つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

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企画ではないよ

2006-04-30 21:38:35 | ファンタジー(現世界)
さて、これで9割8分かなの第516回は、

タイトル:Add 機械仕掛けのホムンクルス
著者:仁木健
出版社:角川スニーカー文庫

であります。

地球に衝突した隕石によって蔓延した致死性の極めて高いウィルス性の病気「隕石病」によって人口が激減した近未来の世界が舞台。
人口の激減による労働力不足などからロボットが活躍、そして人間とほぼ同等の知能を持つに至り、人権を認められた「無機人」とがともに暮らしている。

そんな時代に生まれた主人公のミナヅキ=コウという14歳の少年は、日本政府の指令を受け、内戦中に消息を絶った天才科学者兄妹を捜し、「適切な処置」をするために東欧のラトリアという国を訪れる。
身体を機械にし、隕石病によって超常的な能力を持ったコウ、そのメンテナンスを受け持つ無機人のミナ、そんなふたりと行動を共にするアイリーンの3人によるファンタジー。

ん~、いかにもラノベって感じだねぇ。
特にキャラが。
年齢はコウより上だが外見は年下にしか見えない無表情少女のアイリーンは、妹属性にツンデレ(でいいよね?)のオプション付き。
ミナは天然系のお姉さんキャラ属性。
途中から出てくる天才科学者兄妹の妹のほうのカレンは、イラストから見ると眼鏡をかけたお下げの少女。

まー、外してないなぁ、この著者……。
キャラ造形もステロタイプで、ホントにラノベらしいよなぁ。
そういうジャンルだから別にいいんだけどね。

ストーリー的には強い主人公が困難に立ち向かう、典型的な伝奇小説 or 少年マンガの展開そのままで、特にどうこう言うべきところはない。
こういう意味でもまたラノベらしい話なんだろうなぁ。

いちおう、コウの戦う理由が自分の妹絡みのトラウマだったり、対立する側の理屈をこねくり回してみたりと、キャラに深みを出そうとしたのだろうが、これもよくあるネタ。
……ってことは、キャラ、ストーリー、展開、ネタなどなど、すべてらしさ爆発か。
いかにもなラノベを好むひとにはけっこう楽しめるのかもしれないなぁ。
キャラ萌えも出来るだろうし。

文章は……最初のページを見た瞬間、ゴミ箱に投げそうになった……。
最初の1行目、引用すると、
「人間NOオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」(文字数も一緒)

……最初の1ページ全部こんな感じ。
途中にも効果を狙ってだろうが、似たような文章が随所に出てきて、そのたびに本を投げたくなったなぁ。
あと、流れもいまいち悪いので、読み返したりしないといけないことがそれなりにあったりして、文章的な好みの問題も含めると落第。

でも、昨日の「満月の夜、モビイ・ディックが」と較べると、まだこっちのほうがマシかな。
もっとも、ラノベらしい作品だから、少なくともラノベがすごい好き、ってひとになら、読んでみたら? って言えるからってくらいだけど。



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おぉっ、また男性作家だ

2006-04-29 19:45:57 | 恋愛小説
さて、2連続じゃんっの第515回は、

タイトル:満月の夜、モビイ・ディックが
著者:片山恭一
出版社:小学館文庫

であります。

「世界の中心で、愛をさけぶ」の著者ということだ。
……なんか名前だけは知ってるんだけど、読んだことがなかったんだけど、たまにはこういう有名なのも手に取ってみるか、と言うことで読んでみた。

えー、すいません、引用します。
「モーツァルトとバス釣りと家庭崩壊―。
地方の大学生・鯉沼のそんな日常は、同級生・香澄との出会いで一変する。それまでとは異なる色と輝きに包まれた世界。
しかし、香澄との距離感をなかなかうまくつかむことができない。
ある日鯉沼は、絵描きの友人・タケルの運転する水色のフォルクスワーゲンに乗って香澄と旅に出ることにするが…。
「人と人は完全には分かり合うことはできない」という認識に立ち、だからこそ相手を愛し受け入れる選択の大切さを問う「世界の中心で、愛をさけぶ」著者の青春恋愛小説。」

いやぁ、つまらなかったなぁ。

以上。

……なんかすんごい手抜き……(爆)
いや、評価はちゃんとするよ。
つまらない、のはつまらないんだけど、最後まで読んで思ったのが、ラストのほうの何十ページを除いて、そこに至るまでのストーリーって、あらすじくらいのことを知っていれば、ラスト部分だけ読めば十分、ってこと。

