20180307今日の一手
1月6日の名南将棋大会から、SさんとMさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒はありません。28飛はすぐに働きそうですが。
後手の攻め駒はありません。
総合すれば後手が指しやすいか。
☆ 大局観として
懐かしい急戦矢倉です。20年か30年前に米長流とか中原流とか呼ばれた急戦矢倉が流行りました。○○流というのはその前の古い形の「急戦矢倉」があったからで、問題図のように左右の銀を歩越し銀に構えて攻めていくのがそれです。先手番Mくんは小学生なのでそんなことは知らないと思いますが、思いつきやすい形なんでしょうか。
確か昔の急戦矢倉は
左銀は後手の攻めをけん制するのに使って、飛角銀で攻めていく形だったと思います。
先手玉のほうが薄いのですが、飛角銀さらにこの場合は66銀も使って4枚で攻めていこうとしています。それが実現すれば十分になります。
後手の陣形は32玉の形で、32金41玉の形(手数は同じです)と比べて、横からの攻めには強いけれど上からの攻めには弱いです。今は先手が55歩として中央を攻めた形なので、その場合も32玉のほうが安定しています。が2,3筋が薄いわけで、そちらを攻められたら苦戦します。
つまりは先手が作戦勝ちになっている可能性があります。どこを攻めればよいかというのが理解できたでしょうか。
○ 実戦は58飛で
55歩の継続で自然な手です。55歩同銀左54歩66銀73桂96歩65歩
中央はしっかり守られて、銀を追い返されました。これは失敗している図です。さらに進んで
右銀も退却するようになっては駒損していなくても大差になりました。
58飛55歩には35歩
と攻めねばなりません。35同歩54銀左54歩に34歩
とにかく攻めなければ作戦負けで終わってしまいます。34同金なら54銀同銀同飛
34同銀ならば44銀同金同角
55歩なら33歩成同桂55銀
どれもまずまず先手の攻めが続いています。
○ 35歩は棒銀の狙いで
棒銀というよりはななめ棒銀というか早繰り銀というか、46銀と33銀を交換しに行くのです。35同歩同銀34歩24歩同歩同銀同飛23歩28飛
となれば言い分が通ったというわけです。中央に手がついていますから、攻めを継続しやすいです。
後手は34歩を打たずに75歩
として、24歩同歩同銀同銀同飛23歩28飛76歩
というくらいの方が良いですが、後手玉がかなり薄く見えます。先手もち。
○ 有力なのは54歩で
55歩と突いたのを生かしています。54同銀に55銀左とぶつけます。
63銀と退却したら35歩
35同歩同銀34歩44銀右
これは先手有利です。
後手は35歩に54歩
なのでしょうが、34歩に55歩は33歩成同金55銀
44銀が受けにくいのです。43銀には35銀
と足して44銀右と24歩同歩同銀を見れば十分です。
54歩34歩に同金ならば
35歩45金同銀同歩44銀
これも先手十分。
最後のところ55の銀を取れば34歩
です。
うまくいきすぎですね。後手は最初の55銀を取るしかなさそうです。55同銀同銀54歩には63銀
ですから54歩ではなく63銀
と打って我慢します。54歩は同金同銀同銀であとがわかりません。
先手も少し力をためて37桂54歩に24歩同歩を入れるのが大事なところで、それから46銀と引いておきます。
42角の備えにも25歩同歩同桂24銀22歩
22同玉45銀53角35歩
これなら88角の利きが大きくて攻めがつながりそうです。
後手が銀を22に引いても45銀
を取れば22角成同玉13桂成の筋が気持ちよいです。取れなくて53角24歩23歩35歩
というのは調子が良いけれどなかなか難しいです。
あるいは15歩同歩を入れてから25歩同歩同桂22銀13歩
とするものなのかもしれません。
○ 最初に15歩として
ここでは15同歩でしょう。これから攻めようというのですから損のない手です。それから上に書いた手順を見るとか、1歩補充して攻めることを考えるとか。
△ 自玉に手を入れるなら79玉
というのが現代風ですが、55歩35歩同歩同銀56歩
あるいは35歩に56歩
としてと金を作られる筋が残ります。つまり34歩同銀35歩45歩34歩46歩
先手が悪いわけでもないですが、考えることが多くなってしまいます。
△ 待つならば58金のほうが普通で
55歩35歩同歩同銀34歩24歩同歩同銀同飛23歩28飛56歩55銀
という感じです。悪くないけれど57に傷が残ります。
後手は65歩として
65同銀55歩同銀73桂56銀75歩
1歩損ですが攻めを急ぐのもあります。(これは58金ではなく79玉でもあり得る変化です。)形勢は互角。
× よくなさそうなのは37桂で
55歩同銀左54歩24歩同銀66銀73桂
25歩の攻撃筋はありますが、角筋は通っていないし左銀を攻め駒にしていないので、自力で攻め切ることはできそうになりません。
と言って35歩から攻めると36歩を食らいます。
35歩の前に26飛が必要で
これくらいなら悪いとも言えませんが。後手も十分に指せます。
☆ まとめ
後手玉は2段目にあるので上からの攻めには弱いです。だから35歩同歩同銀と攻めていこうというのが本筋の考え方です。
棒銀の要領で2筋で銀交換しようというのがシンプル。
58飛とまわってから左銀を使って攻めようというのがちょっとひねった攻め方。
54歩同銀55銀左というのが大上段に構えた感じで、後手がうまく受けないと飛角銀銀4枚で攻めつぶせます。
後手の立場では、相手が急戦で来られるならば矢倉早囲い(32玉~22玉~32金で31角のまま囲える)は危険です。実は問題図は後手が作戦負けではないかと疑われるところでした。
最初の形勢判断では後手玉が堅いという判断でしたが、上から攻められたら堅くなかった、ということなのです。ならば攻撃態勢ができていないので作戦負けです。
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