つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いまさらですが

2012-06-17 16:12:51 | マンガ(少女漫画)
さて、この人を紹介してなかったんだなぁの第1019回は、

タイトル:革命の日続革命の日
著者:つだみきよ
出版社:新書館 ウィングスコミックス(初版:'99、'01)

であります。

マイナーだけど、おもしろくて好きなマンガ家さんだったのに、目録を見て紹介していなかったことにちょっとびっくりです(笑)
まぁでも、何年ぶりかに段ボールから引っ張り出してなのでしょうがないかとも思ったり……。

さて、ストーリーですが、

『父親との確執に悩む高校生の吉川恵(けい)は、いつものように友人であり仲間である鳥羽、立待、神明とともに屋上にたむろっていた。
いつものバカ騒ぎをしている中、恵の身体には変化が起こっていた。このところ、妙に身体が痛むのだ。
そしてついには倒れて病院に運ばれた恵は、驚愕の事実を教えられる。

「検査の結果、君は女の子だったんだよ」

染色体の異常や遺伝子伝達のミスやらなにやらで稀に見た目は男性なのに、染色体が女性だったりする場合があるらしい。
15年間、男として生きていた恵。――しかし、このことをきっかけに女として生きていくことを決め、父親との確執も解消され、新しい人生、家族を歩むことにしたのだが……。

そうは問屋が卸さない。
学校に事情を話し、半年間の休学を経て、「同じ高校」に吉川恵(めぐみ)として入学した恵。サポート役で世話になっている病院の医者の姪、豊麻琴とともに新たな学校生活を平穏に送ろうとするのだが、同じ高校に入学したと言うことは、いつも屋上でたむろっていた仲間たちや、元クラスメイトに出会う確率はかなり高いわけで……。

案の定、疑惑の目を向けられる恵。
麻琴のフォローも虚しく、事情を洗いざらい元の仲間たちに白状した恵だったが、元仲間たちの反応は――ちょうどいい、だった。
もともと男でいたときから女性的な顔立ちで仲間内ではマスコット的な扱いを受けていたこともあり、仲間たちは完全に恵を女性として見る目に。
半年前までは男をやっていたのだし、しかもそのときの仲間が完全に女を見る目に変わってしまったことに混乱する恵。

男と付き合うなんて無理。しかもある事件がきっかけでほとんど男性恐怖症に陥った恵は一生麻琴の世話になると宣言するも、仲間たちの追及の手は収まらない。
あれこれと仕掛けてくる仲間たちから逃れるために、夏休みはほぼ毎日麻琴の家に逃げ込んでいた恵は、そこで麻琴の弟の実琴に出会い……』

マンガの世界ではなく、実際に稀ではありますがあるようですね。
続のほうに、ファンレターとして送られてきた手紙の中で実際に性別を変えて生きることにしたことを綴ったものが紹介されていて、事実は小説よりも奇なりを地でいくのもあるんだなぁ、と思います。

それはさておき、ストーリーですが、あらすじのとおり、染色体は女性と判断された恵が、女性として生きる決意をし、男時代に仲間だった連中に追い回されるのが「革命の日」の展開。
「続革命の日」は、相変わらず迫ってくる元仲間たちから逃げつつも、麻琴の弟の実琴と出会うことによって変わっていく恵を描いたもの。

基本、コメディです。
最初の話だけは、父親との確執が描かれていてシリアスな部分もありますが、それ以降は迫る仲間たち、逃げる恵の葛藤をおもしろおかしく描いていて、笑えます(笑)
当初、著者として「革命の日」だけで終わるつもりだったのですが、もろもろ指摘を受けてあまりに中途半端に終わってしまっているため、「続革命の日」が描かれるわけになったわけですが、個人的には「続革命の日」で実琴とくっついてくれて終わっているのでこれで完結でいいと思います。
あとがきなどで、恵の元仲間たちをひいきにしている人たちは、その誰かと恵をくっつけて欲しい、と言う意見もあるだろうと書かれていますが、まぁ、そのとおりでしょう。
ですが、どのキャラとくっつけても角が立つので、実琴という新キャラを持ってきてくっつけるほうがいちばん角が立たないとは思うので、これでいいのかと……。

キャラは、いちおう個性の説明はされているものの、元仲間たちは十把一絡げの扱いが多いので、仲間たちについてはややキャラが薄い印象があります。
と言うか、たいていセットで登場してくるので仕方ないところではありますが。
麻琴も当初の印象からかなり腹黒く変わっていっていて、ブレが見られます。(まぁ、麻琴は腹黒が定着してからはキャラがしっかりしているのでまだいいのですが)
始めからキャラがしっかりしているのは、主人公の恵と、実琴くらいでしょうか。
まぁ、それでもマンガとしてはおもしろいから目を瞑っていられる範囲ではありますが。

総じてコメディとしての出来はいいほうだと思います。
キャラひいきによる賛否両論はあろうかと思いますが、オチは納得できるものでもありますし、二冊で終わってくれているのでお財布にも優しいですし、個人的にはオススメのマンガに入るのですが……。
良品として、手放しにオススメできるかと言えば、そうでない部分もあるわけでして……。
Amazonの☆なら4つは確実につけられるおもしろさだとは思うのですが、個人的なオススメだけで良品をつけるわけにもいかないので、ここでは及第とさせてもらいます。


