軽さを追求する米国竹竿。それに対する答えとしてHardyが作り出した軽量竹竿。その代表選手はDe Luxeで、リング(ガイド)はスネークではありませんが、竿尻のボタンもなくフェルールはロック機構の無いサクション。こうした軽量化を計る一方、特別注文があれば、竿を地面に突き刺し、誤って踏んでしまったりという事故を防ぐ事の出来るスピアをつける事も可能でした。
上は1935年製De Luxe 8'。下は1938年製De Luxe 9'。下の竿にはスピア、「Hardy's Patent 'Reversible' Spear and Button」が特注で装着されております。
下の9'竿はコルクグリップも長いのですが、スピアが仕込んであるためかリールシートも長くなっております。
ボタン部分のアップ。継ぎ目が隙間なくぴったりと合っており、一件一体成型されている様な印象です。
側面からボタンを見たところ。
ボタンを捻っていくと。
一体成型ではなくボタンは二つのパーツで出来ていることが判ります。
ボタンの外側を外すと、
スピアの部分のみのボタンが残ります。
スピアを竿尻から抜いて行きます。
スピアは竿尻に納められております。
スピアとボタンを構成する二つのパーツ。
スピアを抜いた竿尻。洋松材でしょうか、軽い木材が仕込まれスピアを固定する様になっております。
ボタンとスピアをスピアが出る様に合わせ、
繋ぎ目が感じられない精度でぴったり合わせます。
ボタンを竿尻に捻って付けていきます。
捻り終わるとスピアは直立。
幅広い面はカメラが映るくらいピカピカ。軽量のアルミ製です。
上から見るとこんな感じ。
継ぎ目もぴったりの精度です。
軽さを追求する米国竿では考えられない装備ですが、竿を踏みつけてしまわない様に精巧な部品を追加したいという釣り人の要請に答えた仕掛け。スキューズには余計な重さであると怒られてしまうかも知れませんが、釣りという遊びに使う竿という玩具に潤いを与えると思うのは私だけでしょうか。
尚、今から10年以上前に紹介したHugh Falkusは夜の釣りになるシートラウト釣りにおいてスピアは余分なラインがリールに絡む事を防ぐ素晴らしい役割があるとして、スピアが仕込んでいない竿は竿尻にショットガンの薬莢を被せ竿じりを長くしたりとの工夫をしております。機能重視に対し耐久性・安全性・玩具の楽しさも味付けした英国竿も中々捨てたものではないと思う年末の一日です。
リバーシブルのスピアー、これを初めて目にした時は衝撃を受けたものです。
最後はチープなプラスチック製になってしまいましたね。
以前は別体のスピアーをねじ込む方式でしたから、紛失もあったでしょうし、何より持ち歩くのが面倒…よく考えてあると思います。
ホートンのような長くて重い竿は、スピアーを出してエクステンションバットのようにして使うと投げやすくてイイですね。
たまにスピアーを収納する木材が水に浸かったのか膨張してきつくなっているものも見受けられます。
マスプロメーカーだからこその凝ったパーツで、日本のビルダーに作らせたらいくらかかるものか、一度聞いてみたいと思っています。
コメントを頂きありがとうございました。
今、手元にあるスピア付きの竿、Halford 1912 Model 9'6'' (1937年製)、De Luxe 9' (1938年製)、De Luxe No.2 (1944年製)、LRH Dry 8'9''(1956年製)を其々確認致しましたが、私の竿はリールを装着した状態で竿尻から見るとIの字に切れ込みが入っております。また、スピアの長さ5.5cmですので、少なくとも竿尻から5.5cmは竹のブランクスは入っておりません。De Luxe 9'は275.5cmありましたので、竹の部分は270cm、9フィートの274.32cmに比べ4.32cm竹のブランクスが短くなります。通常のDe Luxeに比べスピアを仕込むとブランクスをそれだけ短くしたのか?それがアクションにどの様な影響を与えたのか、謎であります。ギャリソンの動画拝見致しました。ブランクスの先端にキャプをつけそこにコルクを押し込んでいく、つまり竿尻までブランクスが通っている、アクションに影響を与えると思います。ハーディーが柔軟性のないベークライトを使ったのはブランクスの延長部分としてアクションへの影響を求めなかったからということはないでしょうか。
ギャリソンは竹を鉈で割っていき、節の裏側を道具を使って割り落としておりましたが、1995年アーニックのハーディーを訪問した際購入したビデオ映像では、ハーディーは竹は自動ノコギリで切っていき、節の裏は自動ヤスリにあて削って竹の切片を制作しておりました。どちらが竹への負荷がかかっているのか、楽しみであります。
コメントを頂きありがとうございました。
私もこのReversible Spearに初めて触れた時は本当にその精巧さとアイディアに衝撃を受けたものです。今だにその驚きは残っていて、スピアがある竿は意味なくスピアを出して使ったりしております。このスピアが標準装備されるのは私の理解ではドライフライ用の竿ですが、奇妙なことにHardy Marston 10'4''のセミダブルハンド竿(Bragden:止水でのボート釣り用?)にもスピアが付いております。こうした玩具として面白い、機能のみではない緩さが英国的なのかと思って使っております。
Hardy's Collectors' Guideを見るとHalford Pricelessのグリップの断面図がありそれを見るとグリップの中のある程度のところまではブランクが入っていることが分かりますし、White Wickham FairchildのX線写真は竿尻までブランクが入っていることが分かります。ただ一方ベークライトのリールシートが付いている竿の中がどうなっているのか解剖情報がないため不明です。米国竿でもリールシートがメタル製の竿がありますが、ハーディーがそれを模倣したということは考えられませんでしょうか。また、Pezon et MichelのSawyer Nymph竿の様にグリップはコルクのみで4フィートx2のブランクスのみが竹という竿もありアクション次第ではグリップ・竿尻までブランクが通る必要もなかったのではないでしょうか。。。
昔 折れたLRHドライフライを分解した時は コルクの下は洋松材とおぼしきウッドが出てきた覚えがあります。ウッドはブランクよりかなり太く ウッドで下支えして グリップの部分だけコルクを被せ リールシートの部分はベークライトを被せてアップロックのリールシートを着ける手法だった記憶があります。 確か1955年製でしたのでスピアーはついておらず 下までソリッドの木でした。 これは私の推論ですが ベークライトのフィラーは 木やコルクだとリールフットによる傷や痩せが多発する為 ベークライトを被せてそれを防いだのではと思います。金属では重さとコストがかかる為 加工しやすく安いベークライトにしたのでは? 修理の際もその部分は再利用出来ますし Wフィッティングのリールシートよりはグリップ修理が楽なのではと思えます。只 後年グラスのリチャードウォーカーやファイバーライトパーフェクションに ブランクそのままリールシートというモデルもあり ブランク全体を活かした竿を作ろうとしたのかとおぼしき痕跡もあります。(たまたまブランクの径が太くてそのままリールシートにしただけかもしれませんが… 軽量化にはなりますね)
当方所有の67年製ゴールドメダルや最初期JETはベークライトのフィラーの半分位までブランクがきてます。その下はねじ込み式のアップロックのリールシートの金具部分です。ブランクの弾力を活かす作りにはなってません。やはりハーディーもそこまでは考えてなかったのかと思います。
ブランク全体の弾性を活かして尚且つ軽量化 もしやとは思いますが ハーディーでもCCドフランス アキュラシー トライアンフ トーニーなどトーナメント系の竿は全てコルクスケルトンでしかもグリップ短いですよね? ここにも一つの解答があるように思えます。CCドフランスのスピアー付きとか見た事がありません。この辺がハーディーなりの解釈かなと思います。