A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

【ご案内】In Studies vol.2「スクリーン・メモリーズ 〜記憶の映画」& In Studies vol.1レポート

2016-08-29 23:58:40 | お知らせ
来週のIn Studies vol.2は、「スクリーン・メモリーズ 〜記憶の映画」と題して、画家・山邊桜子さんをファシリテーターに、「これまでに影響を受けた映画」についてお話したいと思います。
「いやー、映画って本当にいいもんですね~」(by 水野春郎)

In Studies vol.2「スクリーン・メモリーズ 〜記憶の映画」
ファシリテーター:山邊桜子
■日時:2016年9月5日(月)19:00〜
■場所:共同スタジオ ink 2F
京都市中京区猪熊通り三条上ル姉猪熊町325番地2
http://studio-ink.tumblr.com/
■参加費:無料・要予約(約8名程度)
■予約・お問合せ s.yamabe0415@gmail.com(山邊)

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 最近、映画を見たでしょうか。映画館に行ったでしょうか。
 私たちは生まれてからこのかた、たくさんの映画や映像、画像を見てきました。そして、さまざまな映画(映像)に影響を受けてきました。映画は、古くからの芸術である絵画、彫刻、音楽、文学、舞踊、建築、演劇に次ぐ新しい芸術として「第八芸術」と呼ばれただけでなく、社会や文化、自然、政治などさまざまな視点を含む総合芸術でもあります。
だからでしょうか、映画を見たあと、些細なことでも影響を受けることがあります。ラストシーンの衝撃からセリフの一言、発音、あるいは風景の美しさ、食事のシーンで映った料理、ファッションやインテリアなど、映画の構成要素として重要なものから些細なものまで、意識的か無意識的かを問わず影響を受けたことはないでしょうか。あるいは、見た映画を思い出すと、映画館の雰囲気や場所、その日の風景や出来事、家族や友人、恋人など一緒に見た人との経験を思い出すこともあるかもしれません。映画を見るとは、映画の内容を記憶するだけでなく、映画体験の記憶でもあるのかもしれません。
 そこで、今月のIn Studiesでは、画家・山邊桜子さんを中心に、皆さんが影響を受けた(好きな)映画を挙げていただき、映画にまつわる「記憶」について、お話ししたいと思います。時間の都合上、本編すべてをお見せすることは叶いませんが、本編の一部または予告編などを「上映」し、ご一緒に見たいと思います。
そもそも映画(映像)は大衆文化の象徴であり、他者と共有(シェア)することが出発でした。映画館にわざわざ出かけ、見知らぬ他者と一緒に暗闇の時間を過ごすこと。近年は、YouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトが普及し、映画より「画像」を見る機会が多くなりました。その時、多くは一人で見てはいないでしょうか。映画が共同制作であるように、映画を見ることも共同鑑賞です。その共同の映像経験を共有することで、「映画」は私たちの記憶に強く刻まれるのかもしれません。
(文責:平田剛志)
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■参加要項
Q. 影響を受けた映画(映像)を3〜5本程度選び、以下の理由を教えてください。
・映画の時代背景(いつの時代の内容か)
・鑑賞したのは、いつ頃か(年齢などわかれば)
・どういったところに影響を受けたか
・ご用意があれば、DVD、フライヤーなどの資料をお持ちください。

*「スクリーン・メモリーズ」とは、「銀幕の記憶」のほかにフロイトによる精神医学用語で「隠蔽記憶」の意。

先月の内容は以下をご覧ください。

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In Studies vol.1「人生処方画集」
平田剛志

 孤独にたえられなくなったら、ふところがさびしかったら、結婚が破綻したら、生きるのがいやになったら、どうすればいいのでしょう。身体の病や不調には、頭痛には頭痛薬、胃のもたれには胃腸薬があるように、さまざまな医薬品があります。あるいは、日頃の健康管理として、漢方やビタミン剤を服用さている方もいるでしょう。では、心の病に効く家庭常備薬、処方薬はあるのでしょうか。

 そんな「心」の家庭常備薬、家庭薬局を想定して書かれたのが『ふたりのロッテ』や『飛ぶ教室』で知られるドイツの作家エーリッヒ・ケストナー(1899-1974)の『人生処方詩集』です。冒頭に、「年齢が悲しくなったら」、「孤独にたえられなくなったら」、「同時代の人間に腹がたったら」など、36の症状が索引につけられ、症状に応じて読むことができる構成となっています。どれも他人事とは思えない、現代社会の苦さ、憂うつを軽妙に表現した「読むクスリ」とも言える詩集です。後には、寺山修司、まどみちおが同名のアンソロジー、詩集を刊行しており、その「処方薬」の違いも魅力となっています。

 そこで、今月の「In Studies」では、ケストナーの『人生処方詩集』にならい、『人生処方画集』と題して、人生のさまざまな状況・症状に効き目のある美術作品を参加者とともに選んでみました。参加者の方々が選んだ作品は、下記のリストとなります(原書にはないオリジナルの症状もあったため、選者別としました)。
 作品の選択にあたっては、これまで見た作品や自身の経験で「効果」があった作品が多く挙がりました。薬にさまざまな種類があるように、「人生処方薬」も種類は豊富です。そして、「処方薬」探しを通じてわかったのは、私たちはこれまでさまざまな美術作品に治癒されていたということでした。美術作品を見るとは、処方薬のように人知れず服用しているからこそ、その効能に気づかなかったり、その効果があまり知られていないのかもしれません。