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これも帯買いです

2012-04-06 20:54:29 | マンガ(少女漫画)
さて、何年ぶりだろうなぁの第1004回は、

タイトル:ひよ恋(1~7巻:以下続刊)
著者:雪丸もえ
出版社:集英社 りぼんマスコットコミックス(初版:'10~)

であります。

りぼんなんてホント何年ぶりでしょうねぇ、買うの。
昔はマーガレットでもフラワーでもりぼんでもなかよしでも何でも読んでたけど、いつ頃からか花ゆめ一辺倒になって、手を出さなくなったんだよね。

そんな中、本書の場合はまさに帯買い(笑)
本屋で平積みされていたのを一気に大人買い。暇つぶしににはなるかなぁ、程度の軽~い感覚で買ったものだけど……。

ストーリーは、

『西山ひより、15歳。入学式前日に事故で入院して、12月になってようやくクラスに復帰したものの……。
超がつくほど人見知りなひよりは、自己紹介すらままならない有り様。
それでも意を決して自己紹介をしようとした矢先、それを遅刻してきた男子生徒に遮られてしまう。
しかもでかい。140センチしかないひよりに比べて、男子生徒――広瀬結心ゆうしんの身長は190センチ。その差は50センチ。

出会いからしていい印象はなかったのに、結心とは席が隣同士。
平穏無事に過ごしていきたいのに、結心と並ぶと背の低さは際立つわ、結心は結心でクラスの人気者で人は集まってくるわで心休まる時がない。
性格も身長もまるっきり正反対なひよりと結心。

けれど結心のおかげで、復帰1日目からクラスメイトに名前は覚えてもらったりと悪いことばかりではなかった。
最初は騒がしくて失礼な人だと思っていたけれど――

翌日――結心とともに日直になったひより。でも結心は相変わらず授業中は爆睡中。
仕方なしに日直の仕事をひとりでこなそうとして、黒板を消そうとしたひよりは、とある恥ずかしいアクシデントに見舞われ、耐えきれなくなって教室を飛び出していってしまう。
それを追いかけてきたクラスメイトたちの中から、ひよりを見つけたのは結心。
結心の説得でようやく持ち直したひよりは、そのまま結心が提案した雪の積もる校庭へ。

クラスメイトたちと一緒になって授業をサボって雪遊びに興じるひより――最初はいい印象はなかったけれど、結心のおかげで笑顔を取り戻すことができていた。
自分とはまるで正反対な結心――その優しさに触れてひよりは結心を好きになって……』

注:以下、書評と言うより感想です。あしからず。

いやぁ、りぼんらしい、とてもかわいらしいお話ですね、はい(笑)
上記あらすじは概ね第1話だけだけど、この後、結心発案のクリスマスパーティ――実はひよりの歓迎会があったり、当面のライバルである富永妃が出てきたりとストーリーは進んでいくんだけど、ストーリー同様、キャラもいい子ばかりで和むこと和むこと(笑)
まぁ、掲載誌がりぼんなのでドロドロとはまったく無縁。
当面のライバルの妃とも衝突したりしないし、妃のイギリス行きが決まったあとも結心と妃のために協力したりと、何かとひよりは頑張っていく。

もっとも、極度の人見知りで内向的なひよりが、逃げ出してしまいそうな自分を小さな勇気を振り絞って行動する姿は、とてもかわいらしいので、まぁいいでしょう(笑)
と言うか、この作品の魅力は確実にひよりのかわいらしさにあると言っても過言ではないでしょう。
140センチという小学生並みの身長(高2になって142センチになるけど、結心も192センチになるので身長差は変わらず)、内向的だけどここぞと言うときに見せる小さな勇気など、逆にじれったさにイラっとする方もいるとは思うけど、概ね応援してあげたくなるかわいらしさでしょう。

他のキャラもだいたいいい子ばかり。
クラスメイトは基本、結心が好きなひよりに好意的だし、2年生になって出てくるキャラで若干意地悪なタイプがいるけれど、これも毒になるようなレベルではないし、学年が上がってもクラスメイトは仲良しばかり。
まったくあり得ないくらいのクラスの仲良しさ加減。まぁ、そこは結心の人徳と言うことで納得してもらいましょう(笑)

それにしても……まさか6巻でひよりが告って、結心がそれに応える、と言う流れはまったく予想だにしなかったなぁ。
ひよりのことだから、まだぐずぐずと悩んだり落ち込んだり、そのたびに浮上して――と言う流れが当分続いて、告白すらおぼつかない状況が続くんだと思っていたから、これにはびっくり。
ついでにバレンタインでも本命と思しき相手からはチョコを受け取らない結心がひよりと付き合うことにしたのにもびっくり。
まぁ、何かとひよりに気をかけてくれていたとはいえ、結心とこんなにも早くくっつくとは思わなかった。
結心が応える流れに説得力に欠けるきらいはあるのが残念とはいえ、付き合いだしたふたりが今後どうなるのかは気になるところ。

と言うわけで、総評に移るとして、良品としておきましょうか。
りぼんらしいかわいい作品だし、ドロドロしたところがないので、重い話などを読んだあとの一服の清涼剤には適した作品でしょう。
え? 評価が甘い?
だってひよりがちっこくてかわいいんだもの(笑) ちっこくてかわいいものが大好きな私なので、許してやってください(笑)


