります。

扇:そんな感じかね。
では、ストーリー紹介も終わったのでCMを――。

鈴:そんな感じっててめぇ……。
スリ稼業は思いっきり「マリオネット師」やっ!!!

扇:『ぶるぅ☆ピーター』とか『霊能バトル』の時代だな。
小畑の絵でもう一回やったら受ける可能性もあるかも知れんが……。

鈴:まぁ、私の場合「すくらっぷブック」だが……(爆)

扇:『きみはノルン』とか――って、何で小山田いくの話になってるんだ!
まったく……仕方がないから、私が真面目に解説しよう。
『右近』という名のからくり人形を操る青年・左近が、自動人形絡みの殺人事件を解決していくバイオレンス・アクション。
全身に武器を内蔵した右近と自動人形の戦いは圧巻です。

鈴:バイオレンス・アクションか!?
つか、えーっと、文楽の人間国宝の孫である青年橘左近が、行く先々で遭遇する殺人事件を、相棒の文楽人形右近とともに解決する正統派の推理ものであります。

扇:普段は気弱で頼りない主人公が、人形を動かし始めた途端に冷静なキャラに変貌し、一人漫才をかましつつ事件を解決していくという……いわゆる二重人格探偵モノですね。
真面目なストーリー紹介が終わったところで、今度こそCM~。


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扇:では、主人公の橘左近。
人間国宝橘左衛門の孫にして、天才的な人形使い。
眉目秀麗の美青年だが、とにかく気が弱く、右近がいない時はただの役立たず。
右近を操りだすと、性格はおろか顔まで変貌し、鋭い観察力と推理力を発揮して事件を解決する――まんま変身ヒーロー。
ちなみに、変身すると好戦的になるというお約束も守っており、凶悪犯に対して啖呵を切るという場面もあった。
某デスノートのライト君と対決させてみたい人物だったりもする。(笑)

鈴:では、次に左近の相棒の文楽人形、右近。……別に、血液がさらさらになるとか、呑んだあとに飲むとか、そのあたりものとは別物。
左近が操る人形だが、人形らしからぬほどに人間味のある姿で描かれ、左近とは対照的に、感情豊かで直情的な性格をしている。
……が、見た目と絵柄、その他諸々はどうあれ、左近が操ってる時点で、こいつの行動、言動すべて左近である。

扇:そう、実は左近ってアイドルマニアで少女趣味なんだよなぁ。(笑)
では、その左近の叔母・橘薫子。信じられない話だが、刑事。
強引に自分のことを『薫子姉さん』と呼ばせ、子供でも考えないような安直な推理を披露し、最後は右近に馬鹿にされるという絵に描いたようなトラブルメーカー。
ただ、仕事に関してはかなり真面目らしく、毅然とした態度で容疑者達をまとめるシーンもあるにはあった。(笑)
左近が右近を使って変身することを容認しているあたり、実は凄く包容力のある人物かも知れない。
もっとも、結婚した男性が専業主夫を要求されるのはまず間違いないと思われる。(笑)

鈴:まぁ、確かに、この姉さんが刑事って、だいじょうぶか、警視庁!? って気はするわなぁ。
では、作品の本来的なヒロインの秋月四帆。
ある事件の話で出てきた秋月四姉妹の末っ子で、言動、行動ともに粗暴な少年っぽい様子だが、女のコらしいかわいらしさも見せるヒロイン気質。
通常ならば、事件が起きた話で終わるところではあるが、左近、右近コンビを追いかけてきて、薫子姉さんとともに、コンビのサブとしてメインキャラの仲間入りを果たす。
ショートカットの似合うかわいらしい子で、作品が終わらなければ、左近とのラブコメもきっと予定されていたに違いない。

扇:予定してただろうなぁ、あからさまに左近に惚れてたし。
しかし、右近がこの娘にセクハラ発言してたってことは……左近も……。(以下略)

鈴:それは言ってはいけない。
いちおう、左近と右近は、別にキャラとして描かれてるからなぁ。素で読めば、いわゆる人格のある人形、として見えるから、まぁ、いーではないか。
左近は、優秀な人形遣い兼推理の完璧キャラっぽく描かれてんだからよ。
内実は、右近そのものだとしても。