それくらい、まったく、何も、感じない。
読むのが苦痛とまでは言わないけど、全体通してさらっと読んで、さらっと忘れられる程度の話だったねぇ。
それくらい薄いし、中身の乏しい作品だね。

あと、主人公が嫌い。
……いや、まぁ、こういうジャンルならあり得るんだろうが、惚れた相手に一緒に暮らして朝モーツァルトを聞きたいとほざくヤツが身近にいたら勘弁してくれと思うぞ。
もちろん、これだけで嫌いというわけではないのだが、いちばん印象的なので、ね。

……にしても、なんかアマゾンのレビューを見ると村上春樹の「ノルウェイの森」の影響云々と書いてあって、全体的に評価低いなぁ、この作品。
「ノルウェイの森」は読んだことがないので何とも言えないが、この作品の評価が低いと言うのだけは納得。
あーあ、なんかやっぱりと言うか何というか、有名なのの著者、とか、ベストセラーとかの作品を手にすると、はずれが多いなぁ。
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イメージ違ったなぁ

2006-04-28 21:02:22 | ファンタジー(現世界)
さて、有名らしいねの第514回は、

タイトル:Missing 神隠しの物語
著者:甲田学人
出版社:電撃文庫

であります。

常に黒ずくめの格好をし、冷徹で傲慢だが圧倒的な知識量、独特の持論を展開する天才の空目恭一は「魔王陛下」と呼ばれる変人。
過去に神隠しに遭い、生還した経験を持つ空目は学校でひとりの少女と出会う。
あやめと言う少女は、その神隠しを起こす原因となる異界の少女。

空目自らあやめと接触し、そして神隠しに。
消えてしまった空目を神隠し……異界から取り戻すために文芸部の友人、近藤武巳、日下部稜子、木戸野亜紀、村神俊也はそれぞれの思いを胸に、神隠しに立ち向かう。

とストーリーはこんな感じかなぁ。

評価するなら、好みではない、と言うくらい。

神隠しをモチーフにした話で、題材としてはありふれたもの。
まぁ、ありふれてないほうが少ないので、こういうところが減点対象にはならないけど。

文章は、徹底した鳥瞰的な書き方で、そのせいだろうがひどく雰囲気が無味乾燥に感じる。
文章力としては申し分なく、これがデビュー作らしいのだが、デビュー作にしてはかなりしっかりしている。
文章面で言えば高評価のだが、キャラがねぇ……。
文章から受ける無味乾燥な雰囲気、高校生ながら年齢以上に大人びた、と言うより高校生じゃないだろ、おまえら、くらい現実にいなさそうなキャラから、総じてキャラがロボットのような印象。
さらに鳥瞰的なそれのせいでキャラの心理描写などもただ単にそれを事実として捉えられるだけで作品世界の中で生きていると言う感覚に乏しい。

まぁ、これが特徴と言えばそう言えなくもないのかもしれないけど……。

あ、でも近藤武巳、日下部稜子のふたりだけはそう言う感じはしないけどね。

で、一般的に見て、ラノベにしてはクオリティは高いだろう。
リアリティに難ありだが、キャラの立ち位置はしっかりしているし、ストーリーにも破綻はない。
ラストも思わせぶりで、あぁやっぱりねと言いたくなるラストではあるが、その分わかりやすいし、きちんとまとめている。

好みの問題やキャラ造形のことはあるにしても、全体として高い評価をしてもいい作品になっているだろう。
しかし、どうも……。
明らかに嫌いな傾向の匂いが著者からするところがねぇ……。

クオリティは高いので次……と言いたいところだけど、読むかはかなり微妙。
存在を忘れかけたころに間違って手に取るか、読む本に困ってかのどちらか、ってとこだろうね。

あ、そうそう、それとほとんど最初のカラーイラストのところを見てなかったから、あとから見たとき、「うわっ、ぜんぜんイメージ違うじゃん、こいつら……」と思ったのはホント(笑)



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気色悪いではない

2006-04-27 20:22:52 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、きっしょーだけで読むと……な第513回は、

タイトル:吉祥天女(文庫版全2巻)
著者:吉田秋生
出版社:小学館文庫

であります。

鈴:なんか最近ネタがないなぁと思うLINNで~す。

扇:寿司はあんまり好きじゃないSENでーす。

鈴:ふっ、お子様だな。
私はカッパ巻きなら大好きだぞ。

扇:トロ食えよ。

鈴:そんな金がどこにある!