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やっぱりこの頃がいちばんかなぁ

2008-04-13 21:36:19 | マンガ(少女漫画)
さて、第963回は、

タイトル:瞳のなかの王国(全3巻)
著者:岡野史佳
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'92~)

であります。

初版が92年って……古いなぁ。16年も前だし。
……と言うか、岡野さんの作品は好きな作品がたくさんあるにも関わらず、目録見るといままで一度も紹介したことがないとは思わなかったなぁ。

てなわけで、先々週に引き続き、マンガネタですが個人的に岡野作品の中ではトップ3に入る本作。
ストーリーは、

『高校1年生の倉本深青は、朝のテレビで放映されていたイルカショーの話題に興味を引かれ、放課後、その水族館へ足を運んだ。
イルカショーはもう終わっている時間帯だったが、ショーが行われているプールへ向かった深青は、プールでイルカと親しそうにしている少年を見かける。

その少年はおなじ高校の1年生で、遅刻・早退は当たり前、無愛想で不良だと噂の幾見一矢だった。
けれど、水族館でイルカと戯れるときの姿に惹かれる深青は、水族館へ足繁く通うようになり、次第に一矢と、その友達であるイルカのドリー、水族館で働く一矢の従兄やトレーナーの雪乃と言った関係者と親しくなっていく。

そんな中、芸の飲み込みが早く、頭のいいドリーに言葉を憶えさせようとする試みをきっかけに、一矢とドリーを取り巻く環境は大きく変わっていく。
テレビの取材をきっかけにした騒動や、ドリーをより本格的な実験を行うために水族館から移動させる話……そうした中で、一矢は協力する代わりに条件を出した。

ドリーを海へ帰す……それがかなわなければ実験の話を呑む、と。
しかし、それは一矢にとって最悪の結果を生み出し、深青は様々に揺れる一矢の姿を見るに従って、より一矢に惹かれていく。』

平たく言えば、水族館で飼われているイルカのドリーを介して描かれる深青と一矢のラブストーリー……と言うことになるのだが、雰囲気をとても大事にする感性派の私にとっては、ストーリーもそうだが、それ以上に作品の中に描かれる「海」の青さや包容力と言った雰囲気に、十二分に浸れると言うのがこの作品が好きな最大の理由のひとつ。

とは言っても、単に雰囲気だけかと言うとそういうわけではなく、主人公でありヒロインの深青という名前や、タイトルにあるキーワードなどを効果的に作品中に織り込んで描かれており、作品そのものの作りもけっこうしっかりしている。
もちろん、深青と一矢ふたりだけの話ではなく、一連の中で別のメインキャラの話もあって、そうした話がより深青と一矢の特徴を際立たせていたりと、そつがない。

また、ラブストーリーとは言いながらもさぶいぼが立つようなタイプの甘々さ加減はほとんどないし、ラストのハッピーエンドもしっとりと落ち着いたものになっていて、恋愛ものが苦手なひとでもあっさりと読めるのではないだろうか。

ただ、全編通して透明感のある落ち着いた作品なので、盛り上がりには乏しいし、毒と言った要素は皆無。
そういうところはまったく期待しないほうがいい。
逆に、濃ゆい作品ばっかり読んで食傷気味のときの清涼剤としてはいいかもしれない(笑)

とは言え、手に入るかなぁ、この作品……。
岡野さん自体、もう白泉社から別のところに移ってるから古本屋以外で手に入れる術がないのは痛い。
つか、それでなかったらもうダメだしなぁ。
まぁ、読んでみたい、と言う場合には古本屋を気長に探し歩くしかないでしょう。

てなわけで、雰囲気を楽しめる感性派にはオススメの部類に入るんだけど、入手性の悪さとか、盛り上がりに欠ける展開と言った欠点があるので、文句なし……とはやはり言い難いかねぇ。
もっとも、全3巻で短く、あっさり読めるし、いいところもあるので、及第には違いないんだけど……良品とまではぎりぎり言えない、そんなところかな。



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ふたりとも健在

2008-03-30 17:17:18 | マンガ(少女漫画)
さて、こんなもんが出ていたとはの第959回は、

タイトル:WジュリエットII(1~2巻:以下続刊)
著者:絵夢羅
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'06~)

であります。

いやぁ、図書館通いすると本屋なんかにそうそう立ち寄らないもんだけど、久々に寄ってみたらこんなもん見つけてしまった……。
もともと演劇部を中心とした学園ものの前作「Wジュリエット」がけっこう好きだったので、懐かしさもあってめずらしく買っちまったよ(笑)

前作は第250回で紹介(古っ!)しているので、前作のほうはそちらを参照していただくとして、この「II」は、著者も言っているけれど、番外編的な要素が強い。
もちろん、主人公はヒロインの三浦糸とその彼氏の成田真ではあるけれど、話そのものは脇のメインキャラに焦点を絞ったものがほとんど。

では、ストーリーは、

『父親との賭にも勝ち、役者への道を進むことが出来た真と、やはり同じように役者として劇団に所属し、演劇に精を出す糸。
そんなふたりは20歳になって、入籍。一緒に暮らすようになったのはいいが、高校3年間、女装生活で男に間違われなかったほどの真は、舞台の出演をきっかけに大ブレイク。

