A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

TOUCHING WORD 033

2008-03-19 21:52:10 | ことば
求めている真実が、紅茶のなかではなくて、私のうちにあることは明らかだ。(中略)私はカップをおき、自分の精神の方に向きなおる。真実を見つけるのは精神の役目だ。しかしどうやって見つけるのか?深刻な不安だ、精神が精神自身も手のとどかないところに行ってしまったと感じるたびにかならず生じる不安だ。精神というこの探求者がそっくりそのまま真っ暗な世界になってしまい、その世界のなかでなお探求をつづけねばならず、しかもそこではいっさいの蓄積がなんの役にも立たなくなってしまうようなときの不安だ。探求? それだけではない、創りだすことが必要だ。精神はまだ存在していない何ものかに直面している。精神のみが、それを現実のものにし、自分の光を浴させることができるのだ。
(p.109-110 『失われた時を求めて1 第一篇 スワン家の方へⅠ』マルセル・プルースト 鈴木道彦訳 集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ2006.3)