扇:貧乏人はほっといて。
好きなネタもないではないぞ、イクラとかタマゴとか穴子とか。

鈴:なら、今度来たときのSENの飯は寿司、もちろんたっかいヤツだな。
なに、私はふつうに500円もしないうどんでも食ってるが、気にするな。

扇:だから寿司は嫌いと言うておろうが。
500円もするコンビニうどんってやだな……。

鈴:なに、回転しないところならいくらでも好きなネタは食えるぞ。
もちろん、私は行かないからひとりで思う存分食ってくれ。
だが、コンビニうどんでも500円するのはありそうだなぁ。

扇:天馬回転?

鈴:寿司ネタに天馬が乗ってるのか?
どれだけでっかいしゃりやねん。

扇:こんな感じ。(画像を送信)

鈴:(受信して展開)
……どれだけでかい回転寿司のベルトコンベアがいんねんっ!

扇:見た目、1メートルぐらいはあるね、これ。
ところで、今日の夕食は?

鈴:みぃとそぉすすぱげっちにガーリックトースト

扇:君の世界ではガーリックトーストにスパゲティを挟むのかっ?

鈴:焼きそばパンじゃあるまいし、んなことはせんわい。
余ったみぃとそぉすを処分するためのパンだな。

扇:ガーリックトーストにミートソースって……合うの?

鈴:なに、飲んでりゃ味があれば何でもよいわさ。

扇:こっちは、マ○ーの『ちょっと贅沢なミートソース』にパスタだ。
何となく、勝ったな。

鈴:……(確認中)
……なんだ、一緒じゃないか。
残念だが、パンがあるだけこっちの勝ちだな。

扇:普通の百円の奴より美味しいんだよな~、ちょっと高いけど。
パンなど腹の足しにもならんわっ! 米を食え、米を!

鈴:米? 今日の昼飯に米は食ったぞ。

扇:えーと……何かズレてないか?
どうした? 既に酔ってるとはいえ、何か海苔が悪いぞ。

鈴:別に海藻は何も悪くないと思うぞ。
ひらひら、うにうに、へろへろしてるだけだし。

扇:うにうにはしてないぞ、自力で動かないんだから。

鈴:他力では動いてるぞ。
じゃぁ、うにうにの代わりにくにくにでどだ?

扇:くにくにも自動で動いてる~!
ぐにぐになら、なんか触った感触って感じでいいな。

鈴:ぐにぐに……。
じゃぁ、むにむには?

扇:それ、ヤラしいから却下。

鈴:なしてだ。
ぷくぷくしたお子様のほっぺなんかそんな感じじゃんか。

扇:それは、ぷにぷに。

鈴:あぁ、それもいいなぁ。
でもぷにぷにと言うと、犬とか猫のにくきゅぅを思い浮かべてしまう……。

扇:『う』がちっちゃいのがポイントだな。
で、何でよゐこの擬音教室になつているのかね? 成分の83%が乙女心でできているlinn君よ。

鈴:私はLINNだから乙女心では出来ておらんぞ。
49%が毒物の相棒よ。

扇:大丈夫、42%は苦労で出来ている。
つーか、今日は苦労してる気がするぞ……糊の悪いリンリンのおかげでな。

鈴:うわ、ねばねばしそうでやだなぁ>糊
じゃぁ、この辺にして作品紹介でもすっかね?

扇:怪しさ全開の転校生が、次々と邪魔者を排除していくお話です……終わり。

鈴:短っ!
まぁ、だいたいそんなもんだから他に言いようがないよなぁ。
じゃぁ、ストーリーと来ればキャラ紹介だな。
……っと、その前に……。

つれづれ読書日記、進化中?


『作家別目録』、更新してます、多分。
『怪しいページ』は……来週書きます。
御覧になりたい方は、最新記事の『目録へのショートカット』、もしくはこちらから!


つれづれ読書日記

鈴:と言うわけで、主人公の叶小夜子。
炎……もとい、謎の転校生で度胸満点、怪しさ爆発、おまけに美人ときっと女子校なら「お姉様」と呼ばれるに違いないだろう。
さらに、ヨーヨー持った女子高生警察官も真っ青の腕っ節が自慢。

扇:違うやろ。
やり直し~!