扇:つーか、右近を操り出すと、左近って人形っぽくなるんだよね。
こういう、『人形使いらしい雰囲気』ってのは上手く書かれてたなぁ。
事件は、をいをいってな感じのも多かったが。
ま、ミステリのネタバレするのもアレなんで、今宵はここまでに致しとうございます。
では、さーよな、らっ

鈴:そーねー、左近は右近使わないと、ただの気弱な優男だし。
……にしても、右近がいなけりゃ何にも出来ない推理もの主人公っていったい……。
ともあれ、私的に超絶的且つ最高に大嫌いな「金田一少年の事件簿」の二番煎じのそしりを受けつつも、キャラ的にはこっちのほうがよっぽどかマシな作品であります。
褒めたところがあんまりないような気はしますが、オススメ……しないでこの辺で逃げます。
と言うわけで、さよ~なら~

光の国の人だもの

2006-12-27 23:58:19 | 映像関連
さて、このブログに正月休みはない第757回は、

タイトル:ウルトラ戦士超技全書
監修:円谷プロダクション
出版社:小学館 てれびくんデラックス(初版:H2)

であります。

光の国の人々の技をカラー写真付きで紹介しているムック本です。

それだけです。

つーか――

他に表現しようがない。(爆)

しかし……初代ウルトラマンからして、やたらと技多かったんですね。
有名どころのスペシウム光線、八つ裂き光輪、アタック光線なんかはまだいいとしても、ウルトラ眼光、ウルトラ霞斬り、くすぐり戦法って何よ?(笑)
バリアーとかテレポートとか反則臭い技も使ってるし、ちょっと初代ウルトラマンを見直しました。(不遜)

全部通して読むと、製作サイドがいかに各ウルトラ戦士の差別化を図ろうとしたかがよく解ります。
とにかくアイスラッガーなセブン、ブレスレットが強過ぎて本体の影が薄い新マン、光線技がやたらと豊富なエース、いいとこ取りのタロウ――と、微妙に特徴を変えています。
それでも、ウルトラシリーズと言うとスペシウム光線を思い浮かべてしまうあたり、やっぱり初代って偉大だったんだなぁ、と思ってみたり。

後は、時代の影響もあるのでしょうが、肉弾戦ではプロレス技をよく使ってますね。
ヘッドロック、ネックハンギング、ドロップキック、ボストンクラブなどなど、有名な技が結構出てきます。
スポコン物を意識して作られたレオに至っては、ノーザンライトスープレックスまで使ってるし……解る私も私だけど。(爆)

突然ですが、ここで問題です。

ダイヤ光線  エース
フォッグビーム  新マン
シェイクハンド光線  セブン
エネルギー光球  レオ
リライブ光線  タロウ
光線白刃取り  初代

これらは、それぞれ誰の技でしょうか?
答えは各技の横に隠してありますので、ドラッグして確認して下さい。

当時を知る人にとっては宝物の一つ、かも。
ゲームとしてはかなりアレだけど、グラフィックはかなり頑張っていた『ウルトラマン・ファイティング・エボリューション』を遊ぶ時に、脇に置いておくと結構楽しいです。

植物生命?

2006-12-26 23:54:38 | マンガ(少女漫画)
さて、最近ちょっと余裕がない第756回は、

タイトル:ダークグリーン(文庫版全五巻)
著者:佐々木淳子
出版社:メディアファクトリー(初版:H13 単行本初版:S58)

であります。

お初の漫画家さんです。(新技)
R-ドリームと呼ばれる夢幻空間での戦いを描くSFアクション。
絵はちょっと粗かったりしますが、今でも読める作品です。



198□年12月20日。
世界中の人間が同じ夢を見た。
巨大な災厄に襲われる夢……それは後にR-ドリームと呼ばれることになる。

複数の人間が共有する夢世界――R-ドリーム。
人々はその中で、ゼルと呼ばれる悪夢と戦い続けていた。
ゼルは放置しておくと互いに融合し、巨大な悪夢と化して手が付けられなくなる。

複数の人間が見たという強力な戦士・リュオン。
R-ドリームから帰れなくなり、現実世界で死亡する人々。
そして、夢のどこかに存在するという謎の地――ダークグリーン!

