思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

シルクラインについて(特徴)

2017-11-19 13:58:02 | シルクライン/Silk Lines

釣りシーズンが終了したので、釣行記等鱒釣りの思いでについては来年までお預け。ストーブリーグの話題はモノの話になりがちで、何となくシルクラインについて書いてみたいと思います。
私がシルクラインを使うのは、PVCでコーティングされたフライラインが登場し一般的になる前の1950年代以前の竹竿に合わせるためです。シンセティックなフライラインが何故浮くのか?それはPVCコーティングの中に気泡を入れて、重量比で容積を高めているため。つまり船が浮くのと同じような理屈。それに対し、シルクラインは水より比重の高いシルクを浮かせるために表面にグリスを塗り表面張力で浮きます。従い、PVCラインはシルクラインよりバルキーで空気抵抗も強く、同じ番手でもPVCラインを飛ばすのはシルクラインに比べ竿に対する負荷を掛けなければいけない。。。1950年代までの竹竿はシルクラインを前提に設計されているであろうため、PVCラインは荷が重いと感じるからです。

現在使っているのは、1990年代末まで入手出来たベルギー製のKaizerと、以前再生記を掲載したPhoenix。上のSt. George Jr.に巻いてあるラインと、濃い臙脂色のラインがKaizer。ストロー色のラインがPhoenix。

下のPVCフライラインはハーディーブランドのDT5F。今シーズンSawyer Nymph竿と一緒にフランス、オーストリア、日本を転戦したものです。それに比して、上のKaizer 2番(AFTMで5番程度)はハッキリと細く比重が重く感じます。ですので、1960年代以前のPVCラインには非力な竿でもシルクラインは良く飛ばす事が出来ます。

Kaizer 2番の表面。一本一本の絹糸を編んでいるので表面がざらついております。一見黒に見えますが、よく見ると濃い臙脂色であるのが分かります。

これはPhoenixの表面。通常のPhoenixラインは油の含浸処理をした後、更に別の素材でコーティング処理をするため、容積が大きくなっておりますが、このラインはそうしたコーティングを重曹で一回全て取り除き、亜麻仁油のみで含浸処理したものですので、表面はザラザラです。

これはKaizerの1番(AFTM 3〜4番程度)。色はオリーブ色。以前Green Line of Kaizerとして売っていたもの。1990年代から変わらず使用しております。
シルクラインが一般的になったのは19世紀末にHalford (ハルフォード)が相談役としてEaton & Deller商会が開発・生産・販売した亜麻仁油を芯まで含浸させた防水加工のシルクラインが登場してからのようですが、それ以前には19世紀中葉(?)まで主流の馬素を編んだライン、その後登場したシルクと馬素の混合ラインも使われ、1867年出版のFrancis Francis (フランシス・フランシス)著A Book on Angling (魚釣りの書)第5版の152ページでフランシスはシルクと馬素の混合ラインを最上とし、シルクのみのラインは軽やかさと柔軟性に欠けるとして退け、馬素のラインは竿のリングに引っかかり投げ難いとこれまた退けております。
一方、1899年に出版されたSir Edward Grey (サー・エドワード・グレイ)のFly Fishingで、グレイは防水加工されたテーパー付きシルクラインを素晴らしいとしてますが、Manchester waterproof plaited cotton line (マンチェスター防水加工コットンライン)が最上としており、シルクラインがその地位を確立した後もそれ以外のリールラインが毛針釣りに用いられていた事が伺えます。

これは大分昔入手したHardyの看板シルクラインのCorona。

ダブルテーパーで、2番、という事は、AFTMで言うと、5〜6番程度の重さ。長さは30ヤードです。

一方の端にはリールからのバッキングラインにはこちらを結ぶようにと指示されており、撚りを掛けずにリールに収納する事に非常に気を使っております。

2番のダブルテーパー、30ヤードとタグが付けられております。

色はKaizerの2番と同様の濃い臙脂色。また、表面の感じもKaizerとほぼ同じ。

数十年も退蔵されていたため、注意書きとラインがくっついてしまい、注意書きを剥がした紙の残りがくっ付いてしまっております。使う際には一寸お湯かなにかで奇麗にしないといけないですね。

注意書きには、油を含浸させた防水加工シルクラインは出来るだけ空気に触れさせる必要があり、使用後はラインワインダーに巻き取り乾燥させ、オフシーズンにはリールから出して空気の通りが良い所にぶら下げて保管するようにとあります。
シルクラインには常にグリスを塗らなければならないような記述が日本では多いですが、それは実は間違っており、グリスは使用する際に必要なだけ薄く塗り余分は拭き取る事をシルクラインメーカーは推奨しております(Phoenix等)。何故かというと、余分なグリスは汚れをラインに吸い付けてしまい、それが原因で逆にシルクラインを浮きづらくしてしまうためです。やけにベタベタするようならばそのような状態になっていると疑った方が良いと思います。そんな場合、私の対処法でありますが、石鹸水でシルクラインのグリスを取り除き乾燥させた事もあります。乾燥させ切ってから必要なだけのグリスを塗れば、ラインはまた水に良く乗る様になります。
グリスを塗り続けてしっくりした、と喜んでいると、逆にシルクラインの機能を損なってしまっていたとならないように留意しましょう。

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