飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

NASAがCubeSatの打ち上げを公募しています

2011-08-06 15:18:15 | 佐鳥新の教授&社長日記

NASAのメルマガにCubeSatの打ち上げ公募が出ていました。

打ち上げは2012年~2014年で、申込期限は2011年11月14日午後4時30分(アメリカ東部標準時)だそうです。

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August 05, 2011

 

Joshua Buck

Headquarters, Washington                                        

202-358-1100

jbuck@nasa.gov

RELEASE: 11-256

 

NASA ANNOUNCES NEXT OPPORTUNITY FOR CUBESAT SPACE MISSIONS

 

WASHINGTON -- NASA is seeking proposals for small satellite payloads to fly on rockets planned to launch between 2012 and 2014. These miniature spacecraft, known as CubeSats, could be auxiliary payload on previously planned missions.

 

CubeSats are a class of research spacecraft called nanosatellites. The cube-shaped satellites are approximately four inches long, have a volume of about one quart and weigh less than three pounds.

 

Proposed CubeSat investigations must be consistent with NASA's Strategic Plan and the Education Strategic Coordination Framework.

The research should address aspects of science, exploration, technology development, education or operations.

 

Applicants must submit proposals electronically by 4:30 p.m. EST on Nov. 14. NASA will select the payloads by Jan. 30, 2012. Selection does not guarantee a launch opportunity. The selected spacecraft will be eligible for flight after final negotiations when a launch opportunity arises. NASA will not provide funding for the development of the small satellites.

 

NASA recently announced the results from the second round of the CubeSat Launch Initiative. From the first two launch initiatives, 32 payloads made the short-list for launch opportunities in 2011 and 2012. They are eligible for launch pending an appropriate opportunity and final negotiations. The satellites come from 18 states: Alabama, Alaska, California, Colorado, Hawaii, Kentucky, Louisiana, Maryland, Massachusetts, Michigan, Missouri, Montana, New Hampshire, New Mexico, New York, Pennsylvania, Utah and Virginia.

 

For additional information about NASA's CubeSat Launch Initiative program, visit:

 

 

 

http://go.nasa.gov/puk9K2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

http://go.nasa.gov/CubeSatOp

 

 

 

 

 

For more information about NASA's Strategic Plan, visit:

 

 

 

http://www.nasa.gov/budget

 

 

For more information about NASA's Education Strategic Coordination

Framework, visit:

 

 

 

http://go.nasa.gov/nRCvjH

 

       

-end-

 

 

 


超流動ヘリウムに栓をする方法

2011-08-01 18:41:26 | 佐鳥新の教授&社長日記

ブログに登録するのは3ヶ月ぶりだ。

SASのメルマガによると、X線天文衛星「すざく」のセンサーの冷却にヘリウムを漏らさず栓をする方法が紹介されていた。ヘリウムは御存じのように超流動といって粘性がゼロになる性質がある。この性質のため、どんなにきつく栓をしてもその隙間からヘリウムが洩れてしますのだ。「すざく」では逆にガスを漏らすポーラス材を使って、微量にガスを漏らしてその潜熱による漏れた面を冷却する。そうすると漏れた面がガスが流入する面よりも温度が低くなる。超流動ヘリウムは温度が高い方に移動しようとする性質があることから、この性質が栓の役割を果たすというのだ。もちろん、微量には漏れるのだが、通常のシール方法よりは効果が高いということなのだ。

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◆科学衛星を極限まで冷やす(その2)