数々の謎を前に、平凡な美大浪人生・西荻北斗の戦いが始まる――。



ネットゲームを先取りしたような世界観、これでもかと出てくる夢ならではの視覚表現、とにかく意表を突きまくるノンストップの展開などなど、二十年以上も前に描かれたとは思えないSF巨編です。

あちこち迷走してるけど。

主人公はグータラな美大浪人生・西荻北斗。
彼がR-ドリームを見て、それに興味を持ち始めたのが物語の始まり。
当初は、よく解らないままゼルと戦う大多数の一人でしかなかったのですが、数々の戦いを経て、次第にR-ドリームが存在する意味について考えるようになります。
夢の世界では常にゴーグルを付けており、なぜか取ることができないのですが……これにはある重要な秘密が――。(以下略)

で、北斗と常に行動を共にするのが、本作の裏の主人公・リュオン。
水色の髪の美少年にして、R-ドリーム最強の戦闘能力を誇る超戦士です。
R-ドリームから消えることがない(つまり現実世界に戻らない)という特徴があり、これは物語後半で重要な意味を持ちます。
見た瞬間に、「もしかしてトォニィ?」と言ってしまった私はかなり古い人間かも知れない。(爆)

序盤は無数に沸いてくるゼルをひたすら退治するのがメインですが、巻が進むごとに事態は二転三転。
リュオンが現実世界にやってきたり、R-ドリームの背後にいる謎の存在と接触したり、現実でR-ドリームを調査中に北斗が世界の終末を見たり、リュオン以外の強力な戦士達が現れたり……と、とにかく色んなことが起こります。
最初に書いたように、ところどころ迷走していると感じる部分はあるものの、次に何が起こるか解らないジェットコースターのようなストーリーは結構好みでした。

ただ、この作品……壊滅的なまでにオチがひどい。
意思とは? 宗教とは? 人類とは? 自然とは? 生命とは? といった壮大過ぎるテーマをなし崩し的に放り込んでしまったため、殆ど放り投げの状態で終わってます。
エリア88の主人公じゃないけど、「何のためにR-ドリームはあったんだ!」とか叫びたい気分。

うーん、オススメするかは……微妙。
佐々木淳子の最高傑作なのは間違いないんですけどねぇ。



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裁かれるっ!

2006-12-25 23:50:18 | ファンタジー(異世界)
さて、まだまだ序盤な第755回は、

タイトル:砂の覇王3 流血女神伝
著者:須賀しのぶ
出版社:集英社 コバルト文庫(初版:H12)

であります。

須賀しのぶの長編ファンタジー『流血女神伝』シリーズの第二弾『砂の覇王』の三巻目。
エティカヤの第二王子バルアンの後宮に入ったものの、見事にそこから転落したカリエのその後を描きます。
今回の表紙はそのバルアン王子。杯掲げて、何か妙に嬉しそうです。ところで、彼の脇に控えている美少年は誰でしょう?(笑)



カリエは、サジェに毒を盛った疑いで投獄されていた。
直接毒を運んだ侍女は既に自害しており、真相を確かめる術は無いに等しい。
処刑を免れる方法はただ一つ……バルアン王子に直訴し、無罪を主張するのである。

結局、カリエの努力は無駄に終わった。
バルアンは最初から釈明を聞く気などなかったのだ。
強い者が生き残ればいい、という彼の論理に憤慨したカリエは、すべてを呪いつつ砂漠に逃走した。

実直な武人・ヒカイに助けられ、カリエは紙一重のところで死を回避する。
だが、後宮から逃亡しようとした者は死罪……状況が好転したとは言えない。
果たしてカリエの運命は――?



『カリエさん諸国コスプレ漫遊記』って何よ?

