HardyのPalakona竿が20世紀に入ると英国へ輸入されてきたLeonard等の米国竿と熾烈な競争を始めることとなり、米国市場を意識して1903年に登場したFairy等のHardy竿が米国へ輸出され、1915年に登場したDe LuxeがAbercrombie & Fitch等で本格的に販売されたという話は錦織則政氏の労作「座・ヒストリー・オブ・バンブーフライロッド」に詳述されているところです。
そのDe Luxeですが、第二次大戦前のモデルにはグリップの前に米国竿はLeonard等に見られるSignature Wrapが入っております。これは大分前になりますが紹介した1944年製のDe Luxe No.2には見られなくなっておりますので、第二次大戦中に仕様が変更されたのではないかと思いますが、今回は米国竿の仕様を取り入れた戦前のDe Luxeを並べてみました。
これは、写真の3本の一番下、製造番号E35180、1935年製の8'の竿。真ん中の太い巻きを挟み、5本の巻きが左右に配置されております。
次は3本の真ん中、製造番号E11050、1928年製の8'6''の竿。8'と同様の巻きが入っておりますが、臙脂色の絹ではないので透明に見えます。
最後は、製造番号E29795、1936年製の9'の竿。これも同様の巻きが施されております。
1930年代製造の8'と9'ではトップセクションにEnd Ringを含め5つのRingが配置されておりますが、1920年代の8'6''ではトップセクションに配置されたRingは4本となっております。そのため、1930年代では全部で9つのRingが配置されているのに対し、1920年代の竿では8つのRingが配置されております。
Gold Medal、Perfection等でお馴染みの竿尻に配置されたゴム製のButtonは無く、米国仕様に軽量化を図っております。
それでも米国竿とHardyの違いはこのRing。米国ではGuideと呼ばれるこの部品。De Luxeは米国仕様を取り入れながらも、これだけはSnakeではなくFull Open Bridgeを採用しております。
1920年代では特徴的なD型のRing。これは竿を継いで見るとトップまで穴が円形に見えるという優れたもので製造コストもFull Open Bridgeに比べれば安かったのではと思いますが、1920年代で姿を消しております。
同じ9'でDe LuxeとLeonardのTournament竿を比べてみます。
外見での最大の違いはグリップの長さとそれによるグリップ外のブランクの長さ。Leonardのものはグリップからスウェルバットになっております。当然握る位置は制限されております。一方、De Luxeは握りの位置をある程度釣り師が自由に決めることが出来ます。
LeonardのSignature WrapはGoldとBlackでこの竿では良く見えませんが、びっしりと巻かれております。
Leonardでは、De LuxeのRing数9に対し、TopとButt含めて14のGuideが配置されております。GuideはSnakeですがこのGuideの配置がアクションにどのような影響を与えるようにデザインされたものか興味深いです。
LeonardのTop Guideは英国竿同様に瑪瑙が入っております。一方、軽量化のためか支柱無しの仕様です。Leonardの短い竿では古いものでもTop Guideにざらつくシルクラインから守るための瑪瑙が入っていないものがあるようでその辺りはどのような考えがあったのか、F.E.Thomas竿の様にTop Guideはシルクラインであっても大丈夫という判断があったのか、私には不明です。
一方、De Luxeは瑪瑙入りEnd Ringを支柱が支えるHardyのスタイル安心感はありますが、LeonardのTop Guideでも60cmの鱒の引きにビクともしなかったので、軽量化のためには支柱は要らないのかも知れません。
この英米9'竿ですが、Tournament竿の方がミドルに乗ってくる感じのアクションであるのに対し、De Luxeはより硬さを感じさせつつTournament竿よりやや先の方に調子があるというアクション。どちらも実釣では20cm台の鱒から50cmを超える大鱒まで安心してやり取り出来る竿です。英米の2大竹竿マスプロダクションメーカーの面目躍如という竿かと思います。
戦前の湯川でハンターさんや西園寺公一さんが使った竿はデラックスでした。
ハンターさんのデラックスを手に取った時には手が震えましたよ。
パラコナ竿は戦後にあのグリップのスタイルになる前は、様々なグリップがありましたね。
細かい飾り巻きは戦御の竿には見られない特徴です。
1930年代まであったブリッジガイドはまさにガイド面の両端にガイドフットが固定されるようになっていて、まさにブリッジがかかっていましたね。
優美なガイドだと思いますが、フルオープンブリッジの方が耐久性に優れていたんですかね。
パラコナ竿にも様々ありますが、まず一本と言われたら間違いなくデラックスを勧めると思います。
これを相性が良いと感じたら、後はパラコナの泥沼が待っていると(笑)
コメントを頂き大変ありがとうございました。
私はこれまで何故かDe Luxeとの縁は余り無く戦後のものを含め持ってはいても使うところまでは行っておりませんでした。今年の初釣行で使い日本での釣りには使い勝手が良いと改めて認識したところであります。
飾り巻きですが、戦前のFairy等米国市場を意識したLight Weightの竿には施されておりますが、英国・植民地或いは欧州市場向けの竿には施されていないのが、そうした竿では米国竿を気にする必要がなかったことを表しているのかと思った次第です。
他、あの特徴的なBridge Ringは私も大好きなもので、何故廃止されたのか、竿のアクションの問題か?不明です。
自分にとって最高の竿を選べと言われるとまだ答えが出ない未熟者で竿の断捨離が何時出来るのか、まだまだ修行が必要ですが、汎用性に富んだDe Luxeは最後まで残る竿の候補であるのは間違いないと思います。