とうとう芸能プロダクションと契約するまでになった真は、モデルに映画などなど、忙しい日々。
糸は劇団とバイト。しかもプロダクションとの契約の関係で結婚していることは伏せなければならない状況。

だが、そんな複雑な状況に陥ってしまったふたりのもとへ、高校時代から仲のよかった友人(それ以外含む(笑))や三浦家の兄弟たち、成田家の姉妹たちからいろんなトラブルが……』

上にも書いたとおり、基本的な話の流れは脇キャラを中心とした話の中で、糸と真の生活が描かれた短編連作……っぽい感じの話。
糸と真のほうは同じ映画の主役とヒロインをやったり、相変わらずのラブラブっぷりを披露してくれてはいるものの、前作よりは糖度は低め。

それもそのはず……というか、完全に脇キャラたちのラブコメの話に糸と真が関わる、といった話がけっこうあって、前作みたいに始終ベタベタする機会がない、ってだけだったりするんだけど(笑)

とはいえ、糸と真の甘さ加減が薄くなったぶん、脇キャラの話のラブ度がかなり上がっていたりする。
だいたい初手から糸の兄とその彼女の結婚話だし、やっぱり糸の兄と真の姉の結婚話だったり、高校時代の友人と傍若無人街道まっしぐらの先輩とのラブコメだったり、相変わらずのラブコメ&ハッピーエンド。

でも、真の両親の話や、高校時代の友人、与四郎と美咲の不器用な恋人関係を描いたものなど、ラブ度抑えめでいい感じの雰囲気の話もあったりして、前作とはだいぶん趣が違う。
これくらいの甘さなら、さぶいぼ症候群の方でも何とか耐えられるのではないか、と思える短編もある。
テンポの良さも相変わらず健在だし、前作を知っている、もしくは好きなひとにはかなりオススメできる続編ではないだろうか。

ただ……その前作ってのが……糖度100ってくらいのげろ甘マンガだし、続編ってことで前作を知らないとわからない部分も多いので、これを単品で読むとなると極めてオススメしにくい。

総評としては……う~ん、悩む……。
読みやすさは断然こっちのほうが上なのだが、読者限定ってのがやっぱりネックだよなぁ。
てなわけで、好み云々を除いても、ぎりぎり崖っぷちの及第ってとこか。
これで前作並みに糸と真のラブコメ一本だったら落第だったんだろうけどね。



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甘々です(代理)

2007-12-30 18:41:22 | マンガ(少女漫画)
さて、代理とはいかに? の第933回は、

タイトル:告白倶楽部1
著者:山本修世
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'04)

であります。

代理です。
ほんとうは、某所で森生まさみさんの話をしていて「夢限宇宙で恋をしよう」が読みてぇ! と思って探してみたのですが……ない……。
そんなわけで最近の作品で甘々で好きな作品、と言うことで選出。

最初に言っておきます。
タイトルからもわかるとおり、ベッタベタの甘々な短編集なので、さぶいぼ症候群の方は読まれないほうがいいでしょう(笑)

では、各話から。

○告白倶楽部
『読書部に所属する上田友來は、借りた本を忘れたことに気がついて図書室へ戻った。まだ開いていた図書室には、おなじ読書部で友來が好きな相手……真霜現の意外な姿が。
そんな姿を見てしまった友來は、現に口止めを要求される最中、現が好きな相手のはずの読書部の先輩に告白するための練習台になろうかと持ちかける。
告白倶楽部と名付けたそれにより、友來は現の練習台を勤めることになるのだが……』

ベタです。
と言うか、ストーリーは完全お約束。
身長176センチで見た目は凛々しく、お姉さまな雰囲気の友來だが、中身は少女小説大好きの女の子らしい女の子と言う設定だし、思わず口走ってしまった練習台で浮き沈みしたりと定番ネタはきっちりと押さえている。

まぁ、タイトルらしいお話で、ベタで甘々が好きなひとにはたまらないとは思うものの、これが読めなければこの後の話は読めないでせう(笑)

○Please tell me if you love me
『学校の理事長の孫で物腰柔らかく、人当たりがよくて人気者の花敷が好きな松宮雛子は、いつか告白したいと思っても出来ないでいた。
それは高校生になっても直らない幼児語。「さしすせそ」がまともに言えないからだった。
きちんと「好き」だと言いたい雛子が、放課後誰もいない教室で練習していたところにいつもの優等生とは違う花敷が現れ、幼児語のことを知られてしまうと同時に、花敷の意外な姿を見てしまう。
秘密を守るために出した花敷が出した交換条件。それは雛子の幼児語を矯正してやる、と言うものだった。』

幼児語が直らないと言うトラウマ、ってシチュエーションは初めてかも。
これはけっこう単純にヒロインの雛子の頑張る姿がかわいらしい作品。

○カウントダウン
『師走。突然、両親が福引きで当てた温泉旅行に行くことになり、美音子は同い年の弟、史郎とふたりで留守番をすることに。
受験間近というこの時期、そんな状況に置かれるとは夢にも思わなかった美音子は焦っていた。
史郎は両親の友人が事故で亡くなったことで引き取った血のつながらない弟で、ずっと好きだったから。
けれど、家族だからずっと一緒にいられると思っていた美音子だったが、史郎は全寮制の高校に推薦ですでに合格していた。
全寮制と言うことをそのとき初めて知った美音子は、この二日間をどう過ごせばいいのか、悩んでしまう。』

