思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Dr. Laffertyの手紙

2022-12-25 23:30:00 | ハックル/Hackles

年の瀬も迫ったクリスマスの今日、イスラム教のモロッコでは特段普通の週末と変わらない日曜日、英国の古いハックルとその他の品々をちょっと整理でもするかと開けてみました。

この写真の様に小箱に入れられたハックルやフェザーはプラスチック袋に入れてあり、他に昔のガットやナイロン糸、封筒に入ったハックルやファーなんかもあります。その幾つかある封筒の一つの中身をチェックしたら冒頭の手紙が入っておりました。
達筆かつ学校で習う筆記体とは多少異なる字体もあり苦労致しますが、私なりに解読したところを、内容も余り隠匿が必要なものとは思えませんので以下致しますと:

Bradwell via Sheffield
7. 3. 45
Dear Mr. Whitelock

Very many thanks for sending the silk and rayon. The built whole twist appears to be rather too coarse even for salmon flies but the others will be fine. I should be glad of any coloured silk suitable for salmon flies when available.
I enclose a few hackles but I really should have told you to come along sometime to pick at the types you fancy most. We have all got our particular gads and fancies and the nomenclature of the colours is very undefinite.
If on looking those over you can suggest any different types let me know, but if you are ever in the vicinity of Bradwell, call in and we will go over a few together.

Yours sincerely
Gerald S. Lafferty

シルクとレーヨンを送ってくれたことへの謝意。捩れの入ったものはサーモンフライ用にもゴツ過ぎるけど他のものはOK。サーモンフライ用のシルクがあればどんな色のものでも嬉しい。
ハックル数枚を同封した。でもやはり時間があれば自分で気に入ったものを選んで欲しい。釣り人のハックルの好みは各人各様で、ハックルの色の分類は全くあやふやなものだから。
送ったハックル以外に何か欲しいものがあれば連絡請う。でもブラッドウェルの近くに来ることがあれば寄ってくれ。そうしたら一緒にハックルを見に行こう。

手紙の中身はざっくりこの様な内容。

日付は欧州大陸風に読めば1945年3月7日。もし、7月3日だとしても欧州での第二次大戦がドイツの敗北で終了した1945年5月8日(ソ連では時差の関係で5月9日)の前後でこのような安閑としたやり取りがなされていたことに釣り人として微笑ましいものを感じます。
(と、書きましたが、丁度その頃、インパール作戦を辛くも生き延びた私の祖父は、ビルマで英印軍相手に死と隣り合わせの激戦を続けていたことを思い出しました。窮乏したとは言え英国の余裕に対比すると、当時の日本の兵隊を取り巻く環境が何とも切ないです)

このイングランド北部のシェフィールド近郊のブラッドウェルでDr. Laffertyは毛鉤用のゲームコックを飼っていたのでしょうか。
このDr. Laffertyですが、どこかで見た名前だと思ったら、ダン系統のコックハックルの小箱にその名前が書かれていた方でした。

上の小箱がBrassy Dun Cock、下のものがMedium Honey Dun Cock。どちらもこのDr. Laffertyから入手したものでしょう。

これがBrassy Dunの近影。英国のゲーム・コックの典型的なハックルの形。ヨコハマ系統の血は入っていないものと思われます。

これはMedium Honey Dun。バーブはハニー。リストは黒に近いグレー。ハニー・ダンの定義はブルー・ダンのリストに外側はハニーのバーブなので、昔の青味がかったブルー・ダンを知っている観点よりはこれをMedium Honey Dunとすることに多少忸怩たるものがありますが、Frank Elder氏のThe Book of the HackleのDark Honey Dunのサンプル絵のリストに似ていることから、特にこれ以上の異議を唱えることは致しません。

他にもDr. Laffertyより入手したMedium Rusty Dunという小箱もあります。

ごく小さいハックルのこれはラスティーではありますが、ブルー・ダンの代わりにもなるような感じのハックルであります。
現在のドライフライ用のハックルは工業化が行き過ぎて、微妙な色が手に入らなくなっておりますが、昔のハックルを後世に伝えていける様、収集したものは大事に使っていきたいと思います。

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4 コメント

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今年もよろしくお願い致します (budsek)
2023-01-14 14:42:13
nori様
コメントを頂き大変ありがとうございました。

私達もSNSで個人的なやり取りを行なっておりますが、昔の釣り人も手紙などで意見の交換、道具・その他マテリアルの交換を行いながら釣りの発展を進めてきたのだなと思わされました。

Nori様の著作も先人の遺した膨大なやり取り、魚釣りという如何にも実践的なテーマを扱った著作というミクロの世界を読み込みながら、それが釣りの発展の大きな流れというマクロにどのように繋がっていったのかを筋道立てた説明をされており、勉強になります。

今年も引き続きよろしくお願い致します。
返信する
あけましておめでとうございます (nori)
2023-01-13 21:31:54
budsekさま

あけましておめでとうございます。
本年もさっそく興味深いエントリーを拝見させて頂きありがとうございました。
ひとつの手紙に大きな歴史のうねりと慎ましやかな個人の生活史が感じられて、とても愉しいお話でした。
本年もどうぞ宜しくお願いします。

nori 拝
返信する
今年もよろしくお願い致します。 (budsek)
2023-01-03 10:49:18
yugawaski様

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
コメントを頂き大変ありがとうございました。
私の持っている昔の英国のハックルは微妙な色合いのものが後年のものに比べ多いのですが、形の方は、19世紀末から1970年代の毛鉤釣りの書籍にある理想的な形である槍の穂先の様態とは異なっているものが大半です。
このOld English Game Cockのハックルの形は、日本の尾長鶏の遺伝子が入っていると思われる、欧米でヨコハマと言われる鶏を掛け合わせることで槍の穂先の形に改良出来ますが、Whitingが出てきてからは槍の穂先を超越して延々と続く柳の葉の様になってしまいました。
Whitingの柳の葉の遺伝子は尾長鶏の系統なのかどうか分かりませんが、発色に関係する遺伝子にはネガティブに働く様な気がしてなりません。
21世紀の毛鉤にはコックハックルはさほど重要ではなく、CDC一本でいいのかも知れませんが、個人的にはとても残念に思っております。
ブログという個人の趣味の世界で、今年も独断に満ちたハックルの話を、地の果ての北アフリカから、載せていこうと思います。
返信する
クラッシックカーのような… (yugawaski)
2022-12-29 22:34:21
こんばんは。
興味深い投稿をありがとうございます。
最近のハックルは、まさに工業化の産物…レーシングカーのような感じがします(笑)
とはいえ、最後は生き物の世界なので神秘的な部分もあるのでしょうけど、かなり人為的にコントロールできるレベルまで来ているように感じます。
こういうクラッシックカーのような世界が今の私にはしっくりきます。
最近の基準から見れば、機能的には「???」なのかもしれませんが、本当に鱒に好まれるのはいずれなのか…
私が鱒だったら絶対にこっちを選び鱒。
それにしても、フライフィッシングの衰退と併せて、こういう楽しみ方が姿を消しつつあるように感じられるのが残念でなりません。
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