いや、本巻のあとがきにそう書いてあったのです。
もっとも、これが冗談ではなかったりするのが本シリーズの恐ろしい所ですが。
何せ主人公が、生まれながらのサバイバル娘・カリエですからねぇ……。(笑)

『帝国の娘』では、猟師から皇子に変身。
『砂の覇王』でやっと普通の女の子に戻れたと思ったら、奴隷、妾妃候補、厩番、死刑囚と来て今回は――秘密。
半ば以上作者の陰謀でしょうが、ここまで社会的地位が安定しないキャラも珍しいと思います。(賛辞)

今回の目玉は、そんなカリエをハメた犯人探し。
ミステリ話として良くできており、最後にどんでん返しも用意されています。
最後に語られる真相が、バルアンというキャラクターを描くための肥やしとなっているのも見事。

と言うか、今回の主役はバルアンですね。
今後重要なポジションを占める彼を詳しく描くのがメインです。
皇帝として苦労するドミトリアスのシーンもありますが、飽くまでバルアンの比較対象といった感じですし。

例によってオススメです。
おまけに、最後のページには曰く付きの某人物が出てきてたりして……続きが楽しみですね。(笑)



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いろいろな顔

2006-12-24 17:54:46 | 小説全般
さて、とりあえず図書館にあったのでまたの第754回は、

タイトル:愛はひとり
著者:姫野カオルコ
出版社:集英社 集英社文庫(初版:H11 幻冬舎刊初版:H7)

であります。

図書館に、と言いつつも三部作のあと1作がないので別のばっかり読んでるよなぁ。
とは言え、これもまただいぶん毛色の違う作品を5編収録した短編集。
例の如く各話ごとに。

「夢みるシャンソン人形」
文筆業で生計を立てている私。
ひとりである私は、目を覚ましてから多機能電話機の#を押して、合成音声の時刻を聞く。
起きて食事をしたり、思い立ってコンビニへ行ったり、冷え性が酷くて裸足でいられない自分とは違う、裸足でパンプスを履ける女に嫉妬したり、そして高志のことを考えたりする、ひとりである私の生活。

「つけぼくろ」
男の人は女の人のミステリアスな部分に惹かれる。
他愛ないミステリアスに女性性を見る他の女の人たちとは違う、理路整然とした私。
だから諦めを持って接する男性たち……そんなときに時々ちょっとした立ち話をする読売新聞の配達の青年にもひとりきりの心は、最後には諦めに傾く。

「しかし、まだ旅は続く」
駅前に乾電池を買いに行った帰り、よく乗るが決まった区間しか乗らないきいろい電車。
「ペペ・ル・モコ」という名前の男が登場する映画のことを思い出せない私は、何気なくきいろい電車に乗っていつもは行くことのない場所へ短い旅をする。

「水の中の環」
できたばかりのビルの最上階にある会員制のフィットネスクラブ。
そのプールで泳ぐ私は優秀な占い師である。
いつもの時間、ほとんど泳ぐ会員のいない時間、見かけるのはいつも白い水着を着た女のひとと、監視員の青年だけ。

ひどく関係を匂わせるふたりと、占い師であるためにひとりでいる私。
いつかの日、ふたりは私に見せつけるように、存在していないかのように睦み合う媚態を見せる。

「ジュテーム・モワ・ノン・ブリュ」
ある場所、ある部屋でαとβと名乗ったふたりは、ウォッカライムを傾けながら語り合う。
景色、食べ物、昔放映されていた番組のこと……。
#を押して合成の声を聞かないためにαは語る。

う~む……、ストーリー紹介を書いていて、はっきり自分でもどういう話なのか、まったくわからん……(爆)
著者あとがきに「主題や、ストーリーの展開や、それから意味や、そういうことはあんまり考え込まずに、気分で読んでもらえれば、と願う。」とあるが、まさにそのとおりであろう。

ストーリー性はかなり薄い。
一貫した物語と言うよりも最初の「夢みるシャンソン人形」の「私」のように「ひとりである」主人公の女性たちの姿を感じる、と言う読み方がふさわしい。
文章も、以前に読んだ三部作の2冊や「バカさゆえ・・・。」のようなものではなく、散文詩の装いを持っていて、具体の物語として読むことを困難にしている。
ただ、そうした散文詩の装いが逆に「感じる」ためには有効に働いているとは思うので、作品の雰囲気にはとても似合っている。