これは定番、血のつながらない姉弟もの。
内容も定番なので、さして見るべきところなし。
5編中、いちばんふつうの話でいまいちおもしろみに欠ける。

○空耳天国
『中学卒業も間近。伊藤綺沙は突然、彼氏から別れを宣告されてしまう。
問答無用のそれに愕然とするとき、元彼のいちばん好きだった声とよく似た芝に告白され、なし崩し的に付き合うことに。
派手めな容姿に似合わないおっとりした性格の綺沙は、いつその声にほだされただけの誤解だと言おうとしたが、見た目ではなくおっとりした性格をきちんと見てくれていた芝に次第に……』

これは1話目の告白倶楽部と同タイプのお話。
インパクトとしては初手の告白倶楽部があるので、どうしても二番煎じっぽい感じで見劣りしてしまうのが残念。

○少女眼鏡
『湖池春季は、1年生の中で最も怖いと評判の小野塚愁の眼鏡を踏んで割ってしまう。
極度の近眼でセミオーダーの眼鏡だったそれを割ってしまったことで、眼鏡が出来るまでの5日間、眼鏡代わりにさせられることとなった春季は、容赦なくあれこれとこき使われる日々を送ることになったのだが……』

う~む、これも定番、見た目怖いが中身は……と言うタイプの小野塚と天然で幼児体型の春季と言う凸凹カップルのお話。
ただ、それまでの4話と違ってヒロインの春季が見た目よりもしっかりしているのが特徴かな。
あと、目が悪くてむしろ手の感触から得る形とかを重要視する小野塚のクセがうまい具合に使われているところがいい。

……と言うわけで、久しぶりのマンガ。
つか、よくまぁ、私もこんなベタ甘のを平気で読めるもんだとしみじみ……(笑)
でも、定番好きで、甘い恋愛ものが好き、さらにハッピーエンドが好きなひとにはオススメできる短編集でしょう。
そういうのが苦手なひとは手に取らないことをオススメ(爆)

と言うわけで、個人的には好きな短編集になるんだけど、さぶいぼ症候群には向かないと言う時点で、良品の総評が勝ち取れるはずもなく、当然、及第ってとこで。



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見つけてしまった……

2007-09-23 00:17:19 | マンガ(少女漫画)
さて、一度思い付くとダメねぇの第905回は、

タイトル:7時間目ラプソディー
著者:田中メカ
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'06)

であります。

それなりに何度も読んだり、新刊をとりあえず置いとくのに、押入を使ってたりするんだけど、そこをDVD置き場にするために整理していたら、これが出てきたりして。
あ、これ記事にしてもいいかなぁ、なんて一度思ったりすると、一般書、ラノベと来て次がマンガだから一回りじゃん、とか思ったりして(笑)

そんなわけで、他のを読んでないわけではないのだけど、今回はマンガです。

さて、ストーリーは、

『高校2年生の藤堂倫子は真面目で頼れるクラス委員長。
……とは言いながら、実は少女小説が大好きで夢のような恋愛にも憧れる一面も。
ただし、普段はやはり真面目な委員長体質でクラスをまとめているのが常。

学園祭の準備中のあるとき、シンデレラのお芝居をやるはずだったクラスが何故か、ホスト(ホステス)系喫茶の看板を作成中。
企画変更になった理由は担任で現国教師の佐久先生の仕業。

準備室で恋愛相談室なんてのを開いているお気楽教師に文句を言いに行ったのはいいけれど、何故か喫茶店への企画変更を了承させられてしまうことに。
迷える子羊のための喫茶店企画。でも、まだ納得できない倫子を納得させるために、佐久先生は恋愛相談室の状況を見せることになるのだが……。

いろんな事情を垣間見ることで倫子も喫茶店の企画を納得するようになるとともに、お気楽なだけではなく、きちんとどんな相談にも真面目に取り組んでいる佐久先生を間近で見ることで……』

この作品はLaLaDXで1話読み切りとして始まり、3話で完結する、と言うもので当然タイトルに巻数がないことからもわかるとおり、1冊でおしまい。
あとに初期の短編「Light Right ラビット」というのが収録されている。

さて、メインの「7時間目ラプソディー」本編のストーリーだけど……。

ベタです。
問答無用に甘々です。(笑)

このお話、これ以外に書きようがない……(笑)
少女マンガ、少年マンガ問わず、王道とも言える生徒と教師という設定に、キャラも真面目だけど恋愛に夢見る倫子さんと、お気楽ふまじめだけど締めるところは締める佐久先生、と言う設定はお約束以外の何者でもない。

また、1話は学園祭、2話は3年生になって夏休みの合宿、3話は卒業に伴うクライマックスとネタも定番を押さえている。
ストーリー展開も、生徒と教師だから恋愛対象にならない、それをラスト(卒業)でひっくり返すと言う定番中の定番。

まー、何というか、こうやって記事にして書いてみると、「生徒と教師」「恋愛対象にならないと言うネタ」「各学校行事」「卒業時のクライマックス」というキーワードだけで、だいたいどんな話なのか、かなーり想像できるよね(笑)