鈴:と言うわけで、主人公の叶小夜子。
美人の転校生だが、すぐにクラスの溶け込む実は裕福な家の娘さん。
もともとは天女と結婚した家系の出とされ、そのうちお迎えが来て月へ帰っていってしまうひと。

扇:舐めとんのか、われ。
はい、もう一回!

鈴:と言うわけで、主人公の叶小夜子。
謎(?)の転校生で美人さん。
楚々とした感じで、クラスの女の子にはかなりいい感じだが、その実、家の財産を狙う叔母やそれと関係のある建設会社の人間を次々と死に追いやるしたたかなひと。
ちなみに、忠犬ハチ公をお供に連れている。

扇:合ってるんだが微妙だなぁ……。
六番目の小夜子のサヨコさんのモデル。(嘘)
いわゆる、長髪黒髪のクールな美人……を主人公にしてしまったらどうなるだろう? といったキャラ。
光の世界に身を置きつつも、自分がそこに入っていけないことをよく知っている、ある意味かな~り寂しい人。
ちなみに、この子が涼に惹かれたのはよく解る……解りたくないが。

鈴:じゃぁ、次は……。
……次は……。
誰にすべ?

扇:遠野涼、小夜子の同級生。
小夜子の復讐の対象……にはならなかったが、関わりすぎたため、自分で自分を追い込んでしまった不幸な少年。
表面上は突っ張っているが実は常に受け身で、すべてを知ることが出来る位置にいたにも関わらず、狂言回し以上になれなかった非力な人物。
最後まで小夜子に振り回されて終わったが、その弱さ故に彼女に愛された。

鈴:じゃぁ、麻井由似子。
男嫌いの小夜子のクラスメイトで、小夜子からすれば純粋でかわいらしい子。
僅かなエピローグで、小夜子に憧れられてる感じではあるけれど、特に何事もなく、小夜子の策略関係とも接点なく、何となくいるなぁくらいの感じのひと。

扇:その兄、麻井鷹志。
当初は由似子と同じく光の世界のほやっとした人、という感じだったが、裏事情を知る内にキャラ性能が向上、最終的にすべてを見届ける神に近い立場まで成長した。
もっとも、最終的に何も出来ないのは涼と一緒で、小夜子の犬に噛みついて終わった。
短期間の内に小夜子に認められた、希有な人でもある……ある意味勇者。

鈴:小川雪政。
小夜子の犬、忠犬ハチ公、ロリコンの属性を持つおっさん。

扇:そんなとこかね。
あ~、あいつ誰だっけ、最後まで小夜子に噛みついてボロ負けした奴。

鈴:暁ね。
悪そ~な顔つきしながら、完全に小夜子に遊ばれてたな、こいつ。

扇:道化だからな。
ここまで書いてて思ったが、要は小夜子の一人勝ちなんだよな、この話。

鈴;ひとり勝ちどころか、最初から小夜子ひとりの話だしなぁ。

扇:孤独だねぇ……そこに憧れた方も多いのだろうが。
性別は違うが、同じ作者が描いた『BANANA FISH』の主人公アッシュ・リンクスによく似ている。
はて、終わっとくかね? お疲れモードのようだし。

鈴:そうだね、終わっとくか。
しかし、ホント小夜子ひとりの話だから脇のキャラが薄い話だよなぁ、これ。
小夜子のどろどろっぷりは、まぁなかなか読めたとは思うけど、もっとどろどろしててもいいよなぁ、とも。
ではでは、この辺で、さよならさよならさよならっ

扇:終わっときましょう。
脇でも好きなキャラはいるんだが、押されてるよなぁ。
途中でキャラの性格が変わっちゃったりする不安定な作品ですが、小夜子さんの最強っぷりに引かない方にはオススメです。(微妙な言い方だ……)
ではこの辺で、さよーならぁ~
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左肩下がり? いや、右肩下がりだろうなぁ

2006-04-26 21:18:03 | マンガ(少年漫画)
さて、これも紹介してなかったなぁ、の第512回は、

タイトル:カムイ外伝(全十二巻)
著者:白土三平
文庫名:小学館文庫

であります。

階級社会からの脱却をはかり忍びとなったものの、そこにも厳然と存在する支配の構図を知り、抜け忍となってさすらう天才忍者カムイの戦いを描く娯楽大作。
本編である『カムイ伝』の物語がカムイの個人的闘争から社会全体の戦いにシフトしていったため、出番の減った主人公を描くために出来た作品です。(たぶん)
内容的には初期の作品に近く、思う存分忍者戦を堪能できます。