 なお、本来ならば、作品図版や「処方薬」の詳しい説明や効用、服用の注意点などをお伝えすべきなのですが、当日に来院(参加)した患者様のみへのご説明とさせていただきます。ご了承ください。
 当日ご参加できなかった方で症状をお持ちの方は、ぜひ下記のリストをご覧頂き、お近くの美術館、ギャラリーなどで実作をご鑑賞いただくか、または書店、図書館などでカタログ、画集をご覧ください。「処方薬」の「効果」には個人差もありますが、症状の改善に少しでもお役に立てれば幸いです。

『人生処方画集』
■山本雄教さん
・食欲がなかったら——高橋由一《豆腐》1876-77
・生きるのがいやになったら——アンゼルム・キーファー《星空》1995
・芸術に理解が足りなかったら——赤瀬川原平《宇宙の缶詰》1964
・ホームシックにかかったら——会田誠《新潟⊃世界》(「みんなといっしょ」シリーズより)2003
・冬が近づいたら——小松均《雪の最上川》1979
・天気が悪かったら——福田平八郎《雨》1953

■山邊桜子さん
・芸術に理解が足りなかったら——Francesco Cardelli《やさしい鉄砲》(イタリアの9歳の子どもの絵)
・感情が貧血したら——パウル・クレー《グロテスク芝居のための人形像》1929
・結婚が破綻したら——深沢軍治《傷》シリーズ

■寺脇扶美さん
・人生をながめたら——長谷川等伯《松林図屏風》16世紀
・自信がぐらついたら——上村松園《序の舞》1936
・恋愛が決裂したら——伊藤若冲《群鶏図》1795年頃
・生きるのがいやになったら——塩田千春《私たちの行方》2012
・問題がおこったら——クレス・オルデンバーグ《Floor Cake》1962
・なまけたくなったら——ゲルハルト・リヒター《8枚のグレイ》2001
・大都会がたまらなくいやになったら——今村遼佑《バケツと水》2016
・同時代の人間に腹がたったら——曽根裕《アミューズメント・ロマーナ》2001
・感情が貧血したら——ミヤギフトシ《The Ocean View Resort》2013
・芸術に理解がたりなかったら——ソフィ・カル《盲目の人々》1986

■林葵衣さん
・自信がぐらついたら——藤本由紀夫《HORIZONTAL MUSIC》1986、オルゴールユニット、木
・作品を作れなくなったとき——高木正勝《Tidal》2007
・日常生活の繰り返しに疲れたとき——林葵衣《くずれる—黒—》2011

■松元明子さん
・感情が貧血したら・芸術に理解が足りなかったから——「アール・ブリュット—パリ、abcdコレクションより— 生命のアートだ」滋賀県立近代美術館(2008年10月25日〜11月30日)
・心がにごってきたら——寺田就子作品
・生きるのがつらくなったら——上野王香作品
・かっこよくなりたいとき——「phono/graph –音・文字・グラフィック-」神戸アートビレッジセンター(2015年3月21日〜4月12日)
・生きるてるのがしんどくなったら——長新太『マンガ童話』トムズボックス、2008

■平田剛志
・年齢が悲しくなったら——やなぎみわ《My Grandmothers/YUKA》2000
・貧乏に出あったら——井上有一《貧》1972
・知ったかぶりをするやつがいたら——トリスタン・ツァラ《ダダ宣言》1916
・人生をながめたら——河原温《One Million Years》1970-71
・結婚が破綻したら——パブロ・ピカソ《赤い背景の接吻》1929
・孤独にたえられなくなったら——髙島野十郎《蝋燭》1912-26
・教育が必要になったら——会田家《檄》2015
・なまけたくなったら——福岡道雄《何もすることがない》1999
・進歩が話題になったら——ラスコー洞窟、約17,000年前
・他郷にこしかけていたら——フィンセント・ヴァン・ゴッホ《ゴーギャンの肘掛け椅子》1888
・春が近づいたら——小林研三《春の丘》1975
・感情が貧血したら——マーク・ロスコ《SEAGRAM MURALS》1959
・ふところがさびしかったら——山本雄教「one」シリーズ
・幸福があまりにおそくきたら——諏訪敦《大野一雄》
・大都会がたまらなくいやになったら——山本芳翠《浦島図》1893-95
・ホームシックにかかったら——ルネ・マグリット《Homescikness》1940
・秋になったら——小野竹喬《奥細道句抄絵 あかあかと日は難面もあき風》1976
・青春時代を考えたら——フィオナ・タン《tommorow》2009
・子供を見たら——谷口六郎《こがらし坊やが呼んでる暁》1963
・病気で苦しんだら——フリーダ・カーロ《The Dream (The Bed)》1940
・芸術に理解がたりなかったら——マルセル・デュシャン《泉》1917
・生きるのがいやになったら——バーネット・ニューマン《アンナの光》1968
・恋愛が決裂したら——ソフィ・カル《限局性激痛》1999
・もし若いむすめだったら——岸田劉生《麗子》1921
・母親を思いだしたら——石内都《Mother’s》2001
・自然をわすれたら——大竹伸朗《直島銭湯I♥湯》2009
・問題がおこったら——エドヴァルド・ムンク《叫び》1893
・旅に出たら——池田遙邨《うしろ姿のしぐれてゆくか山頭火》1984
・自信がぐらついたら——アニッシュ・カプーア《世界起源》2004
・睡眠によって慰められたかったら——小林孝亘《Pillow》2007
・夢を見たら——横尾忠則《夢千代日記》2007
・不正をおこなうか、こうむるかしたら——オーギュスト・ロダン《考える人》1881-82
・天気がわるかったら——熊谷守一《雨滴》1961
・冬が近づいたら——村上華岳《冬ばれの山》1934
・慈善が利子をもたらすと思ったら——フェリックス・ゴンザレス=トレス《無題(気休めの薬)》1991
・同時代の人間に腹がたったら——《青不動明王》11世紀末、青蓮院





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