2005年7月26日、X線天文衛星「すざく」は宇宙での極低温の世界記録を達成し

ました。記録は「60ミリケルビン」、絶対零度(マイナス273.15度C)に0.06

度まで肉薄したのです。太陽輻射をさえぎり、機械式冷凍機や液体ヘリウムな

どを幾重にも重ねてこの極低温が実現しました。XRSというカメラの心臓部を

その温度に維持することで、何万光年のかなたから飛来しキャッチされたX線

の光子のエネルギーを、これまでになかったほど精度良く読み取れるようにな

る。この「超精密分光」が実現することで、宇宙物理学の新たな展望が開かれ

る……。

「すざく」は、2000年2月にM-V4号機での打ち上げに失敗した「ASTRO-E」の再

挑戦として作られた衛星だったため、関係者の喜びもひとしおでした。しかし、

ほどなく肝を冷やすデータが送られてきました。

8月7日未明から突然ヘリウムタンクの温度が上昇しはじめ、翌8日正午まえに

は約5ケルビンを示しました。これは、ほぼすべてのヘリウムが蒸発してしまっ

たことを意味しています。2~3年は極低温を維持し「超精密分光」の観測を続

けようとしていた「すざく」にとって、不測の事態でした。

その後の原因究明で推定されたシナリオは次のようなものでした。

 

1)寒剤のヘリウムは定常状態でもわずかづつ蒸発するが、その分は宇宙空間

  に放出されるはずだった。

2)しかし排気されたヘリウムの一部が真空断熱容器内に還流し、断熱性能を

  低下させた(魔法ビンの真空部分に気体が入ってしまったのと同様)。

3)断熱性能が低下したことで、より多くのヘリウムが蒸発し、さらに断熱性

  能が悪化。結果としてほぼすべてのヘリウムを喪失し、極低温を維持でき

  なくなった。

 

とはいえ「すざく」は他の観測機器――XRT(X線望遠鏡)、HXD(硬X線検出器)、

XIS(X線CCDカメラ)――での観測を続け、多くの成果を上げています。また、

宇宙開発委員会に対して不具合原因究明の報告が行われたのは2006年1月のこ

とでしたが、その翌月には赤外線天文衛星「あかり」が、「すざく」の原因究

明を通じて得られた極低温に関する知見を反映した状態で打ち上げられました。

「あかり」はその後、赤外線全天カタログの作成など、ミッションは成功を収

めたのもご存じのとおり。

苦い経験も糧に、宇宙での冷却技術は日本独自の強みとなりつつあります。

その中身は、機械式冷凍機や磁気式冷凍機、ヘリウムなど寒剤ハンドリングな

ど要素技術とそのコーディネーションにほかなりません。

たとえば重要な要素である「極低温のヘリウムを、タンクに長期間保持する」

こと。これには本質的な難しさがあります。

極低温になったヘリウムは「超流動」という不思議な性質を示します。粘性が

ゼロとなり、原子の隙間があるだけでも、そこを通り抜けてしまうのだといい

ます。「容器の壁をつたって這い上がるヘリウム」は、科学実験の映像などで

もよくご覧になることがあるでしょう。

こうなってしまうとタンクの「栓」の密閉度をどれほど上げてもヘリウムを閉

じこめることはできません。

そこで逆に、空隙だらけの「ポーラスプラグ」というものを「栓」に使うのだ

そうです。モノとしてはコインほどの大きさの素焼きのフタです。液体のヘリ

ウムが空隙を通ってプラグの表面にしみ出ることを許してしまおうというもの

です。

液体ヘリウムが蒸発することでプラグ表面(タンク外側)の温度は裏面(内側)

に比べて低くなります。アルコール消毒で腕がひんやりするのと同じ原理です。

そして超流動状態のヘリウムは、高温側に移動しようとする性質があります。

つまりプラグの裏側、タンクの内側に移動しようとするわけです。なので、む

しろわずかづつの浸透と蒸発を許したほうが、結果的により長期間、タンク内

にヘリウムをとどめておける、というものです。

なんだかダマされたような話ですが、少しは涼しい気分が味わえたでしょうか?

いずれにせよ、こうした要素技術を精妙に組み合わせることで、宇宙での冷却

技術が構築されています。今後も、X線や赤外線などでより高精度・高感度の

観測を長期間行うためには、こうした技術をうまく組み合わせて使うことが欠

かせません。極低温のための技術開発は、この夏も熱く続けられているのです。

(MK)

出典:JAXAメールマガジン 第157