主人公のカムイが格好良い、これに尽きます。
超一流の忍者で、常に追われる身のアウトローで、そんな境遇にありながら他人の命を尊重してしまうとゆー、出来杉君のようなキャラクター。(笑)
左右のフェイントから変形居合い斬りをかます『変移抜刀霞斬り』、バックドロップにしか見えない『飯綱落とし』等の秘技は、作品読んでなくても知ってる方は多いはず。

しかし、どんなに人格ができてよーが、どんなに強かろうが、カムイが安息の日を迎えることはありません。
追忍(組織を抜けた奴を始末しにくる連中)はどこにいても襲ってきます。時には真正面から、時には友好的な人物のふりをして、しかも全員異常に鼻がきく。
まれに、同じ抜け忍が現れて協力関係を結んだり、損得なしに親切な人物と出会ったりもしますが、彼らはカムイの巻き添え食って100%死にます……悲惨。

追忍相手に説得を試みることもあるカムイですが、大抵の場合一蹴されます。
何もせずに帰れば処分されるし、カムイと同じ立場になっても生き延びる自信はないし――という事情が追忍にもあるからです。
もっとも、自分の強さを鼻にかけ、カムイを仕留めて名を上げてやろうという輩も多数登場します。ま、そういう奴等ってロクな死に方しませんけど。

(ちなみに、序盤こそ人命尊重してたカムイですが、絵が変わった第二部からはうってかわって追忍を殺しまくるようになりました、スレたのかも……)

バトルフィールドの多くが自然の中であることも大きな特徴です。
森、山、川、そこに生きる動物達の姿が細かく描かれており、また、それを利用した戦術や、それが生む偶然によって勝敗が決することも多いです。
人の領域を訪れる場合、そこに住む人々の生活、支配体制などが描かれるのが殆どです。無論、カムイはその度に自分の孤独を再確認することになるのですが。

ちなみにこのカムイ外伝、一度完結した後、十数年経ってから続きが描かれたという経緯があります。(文庫版では第一部、第二部となっている)
話が忍者戦から人間ドラマにシフトしたほか、絵も昔の白土作品と同じシンプルなようで結構細かいものから、墨と細い線を多用する劇画調のものになりました。

個人的には、カムイが妙に悟ってしまった第二部よりも、迷い続けている第一部の方が好きです。短編として秀逸な作品が多いし。
思いっきり好みだけで挙げると、人の心を読む強敵と戦う『木耳』、どう考えてもカムイが破れた『九の一』、カムイが疑心暗鬼に陥る『暗鬼』、でしょうか。
これらの作品はアニメ『忍風カムイ外伝』でもいい出来してました。
(『しのびのテーマ』だけでも、私はかなり燃えるが……)

忍者漫画としては、『伊賀の影丸』と双璧を為す名作です、読むべし。
多くの漫画家に影響を与えた作品であり、今の作品と読み比べると「あ~、これってひょっとして……」という箇所がいくつも見つかります。
逆にツッコミ所も多いのですが(特に飯綱落とし……飯綱返しで腕斬られたら負けじゃないのか?)、そのへんは気にしないで下さい。(爆)
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三角関数

2006-04-25 23:38:53 | ミステリ
さて、なんで関数なのかは考えてはいけない第511回は、

タイトル:海神の晩餐
著者:若竹七海
文庫名:講談社文庫

であります。

若竹七海のミステリ長編です。
資産家の三代目である主人公が、横浜~バンクーバーまでの船旅で遭遇する事件を描いた力作。

唯一の取り柄である英語力を利用して、欧米の探偵小説を読み漁る日々を続けている青年・本山高一郎。
資産家の三代目であり、何不自由なく暮らすことに慣れきっている彼は、先行きを心配した家族の提案により、渡米することになる。
面倒な手続きを終え、ようやく乗船というところで、一人の友人が尋ねてきた……あるものを買って欲しいと言うのだ。