とは言え、定番も突き抜けてしまえばぜんぜんOKで、ベタ甘(?)な恋愛ものにアレルギーのない私にはけっこう楽しめるお話だったりして。
逆に言えば、この手の話が耐えられないひとは、まずさぶいぼアレルギーを発症するはずなので100%手を出さないように、と忠告するね(笑)
まぁ、ある意味、さぶいぼアレルギーを検査するのには適しているのかもしれないけど(爆)

そんなわけで、ストーリーはお約束で安心できるし、ヒロインの倫子さんはかわいいし(爆)で個人的には好きな作品にはなるんだけど、オススメしやすいかと言われるとやはりアレルギーのひとには向かないわけなので、総評としては及第、かな。
ベタでも何でも恋愛ものが大好き、ってひとにはとてもオススメなんだけどね。

それにしても……ふと読み返してみて、これのどこが書評だ!? って気は(かなり)するけど、まぁ、そこはそれ、まだリハビリ中と言うことでご勘弁を(^_^;



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たまにはこっちも

2007-04-24 21:27:53 | マンガ(少女漫画)
さて、「ごっついで、をい」と言いたくなるような連休のことだよ、明智くんの第875回は、

タイトル:青色図書館
著者:林みかせ
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:H17)

であります。

私がマンガを紹介したのはかな~り前だよなぁ、と思ってカテゴリから見てみると、前に紹介したのは去年の9月3日でした……。
あれからもう半年以上、経ってんだなぁ……としみじみ思いつつ。

さて、マンガ、しかもおなじ花ゆめだけど……ストーリーはこちら。

『高校生の朝比奈麻衣は、学校の帰り道、ウィンドウに飾られていたワンピースに一目惚れ。
心惹かれるも1着なんと1万2千円なり。
すぐに手が出る値段ではないながらもやっぱり欲しい。

そんなとき、「時給1000円 日払い可」でしかも急募のアルバイト募集の貼り紙が。
勢い込んで募集に手を挙げたそこは、「青色図書館」という私設図書館だった。
本を読むなんてほとんどないくらい活発な朝比奈麻衣……通称ヒナだったが、時給の高さには勝てない。

かくして、本好きが集う図書館で、来客者に輪をかけて本好きな22歳の館長、通称先生こと、下籠谷あさぎ(草かんむりに杏)のお叱りを受けながら、ヒナのバイト生活は始まった。
そんな図書館でのバイト生活。
変わっているけれどどこかかわいい先生や来客たちとの触れ合いにヒナの中で図書館は大切な存在になっていく。』

ストーリーは、先生の祖父が残した膨大な蔵書を見てもらいたい、と言うことから設立された私設の「青色図書館」で、ヒナと先生のふたりの関係を中心に描かれる恋愛もの。
図書館でアルバイトを始める第1話から、ハッピーエンドとなる第4話までの1話完結の短編連作の形式となっている。
まぁ、もともとがLaLaDXで連載されていたもので、この雑誌はだいたい連載でも1話完結が基本なので、どうしてもこういう形になってしまうんだけど。

さておき、ストーリー展開のほうだけど、こちらはけっこうベタ。
快活で前向きなヒナに、無口でマイペースな先生。
正反対なタイプのキャラが出会って、ラブストーリーに移行すると言うところは定番のシチュエーションだし、第3話なんかは小説家の先生(下籠谷)のあとにデビューした新人が出たりして、ネタも目新しいものはない。
お約束なので安心できるとは言えるが、恋愛ものとして意外な展開とか、劇的な展開と言ったことはまったくないので、そういうことを期待してはいけない。
と言うか、恋愛ものには必須アイテム(?)とも言えるライバルが登場しない時点で期待しようにも出来へんって(笑)

まぁ、だいたいこの著者の作品、絵柄も関係はするんだけど、ほほえましくもかわいらしい作品が多い。
この作品も例に漏れず、「おまえら、小学生かっ!」とツッコミを入れたくなるほど進展しないヒナと先生の関係などはほほえましい以外の単語が見つからないくらい(笑)
また、毒もなければ、どろどろしたところも皆無なので、濃ゆい恋愛ものが好きなひとには向かないかも。

ただ、逆にたまに読むには清涼剤っぽい感じでいいと思うんだよね。
ラストもホッとするような綺麗な終わり方をしてくれているし、何より全4話なので1冊で完結しているところが手軽でいい。
置き薬……ってわけじゃないけど、気分を変えてあっさりしたのが読みたいときには最適だと思うけどね。

何冊か単行本は出ているけれど、個人的にこの著者の作品はこれが一番オススメ。
……と言うか、最初のシリーズ「地球行進曲」は「赤ちゃんと僕」の二番煎じで、おもしろいとは思わなかったのだが、「地球行進曲」以外の単行本や短編はなかなかだったりして……(笑)



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美ューム!

