A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 521 人間は、そんなに笑う必要があるのか

2017-06-21 08:35:34 | ことば
 人間は、そんなに笑う必要があるのか、ということだ。
 笑いは、スパイスに過ぎない。主食ではない。
 その意味で、一日中笑い転げているいまのテレビはどうかしている。スパイスばかりが運ばれてくるテーブル。唐辛子の胡椒煮ナツメグ添え、みたいな。
 ニュース番組やスポーツ番組でも、21世紀のテレビ出演者は、全員が笑いを取ろうと思っている。


小田嶋隆『ポエムに万歳!』新潮社(新潮文庫)、2016年、216頁。

たびたびアーティストトークの司会などで人前でお話させていただく機会があります。その際、いつも心がけているのは笑いを取ろうとはしない、ということです。小田嶋氏も書いているように、昨今はなにかにつけて「笑い」が求められます。お笑い番組の影響からか、人前で話すことは笑いを取ることという考えがあるのかもしれません。

しかし、テレビ業界ならまだしも、美術界にまで「笑い」を求めるのはいかがでしょうか。私たちは芸人ではありません。芸人は笑いを取るテクニックを身につけており、彼らはそれで仕事をしています。しかし、私たち美術界の人間にそのような技術はありませんし、言うまでもなく「笑い」で収入を得ているわけでもなく、目的でもありません。

もちろん、トークの進行中、笑いが起こることはまったく問題ありません。緊張を緩和する点で大いに歓迎です。私は笑いを「取ろう」とすることに対して、疑問を感じるのです。関西圏はお笑い文化が根づいているせいか自然に笑いを取ることを身につけている方もおりますが、それは例外です。美術のトークイベントにおいて、そのような饒舌さ、笑いを目的にしてはいけないのではないかと感じます。まずは、作品について、自分の言葉で語ること、作品について他者と言葉を共有することに尽きるのではないでしょうか。
関西の方に較べると、関東出身の私は口下手で声が小さく、毎回ご迷惑をおかけしています。おそらく、ご不満な方も多くいるかと思います。私としては、いつも無理に笑いをとろうとはせず、考えていること、思ったことを率直に、真摯にお話することを心がけています。そこでのお話や言葉が少しでもご来場頂いた方にとって刺激になる時間となれば幸いです。



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