豪華客船・氷川丸での船旅が始まった。
偶然乗り合わせていた友人・牧野や日系カナダ人のサラ等、気のいい人々と共に高一郎は楽しい時間を過ごす。
酔って記憶を無くすハプニングもあったが、おおむね旅は順調だった――誰かが船室に忍び込むという事件が起こるまでは。

一九三二年という時代設定をフルに生かした作品です。
加奈陀(カナダ)、晩香波(バンクーバー)といった表記もそうですが、登場人物達の会話、思想に当時の情勢が色濃く出ているのが上手い。
のほほんとした高一郎が旅を経て、日本・中国・アメリカの関係について真面目に考えるようになるという、成長物語の要素も入っています。

話の鍵になっているのものの一つが、出発前に高一郎が友人から買った短編小説。
ジャック・フュートレルという、かのタイタニックと運命を共にした作家の遺稿で、これを巡ってちょっとした事件が起こります。
ただ、これ絡みのミステリは……盛り上げるだけ盛り上げといて、かなり中途半端な形でケリが付けられているので、期待しすぎると肩すかしを食うかも。

船旅の描写はかなり秀逸です。
いつものように何かを食べるシーンは多いし、低気圧に襲われることもあるし、サラの弟・ミチオの視点によるちょっと変わった描写などもあり、と盛りだくさん。
高一郎は一等船客ですが、事件の絡みで三等船室を訪れるシーンもあり、そこで両者の格差が上手く描かれています。

登場人物がとにかく多いのですが、犯人候補、というよりは気のいい旅仲間といった描かれ方をしているのもポイント高し。
特に各人強烈な個性を持っているわけではないけど、ちょっとした枝葉のエピソードで、背後にあるものを見せてくれます。
ある意味探偵役である、刑事・張大人が国籍について語る下りは結構好き。

ミステリとしてはイマイチだけど、青春小説としてはいい感じです、オススメ。(何かこれ、『閉ざされた夏』の時も書いた気が……)
賛否両論なエピローグですが、私はかなり好きです。
ハッピーエンドで笑い合う――そういう物語ではないと思うので。



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左肩上がり

2006-04-24 23:46:48 | ホラー
さて、さりげなくタイトルが継続している第510回は、

タイトル:マニアックス
著者:山口雅也
文庫名:講談社文庫

であります。

表紙の絵が可愛かった(笑)ので、何となく手に取ってみました。
七つの作品が収録されたホラー短編集です。
例によって一つずつ紹介します。

『孤独の島の島』……フリーライター・綾瀬千尋はカメラマンの恭介とともに寄木島を訪問した。浜に打ち上げられる漂着物ばかり収集している風変わりな女性を取材するためだった。インタビューを続けるうちに、千尋はあることに気付くが――。
気持ち悪い作品(褒め言葉)。何かに取り憑かれたように漂着物を集め続ける女性の闇が描かれる。千尋の推理はかなり強引だが、短い中でまとめるには仕方がない……か。

『モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イヴ』……艱難辛苦を乗り越えて、ようやく小説家として成功したモルグ氏。彼は人生で最高のクリスマス・イヴに、恋人にプロポーズしようと思っていた。あと三十分もすれば彼女がやってくる――。
かなりブラック! ブラック! なドタバタ話。要は一節ごとに来客があり、××になるだけなのだが、モルグ氏の経歴を考えると笑えない……。定番のオチが付いており、その後を想像するとさらに嫌な気分になれる。

『《次号に続く》』……首切り魔のニュースが世間を騒がせている中、私はニューズスタンドで雑誌を漁っていた。そこに、作家のマーク・D・コールマン氏が現れ――。
なんじゃ、そりゃ? な話。ありと言えばありなんだろうけど、あまり好きなタイプのオチではない。ホラーとしてもイマイチ。ちなみに、続きません。(笑)

『女優志願』……メイドのジュディは気位の高い女優に仕えながら、自分もまたハリウッド・デビューすることを望んでいた。しかし、いくつ撮影所を回っても門前払い。ふてくされてバーで飲んだくれていると、バーテンが妙な提案を持ちかけてきた――。
お気に入り。節を切り替えを上手く利用して、読者を混乱させるように持っていっている。短編映画とかにすると、程よく恐くていい感じだと思う。

『エド・ウッドの主題による変奏曲』……エド・ウッドと名乗る映画マニアが売り込んできた作品、それは映画と呼ぶのも躊躇われるおぞましい出来だった――。
サイテー映画のシーンは、わざと書いてるにしても酷い。書くのは楽しいかも知れないが、読まされるこっちとしてはいい迷惑。