2007-04-23 19:50:45 | マンガ(少女漫画)
さて、GW? 何それ?な第874回は、

タイトル:毒師プワゾン
著者:魔夜峰央
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'90)

であります。

奇才・魔夜峰央の描く、耽美スプラッター・ホラー・アクションの傑作。
実は、『パタリロ西遊記』が出るまでは魔夜漫画の中で最も好きな作品でした。
一冊で終わっているので、ストーリーの奥行きでは『パタリロ西遊記』に及びませんが、キャラは文句なしにこっちの方が好きだったりします。
(三蔵様御一行も好きなんですが、それを圧してプワゾンのキャラがいい)



毒を使った暗殺を生業とする者達の総本山・毒師ギルド。
その本部で、一流の毒師であるプワゾンは裁判にかけられていた。
彼が若くして枢機卿の座についたことを快く思わぬ者達によって、罠にはめられたのである。

罪状は、依頼人の許可を得ず、その政敵を抹殺したこと。
だが、ギルドの長・毒皇までもが陰謀に加担しており、弁明は無駄に終わる。
処刑命令が下された瞬間、プワゾンは真面目な仮面を剥ぎ捨て、伝説の影毒で毒皇を仕留めた!

今までとうって変わって、尊大な態度で幹部達を仕切るプワゾン。
だが、死んだと思われた毒皇の反撃を受け、わずか三日で孵化し、肉体を食い破るという毒バエの卵を産み付けられてしまう。
やむなく逃走した彼は、毒バエの対処法を求めてある村を訪れるが――。



と言うわけで、超一流の毒師・プワゾンと毒師ギルドの戦いを描くホラー・アクションです。
本作の目玉は、何と言っても主人公のプワゾン! 物凄く格好良いのです!
黒髪で右目を隠した黒衣の美青年というビジュアルもさることながら、お茶目なアウトローという設定が絶妙で、これが少年漫画だったら軽く十巻は連載続けられるぐらいキャラクターが立っていました。

そもそも、第一話からして凄い。
毒師ギルドの幹部連中に囲まれ、もはや処刑を待つだけといった場面で軽く縄を溶かし、さっさと頭から潰してやるぜ! って感じで――

「毒皇! 死ねや!」

来たぁっ!(笑)
本誌でこれ見た瞬間、私、思いっきり吹き出してしまいました。
蝙蝠の形で宙を飛び、あらゆる毒を中和する光毒スクリーンすら貫いて敵を仕留める伝説の影毒――って、どう見ても毒じゃねぇだろ! という無粋なツッコミなど入れてはいけません。格好良ければすべて許されるのです。(をい)

これだけでも充分掴みはオッケーって感じですが、そこは魔夜峰央、まだまだネタは続きます。

古書に記されていた村で、プワゾンは毒バエの幼虫を体外に追い出す方法を発見しました。
しかし、身体の外に出た幼虫の群れが暴れ回り、村は潰滅の危機に陥ります。
襲い来る幼虫の前で上半身裸になり、背中を向けて薔薇の刺青を見せるプワゾン!

「これがプワゾンの、薔薇毒!!」

掛け声とともに背中から放射される溶解毒!
あらゆるものを輝きのなかに消し去ってしまうそれは、まるで無数のレーザービームのようです。
しかも効果音が――美ューム!(笑)

連載第一回目から凄まじいインパクトを与えてくれるプワゾンですが、その後も順調な活躍を見せます。
迫り来る追っ手をかわしつつ、ギルドの潰滅を狙うのが基本線なのですが、枝葉のエピソードがかなり楽しい。
毒師ギルドの見習い毒師をからかってみたり、若い女の子と男の子相手に二股かけてみたり(バイセクシャルとは言わず、「オレは博愛主義者だ」と断言するのがいい)、師匠と漫才しながら敵を迎え撃ったり、と、真面目なんだか不真面目なんだかよく解らない暴れっぷりは爽快です。

敵とのバトルシーンもなかなか見物。
超一流の毒師であるプワゾンに対抗するべく、ほぼ毎回、奇妙な連中が登場します。
対するプワゾンも心得たもので、爆裂毒や爪手裏剣など各話毎に新たな技を披露していました。
(しかしこの作者、本当に『伊賀の影丸』大好きなんだなぁ……)

魔夜ファンのみならず、バトル漫画好きには五重丸のオススメ。
愛だの正義だの関係なく、毒師ギルドを潰滅させるという目的のためだけに戦うプワゾンは、ある意味非常にストイックなキャラクターです。
しかし、これが花ゆめ本誌に連載されていたなんて、今じゃ考えられませんねぇ……。(笑)



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こういうロボット物もあり

2007-04-09 23:59:13 | マンガ(少女漫画)
さて、この人の絵も変わらないなぁ、な第860回は、

タイトル:もうひとつの神話
著者:清水玲子
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'86)

であります。

『輝夜姫』『月の子』などで知られるSF漫画家・清水玲子の短編集。
この方は長編よりも、こういった短編の方に秀作が多い……と思う。
例によって一つずつ紹介していきます。


『もうひとつの神話』……その宇宙船には、アダム、イヴ、カイン、アベル、セツ、リベカの計六人が乗っていた。人間はイヴ一人だけだが、彼女は他の五人がロボットであることを知らない。だが、ある日信じられないことが起こった。イヴが妊娠したのだ。形だけとは言え、彼女の夫であるアダムは大いに悩み――。
いわゆる、アダムとイヴ計画もの。たった一人の人間の人間・イヴのために尽くすロボット達の姿が美しい。清水玲子スターの一人・カイがゲスト出演しており、結構重要な役を担ってたりもする。あてどもなく宇宙をさまよっているように見せかけて実は……という展開は秀逸。

