A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記178 「嵐が丘」

2008-03-17 22:49:08 | 書物
タイトル:嵐が丘
著者:エミリー・ブロンテ 鴻巣友季子訳
デザイン:新潮社装幀室
発行:新潮社/新潮文庫
発行日:2003年7月1日
内容:
永遠の恋愛小説。待望の新訳成る!

わたしは『嵐が丘』は人間のエゴと心理をありのままに描いた、心のリアリズム小説だと思っている。神話的プロトタイプであるキャサリンとヒースクリフの原罪をわたしたちは生き継いでいくのだ。-鴻巣友季子[訳者]
(本書帯より)

寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる<嵐が丘>の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待に耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた‥‥‥。一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説の“新世紀決定版”。
(本書カバー裏解説より)

購入日:2008年3月16日
購入店:e-Books
購入理由:
なぜいま「嵐が丘」なのか。その答えを簡潔に述べるならフランスの映画監督ジャック・リヴェットが映画化をしているから、と答えよう。現在開催中の<フランス映画祭2008>の特集上映<ジャック・リヴェット 秘密と法則の間で>において、この『嵐が丘』(1985)が上映されるのだ。正直に告白するなら、いままでこれといって興味があった本ではない。当然、この本の存在は知っていたし、映画化も何回もされているからよく知られた本ではある。だが、本の帯に「永遠の恋愛小説」などと書かれる本を買うほど恋愛小説好きでもなく、いままで手に取ることも興味を持つこともなかった。もちろん今も興味はないのかもしれない。今回はジャック・リヴェットという映画監督に興味があり、『嵐が丘』に興味があるわけではなかったからだ。だが、このような機会こそ『嵐が丘』を読むいい機会なのでないかと頭の中で声がした。今後、この本のことを考える機会もそうそう来そうもないではないか。ならばと意を決して新刊書店に行き、現在文庫本で刊行されている岩波文庫版と新潮文庫版を比較してみた。どちらも新訳だが、岩波は上下刊、新潮は1巻本であった。値段を考慮するなら1巻で済む新潮に分がありそうだが、翻訳の好みから岩波にしようと思った。結局その日は買わずに帰った。だが、その後たまたま立ち寄った古本屋で新潮文庫版を見かけ、迷った。当然新刊本を買うより安い。さらに給料日前で金がないところに10%OFFセール中だという。迷った末結局買ったわけだが、微妙な後悔を感じた。しかし、同じ本でありながら、翻訳の違いによって別の本のように考えている自分が不思議に感じ始めた。たしかに文体は違うが、結局同じ本ではないか。ほんとうによい本というのは翻訳など関係ないと思い込むことにしてその日は納得した。