『割れた卵のような』……もうすぐ二人目の子供が生まれるというのに、私の住むマンションでは子供の転落事故が多発していた。落下した子供の頭蓋は、地上に激突してべしゃりと潰れる。そう、まるで卵のように――。
ミュータント系のホラー。よく知られた事実を使っているので、勘のいい人は途中でオチが想像つくと思われる。解ったら解ったでかなり暗い気分になれるけど。(笑)

『人形の館の館』……私は、学生時代の友人ヒュー・グランドを『人形の館』へと案内した。中には、数々のミニチュア・コレクションが揃えてあり、彼もきっと満足してくれるだろう。別の目的も一つある、それは――。
いかにもミステリっぽいが、ミステリじゃない作品。真面目に謎解きしようとすると肩すかしを食らうので、やめとくのが吉。オチは……言わぬが華。

ありとあらゆるマニア、を扱ったホラー作品集です。
不条理なオチが多いので、そういうのが嫌いな人には向かないかも。
つか、ホラー短編って大抵そうだけど。(爆)

『孤独の島の島』と『女優志願』は好きなのですが、他はどうかと……。
さらっと、ホラーをかじってみたい人向きかも知れません、あまり恐くないし。
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二次関数

2006-04-23 18:20:46 | ファンタジー(異世界)
さて、作品の中身とは関係ないなの第509回は、

タイトル:砂漠の花
著者:金蓮花
出版社:集英社コバルト文庫

であります。

確か、このひとのは、ん年前に初期作品を読んだだけだったなぁと思い、いまではどんな感じになってるのかと言うことで購入。

大陸一の大国カナルサリにあって、16歳という若さで女王となったカリュンフェイは、暗殺によって弑された父王シアネーグに与えられた神託で戦の女神とされる少女。
また、そのカリュンフェイが受けた神託は二つという異例のもの。
「和をもって統治する」未来と「血によって支配する」未来の二通り。

そんな女王カリュンフェイと、女王を取り巻く父王時代からの宰相、生まれたときに亡くしたカリュンフェイにとって母と慕う王妹で宰相夫人、その息子である従兄などのカナルサリの者。
そして属国となった第二の大国シルヴァスから人質として送られてきた公子のシリスという人物によって、カリュンフェイに授けられた神託は現実のものとして回り始める。

物語の大筋としては、神託を中心にして繰り広げられる国家間の話ではあるのだが、この1巻はかなりキャラ個人中心。
カリュンフェイの運命を回し始めるシリスとの出会い、恋や、求めても得られなかった父王への思慕など、まぁ取り立てて「これは!」というものはないが、丁寧にカリュンフェイの姿が描かれている。

また従兄の立場に安寧として鳶に油揚げをさらわれた宰相の息子であるレンソールなどの脇キャラについてもよく描かれている。

ストーリーもまだ1巻と言うことでそこまで進んではいないが、次巻以降も期待させてくれる話にはなっていると思う。

それにしても……、読みにくいなぁ、このひとの描写は……。
比喩表現や情景描写など、読むひとによってはかなりくどく見えるだろうし、くどいのが嫌いではない私でも読みにくい。
逆に、キャラを動かしている際の描写が説明不足で、場面の動きやキャラの視点の変化などがわかりにくいところがぼちぼちある。

キャラの心理描写やストーリーはいいだけに、文章がもっと読みやすく、且つ情景が想像しやすい描写などになっていればかなりの高評価になったんだけどねぇ。
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右肩上がり

2006-04-22 14:46:36 | 小説全般
さて、どっかで聞いたことがあるなぁの第508回は、

タイトル:シュガータイム
著者:小川洋子
出版社:中公文庫

であります。

誰だっけ?
と思ったら、「博士の愛した数式」とおんなじ著者だったか。

主人公のかおるは、奇妙な日記をつけ始めていた。
それはその日に食べたすべてをただ書き連ねていくだけのもの。
日記に書いていけるほどにただ食べることに固執するかおるは、それがいったい何がきっかけになってそうなったかはわからないままで。