『ナポレオン・ソロ』……時は二十三世紀。女のヒモとして生き延びているセクサロイド・カイは、卵型のロボット・ナポレオンに喧嘩をふっかけた。彼が、主人と自分は恋人だ、などというふざけた自慢話をしていたからだ。ウデタマゴと馬鹿にされたナポレオンは決闘を申し込み、カイはそれを受けるが――。
ある意味、先週読んだ『われはロボット』の「ロビイ」、の続編とも言える話。主人が成長した時、子守ロボットはどうなるか? を、厳しすぎず甘すぎないタッチで描いている。主人が五歳の時にした約束にこだわり続けるナポレオンと、女を取っ替え引っ替えして生きる自分に嫌気がさしているカイ、二人の掛け合い漫才は非常に面白い。

『お伽話のユダ』……五年前、南米エクアドルの奥地で発見された空飛ぶ人間〈華族〉は、檻に入れられて人間の見せ物になっていた。母親と引き離され、イギリスに送られた華族の少女・タナーは、憧れの人物〈キル〉に会うために脱走を図る――。
今回のカイは何と女性として登場(何とまぁ芸達者な役者さんだこと)! 主役のタナーを食う活躍で、見事に最後まで女性役を演じきっている。ただ、ストーリーはイマイチ印象が薄い。

『100万ポンドの愛』……プレイボーイのカイは、ある日突然、ミズ・リーズナーなる人物の屋敷に招待された。余命約半年の彼女は、是否カイに会って話したいことがあるのだという。薄幸の美少女を想像したカイだったが、何と相手は80歳の老婆だった――!
古典映画を思わせるオシャレな作品。100万ポンドの保険金でカイを釣り、若い子顔負けの愛を振りまき、最後に見事なオチを付けて去っていくミズ・リーズナーに手放しの賛辞を送りたい。しかし本作のカイ君、本書の中で一番の道化役なのに、一番幸せそうに見えるのは気のせいですか?(笑)


なかなかに粒の揃った短編集です、オススメ。
これ以外で勧めるとしたら、『ノアの宇宙船』かなぁ……ま、それについてはまたの機会に。



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植物生命?

2006-12-26 23:54:38 | マンガ(少女漫画)
さて、最近ちょっと余裕がない第756回は、

タイトル:ダークグリーン(文庫版全五巻)
著者:佐々木淳子
出版社:メディアファクトリー(初版:H13 単行本初版:S58)

であります。

お初の漫画家さんです。(新技)
R-ドリームと呼ばれる夢幻空間での戦いを描くSFアクション。
絵はちょっと粗かったりしますが、今でも読める作品です。



198□年12月20日。
世界中の人間が同じ夢を見た。
巨大な災厄に襲われる夢……それは後にR-ドリームと呼ばれることになる。

複数の人間が共有する夢世界――R-ドリーム。
人々はその中で、ゼルと呼ばれる悪夢と戦い続けていた。
ゼルは放置しておくと互いに融合し、巨大な悪夢と化して手が付けられなくなる。

複数の人間が見たという強力な戦士・リュオン。
R-ドリームから帰れなくなり、現実世界で死亡する人々。
そして、夢のどこかに存在するという謎の地――ダークグリーン!

数々の謎を前に、平凡な美大浪人生・西荻北斗の戦いが始まる――。



ネットゲームを先取りしたような世界観、これでもかと出てくる夢ならではの視覚表現、とにかく意表を突きまくるノンストップの展開などなど、二十年以上も前に描かれたとは思えないSF巨編です。

あちこち迷走してるけど。

主人公はグータラな美大浪人生・西荻北斗。
彼がR-ドリームを見て、それに興味を持ち始めたのが物語の始まり。
当初は、よく解らないままゼルと戦う大多数の一人でしかなかったのですが、数々の戦いを経て、次第にR-ドリームが存在する意味について考えるようになります。
夢の世界では常にゴーグルを付けており、なぜか取ることができないのですが……これにはある重要な秘密が――。(以下略)

で、北斗と常に行動を共にするのが、本作の裏の主人公・リュオン。
水色の髪の美少年にして、R-ドリーム最強の戦闘能力を誇る超戦士です。
R-ドリームから消えることがない(つまり現実世界に戻らない)という特徴があり、これは物語後半で重要な意味を持ちます。
見た瞬間に、「もしかしてトォニィ?」と言ってしまった私はかなり古い人間かも知れない。(爆)

序盤は無数に沸いてくるゼルをひたすら退治するのがメインですが、巻が進むごとに事態は二転三転。
リュオンが現実世界にやってきたり、R-ドリームの背後にいる謎の存在と接触したり、現実でR-ドリームを調査中に北斗が世界の終末を見たり、リュオン以外の強力な戦士達が現れたり……と、とにかく色んなことが起こります。
最初に書いたように、ところどころ迷走していると感じる部分はあるものの、次に何が起こるか解らないジェットコースターのようなストーリーは結構好みでした。

ただ、この作品……壊滅的なまでにオチがひどい。
意思とは? 宗教とは? 人類とは? 自然とは? 生命とは? といった壮大過ぎるテーマをなし崩し的に放り込んでしまったため、殆ど放り投げの状態で終わってます。
エリア88の主人公じゃないけど、「何のためにR-ドリームはあったんだ!」とか叫びたい気分。

うーん、オススメするかは……微妙。
佐々木淳子の最高傑作なのは間違いないんですけどねぇ。



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