思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy Palakona Marvelの比較

2021-06-06 10:37:49 | Hardy Palakona

釣りに行く気分になれないこの週末、徒然なるままに手持ちのHardy Palakona Marvelを取り出してみました。
久しぶりに4本勢揃いしたMarvel。下から古い順にE49054(1938年製)、E87715(1953年製)、E/S(1967年5月製)、H/J(1968年7月製)となります。一番古い1938年製のMarvelは5月の中旬に養沢に連れて行き、ドライフライでの反応が良くなかったので、アップストリームのソフトハックルでの釣りに使いましたが、20数センチ程度の養沢の鱒であってもまるで会津大川の60cmの虹鱒をLeonardの9フィートTournament竿で釣る如く(とはちょっと言い過ぎかしら?)、やり取りが楽しめてしまう竿。

まず、その1938年製の竿を見ると、写真では見難いのですが、ミドル部分のバーニッシュが他の部分と異なる色になっております。またミドル部分の重量感がバットに比べても密度が高い様な気が致します。これは以前White Wickam Fairchild竿のミドルセクションに何故かスチールセンターが入っている理由と共に述べたのですが、一回の釣行で何百回と竿を振るフライフィッシング用の三本継のミドルアクションの竿では、ミドルセクションにかなりの負荷がかかるため、同セクションの強化が必要であるためではないかと推測しております。

バットリングは他のHardy竿に見られない特徴的なものを使っております。普通のバットリングですとフルオープンブリッジと同様の構造ですが、この竿では竿にぴったりと金属製の薄片が土台の様に付けられておりそのためフットは二本の腕でリングを支える格好になっておりません。この様な特殊なリングを作るには追加コストが必要で1930年代はキチンと製造コスト計算が出来ていたのか心配になる凝り方。

同じリングを

両方から撮影しました。

一方、エンドリングは普通のものですが、径は狭くシルクラインと合わせなければなりません。

これは1953年製のMarvelのバットリング。戦後コストがよりシビアになったのでしょうか、通常のものとなっております。

フルオープンブリッジに瑪瑙をあしらったものです。

エンドリングは1938年製と同じタイプですが、より頑丈なもの。

これは1967年製のMarvelのバットリング。製造コスト低減のためよりシンプルな作りになっております。

中には瑪瑙が埋め込まれております。

エンドリングは瑪瑙が入っておりません。既に1950年代に登場したプラスチックラインの使用を前提にした設計となっております。

これは1968年製のバットリング。1967年製のものと同一です。

瑪瑙が埋め込まれているのも同一。

エンドリングもプラスチックラインの使用を前提にデザインされております。

1938年製、1953年製共にフックキーパーはありません。

一方、1967年製、1968年製にはフックキーパーが付きます。エンドリングの径が大きくなりプラスチックラインとナイロン糸の継ぎ目がスムーズにリングを通る様になったためフックキーパーを付けても釣り人が竿を壊す恐れが無くなったためでしょうか。フックキーパーが無い竿の場合、竿の全長より長いリーダーを使う際は、竿のリングに鉤を掛け、リールの外周にリーダーを沿わせて糸を張れば問題なく移動することが出来ます。

1938年製、1953年製のMarvelのリング周りのラッピングは透明。1960年代の緑とは異なります。

トップセクションを比べると、1960年代の竿はよりバルキーなプラスチックラインの使用を前提にデザインされているにも関わらず、1938年製、1953年製と太さに変わりは感じられません。全体的に1960年代以降は竹の品質の問題とプラスチックラインの使用によるパワー追加の必要性から太めになる竿が多い中、意外な感じです。

一方、写真では良く分かりませんが、バットセクションは1960年代のものの方が若干太く感じられます。Marvelはスウェルバットになっているのですが、その部分がどうも太い様です。これがプラスチックライン対応による強化策と思って良いのでしょうか。
これらMarvelは使って楽しく、40cm程度の鱒なら多少時間はかかっても問題なくタモに誘導出来る力を持った竿です。早い打ち返しが求められる場所はよりファストアクションの竿に譲るとして、数釣りではなく如何に釣りそのものを愉しむかにはピッタリな竿であります。