そんなかおると、身体が大きくならない病気の弟、恋人の吉田さん、友人の真由子、森君と言ったキャラが織りなす、夏から秋にかけての青春小説。

しかし、何やら奇妙な始まり方で、どうなるかと思ったけど、何か奇妙なこのかおるの姿や何かがじわじわと味わい深くなってくると言うか、妙にはまってきておもしろかったねぇ。
比喩表現などの文章も、最初はなんか違和感があるような、読みづらい感じだったけど、慣れたら慣れたでじわじわ味が出てくる感じだったりするし。

淡々とした感じの文章や進み方は、ちょうど507回の「ルージュ」と似たような感じはあるんだけど、こっちのほうが作品の雰囲気はずっと濃い。
とにかく食べなければならないかおるだが、過食症みたいな強迫観念めいた感じはあまりしないし、かおる自身、けっこう穏やかにそういう自分を見つめている。
また、病気で身体が大きくならない弟を見る姿や、逆に弟からの姉の視線、友人として過食症のかおるを受け入れる真由子。
ある精神科医のもとを訪れたことがきっかけとなった吉田との別れなど。

奇妙な書き出しやかおるの過食症、病気の弟など、重そうな話になりがちな設定ながら、あまりそうは感じられない透明感のようなものがある。
また、序盤中盤あたりに、なんだそりゃ、ってなくらいにあったマーケットでの描写などが、終盤になるに従って奇妙なほどはまって、作品の雰囲気をよりよくしているのもいい。
そんで、これがまた読み進めば進むほど、じわじわ効いてくるのがおもしろい。

う~む、「博士の愛した数式」よりも個人的にはこっちのほうが好みだなぁ。
確かに通じるところはあるけれど、このじわじわ効いてくる作品ってのはなかなかないからねぇ。
でも、ふつうに勧めるとしたら、「博士の愛した数式」だろうなぁ。
人気が出るだけあって、万人受けするタイプの話だったし、ね。
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右肩下がり

2006-04-21 21:30:02 | 小説全般
さて、やばい、マジで9割9分になりそうだの第507回は、

タイトル:ルージュ
著者:柳美里
出版社:角川文庫

であります。

受かるわけがないはずの化粧品会社に合格して新入社員となった谷川里彩は、新製品の撮影スタジオへスタッフの届け物を持って訪れた。
そこでは新製品キャンペーンのモデルがドタキャンしていて、そこを訪れた里彩をヘアメイクの日比野が目をつける。
いつの間にかメイクをされ、撮影までさせられてしまった里彩は、そのままキャンペーンモデルをすることになる。

しかし里彩は化粧品会社にいながら化粧は嫌いで、モデルになって華やかな世界に足を踏み入れるよりも平凡で穏やかな日常を過ごすことを望んでいた。
それでも里彩の思いとは裏腹に、キャンペーンは走り出し、素顔とメイクしたあととのギャップや里彩の持つ独特の雰囲気から周囲の評価は上がっていく。

そんな里彩のサクセスストーリー……な話ではない。
まぁ、結果的に里彩は化粧品会社を辞めて女優になるわけだが、それはラストの一部分。
それまでは、会社の上司である後宮という女性の元夫であるコピーライターの秋葉との付き合いや、ゲイの友人である孝之と同居しているアートディレクターの黒川との出会い、里彩、黒川、孝之との3人との関係など、20歳になっても一度も男性と付き合ったことがないと言う里彩の恋愛小説になっている。

ん~、最初というか、かなり読み進めるまで、どのキャラクターが動いて、喋ってるのか、人数入り乱れるとわかりにくかったなぁ。
これは主に書き方だろうね。
ほとんどのキャラの表記が名字なので、男性キャラなのか女性キャラなのかすらわからんかったし。
設定上、仕方がないとは思うけど、喋り方の区別もあまりないので余計、ね。
さすがに里彩とか、秋葉、孝之、黒川はわかったけどさ。

途中、わかってくるとなんかどうなんのかねぇ、と期待できそうな感じがあって読み進めてたんだけど、どうも里彩の淡泊なキャラのせいか、終盤になるに従っておもしろみがなくなってきたんだよねぇ。
まぁでも、ラストの女優になってからの撮影現場のシーンなんかは印象的でよかったけど、全体を通して見ると、おもしろかったと言えるものではなかったね。

尻切れトンボ……とまでは言わないけど、ものの見事に右肩下がりにおもしろくなくなってきたのは残念。
まぁでも、二度と読むかと言うほどのものでもないので、短編集でもあればそれを読んでみてからどうするか決めるかな。

大して期待はしないけど。
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