個人的にはより散文詩の匂いが強い「夢みるシャンソン人形」や、著者らしいエロティシズムが色濃く感じられる「水の中の環」がおもしろい、かな。
「つけぼくろ」は、三部作の主人公たちに似た女性像が描かれていて、「またこのタイプかいな」と思えてしまうところがマイナスかな。

しかしまぁ、これを読んで思ったけど、この著者の引き出しは多いねぇ。
滑稽にさえ見えるほどにがんじがらめの女性を描いた三部作、妙な感性で笑いを誘うパロディ、そして感性に極めて依存する散文詩的な本作。
三部作は同種だからひとつとしても、これだけ違う物語、文章、作風がありながら、やはり著者らしさを失わない作家は珍しい。

ただし、本作に限って言えば感性依存が強い作品だけに、読むひとをかなり選ぶだろう。
いろいろと意味づけることは可能だが、そうした読み方をするには苦労が多いだろうから、個人的には雰囲気に溢れていておもしろい短編集で良品だと思うが、誰にでもオススメというわけにはいかない。

懐かしさのみ

2006-12-23 15:33:42 | 小説全般
さて、いらんトラバのおかげで単語に気をつけているの第753回は、

タイトル:美しい雲の国
著者:松本侑子
出版社:集英社 集英社文庫(初版:H10)

であります。

版画による挿絵が多用された、どちらかと言うと児童文学に近い作品。
ストーリーは……、


30歳になる児童文学作家の村上美雲は、出版社の打合せまでの時間、図書館にいた。
そこで過去の自分とおなじように本を読む少女の姿に、小学生のころ、毎年夏休みになると出雲のおじいさん、おばあさんの家に行く数週間のことを思い出す。

10歳の夏休み、いつものように祖父母の家にいた美雲は、ラジオ体操を行っている神社で見慣れない少年を認める。
ラジオ体操のあとの1回のかくれんぼ、または鬼ごっこを眺め、帰っていく少年……つよしくんこと、佐々木剛を追いかけた美雲は、そこでつよしくんが東京から来たことを知る。
それと同時に、とてもきれいな目をした少年であることも。

それから美雲の誘いでラジオ体操後の遊びに加わるようになったつよしくんと、何かと話したり、カブトムシを取りに行ったり、おじいさんと釣りに行ったりと、仲良くなっていく。
しかし、弟の病気で出雲のおじさんの家に預けられていたつよしくんは、美雲の弟が生まれた日、突然の出来事で東京に帰っていってしまっていた。


ん~、まずはやっぱり、「ですます調」の地の文は、慣れない……。
基本的には30歳の美雲が昔のことを回想する、と言う調子の一人称なので、こうした「ですます調」が似合わないか、と言うとそうではないのだが、個人的にはどうも……。

まぁ、そうしたところは目を瞑れば、10歳の少女が夏休みの間に出会った少年との淡い初恋や、いまはほとんど見られない懐かしい日本の風景(はっきりと時代は書いていないが、この夏休みのあと、オイルショックがあったとあるので、どういう時代設定なのかは自ずと知れる。)というものが十二分に感じられる穏やかな作品と言えるだろう。
裏表紙の作品解説に誇張もなく、そのとおりの作品になっている。

ただ、じゃぁそれ以外に何かあるか……と言うと、さして見るべきところはない。
穏やかな優しい雰囲気はとても感じられるので、そうした作品を読みたいときには向いているが、そうでなければちょっとオススメしにくい、かな。
もし、こういう話が読みたい、と言うリクエストがあれば、候補のひとつとして提示する。
そんな位置づけ、かと。

ホント、バカだ

2006-12-22 23:54:14 | 小説全般
さて、忘年会はさんざんだったねの第752回は、

タイトル:バカさゆえ・・・。
著者:姫野カオルコ
出版社:角川書店 角川文庫(H8)

であります。

なんか、妙にこのひとの作品読んでるなぁ……。
まぁ、おもしろいんだからいーんだけど。

さて、本書だが、従前の2冊とは趣をがらっと変えて、短編集。
しかも、すべてがパロディ短編で、短編のあとに著者のカルトガイドなるもので、解説(?)がされている作品集。

