国道を両津から金井方面に向けて車を走らせ、吉井の街にさしかかると右手に小料理屋の「樋口」左手に自動車教習所が見えてくる。そして下って上る丁度V字型の谷間あたりに大聖院(だいしょういん)があり、正面に茅葺き屋根の山門があった。この山門の仁王像の股くぐりをすると伝染病が治るという言い伝えがある。特に、疱瘡やはしかに効果があるとされており、子供の頃にこの仁王像の股くぐりをした経験のある吉井在住の読者も多かろう。今も仁王像の足下には病気平癒のお礼としてのわらじが供えられていた。山門を抜けると十数段の石段があり、その頂上に瓦屋根の中門があり、ここを抜けると広い境内が広がっていた。鐘楼は茅葺きだが、本堂はトタン屋根、小さい蔵、経蔵などは瓦屋根葺きである。経蔵の白壁が点景となり、全体に調和がとれた構図を作り上げ、落ち着いた佇まいを醸し出していた。ところが鐘楼には釣鐘がなく、その下方は荒れるに任せている。何だか変だなと感じたら、住職の住まいが空き家になっていた。地元の人に窺ったらば、もう無人寺になってから随分と経つのだそうだ。どういう事情があったのか分からぬが、こんな名刹に管理者が住まぬとはどうにも合点のいかない、それほど素晴らしい寺だった。
参考図書:佐渡古寺巡礼
第二山門に至る石段
第二山門
本堂
寺が無住職である事を示す張り紙
鐘楼の茅葺屋根
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