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8 コメント

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トップガイド… (yugawaski)
2021-06-06 22:28:42
こんばんは。
同じモデルを年代違いで並べるのは面白いですね。
私の持っているパラコナ竿は、マーベルも含めてトップガイドは瑪瑙リングが入っているタイプで、いわゆるスネークガイドが付いているのはフェザーウェイトくらいです。
新しい2本のトップガイドのワイヤーの形は、一般に良く見る洋ナシ型をしたものではなく、瑪瑙リングを外したそのままのような、正円に近いものですね。
このガイドが付いたモデルって、結構珍しいのではないかと。
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Unknown (はいからはくち)
2021-06-06 23:10:35
お邪魔いたします。
私のマーベルはずっと後の物で1976年2月製造の物です。リールシートのシリアルはJ939 どうやら76年にマーベルを再生産した時の第一号みたいです。マーベルは三本所有しましたが 今はこの一本だけになりました。本流以外はほぼこの一本でシーズンを釣り切ります。マーベルと出逢ってから他の竿が使えなくなってしまいました(笑)。マーベルにフェザーウェイト。#4のシルクラインとキャッツキルクラシックパターンのドライフライ。最高に楽しい釣りができる組み合わせです。 
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エンドリング (budsek)
2021-06-07 20:55:27
yugawaski様
コメントを頂き大変ありがとうございました。
ご指摘を受けて成る程と調べて見ましたが、1968年製のWF Hardy 8'6''はMarvelと同じエンドリングで、また、Phantomも同様のエンドリングでした。一方、1971年製のContinental Special7'71/2''は洋梨型のエンドリングで、70年あたりでデザインが変わった、あるいは、グラス竿のものを竹竿でも使い始めた、ということだったのかも知れません。70年代のMarvelも洋梨型の仕様になっているのでしょうか。こうした微細な差異に気付くのも一興ですね。
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究極の一竿 (budsek)
2021-06-07 21:04:43
はいからはくち様
コメントを頂き大変ありがとうございました。
Marvelは確かに釣りの愉しみを深く味わえる素晴らしい竿だと思います。この様な竿を設計したHardyのデザイナーには脱帽です。そしておっしゃられる通り、断捨離の結果究極の一竿になるであろうことも良く分かります。
私もいい加減に断捨離して究極の竿の絞り込みに入っても良い頃かとは思いますものの、未だ未だ悟りを得ることが出来ず竹竿収集の修羅の道から我が身を救うに至っておりません。しかし日本の渓流にMarvelは本当に合っておりますね。シルクラインにキャッツキルスタイルのドライフライ。素晴らしい釣りの一時を約束する道具たちです。
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Unknown (はいからはくち)
2021-06-16 22:09:06
お邪魔いたします。
76年のマーベルのトップガイドは 今の物と同じ洋梨型の普通の物が付いてます。私の場合 最初は98年製のマーベルとの出会いからでした。竿の調子はまさに理想の調子 ただ竹が甘く 曲がり癖が直ぐに付くティップにウンザリして手放しました。その後76年2月製造の物を2本手に入れ 調子の良い方を残して今に至ります。うちに来た当時は スレッドもボロボロ フェルールはスカスカ ミドルセクションはS字カーブを描いて反っている状況でしたが 70年代ににしては竹の素材がいいのと 全体のバランスが良かったのでフルレストアして貰い ガンガン使い倒してます。ずっと吊るして保管してたらいつの間にか曲がってたミドルも真っ直ぐに近くなって来ました。ティップはキャスティングの癖で少し曲がりが出てますが プールのライズ狙いも 山岳渓流のテンポの早い叩き上がりも全てこなせる頼もしい相棒です。私もハーディーのショートロッドは6フィートのトラウトストリーム 6’3"ファイバーライトミッジ 7フィートフェアリー 7フィートジェット 7'8"グラファイトマーベルなど色々使って来ましたが 竹のマーベルが自分の中では最高です。
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修羅の道 (flyukulele)
2021-06-17 17:47:13
こんにちは。
マーベル4本、圧巻ですね。
また「修羅の道」は、見事な表現で、笑ってしまいました。
私もお気に入りの竿があると、年代、長さ、番手などが異なると、はたしてどのような違いがあるのか?それらを確認したくて、ガマンできなくなり、気がつくと、部屋の中が筏のようになってしまいました。しかもそれらの竿に魚との思い出が加わると、さらに手放すことが出来ず、これはあきらかに依存症なのでしょうが、治せないと同時に治したくないというのが本音です。
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Marvel (budsek)
2021-06-18 19:37:31
はいからはくち様
1990年代、1970年代のマーベルとなりますとハーディーも在庫している竹の量・品質が全盛期とは異なっていたかも知れませんが、レストアされて使い倒されていること、竿も竹竿として製造された冥利に尽きると思います。私の持っているマーベルですが、使い倒すまで行っておりませんで、竿にも申し訳なく恥ずかしい次第ですが、いずれ将来悟りを開いた際には手元にあるマーベルのどれかは日本並びに欧州の渓流用に残るものと思います。マーベルの調子は、手放しにくい、最後まで残る一竿というものに正に相応しいものですね。私も一番古いマーベルをレストアしようかなとも考えておるところです。
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未だ未だ続く修羅の道 (budsek)
2021-06-18 19:45:17
flyukulele様
コメントを頂き大変ありがとうございました。
海外駐在の際に、実家に竿の大半を残しその後コロナで全く実家に行けてない状況で、一体全体何本竹竿があるのか分からなくなっておりますが、どこかにいる青い鳥を求め続ける、心の乾いた状況から未だに抜け出せておりません。これを修羅と呼ばずして何と呼ぼうか、ですが、悟りを開くまでにハーディー、ぺゾン、F.E.トーマス、レナードと色々な竿とその魅力に触れ、いつかは青い鳥と一緒に成仏したいと思います。幸運なことにハックルは既に成仏に近づいております。。。
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