では、各話ごとに。

「奥様はマジよ」
ラリー・テイトは、あるバーで、ある女性を心待ちにしながらマティーニを傾けていた。
いくつかの客に落胆しながら待ち望んでいたサム……サマンサ・スティーズンスと待ち合わせ、ふたりは妻のいる男と、夫のいる女と言う禁断の恋に燃えていた。

だが、ある一室でふたりが睦み合っているところへ喋る豚が現れ、さらに探偵気取りに突然天井から落っこちてきたクララおばさんが現れ……。

「りかちゃんのお引っ越し」
あるおうちの「ぬば たま子」さんの家にある、ハウスに住んでいるいずみちゃんは博品館からやってきたりかちゃんに、仲のよかったボーイフレンドの渡くんを奪われ、復讐に燃えていた。

あるとき、渡くんがおらず、いずみちゃんとりかちゃんがおなじハウスにいるとき、おなじ場所から来たジョーをけしかけ、いずみちゃんはりかちゃんに復讐を企てる。

「かんちがいしがちな偉人伝」
良寛和尚は絵の天才で背中に薪をかつぎ、「このはしわたるべからず」の橋を渡る偉人……?

「美徳の不幸」
鮎原こずえは、友人のみどりの家を訪れ、その幸せぶりを見る。
しかし、自らはその何でも出来てしまう能力ゆえに、結婚した相手との別れに直面していた。

「困ったじょー」
力石徹は、不意の暴漢によってあるところへ連れられ、そこで思いがけないものを見せられる。
矢吹ジョーに顎を折られてボクサー生命をたたれたウルフ金串を始め、因縁ある相手とともに、思いを殺して接してきた令嬢、白木葉子の拘束された媚態が目の前に現れた。

もうひとつ。
西は結婚した紀子とともに平穏な日々を送っていたが、そこには秘かなわだかまりが残っていた。
妻である紀子を抱きながらも、それを果たせない西は、男の弱点を目撃され、それをきっかけに紀子とのめくるめく体験を経験するが……。


「タクシー・ドライバー」
不眠症のタクシー運転手の男は、夜、11歳の少女を乗せ、言われるままに渋谷へ向かい、そしてそのまま家に送り届ける。
そこで少女は、親方の命によって春を売る商売を幼いながらさせられていることを知る。
あれこれと話している中で、男は、少女の名がサリーであることを知る。

「ケンちゃん雲に乗る」
ケンちゃんこと、大月賢治は、自意識が強かった=恥を知っていた。
そんな彼に、雷神タカギブーが与えた靴によって、日本全国を旅する中、保険のセールスマンを装って入った家で理屈ではない愛を、その家の夫人に見る。

……えー、ふざけてんのか? と言う言葉は却下(笑)
と言うか、ほんとうにパロディ。
ドラマの「奥様は魔女」、着せ替え人形の「りかちゃん」、スポコンバレー漫画の「アタックNo.1」、一世を風靡した「明日のジョー」……などなど、著者が子供時代から見て、読んで、知っているドラマやマンガと言ったものを、エロティックに、ユーモアたっぷりに、且つちょっとシュールに描いた短編と、その懐かしい作品にまつわる著者の感性に満ちたカルトガイドの二部構成。

いやぁ……単純におもしろいね(笑)

妄想にまみれた短編も、様々な文体、雰囲気でそれぞれ異なるユーモアとエロティックが混在しておもしろいし、カルトガイドも、ほんとうにカルトな著者の見方や感性が十二分に窺えて笑える。
妄想を作品にするとくどいだけのものが多いのだが、これはけっこうからりとしていて、そういうくどさも薄く、短編に散りばめられたネタの出所がわかれば、かなり楽しめるパロディになっていると思う。

ただ、コアなファンにとっては、「ふざけてんのか、この著者」と思えるくらいのネタがあったり、カルトガイドの著者の見方などは、額に青筋が立つくらいの代物になっていたりする可能性が大なので、そうしたひとには向かないだろう。

そうでなく、またこうした時代のネタを多少なりとも知っているひとにとっては、かなりおもしろく読める作品ではないかと思う。
一部、オススメできないひともいるけれど、大部分のひとにとってはオススメできるパロディ小説集と言えるだろう。